東方絆紡録   作:空亡之尊

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流れ着いた物

神無悠月side

 

 

とある昼下がり、妖怪の山・川辺にて

 

 

「♪~」

 

 

俺は鼻歌を唄いながら妖怪の山の川を上っていた。

人間を好きになった妖怪と、妖怪を好きになってしまった人間の悲しい歌、気持ちを落ち着かせるのには丁度いい。俺のお気に入りの中でも特に気に入っていたりする。

 

さて、俺がどうして妖怪の山に来ているのかというと、事は一時間前まで遡る。

いつもの様に神社の縁側でのんびりしていると、バカ(=星哉)から電話が掛かってきた。そいつは俺にたった一言、「にとりの家に行ってみて♪」とだけ伝えてそのまま電話を切った。

面倒だと思ったが、あれから にとり とは外の世界の話などを聴かせてる仲だし、行ってみるか。ということで、現在に至るというわけである。

 

 

「……どうしてこうなった」

『そのセリフを言うのはまだ早いと思いますよ』

「うるさい。こっちはせっかくの日常を謳歌しようと思ってたのに」

『この話のなってる時点で日常は死んでます』

「メタいな。もうそう言う路線で行くのか?」

『ネタがないんですよ。私も駄作者も』

「聞かなかったことにする」

 

 

俺は溜息を吐くと再び鼻歌を唄いながら歩みを進めた。

次第に滝の音が俺の耳に微かに聞こえてきた。

 

 

 

少年少女祈祷中

 

 

 

「着いた」

 

 

滝壷の近く、ひっそりと佇むように建てられた小屋のような家があった。

ここに来るのも何度目かになるが、滝の水飛沫に身体が濡れるのが少々気に入らない。

 

 

「お前はいいよな」

『これでも防水加工は十分ですからね』

 

 

画面の中で自信満々に胸を張る月美を見てイラッとしたところで、俺は家の中へと入った。

まず最初に目に入ったのは、無造作に山積みにされたガラクタだった。ブラウン管テレビを始め、今では見かけなくなった外の世界の機械などがあった。にとり らしい。

まあ、それはいつもの光景だからいいんだが、気になったのはそのガラクタの山の前に落ちている緑色の帽子だった。まるで不意な出来事が起きて落ちたかのようだ。

 

 

「なあ」

『言わなくても分かります』

「やれやれ……」

 

 

俺は山のように積み上げられたガラクタを一つ一つ取り除いていった。

時間が経つにつれて、下の方から呻き声のような物が聞こえてきた。もう一息のようだ。

最後に残っていた南京錠付きの箱を退けると、床に伏せたにとりが姿を現した。

 

 

「いたたた……」

「大丈夫か?」

「う、うん」

 

 

俺はにとりの手を取ると、彼女を起き上らせた。

にとりが頭を押さえながら立ち上がると、俺は落ちていた帽子を被せた。

 

 

「……ありがとう、ユウキ」

「どうしてこうなったかは聞かないでおいてやるよ」

「あはは……そうしてくれると助かるよ」

『まあ、ユウキが来るのを楽しみに待っていたら落ちてきた物に気付かなくて下敷き。ですかね?』

「なっ‼」

「的外れな事を言うな」

『私はそう推測しますけどね~』

「ったく、お前は」

 

 

俺は画面を弾いて月美を画面外へとやると、にとりの案内で椅子に腰かけた。

なぜかさっきから にとり の顔が赤い気がするが、どうかしたのだろうか?

 

 

「そういえば、星哉からここに来るように言われたんだが、どうかしたのか?」

「それなんだけど、この前私が拾ったものを修理して星哉に見せたらさ、ユウキが良く知ってる物だからついでに見せてみたらって、何だか楽しそうな感じで言われたんだよね」

「俺が良く知ってる物?」

「うん。あ、持ってくるね」

 

 

にとりはそう言って席を立つと、家の奥へと行ってしまった。

しばらくして、戻ってきた彼女の手に握られた物を視て、星哉が俺を呼んで理由がよく分かった。

見た目がごく普通の黒いフィンガーグローブ、手の甲には金色の文字で『月』と書かれている。

 

 

「『月姫』か……しかも俺専用の」

「月姫?」

「部長が主に空中戦用に開発した装備の一つだ。ベースは光輝の刀を模して作ったらしい」

「空中戦用ってことは、飛べるの?」

「ワイヤーを巻き付けてその勢いで飛ぶって言った方が具体的かもな。部長の気紛れさ」

「こんなものを創るなんて、すごいね」

「他にもあるぞ。『明星』、『雨月』、『月華』、『梓』、ほとんどが模倣品だけどな」

 

 

だが、そのどれも二年前の戦いで紛失した。

月姫がここにあるということは、他の装備品もここにあるのかもしれないな。

 

 

「それよりも、こんなのをよく修理できたな」

「星哉に教えてもらったんだよ。なんでも、今度の異変には必要なものだからって」

「今度の異変、ね……」

 

 

俺は窓の方を眺めながら小さく呟いた。

アイツの考えることは俺にはわからない。前からそうだ、あいつは俺の知らないところで動き、何か手掛かりを掴んでも最後まで明かさない。

欺くのはまずは味方から。それでも、アイツは俺たちを助ける。本当によく分からない奴だ。

 

 

「とりあえず、礼は言っておく。ありがとう」

「どういたしまして。私も外の世界の物に触れられて楽しかったよ」

「もしかしたら、またそういう機会があるかもな」

「その時は筆を振るわせてもらうよ」

「ありがとう」

 

 

俺はにとりに別れを告げると、その場を後にした。

帰ったら久しぶりにこれ(月姫)に慣れるように練習でもするか。

 

 

 

 

 

天宮星哉side

 

 

「ここか……」

 

 

博麗神社近くのとある場所に一人、俺は立っていた。

周りを見ても何も無い、岩がむき出しとなった広場のような場所だ。

 

 

「星羅、ここで間違いないな?」

『ええ。ここで合ってるわ』

「博麗神社近くに温泉が湧くね…………本当ならいい儲け話なんだけどね」

『いらない特典付でもかしら?』

「遠慮しておくよ。得点なら限定フィギアやCDで十分」

『相変わらずね』

 

 

スマホの中で星羅は溜息を吐く。

 

 

『けど、なんでこんな事が……』

「それを突き止めるのが俺たちの仕事だよ」

『でも……』

「物語はシナリオ通りに進む、たとえそれが誰も望まないBatENDでも」

『そうね』

「さて、脇役は身を引いて、後は主役に任せますか」

 

 

俺は夜空を見上げ、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 




空亡「ということで、ようやく対空になったユウキです」
悠月「ようやくか。もう少し後になると思っていた」
空亡「今度の場所は対空じゃないと無理がありますからね」
悠月「どういう意味だよ」
空亡「それより、星哉は裏で色々とやってますね」
悠月「アイツの立場って何なんだよ」
空亡「アニメでよく在る、
   真実に気付いた仲間が主人公に手助けをしながら一人で抱え込んだ挙句に死ぬ、
   と言った役割ですかね?」
悠月「え? アイツ死ぬの?」
星哉「死なないよ‼ 俺はそう言うの嫌だからな‼」
空亡「冗談ですよ。まあ、裏方の仕事ですよ。仕事」


次回予告
天狗からの突撃取材、今明かされる衝撃の事実‼(大嘘)
非日常編・五、取材紀行録、どうぞお楽しみに‼
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