東方絆紡録   作:空亡之尊

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一幕の休息

神無悠月side

 

 

「……どうしてこうなった」

 

 

俺は目の前の光景を見て口元を引き攣らせていた。

猫耳と尻尾を付けて顔を赤らめている先、なぜか百合全開で見つめ合っている椿希と光輝、怒りの表情で銃口を突き付けている星羅、それをされている星哉、そして何故か泥酔して俺の膝の上で眠りこけている月美。

これをカオスと言わずしてなんと呼べるだろうか?

 

何でこうなっているのか、事の発端は数時間前まで遡る。

 

 

 

少年現実逃避中

 

 

 

それはいつもと変わらないごく普通の昼下がりだった。

幻想郷の景色を見ながら団子を頬張り、お茶を飲み、昼寝をして過ごす…………はずだった。

 

 

「お茶淹れてきました」

「ありがと。やっぱり月美ちゃんの淹れてくれたお茶は美味しいね」

「そのセリフ、私にも言ってるよね」

「あら、星羅ちゃんもしかしてヤキモチ?」

「普段から星哉先輩にはきつく当たってますけど、やっぱり~」

「なるほど。実際のツンデレとはこういうものですか」

「何勝手に盛り上がってんのよ‼」

「お前ら、バカ騒ぎなら他でやってくれ」

 

 

縁側に横たわっていた身体を起こすと、俺は後ろにいる奴らを見て溜息を吐いた。

ちゃぶ台を囲んで座っている月美、星哉、星羅、咲妃、椿希、光輝の六人。こいつらはつい先ほど突然博麗神社に押しかけてきたのだ。まったく、迷惑にもほどがある。

 

 

「で、今日は何の用だよ」

「なにもないk……嘘だから、その握り締めた拳を引いて」

「相変わらずですね」

「やっぱり男同士の友情でしょうか」

「僕にはわからないですね」

「星羅ちゃんはどう思う?」

「私に聞かないでよ」

「お前らはお前らで自由だな」

「「「「「まあね」」」」」

 

 

女子五人は肯定するように笑顔を浮かべた。

 

 

「それで、結局どういう理由なんだ」

「真面目に言うと、今回の事件についてのことを話し合おうと思ったんだよね」

「神隠しから始まった幻想入りの事ですか?」

 

 

月美は思い出したかのようんさ口調でそう尋ねた。

天上街で起こった神隠し、呼び出された俺たち探偵部のメンバー、幻想郷へと放り込んだ生徒会のメンバー、そして異変の裏で暗躍する奴等の存在、あれからしばらく経つというのに何一つ解決していない。

 

 

「神隠しは俺らをここに連れてくるためのエサだった」

「でも、それだと生徒会が私たちをここに迷い込ませた理由が分かりません」

「もしかしたら、黒幕は天上街におびき寄せて私たちを始末するつもりだったのかもしれない」

「そうだったら、何で元からいた先輩たちは狙われなかったのでしょうか?」

「狙いはユウキさん一人だった。そう考えれば自然ですけどね」

「どういう意味だ?」

「この中で天上街に残っていなかったのはユウキさん一人だった。

そして、神隠しに遭った人達はユウキさんが消えた翌日に戻ってきた。

 釣るはずの獲物を取り逃したからエサを離した。そう考えるのが妥当です」

 

 

光輝は差し出されたお茶を一飲みした。

 

 

「そもそも、僕たちはユウキさんの来る三日前から調査していたんですよ?」

「そうなのか?」

「俺はその時別件だったから詳しくは知らないけど、他二人は知ってるよね」

「えぇ。久しぶりに聞き込みなんかしたわよ」

「私は行方不明者のその日の行動を」

「僕は警察のネットワークに侵入して個人情報を」

「おい、なにしてんだ」

「でも、これだけやって進展はなかった。ユウキさんが来るまでは」

「なに?」

「部長さんがいきなり言い出したのよ。七不思議のこと」

 

 

星羅は睨みつけるように俺の事を見つめた。

七不思議、以前からその存在は知っていたが、部長はそれに対して関わろうとはしなかった。

部長は俺が街に着くなりその話をして“あの神社”に俺を導いた。そして美羽と再会した。

七不思議の場所に合わせた生徒会メンバー偶然にしては出来過ぎたシナリオだな。

 

 

「美羽も神隠しを追っていた。そして美命から預かったものを俺に渡した」

「部長と神条美命が繋がっているか…………昔ならあり得ない組み合わせだな」

「でも実際に僕たちは部長に指示された場所と時間に生徒会と出遭った」

「あの二人の狙いがどうであれ、謀られた事には変わりないですよ」

「問題は黒幕が何故ユウキを狙ったのか、お嬢様たちが何故それを知っていたのか」

「謎は深まるばかりですね」

 

 

俺たちは頭を抱えた。

部長と美命の考えはただでさえ分からないというのに、その上黒幕の思惑もとなると一筋縄ではいかない。

 

 

「そういえば、星哉が言っていた黄昏という女の人に関してですけど」

「ああ、部長の屋敷にある資料で見たことのあるって話?」

「もしかしたら部長さんなら色々と掴んでいるのかも」

「ありえそうだな。あの人なら」

「そうだったとしても、お嬢様は安易に教えないわよ」

「確証のない推理はただの推測に過ぎない。あの人の言葉ですからね」

「今会えたとしても、適当な話で誤魔化されるのが目に見えてますね」

「黒幕よりも厄介なのが身内に居るんだよな」

「「「「「「「はぁ……」」」」」」」

 

 

俺たちは深い溜息を吐いた。

部長は俺たちより何十手先も見据えている。戦闘では役に立たないが、司令塔としてあの人の右に出る者はいない。頭の回転は光輝さえも上回るほどだ。

だが性格に難があり、俺たちはいつも弄ばれる。色々な意味であの人に勝てる人はいない。

そんな思い空気を打ち破るかのように、星哉が立ち上がった。

 

 

「さて、真面目な話はここまでにして、ふざけましょうか」

「おい」

「丁度ここにトランプを持ってるので、王様ゲームしましょうか」

「またやるんですか?」

「二番煎じね」

「まあ、暇だからいいわよ」

「楽しそうですね~♪」

「どうせです。付き合ってあげますよ」

「それじゃあ、早速……」

「「「「「「「王様だーれだ‼」」」」」」」

 

 

 

少年少女祈祷中

 

 

 

そして現在に至る。

咲妃は星哉が持っていたコスプレ衣装を着せられ、月美は咲妃から命令されて日本酒一気飲みを実行し、椿希と光輝は酔った月美からキスを強要されて躊躇し、星羅はこれ以上被害を広げまいとまず星哉を始末しようとしている。

 

 

「なんとまあ、カオスな状態になったな」

「ただいm……って、何よこれ!?」

「お帰り。見ての通りだ」

「何がどうなってこうなったのよ」

「元凶なら銃口向けられてるぞ」

「そんなこと言ってる暇があったら助けて‼」

「ここでアンタを止める……」

「それって恨みを抱いた主人公が宿敵に向ける言葉だよね‼」

「さよなら」

「ヘルプ‼」

「さて、こいつらをどうにか片付けるか」

「私は向こうに行ってるわ。好きにして」

「あはは……ダメだこりゃ」

 

 

真面目な話から一変して起きた惨状は、一発の銃声により終わりを告げた。

ちなみに銃弾はBB弾だった為、星哉は脳震盪を起こすだけで済んだ。

 

 

 

 

???side

 

 

外の世界・天上街、夜御万探偵事務所の一室にて

二人の男女が机を挟んで対峙していた。

 

 

「あっちの状況はどうなの?」

「美羽からの報告では、黒幕が表に出てきたようですよ」

「そう。意外と早かったわね」

「それほどこっちが厄介になってきたってことでしょうね」

「ユウキと美羽が以前の力を取り戻してきている。それを焦っているのよ」

「あの二人はいくら私でも骨が折れますからね」

「学園最強の生徒会長でも、あの二人相手では苦戦を強いられるのね」

「絆と想い、私にはそれはありませんからね」

「随分と仲間たちには慕われているようだけど?」

「嬉しいですけど、まだ決心が付かないんですよ」

「意気地なしね。ユウキと同じことを言う」

「私も彼も一人の男ってことですよ」

「面倒な生き物なのね」

「貴女には言われたくないですよ」

 

 

「弱いままだと黒幕に殺される危険性があった」

「だから私と貴方でユウキを、他の仲間たちを幻想郷へと送り込んだ」

「全盛期の勘と才能を取り戻すためとは言え、少々荒っぽかったのでは?」

「そうでもしないと時間が掛かりすぎるのよ」

「やれやれ、彼らも可哀想ですね。こんな事に巻き込まれるなんて」

「こんな事、一幕の茶番劇に過ぎないわ」

「できれば喜劇のまま終わらせたいところですね。舞彩」

「それはユウキ達次第ね。まあ、精々頑張りましょう。美命」

 

 

 

 

 




空亡「今回は真面目というかカオスで素というか真面目でしたね」
悠月「物語の確信吐くような話だったが、そこんところはどうなんだ?」
空亡「ほとんど後付なので辻褄合わせに手間が掛かりそうです」
月美「このやりとり、前にも一度あったような」
空亡「また振出しに戻る羽目になりそうですね」
悠月「それだけはやめてくれ。せめてつじつま合わせにリメイクしろよ」
星哉「この分だと部長達の出番、長引きそうだね」
空亡「更新ペースが一気に遅くなりますからね」
星哉「まあ、俺の出番だけでも作ってくれるだけありがたいけどね」
空亡「あはは。さて、次回から緋想天編、張り切りますよ」
美羽「ようやく、ね」


次回予告
博麗神社倒壊、異常気象、美羽の一時的狂気、新たな異変が幻想郷を巻き込む。
東方緋想天、天気予報・愛時々狂気、どうぞお楽しみに‼

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