神無 悠月side
「やっとご対面だな……」
俺は目の前にそびえ立つ建物に向かってニヤッと笑う。
紅く染まる月明かりに照らされている血の様に紅く悪趣味な西洋風の屋敷。
間違いない、夢で見た館そのものだ。
館からは先ほどよりも紅く濃い霧が立ち込めていて、いくら俺でも体調を保つのがやっとだ。
早く屋敷の中へと入ろうと門を潜ったその時、俺の真横を色鮮やかな気弾が掠めた。
俺はそっと頬に触れるとな生暖かい血の感触がした。
俺は気怠そうな目のまま門の奥を見据えると、一人の女性が経っていた。
腰まで伸ばした紅髪のストレートヘアに側頭部には三つ編み、華人服とチャイナドレスを足して二で割ったような淡い緑色の服、身体に纏う闘気は常人の域を軽々と超えている。
「正面から堂々と入ろうとする“ただの人間”に対して、少し乱暴じゃないか?」
「ご冗談を。この紅魔館に来る輩が“ただの人間”なわけないじゃないですか」
「それもそうだな。霊夢も魔理沙も“ただの人間”じゃないしな」
「やはり、先程の巫女と魔法使いの仲間ですか?」
「さっきからそればっかりだから飽きたけど。俺の場合はだたの好奇心だよ」
「そうですか……ああ、知っていますか」
紅髪の女性はそう言って一息つくと、一瞬にして距離をゼロにして俺の腹部に向けて回し蹴りを思い切り放った。その衝撃で、俺は門の壁へと直撃する。
辺りには砂ほこりが舞い上がり、紅髪の女性は俺が直撃した壁に背を向ける。
「――好奇心は猫を殺す。有名なことわざですよ」
「………………………………」
「安心してください、一応死なない程度に手加減はしましたから」
「………………………………」
「これに懲りたら二度とここには……」
「ちなみに、さっきのはイギリスのことわざだぜ」
俺のあっけらかんな声に、紅髪の女性は咄嗟に振り向く。
しかし、その時には俺と彼女との距離は零となっており、先ほど俺がやられたのと同じように回し蹴りを彼女の腹部へと思い切り放った。
蹴りが入る瞬間、紅髪の女性は後ろに飛んで威力を殺すが、それでも屋敷の庭の半分まで吹き飛んだ。我ながら、大人げないものだと呆れる。
「そんな、さっきのは完全に入ったはずなのに」
「甘いな。アンタよりも威力のある蹴りを何度も受けた俺がこの程度で倒れるかよ」
「ますます“お嬢様”の下には行かせられませんね」
「こっちは急ぎの用なんだ。弾幕ごっこで速攻ケリをつける」
紅髪の女性は太極拳のような構えをとると殺気の籠った瞳を俺に向ける。
俺は刀を抜いて右手で持つと口元をニヤッとさせて彼女を見つめる。
互いの間に夜の静かな風が吹く。それはまるで映画で見た決闘シーンの様だった。
「紅魔館の門番、紅 美鈴。ここから先は一歩も通しません」
「神無の御子、神無 悠月。悪いが無理にでも通らせてもらう」
俺は駆けだすと思い切り飛んで美鈴にめがけて刀を振り下ろす。
だが、彼女に触れる寸前に刀身を握られ、その場で一回転して門へと投げ飛ばされた。
地面に着く前に受け身をとって素早く体勢を整えると、彼女はスペカを発動した。
「くらいなさい、華符『芳華絢爛』」
美鈴を中心に花開くように鮮やかな弾幕が展開された。
俺は刀を逆手に持ち変えると、姿勢を低くして弾幕の隙間を掻い潜って美鈴へと向かった。
「見つけたぜ」
弾幕が途切れた空間に辿り着くとその場で立ち止まり、左足を軸に逆手のまま大きく刀を振りかぶった。それと同時に刃の弾幕が一斉に美鈴へと襲い掛かり、爆発して黒煙を上げた。
「これで終わりか?」
「なめないで下さい‼ 虹符『彩虹の風鈴』」
黒煙を振り払うように七色の弾幕が全方向に展開され、美鈴を中心に時計回りに回り始める。
一旦距離をとって避け続けていると今度は反時計回りに変わり、避けるタイミングが若干ずれてしまったが間一髪でそれを避けた。その後、しばらく避けていると時計回りへと戻った。
俺は避けながら隙のタイミングを見計らう。そして、再び時計回りから反時計回りに変わる一瞬、美鈴までの一直線に道が開けた。
隙を見て一直線に走り出すと、俺はホルダーからスペカを取り出す。
そこにはUSBメモリを片手に、黒く染めた白衣を着た紫色の髪の女性が描かれている。
「愛おしく散れ、斬符『愛糸』」
刀に紫色の霊気が纏うと同時に振り払うと、黒い霊気を纏った無数の糸が蜘蛛の巣の様に散って美鈴の弾幕を打ち消し、彼女を身体を囲うように通り抜けるとすぐに消えた。
「今の攻撃、よく避けたな」」
「伊達に紅魔館の門番はやっていませんよ」
「門を潜ってる時点で門番失格なんじゃ?」
「…………彩符『彩雨』」
「誤魔化すな‼」
バツの悪そうな顔をした後に空中に飛ぶと、頭上から虹色の弾幕が雨のように降り注いできた。
弾幕を掻い潜って場所を移動しても、美鈴が追ってきてすぐに弾幕を降らせてくる。
その時、使い終わったはずのスペカが輝き出した。これで再使用可能だ。
「目には目を、歯には歯を、雨には霧を‼ 斬符『霧浄』」
刀に蒼い霊気が纏うと命に向けて勢い良く振り上げた。
それと同時に無数の蒼い斬撃の弾幕が美鈴を追うように襲い掛かる。
美鈴は咄嗟に腕をクロスさせて威力を最小限にまで抑え、地面へと降りた。
「なかなかやりますね」
「そっちこそ」
「でも、これで終わらせます‼ 彩符『極彩颱風』」
その瞬間、美鈴から無数の色鮮やかな弾幕が上下左右不規則に襲い掛かってきた。
極彩颱風、その名に負けず、まるで台風に巻き込まれたように強烈な弾幕だ。
普通なら遠巻きから弾幕を浴びさせるのが定石だが、俺はあえてその台風へと突っ込んだ。
美鈴も目を見開いている。当然だ、俺がしようとしている事は普通じゃ考え付かないないからな。
俺は弾幕を斬り払いながら突き進むとその場で跳んだ。弾幕が全く来ない美鈴の真上へと。
「なに……‼」
「そうそう、知っているか」
俺は口元をニヤッとさせながらスペカを構える。
「――背水の陣、有名なことわざだぜ。斬符『雪華』」
白い霊気を纏った刀を振り下ろすと眩い光が美鈴を包んだ。
その場には深く溜息を吐く俺と、地面に倒れるように寝ている美鈴の姿があった。
「すぅ……」
「ったく、あれだけ言っておいて寝てんじゃねえよ」
「すぅ……」
「まあ、今だけはゆっくりさせておくか」
俺は門の傍に美鈴を寝かせるとその場を後にした。
ついに紅魔館へと侵入すことを少しだけ楽しみにしている俺が心の中にいた。
空亡「ようやく紅魔館突入ですね」
美羽「何度見ても悪趣味な館よね。全部赤なんてどんなセンスしてんのよ」
空亡「まあ、確かに目には悪いですよね」
美羽「それよりもあの居眠り門番、今日は起きてたのね。前は寝てたのに」
空亡「そりゃあ、あれだけ派手に暴れたら起きるでしょう」
美羽「つまり、何も騒ぎを起こさなかったらいつも通り寝てたってことよね」
空亡「そうでしょうね。では、今回はここまでです」
美羽「投稿忘れて遅れたことはちゃんと謝りなさいよ」