東方絆紡録   作:空亡之尊

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大掃除ハプニング

神無 悠月side

 

 

「……平和に過ごしたかった」

 

 

俺は降り注ぐ弾幕の雨の中を避けながら悲痛に呟いた。

今、俺は何故か魔理沙と弾幕ごっこをしている。理由は特にない。

今日もいつもの様に団子を食べてのんびりと過ごしたかったのに、それを邪魔するように魔理沙がやってきた。今度も霊夢に勝負を挑みに来たようだが霊夢はあいにく留守中、そこで暇をしていた俺がなぜか弾幕ごっこの相手にされてしまった。

俺の拒否権はどこに行っても通用しないらしい。

 

 

「なんで俺がこんなことを」

『仕方ないですよ。ユウキだって魔理沙さんから見れば十分強いですから』

「強い敵ほど良く燃える、努力家の魔理沙にはお似合いだな」

『そうですね』

 

 

月美と話してる間にも目の前に星の弾幕が迫ってきていた。俺は間一髪でそれを斬り払う。

弾幕の先には箒に乗って俺を見下ろしている魔理沙の姿があった。

空を飛べるっていうの得だな。移動にも便利だし、なにより回避する手段も増える。

一方の俺は地べたを這いつくばるただの人間。到底空には手は届かないな。

 

 

「おーい、どうしたー?」

「何でもねえよ。そろそろ終わらせようかと思ってな」

 

 

俺は不敵に笑うと一枚の紅いカードを取り出した。

そこには弓を片手に、紅と黒の巫女装束を身に纏った茶髪の少女が描かれている。

 

 

「上等。その自信、今すぐ打ち壊してやるぜ‼ 恋符『マスタースパーク』」

「悪いが、俺のは自信じゃなく確信なんだよ‼ 斬符『暁月』」

 

 

魔理沙のミニ八卦炉からマスパが放たれたと同時に俺の刀に紅い霊気が纏う。それを思い切り横薙ぎに振ると紅く染まった衝撃波が放たれた。

閃光と衝撃波がぶつかり合い爆発すると、爆風と黒煙が互いの視界を遮った。

 

 

「うわっ‼」

「とどめ‼ 斬符『霧浄』」

 

 

斬撃から放たれた霊気の弾幕が狂いなく魔理沙へと襲い掛かった。

今回の勝負は俺の勝ちでいいようだ。

 

 

 

少年少女祈祷中

 

 

 

「いやー負けたぜ。私の十八番を防ぐなんて」

『その割にはなんだか嬉しそうですね』

「当然だ。霊夢以外でもこんなに強い奴と張り合ったんだ、嬉しいに決まってるだろ」

「変わった奴だな。普通なら負けて悔しいはずだろ」

「確かに負けたのは悔しいけどさ、その分、今度は勝ちたいって気持ちになるんだよ」

『何度転んでもその都度立ち上がる。七転八起とは魔理沙さんにお似合いな言葉ですね』

「単に諦めが悪いってだけだろ」

「まあ、どっちの言い方も合ってるな」

 

 

魔理沙はそう言って笑った。

 

 

「さてと、そろそろ家に戻るか」

『そういえば、魔理沙さんって普段は何して過ごしてるんですか?』

「私か? いつもは魔法の実験とかそこらのキノコを採取してるだけだぜ」

「なに、魔理沙の家の近くってキノコ生えてるのか?」

「そうだぜ。たまに毒キノコもあるけど、実験の材料になるからむしろありがたいな」

『そうなんですか。私は一度見てみたいですね、魔理沙さんのお家』

「やめといた方が良いぜ。自分で言うのもあれだが、家中に物が散乱してるから」

「だったらそれ、俺が片付けてやるよ」

「え?」

 

 

俺の言葉に魔理沙は目を丸くする。

魔理沙の家の片付けをしてやらなければという親切心と、その近くにあるというキノコへの食欲からこの結論に辿り着いた。これで食事のレパートリーにキノコが加わる‼

 

 

「だから、道案内頼む」

「頼むって言われても……あ、だったら私の箒に乗れば手間が掛からなくていいだろ」

『それもそうですね、理に適ってます』

「大丈夫なのか、俺が乗っても」

「平気だぜ。このくらいで壊れるような軟な作りはしてないぜ‼」

 

 

そう言って魔理沙は浮かせた箒にまたがると笑顔で手巻きをする。

少し照れくさいがここがお言葉に甘えて魔理沙の後ろに乗らせてもらった。

 

 

「一気に行くからな、振り落とされるなよ」

「甘く見るな。伊達に部長たちに振り回されてないだよ‼」

『いや、それは根本的に違う気がします』

「それじゃあ、行くぜ」

 

 

魔理沙の掛け声と共に勢いよく箒が飛び出す。

 

 

 

少年少女移動中

 

 

 

「着いたぜ」

「ここが魔理沙の家」

 

 

しばらくして辿り着いたのは瘴気が立ち込める森の中。

その中にひっそりと佇む西洋風の家、ドアの近くには霧雨魔法店と看板がぶら下っている。

 

 

「思ったよりも心地よかったな」

『たまには空を飛んでみるのも良いものですね』

「それは良かった。声を掛けてくれればいつでも乗せてやるぜ」

 

 

魔理沙はそう言うと家の中へと入っていった。

それに続いて中に入った。その時、俺の視界にはとんでもないものが写った。

魔導書やら訳の分からない魔法具やらが床一面に散乱していて、この家の床がほとんど見えない。元引き籠りハッカーの誰かさんの部屋を思い出すような惨状だ。

 

 

「魔理沙、お前どのくらい掃除してないんだ?」

「さ、さあ? 記憶では一ヶ月前、いやそれ以上前かな……」

『これはヒドイですね。ひかりちゃんと同レベルですよ』

「ああ。でも、これをやらないとキノコの収穫にはいけない」

『あ、やっぱりそっちが狙いでしたか』

「当たり前だ。タダほど高いモノは無いからな」

「だったら、早くこれを終わらせてキノコ採りに行こうぜ」

「元々はお前が掃除を怠ったということを忘れるなよ」

「わ、分かっるよ」

 

 

こうして、第一次掃除大戦の火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

少年少女掃除中

 

 

 

「えーと、これはここで、これは……なんだっけ?」」

『これはいる……これはいらない……これはいる……これは、なんでしょうか?』

「この家の埃の多さが尋常じゃないな。いっその事、霧浄で洗い流したい」

「『それはダメだぜ(です)』」

「分かってるよ。言ってみただけだ」

 

 

あれからしばらく、それぞれ役割分担をしながら掃除をしていた。

魔理沙は魔導書や魔法具の整理整頓、月美は捨てる物と捨てない物の分別をしている。

そして俺は掃き掃除をしているのだが、思ったよりも埃の量が多くて苦戦している。

しかし、家が小さかったからか思っていたよりも早く片付けが終わりそうだ。

掃除をしていると箒の先に何か当たった。どうやら古いロケットのようだ。中身は、相手のプライバシーというものがあるので覗き見ることはしないが一応魔理沙に確認して見るとしよう。

 

 

「おーい魔理沙ー」

「ん? なんだ」

「さっきそこでロケットを見つけたんだが」

『あ、ユウキ足元に……』

「え……うおっ‼」

「え……うわっ‼」

 

 

魔理沙に歩み寄ろうとした時、足元に置かれていた本に気付かずに躓いてしまい、そのまま前かがみになるように倒れてしまった。

 

 

「いたた、油断した」

「お、おい……ユウキ///」

「どうかしたか魔理……沙……」

 

 

目を凝らしてよく見てみると、何故か目の前に魔理沙の顔がある。

その距離、比喩表現なしで目と鼻の先、つまり魔理沙を押し倒したような形となっている。

なるほど。俺が倒れた拍子に魔理沙を巻き込んでしまったという事か………………って‼

 

 

「おわっ‼」

 

 

俺は急いで起き上がると、そのままドアの方へと向かい勢いよく閉めた。

まさかあんなラブコメみたいな事をしてしまうとは、俺の不幸体質もまだまだ健在のようだ。一部の奴にはご褒美だろうが、俺にとって胃にダメージを与える要因でしかない。

しかし、この状況で戻るのは少し気まずい。しばらくここら辺を散歩することにしよう。

 

 

 

少年祈祷中

 

 

 

「ふむ、迷った」

 

 

キノコを両手に抱えた俺は無表情で呟いた。

ただ散歩するつもりが、キノコの山――あのキノコの山ではない――に釣られて採取しているといつの間にか見知らぬ場所で立ちすくんでいた。

 

 

「まずいな、月美は魔理沙の家に置きっぱなしだし」

 

 

俺は途方に暮れながら歩いていると、視界の先に何かが写った。

ブロンドのロングヘアーに大きな赤いリボン、青い洋服を身に纏った小さな人形が木に寄り掛かっていた。

誰かの忘れものなのかなと思い手に取ろうとした時、閉じていた人形の瞳が開いた。

 

 

「‼ 意志があるのか?」

「……?」

 

 

俺が警戒しているとその人形は空中に浮いたまま首を傾げた。

どうやら俺が知ってる自立人形とは違うようで安心した。

よく見てみると人形のスカートの裾が破れている。

 

 

「ちょっと待ってろ」

「……?」

「どこだっけな………………あった」

 

 

俺が取り出したのは針と糸だけの裁縫セットだ。

不思議そうに見つめる人形の少女に歩み寄ると破れたスカートの裾を縫い始める。

そういえば、この前にも霊夢の破れた巫女服を縫い直したのを思い出した。

あの時は霊夢に「アンタって何でもできるのね」と少し呆れ気味に言われた。

 

 

「よし、これで終わりだな」

「……‼」

「どうだ、少しは直せただろ」

「……♪」

 

 

人形の少女は直ったところを見るとくるくると嬉しそうに回った。

この子にはちゃんと感情もあるようだ。

 

 

「喜んでくれて何よりだ」

「…………」

「ん? ああ、俺は神無 悠月、ただの人間だよ」

「……?」

「なんでこんな所にいるのかって? あ~実は道に迷ってな」

「……?」

「そうなんだよ。ところで、霧雨魔法店への道って知らないか?」

「……‼」

 

 

人形の少女が辺りを見渡すようにキョロキョロと首を動かすと、ある方向を差した。

どうやらあっちに進めば魔理沙のところへ戻れるようだ。

 

 

「ありがとな。小さなお人形さん」

「……♪」

 

 

人形の少女はぺこりと小さくお辞儀すると森の奥へと飛んでいった。

さすが幻想郷、人形までもが意思を持っているとは思わなかった。

 

 

「さて、それでは戻るとしましょうかね」

 

 

俺は教えてもらった方向へと歩き出した。

その後、辿り着いた先で魔理沙としばらく目を合わせられなかったことは言うまでもない。

 

 

 

 

 




悠月「おい、作者。説明してもらおうか?」
空亡「あれ? どうかしましたか?」
悠月「とぼけるんじゃねえ‼ 何だよ今回は」
空亡「別に、魔理沙とのフラグと後の話のフラグを立てただけですよ」
悠月「お前、フラグばっか立てて回収する気あるのか?」
空亡「勿論‼ 恋愛フラグは」
悠月「どうせなら話のフラグを回収しろよ。ったく」
空亡「ふふふ、これが非日常編の恐ろしさ。どうですか?」
悠月「あっちに居た頃と変わらないが、まあ、楽しませてもらうさ」
空亡「それは結構。それでは、読者様方も存分にお楽しみください」
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