東方絆紡録   作:空亡之尊

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妖精たちの戯れ

神無 悠月side

 

 

「う~ん……これは……」

 

 

凩がふく秋の日、霧の湖の岸辺でスペカを片手に頭を悩ませていた。

それは紅霧異変の時にいつの間にかできていた数枚のスペルカード。それぞれには異変に関わった皆をモチーフにしており、その効果もそれぞれの能力に見合っている。

しかし、あれ以来何故か使うことができなくなっている。

 

 

「あーわかんねー」

『普通はそうですよ。あの時はぶっつけ本番でやったことですから』

「まあそれに、あの時は偶然それぞれのスペカに適した状況だったからな」

『しかし、このまま唸ってるだけではいつまでも解決できませんよ』

「それもそうなんだが……」

「ユーウーキー‼」

 

 

思いふけていると湖の向こうから誰かの声が聞こえたと目を向けた瞬間、俺の鳩尾に言葉にできないほどの衝撃が走った。宴会の日にもこういう事があったような気がする。

痛みを押えながら懐に蹲る人物を見てみると、見覚えのある赤いリボンが目に入った。

 

 

「ルーミア、できれば普通に会いに来てくれないか?」

「えへへーユウキのここ温かい」

『聞いてないみたいですね。にしても可愛いです』

「呑気だな。まあ、それには同感だが」

「おーいルーミアー、どこだー?」

「ルーミアちゃーん」

 

 

起き上がるとルーミアの飛んで来た方向からまたも聞き慣れた声が聞こえる。

 

 

『この声はチルノちゃんと大ちゃんですね』

「あ、ユウキと月美だ」

「こんにちは。ユウキさん、月美さん」

「二人共、こんにちは」

「あ、ルーミアちゃんここに居たんですね。よかった」

「まったく、勝手にいなくならないでよね」

『ルーミアちゃんを探してたんですか?』

「うん。弾幕ごっこしてたのに、いきなり飛んでいちゃって」

「それで探していたらユウキさんたちのところに」

「なるほどね」

 

 

俺は膝の上で気持ちよさげに頬ずりしているルーミアに目をやる。

そういえば出会った時からか、なぜかルーミアに懐かれている。どうしてだろう。俺がたまに食べ物を分けてやってるのが原因なのだろうか?

と、考え事をしているといつの間にかルーミアは俺の膝で寝息を立てて寝ていた。

 

 

『あらら、寝ちゃいましたね』

「なら私もユウキの膝で寝るわ‼」

「チルノちゃん!?」

 

 

チルノはそういうと俺の膝を枕にして寝始めた。というより寝た。

 

 

『早いですね。膝に頭を置いた瞬間に寝ましたよ』

「その分疲れてんだろう。弾幕ごっこって体力使うからな」

「すみませんユウキさん。のんびりくつろいでいたところを」

「いいよ。どうせ考え事した後に俺も寝てただろうし」

『それに、ユウキがのんびりできた事なんて普段から無いですからね』

「それもそうだが、それをお前が言うか?」

「あはは……」

 

 

大ちゃんが苦笑いして俺を見ていると、一瞬俺の背中に悪寒が走った。

おかしい、冬の季節になるまでにはまだ時間があるはずなのに。

 

まあそんな事よりも、もうすぐ冬だったとしても何故か俺の周りだけが寒い気がする。

なんとなく後ろを振り向いてみると、そこには見知らぬ女性が立っていた。

薄紫色のショートボブに白いターバンの様なモノを被り、青いロングスカートにエプロンらしきものを着用、首には雪のような白いマフラーを巻いている大人の女性だ。

女性は俺の方を一瞬だけ見ると、すぐに隣にいる大ちゃんへと視線を移した。

 

 

「あ、レティさん」

「こんにちは、大ちゃん。相変わらずチルノのお世話で大変ね」

「いえ、そんな事はありませんよ。チルノちゃんと一緒に居られて楽しいですから」

「うふふ、優しいのね」

 

 

保母のように微笑む彼女をじっと見つめていると、一瞬目が合った。

その瞬間、先ほどと同じ悪寒が俺の背中に走った。

 

 

「アンタ、もしかして雪女?」

「惜しいわね。厳密には冬の妖怪、まあ雪女の一種よ」

「幻想郷の妖怪ってのは事細かく区別されてて面倒だな」

『それが幻想郷ですからね。仕方有りませんよ』

「ですよねー」

「なるほど、チルノから聞いてた通り、面白い人間ね」

「どういう風に聞いてんだよ」

「“とっても面白くて強い人間”」

「うん、なんとなく分かっていた俺が居た」

『元気出してください』

 

 

なんだろう、下手な言い方よりもダメージが来る。

強いの部分は何となく理解できるが、とっても面白いって何なんだよ。

 

 

「でもまあ、妖精の相手をしてくれるなんて、貴方も変わってるわね」

「妖精といっても子供だからな。昔からそういうのには慣れてんだよ」

「あら、だったらこの先も貴方に任せておいても大丈夫そうね」

「俺は寺子屋の先生じゃないんだが?」

「いいじゃない。それに、まんざらでもないんでしょう?」

「それは……」

「じゃあ、私はこれで失礼するわ」

「おい」

 

 

振り返って去ろうとしている女性を呼び止める。

 

 

「何かしら?」

「俺は神無悠月。アンタは?」

「レティ・ホワイトロックよ。冬になったらまた逢いましょう、悠月」

 

 

そう言い残すとレティは森の奥へと消えていった。

 

 

『何だったんでしょうね』

「さあ?」

「レティさんはこのあたりに住んでいる妖怪で、よく私やチルノちゃんと遊んでくれるんです。でも、冬の間しか現れないんで少し寂しいです」

「冬の妖怪ならでは悩みだな。しかし、雪女か」

『この幻想郷、なんでもありですね』

「今に分かった事でもないけどな」

 

 

俺はそう言うと再びスペルカードと睨み合いを始めた。

一人何かに取り残された大ちゃんは困ったようにキョロキョロと周りを見渡している。

 

 

「大ちゃんもチルノたちと一緒に寝たら?」

「え、でもお邪魔じゃ……」

「今更一人や二人増えても一緒だ」

『ユウキもこう言ってますから、遠慮なくどうぞ』

「そ、そうですか。それでは……」

 

 

大ちゃんは照れながらもチルノの隣に寝転ぶと、しばらくして静かに寝息を立てた。

 

 

『ふふふ、やっぱりユウキは優しいですね』

「黙れ。あのまま一人にしてたら可哀想だと思っただけだ」

『今時男のツンデレは流行りませんよ?』

「スマホから月美のお気に入りを消していくが?」

『すみません。謝りますからそれだけは許して‼』

「問答無用、俺をからかった罰として音ゲーのデータを消してやる」

『やめてぇぇぇぇぇ‼‼‼‼‼』

 

 

月美の悲痛な叫びは、スマホの無機質な機械音により掻き消された。

家のパソコンにバックアップデータがあることは、この際黙っておくことにしよう。

 

 

 

 

 




悠月「今回は三人か」
空亡「それぞれの話を書こうとするとアイデアが思い浮かばなくて」
悠月「作者にしてはマシな意見だな」
空亡「ヒドイですね」
悠月「にしても、俺懐かれすぎだろ」
空亡「子供に懐かれやすい。ラノベでは鉄板ですね」
悠月「確か目標はオリジナルのラノベを書くことだっけ?」
空亡「まあ、この程度の文才で叶うとは思いませんけどね」
悠月「……叶うといいな、その夢」
空亡「ん? 何か言いましたか?」
悠月「何でもねえよ。それじゃあ、次回もよろしく頼むぜ」
空亡「ふふ、素直じゃないですね。でも、ありがとうございます」
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