神無 悠月side
「あ~寒い」
こたつに入っていた俺は外の景色を恨めしむように睨んだ。
幻想入りして早半年、この幻想郷にも冬の季節が到来していた。
紅葉彩る景色から白銀の雪に染まった山々を見ていると季節の移り変わりがよりよく実感できる。
しかし、寒さに弱い俺はこの景色をこたつから眺めることしか出来ない。
『ユウキ、今日も稽古は休みですか?』
「ああ、こんな寒い日に身体なんか動かしたくない」
『そんなこと言って、これでサボり五日目でですよ』
「このままだと一ヶ月はこの調子かもな。あはは……」
『笑い事じゃないですよ。まったく……』
スマホの中のこたつに入っている月美は呆れるように溜息を吐いた。
ここ最近、寒い日が続いているのでいつもの稽古はしばらくお休みしている。
だってさ、こんな日に稽古して汗流したらすごく寒いじゃん。それで風邪でも引いて戦闘できなかったら元の子もない。だから俺はこうして英気を養っている。
と、無理矢理な正論を述べてこうしてだらけているのである。
それを咎めるように開いた襖から冷たい風が流れてきた。
「あ~寒い」
『だったら閉めればいいじゃありませんか』
「俺は面倒事は嫌いなんだよ」
『ここでユウキの座右の銘は出さなくていいですから』
「まあそれ抜きにして、このこたつから一歩も出たくない」
『やれやれ。やっぱりユウキはユウキですね』
「どういう意味だよ?」
『根っからのグータラって意味ですよー』
月美は呆れるように言い放つとこたつの中へと潜っていった。
俺はそれを見送るとこたつに突っ伏した。
「ったく、色んな意味で素直な奴だな」
「逆に貴方は素直じゃないわよね」
「ああ、そうだな……」
俺が顔を上げるとそこにはこたつに入ってニコニコ笑っている紫が居た。
またお得意のスキマで現れたのだろう。後ろにスキマの赤いリボンが見えた。
俺は興味なさげな目で彼女を見つめると溜息を吐いた。
「紫、出てくるなら一言言ってくれ」
「あら、それだったら驚かせ甲斐が無いじゃない」
「いい趣味してるな。まあ、その程度で驚くほど子供じゃないけどな」
「釣れないわね。昔は驚いて涙目になって怒ってくれたのに」
「昔は昔、今は今。あんまり思い出したくないからやめてくれ」
「そうね。あの頃から貴方も随分変わったものね」
「余計な世話だよ……」
俺は小さく溜息を吐くと俺はこたつから出た。
「どうしたのかしら?」
「まだまだ長話そうな雰囲気なんでな、菓子と茶でも持ってくるよ」
「こたつから一歩も出たくないって言ってなかったかしら?」
「さあな。俺はただ、あまり会うことがないから今のウチの話しておきたいだけだよ」
「うふふ。素直じゃないわね」
「うるさい」
楽しそうに笑う紫を尻目に俺は逃げるように部屋を出て行った。
まったく。すぐ人の事をいじったりするから、だから紫は苦手だ。
少年祈祷中
「お~い、持ってきた……ぞ?」
襖を開けた俺は呆気にとられた。
こたつに入っている紫の横に見たことも無い女性が座っていた。
金髪のショートボブに金色の瞳、漢服のような長袖のロングスカートに長く青い前掛けの服が被せられ、頭には角のような二つの尖った帽子を被っており、後ろには九本の触り心地の良さそうな尻尾が生えている礼儀正しそうな女性だ。
紫は俺の手に持った茶菓子を見ると嬉しそうに笑う。
「あら、美味しそうね」
「紫様、それよりも私のことについて話さなくていいんですか」
「そうだ紫、これよりもそこの綺麗な女性について説明しろ」
「へえ……綺麗だそうよ、良かったわね藍」
「か、からかわないでください///」
悪戯っぽい笑みを浮かべた紫に言われ、藍と呼ばれたその女性は頬を紅く染めながら頭を下げた。なんだか俺や咲妃と似たような雰囲気がする。
話し方を見る限り紫の従者、いや妖怪だから式神だと予想する。
「とりあえず、説明を頼む」
「この子は八雲 藍、九尾の狐で私の可愛い式神よ」
「可愛いは余計ですよ。……ゴホン、改めて八雲 藍です」
「神無 悠月だ。名高い九尾の狐にお目に掛かれるとは、やっぱり幻想郷は面白いな」
「恐縮です。こちらこそ、紫様がいつもご迷惑を掛けて……」
「慣れたことだし、気にすんな。それよりも、俺程度に敬語はやめてくれないか?」
「しかし、仮にも貴方は紫様のご友人、そんな失礼なマネは」
「お堅いな。同じ苦労人同士、少しは距離詰めようぜ」
「……そうだな。なら、改めてよろしく悠月」
「こちらこそ、藍」
「二人共、私の事を忘れてないかしら?」
俺と藍が良い感じで仲を深めていると横から紫が不機嫌そうに呟いた。視線を向けると彼女は見るからに不機嫌そうに茶菓子を頬張っている。
俺と藍は互いに顔を合わせると深い溜息を吐いた。
「藍、お前よく紫の式神になったな」
「あれでも昔は尊敬してやまなかったのだが、どうしてこうなってしまったのだろうか」
「それは誰にも分からないモノなのさ、多分」
「紫様からも聞いていたが、君も大変な主を持っていたとか」
「俺もアンタと同じくらいの苦労をしてるからな。同情ぐらいはするさ」
「どこの世界でも主に苦労させられるという事か」
「今度人里の居酒屋にでも飲みに行こうぜ、咲妃も誘ってさ」
「それもいいな。では今度予定があれば言ってくれ」
「ああ、分かった」
「今日は、私は空気なのかしらね」
再び視線を向けると拗ねて寝転んでいる紫が居た。
さっきから相手にされてないのが気に食わないらしく、さっきから子供の様に拗ねている。
「ごめんごめん。同類に出会うとつい嬉しくて」
「私こそすみません。紫様を放って話し込んでしまい」
「いいのよ。それよりも、さっきから仲が良いわよね」
「さっきも言っただろ。同類に出会うと嬉しいんだよ」
「そう、でも。藍の方はそれとは違う感じに思えたけど、どうなのかしら?」
さっきの仕返しと言わんばかりの悪戯な笑みを浮かべながら隣にいる藍を見る。
藍は困ったように顔を俯かせた。なぜかそれとは反対に後ろの九本の尻尾は揺れている。
なんだか紫がお気に入りのおもちゃを盗られて拗ねている子供のようにしか見えない。
しかし、藍の尻尾、何だか触り心地の良さそうに見える。そう考えていると無意識に藍の尻尾を撫でていた。
「お、おい、悠月///」
「あ、すまん。つい」
「そういえば、貴方って無意識に誰にでも撫でてわね」
「癖みたいなもんだからな、数年経ってもこれだけは抜けねえな」
「そうね。でも、貴方が撫でてくれるとなんでか気持ちよくなるのよね」
「あ、それよく言われたけど、なんでだろうな」
「さあ? なぜかしらね………………やっぱり、鈍感なのね」
「紫、何か言ったか?」
「いえ、何も言ってませんわよ?」
紫は扇子で口元を隠すとわざとらしく笑った。
「あ、あの、できればやめてくれないか?」
「あ、うん。すまんな」
藍の尻尾から手を放すとホッとする彼女とは裏腹に、後ろの尻尾は力なく垂れ下がった。
コイツも月美と同じで感情が読みやすくて可愛いなと思った。
「さて、色々と落ち着いたことだし、のんびりと寛ぎましょうか」
「そうだったな。藍も一緒に食べるだろ?」
「紫様とユウキの誘いなら、断らない理由はないな」
「そうと決まれば、しばらくはのんびり過せるな」
「貴方、そればっかりね」
「いいだろ。非日常な生活を送っていた分、たまには暇な日常を満喫したいんだよ」
「困った人ね、藍もそう思うでしょ?」
「え、ええ」
「まあそんなことは置いといて、早く食べましょうか」
紫は何事も無かったように茶菓子を頬張った。
燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや。俺の気持ちなんて誰も分からないさ
空亡「いや~今日も一日充実できました~」
悠月「そういや、そっちの方はGW 最終日だったな」
空亡「まあ、一日中PC向かって作業していただけですけどね」
悠月「メタい話、今どこまで書き終わったんだ?」
空亡「ようやく次の異変の宴会回を書くところですよ」
悠月「お前ってさ、一話できるあたり何時間のペースで書いてんだよ」
空亡「トータル6~8時間ですね。それが何か?」
悠月「いや、身体には気を付けろよ。マジで」
空亡「???」