東方絆紡録   作:空亡之尊

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役者たち想い

神無 悠月side

 

 

「……ありえないだろ」

 

 

とある昼下がり、鳥居に座った俺は自分のスマホの画面を見て驚愕していた。

事の発端は、いつまでたっても月美が出てこないのを心配してスマホ内のあらゆるところを探していた時だった。

いくつかのアプリを開いていったときに、誤ってメールや通話の画面も開いてしまった。幻想郷に来てからまったく使用していなかったので軽くその存在を忘れていた。

しかし、Wi-Fiどころか電波すら飛んでないので無用の長物だと思っていたのだが。

 

 

「……なんで電波が三本も立ってんだよ」

 

 

スマホの左上にはきっちりと電波が三本も立っていた。

おかしい。ここは江戸時代付近で文化が止まっているはず、電波が飛んでいるはずがない。

その代りに巫女や魔女が飛びまわってるけどな、あはは…………って、現実逃避をしてる場合じゃないな。

とりあえず、状況を整理する為にももう一度月美を探し出すことにした。

 

 

「たっく、一体どこにいるんだよ月美」

「あら、イラついてるわね」

 

 

やみくもにスマホ内を探していると隣から俺をバカにするような声が聞こえた。

睨むように視線を向けると、そこには咲妃が俺を見下ろすように立っていた。

 

 

「何の用だよ。今の俺は少し忙しいんだが?」

「いつも日向ぼっこして昼寝している貴方が忙しいなんて。今日は雨でも降るのかしら」

「弄りに来たのなら後にしてくれ、今は月美を探すのに忙しい……」

「それじゃあ…………ゴホン、貴方が探してる者はこちらですか?」

 

 

咲妃が懐からハンカチを取り出すと手に被せ、それをどかすと蒼色のスマホが出てきた。

彼女は元々手品が得意で、よく部室でもいくつかの手品を見せてくれた。

俺が驚いたように拍手すると彼女は満足そうにふっと笑いそのスマホを俺に差し出した。

そこには俺が探していた月美が紅茶を飲みながらくつろいでいた。

 

 

『あ、ユウキ』

「お前、何やってんだよ」

『実は今朝、気が付いたら奇妙なネットワークが設立されていたので試しに潜ってみたのです。それで辿り着いたのが咲妃ちゃんのスマホの中だったのですよ』

「じゃあ、スマホ間を行き来できるようになったのか。電波もないこの幻想郷で」

『最初は私も驚きましたが、現に私は咲妃ちゃんのスマホに居ます。それは事実です』

「そうね。原因がどうであれ、こうして現実に起きている。否定のしようがないわ」

「やっぱり、俺のが壊れていたわけではなさそうだな」

『どういう意味ですか?』

「その様子だと、月美ちゃんが見つけたネットワークに心当たりがあるみたいね」

「さあな。関係が有るか無いかは俺にも分からないけどな」

 

 

月美を俺のスマホに戻すと、俺はさっき気付いたことを咲妃と月美に話した。

咲妃は顎に手を当てて考え込んでいるが、一方の月美は三本の電波をじっと見つめていた。

色々と考えているのか、それともただ物珍しいので見つめているだけなのだろうか。

 

 

『可笑しいです』

「そうだよな。Wi-Fiも電波も無いはずなのに、不思議なもんだな」

『いえ、そう意味ではなくて。調べてみたら奇妙なWi-Fiが設定されていたんです』

「Wi-Fiって、意外に現実的なのね。そこはオカルト的なモノが絡んでるのかと思ったわ」

「まあ、幻想郷だしそう考えるのが当たり前だな。で、そのWi-Fiがどうかしたのか?」

『それが強制的に設定されていて、他のに繋げようとしてもブロックされるんですよ』

「何か問題でもあるのか?」

『それ自体には問題はありません。ただ……』

 

 

月美は徐にメール画面を開くと、そこには一件の着信履歴が表示されていた。

そこに書かれていたアドレスには見覚えがあり、この不可解な出来事の張本人からだ。

彼女も俺の心情を察したのか、何も言わずにそのメールを開いた。

件名は『余計なお世話』、そこにはたった二文。

 

 

「『連絡手段ぐらいは確保してあげるよ。あと絆系のスペカは使えるようにした』か」

「まさに件名の通りね。でも、通信手段ができたのは素直に喜んでいいと思うわよ」

『たしかにそれは私も嬉しいですが……ユウキ、やっぱりこれは』

「ああ、今回の一件、アイツが絡んでいるのには間違いなさそうだな」

「しかし、私たちを幻想郷に集めて一体何をするつもりかしらね」

『わかりません。あの人の考えることは部長さん並に難解ですから』

「「同感だな/同感ね」」

 

 

俺と咲妃は首を縦に振った。

部長と美命の思考はある意味常人には到達できないレベルだからな、解らないし解りたくない。過去に一度手を組んだときなんか………………思い出したくない。

だが、なぜか物凄く嫌な予感がする。それは今までのよりももっと残酷な予感が。

そんな胸騒ぎを押えると、俺は誤魔化すようにいつもの調子で話を続ける。

 

 

「ただ一つ言えることは、俺の平和な日常が訪れるのは当分先になりそうだという事だ」

『「やっぱりそれなんですね/やっぱりそれなのね」』

「それ以外に何があるんだよ」

「そうね。その方がユウキらしいわね。私が好きになるのも分かるわ」

『ユウキはユウキですからね。でも、そういう所も私は好きです』

 

 

二人は何食わぬ顔でそう言った。

俺は溜息を吐くと、呆れたように呟いた。

 

 

「二人共…………よく平気でそんな恥ずかしい台詞を言えるな」

『「ユウキには言われたくありません‼‼‼‼‼」』

「え?」

 

 

突然、二人に怒られた俺はただ唖然としていた。

その後、なぜか一時間女心について説教された……………………解せぬ。

 

 

 

 

 

明星美羽side

 

 

「相変わらず楽しそうね……」

 

 

私は開いたハザマからユウキたちの会話を盗聴盗撮していた。

ユウキは相変わらず女心についての興味が皆無なようで、状況も分からずに正座させられてサキと月美の説教を受けている。

いくら恋が理解できたとしても、やっぱりそちらの知識についてはまだまだのようね。

そんな様子を見ながら紅茶を飲んでいると、後ろでマリィが微笑みを浮かべていた。

 

 

「なによ、その聖母のようなムカつく微笑みは」

「いえ、美羽ちゃんもあちら側に行きたそうな顔をしていたから、つい」

「別に私は羨ましいとか楽しそうとか思って無いわよ」

「あらあら、美羽ちゃんもユウキ君と同じくらい素直じゃありませんね」

「うるさいわね。紅茶、おかわり」

「畏まりました~」

 

 

マリィはそう言うと空のティーカップに紅茶を注ぎ始めた。

普段はドジばっかりするくせに、本気の時とどうでもいい時では厄介な奴だわ。

美命様のメイドを務めている凄さを改めて感じたわ。

 

 

「それにしても、幻想郷って平和ですね」

「そうね。魑魅魍魎が住み着いているからもっと荒れてると思ったわ」

 

 

ユウキを幻想入りさせて早半年、あの紅霧異変から一向に動きはない。

というよりも、基本的に幻想郷では争い事が起きない。殆どの雑魚妖怪は紅白巫女が退治してるからか、それに逆らおうとする奴は数少ない。

あの異変だって、吸血鬼のお嬢さんの気紛れで起こされたモノ。本来ならそんな事態が起こることはあり得ないのだろう。しかし………………。

 

 

「彼が幻想郷に来て僅か一ヶ月で初の異変、貴女はどう思う?」

「スカーレット嬢の気紛れはどうであれ、タイミングが良過ぎますね」

「それにあの霧には吸血鬼の妹さんの狂気も混じっていた。それも意図的にね」

「そしてユウキ君は異変解決へと動き、そして力を取り戻した。完璧な筋書きですね」

「そう、何から何まで完璧すぎるのよね、このシナリオは」

 

 

ティーカップをテーブルに置くと、私は何もない虚空を恨めしそうに睨んだ。

困ってる少女を助ける為に動き、命を落としてまでも仲間を守ろうとし、死の淵から生還してかつての力を取り戻し、そして最後にはみんなで大団円。

今までの事を振り返り、私は胸元にぶら下げた鍵が二つ付いたペンダントを握りしめた。

 

 

「落ち着いて、美羽ちゃん」

「心配しなくても落ち着いてるわよ」

「そうですか。それなら、“剣”を展開しようとするのはやめて」

「ちっ……屈辱的だわ、こんな舞台で踊らされるなんて」

「演劇部のお姫様には役不足な舞台ですね」

「でも、それ以上に怒りを覚えるのは……」

「大好きなユウキ君が利用されている事、ですか?」

 

 

珍しく真剣な顔でそう尋ねるマリィから私は目を逸らした。

誰にでも思いつく在り来たりなシナリオ。その中心で踊らされているのは私の愛する人。

あの人はお人好しなうえに優しすぎる。今までもその性格の所為で何度も命を落としかけた。その原因にもなった私が偉そうに言えたことでもないのだけどね。

そんな彼を利用することに対して、これ以上ない怒りが私の感情を支配しようとする。

マリィもそれを察したのね。私が無意識に“剣”を展開しようとしたことに気付いていた。

彼女の死角だったはずなのに…………まったく、本当に喰えないメイドだわ。

 

 

「……それよりも、楓恋の方はどうなの?」

「楓恋ちゃんなら仕事は終わったとのことで美命様のところに」

「うちのご主人様も負けず劣らずモテモテね」

「できれば私も美命様のところに帰りたいですぅ」

「リア充爆ぜろ。そして修羅場に発展して戦争始めろ」

「うぅ、美羽ちゃん怖いですぅ」

 

 

さっきまでの真剣な雰囲気とは全く変わり、また弱気なマリィへと戻ってしまった。

でも、この方がいつもの調子でいられるから気が楽ね。それに弄れるの楽しいわ。

私は再び虚空を見つめると、今度は口元をニヤッとさせながら呟く。

 

 

「誰だか知らないけど、アンタのシナリオ、この私がぶち壊してあげるわ」

 

 

 

 

 




空亡「さあ、いよいよ次回は妖々夢に突入ですよ‼」
悠月「いつになくやる気だな」
月美「聞いたところ今回は最終回並の展開になってしまったとか」
悠月「マジかよ……って、なんでお前まで居るんだよ」
月美「最近出番が少ないので、どうせならこっちの方で目立とうかなと思いまして」
空亡「それに、男二人が絡んでも何も面白くありませんからね」
悠月「なるほど、殺風景な部屋に花を飾るのと同じか」
空亡「その通りです」
月美「……なんでしょう。自分の存在意義はよくわかりません」
空亡「大丈夫です。元からそのポジションですから」
月美「ヒドイです‼」
悠月「まあまあ、今回は月美が暴走しそうだからここまでだ」
空亡「次回は……ガハッ‼」
月美「次回は恒例にしようかと考えている予告編です。お楽しみに‼」
悠月「作者ー大丈夫か?」
空亡「大丈夫じゃない、問題あり」
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