神無 悠月side
「……よくやく辿り着いたぜ」
階段を登り切った俺は小さく溜息を吐いた。
目の前に広がっていたのは夢で見た光景と同じ、美しい桜並木と奥へと続く石畳の道だ。
先に行っていた三人はそれぞれ違う反応をしていたが、この光景に見惚れていた。しかしいつもなら心踊らされる風景なのに、あの夢の所為であまりいい印象を抱けない。
「おー綺麗だな」
「本当なら地上でもこの景色を拝むことができますのに」
「はやいとこ犯人をとっちめてゆっくりしたいわね。……ユウキ?」
「……ああ、俺もそうしたいよ」
『ユウキ、あまり無理は禁物ですよ』
「わかってる。けど、まずは約束を果たさなくちゃな」
俺は桜を眺める三人を通り過ぎると道に立っている人物へと視線を向ける。
それは先ほどまで階段で戦っていた魂魄妖夢の凛々しい姿だった。
「お待ちしてましたよ、悠月さん」
「こっちこそ、仲間と話してて遅くなってすまんな」
「いいえ、それよりもさきほどより顔色が優れていませんが?」
「ふ、桜が美しすぎて酔いしれてるだけだ。気にすんな」
「そうですか。なら、今一度……‼」
妖夢はそう言って携えた白楼剣と楼観剣を鞘から抜いた。
俺は月美を鞘から抜刀すると後ろの三人の前に突き出す。
「さて、ここからは俺と彼女の遊戯だ。お前らは先に行け」
「何言ってんだよ。ここまで出番が無かったんだ、どうせならここで」
「わかった。先に行ってるわね。咲夜はそいつを運んで」
「承知。ほら、大人しくしなさい」
「あー私にも戦わせろー‼」
「霊夢、後は頼んだ」
「そっちこそ、終わったらちゃんと来なさいよ」
嫌がる魔理沙を連れながら霊夢と咲夜は妖夢の頭の上を通り過ぎていく。
妖夢は刀を構えたままでそれを追う気配はない。あるのは俺と戦う意志のみだ。
「いいのか? 先に行かせて」
「構いません。あの程度で倒されるほどお嬢様は弱くありません」
「侮るなよ。なんたって『アイツ等』だからな」
「貴方が言うと妙に説得力がある気がします。何故でしょうか」
「さあな、それより早く始めるぜ」
俺は口元をニヤッとさせながら笑って刀を構える。
彼女は一度目を閉じて一呼吸置くと意志の籠った瞳を俺に向け、そして走った。
「いきます‼ 獄界剣『二百由旬の一閃』」
傍らにいた魂魄が彼女から離れると俺の周りを飛びながら大きめの弾幕を放ってきた。弾幕と彼女が重なった時、弾幕が幾分割にも斬り裂かれてその先から彼女は斬りかかってきた。弾幕を払いのけながら彼女の斬撃を受け流すと今度は横一列に並んだ弾幕を斬り裂く。ばら撒かれた弾幕と斬撃の嵐の中を駆け抜けながら刀を構えて跳ぶ。
「……弥生『三華』‼
弾幕の合間を潜り抜けながら一つ一つそれらを切り刻む。全ての弾幕が消えた先には二本の刀を鞘に納めて構えている妖夢の姿があった。
「……畜趣剣『無為無策の冥罰』」
俺が着地すると同時に居合切りをしながら真横を通り抜ける。彼女が通った後には6本の剣閃が走り、そこから弾幕が前後に大きく広がりながら放たれた。弾幕を避けながら彼女の下へと走るがすでに居合切りの体勢になっていた。俺は相打ち覚悟で刀を鞘に納める。
「……睦月『一輝』」
彼女が居合切りしてくるのに合わせて勢い良く鞘から抜刀、目にも止まらぬ速さで彼女の刀を弾き体勢を崩したところへ横薙ぎの攻撃を放つ。寸前で防御されたが彼女は石畳の道を滑りながら数m先へと飛ばされた。
「まだまだ‼ 人界剣『悟入幻想』」
彼女は刀で自分の背後を斬り裂くと俺に向かってきた。斬り裂かれた後からはスピードはないが大量の弾幕が迫ってきている。彼女は背後から弾幕に合わせて斬撃を繰り返しながら俺を追い詰めていく。避ければ弾幕、向かい撃てば斬撃、これはこれで相手に与えるプレッシャーは生半可なモノじゃない。俺は柄頭が前に来るように持ち変える。
「……霜月『破界』」
柄を捻らせながら彼女の防御した刀に突き立てるとその衝撃によって先ほどよりも遠くに吹き飛ばされた。これは相手の防御力を無視して衝撃だけを身体に伝える鎧通しの技。防御を主体とした二刀流にはもってこいの技だ。
砂埃の向こうには未だ戦う意思の潰えない彼女の姿がある。
「はあ……はあ……お嬢様の為に……倒れるわけには……」
「見事な忠誠心だな。だが、ホントにそう思ってるのかよ」
「どういう意味……ですか……?」
「お前は心のどこかでそのお嬢様を止めてほしんじゃないのか?」
「なんで……そんなこと……」
「だが、従者である自分が止めれるわけがない。だから部外者に望みを託すことにした」
「何を……勝手な事を……」
「ただ一つだけ言わせてもらう」
「……?」
「従者は主を思って行動しろ、もしも主が道を踏み外したら、その時はぶん殴っててでも目を覚まさせろ。従者は従順な犬じゃない、意志を持った人間なんだからな」
「……‼」
「さて、そろそろ終わらせるぞ」
「はい……‼」
彼女はふらつきながらも最後の一撃を繰り出そうと構える。その瞳にはさっきまであった迷いがなくなっている。多分、今から来るのは彼女の中でも最強の技、心して迎え撃つ。
「いざ、参ります‼ 天上剣『天人の五衰』」
彼女は虚空を無造作に斬り裂くと幾つもの剣閃が走りそれが色鮮やかな弾幕として放射される。一つ一つの弾幕の動きを見ながら避けていくと彼女のすぐ近くと辿り着いた。その時、彼女の影になった表情がにこりと笑った。
「……‼」
「かかりましたね‼ 六道剣『一念無量劫』」
彼女は俺を射程圏内捉えた同時に周りを八芒星に斬り裂いた。そして例の如く弾幕が襲い掛かってるが俺が居るのは八芒星のど真ん中、つまり避ける道が無い。
その一瞬の出来事には普通の人間の集中力はまず太もなくなり被弾してしまうだろう。しかし、俺の長年培ってきた直感はいつも以上に俺の集中力を掻きたてた。時間がゆっくりと進むような感覚を感じながら俺は鞘に手を添える。
「なに……‼」
「……水無月『六花』」
刀と鞘で迫り来る弾幕を叩き、弾き、払い、斬り、薙ぎ、などの攻撃を繰り返しながら突き進む。弾幕が途切れたその瞬間、俺は地面を蹴って一気に彼女との間合いを詰める。
「――夢現一刀流奥義、『想月』」
彼女を斬り抜ける瞬間に彼女の五体を攻め更に二振りの刀を手元から弾いた。俺は彼女の後ろで刀を鞘に納めると、一拍置いて白楼剣と楼観剣が地面に突き刺さり彼女は倒れた。
戦闘が終わると冥界は最初の静けさを取り戻した。
「さて、早く霊夢のところに行くか」
『そうですね。何だかあれから嫌な予感がしてますし』
俺は道の先を見つめて歩き出そうとするが、一瞬後ろにいる彼女に目を向ける。
そこにはボロボロでありながらも満足げな表情で眠りに着いている一人の剣士がいた。
「後は任せろ。絶対にオマエの主は救ってやる」
俺は眠っている彼女にそう言い残すと走り出す。
この先に待ち構えている死の恐怖を知ってお尚、俺は突き進む。
空亡「う~ん、実際に見てみると短いですね」
美羽「なんなのよ、これ」
空亡「どうかしましたか?」
美羽「駄作者、アンタなんで弾幕の描写は今一のくせに剣術の方はまともなのよ」
空亡「弾幕の方は原作が2Dなので3Dの表現が難しいんですよ」
美羽「だからニコ動や他の作者のを参考にしてるのね」
空亡「それに、剣術なら参考になる小説もいくつか持ってますからね」
美羽「でもまあ、確かに魅せてもらったわよアンタのその無駄な才能」
空亡「ああ、いや、実を言うと今回はあんまり納得できていない出来だったというか……」
美羽「え?」
空亡「てなわけで、今後のユウキと僕の成長に期待しつつ次回もよろしくお願いします‼」