東方絆紡録   作:空亡之尊

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春麗に舞え、始まりと終わりの桜よ 前編

明星 美羽side

 

 

「始まってしまったわね」

 

 

私は開花を始めた西行妖を睨みつけるように見つめていた。

あのスキマ妖怪と戦闘していたけど何かに気付いたようにふっと消えてしまった。もしかしたらと思って先を急いでみてみたらこの有様だった。

 

 

「美羽、これは……」

「お察しの通り、死の桜こと西行妖が目醒め始めたのよ」

「こんな状況でいう事ではありませんが、綺麗ですね」

「そうね。でも気を付けなさい、でないと殺されるわよ」

 

 

私は釘をさすように咲妃にそう言い放った。

西行妖、いやそこに封印されている者の能力である『死を操る程度の能力』は危険だ。相手に一切の抵抗などさせずに絶命させる恐ろしい能力、絶命させる方法は定かではないがユウキの夢を見る限り自殺に近い行動をさせるものだと予想はできる。

 

 

「“刀”と“剣”を持っている私たちは最も危険ね」

「それ言うならユウキだって危険なはずでは?」

「あっちは大丈夫よ。月美の意識がある限りそれに抵抗できるから」

「でも、そう悠長な事はできませんね」

「当たり前よ。とりあえず、先を……って」

「どうかしたのですか?……あ」

 

 

私たちが視線を向けた先には見たことのある二人の少女が立っていた。

それはあの魔法使いとメイド長だった。二人はフラフラになりながら西行妖の方へと歩いて行こうとしていた。どうやら西行妖が開花するときの力でここまで吹き飛ばされてきたようだ。

 

 

「ったく、だらしないわね」

「あ? 誰だよこんな時に……って、咲妃と……誰?」

「失礼だけどどなた?」

「明星美羽よ、ユウキを幻想入りさせた張本人とでも言っておこうかしら」

「な、お前が‼」

「待ちなさい魔理沙…………そんな貴女がこんな所に何の用なの?」

「聞いてた通り冷静ね。流石、咲妃の弟子」

「お世辞はいいわ。早く言いなさい」

「……理由は簡単、ユウキの手助けよ」

「どうして貴女が?」

「彼に死んでもらうと困るから、それだけじゃダメかしら?」

「素直じゃないわね。大事な人が困ってるから助けに来ただけでいいのに」

「咲妃、貴女は少し黙っていなさい」

「……わかったわ。でも、いくつか教えてちょうだい」

「今起こっているこの現象についてかしら?」

「やっぱり何か知っているようね」

「教えてあげてもいいけど、まずは目の前の“塵”を何とかしないと」

「「え?」」

 

 

私の視線の先には見覚えのある“ソレ”が行く手を阻んでいた。

黒い影のような塊に紅い瞳、手にはどす黒い刃が握られている。忘れるはずがない、目の前にいるのは“堕ち神”の群れだ。それも目測で百体ほど確認できる。

 

 

「堕ち神、まさかここで出遭うなんてね」

「おかしいと思っていたけど、まさかこういう事だったとはね」

「何なんだよ、こいつら……」

「妹様の分身の時と似ている……?」

「構えなさい。油断してると斬り殺されて最後にはあの世に逝っちゃうわよ」

「ああもう、今日は散々だぜ」

「こういう時に霊夢はどこをほっつき歩いているのかしらね」

「邪魔する奴らは全員殺す。例え誰だろうと」

 

 

それぞれ自分の武器を構えると立ちはだかる堕ち神の集団へと突っ込んだ。

ユウキ、お願いだから殺されないで……‼

 

 

 

 

 

博麗 霊夢side

 

 

「ったく、一体どうなってんのよ」

 

 

私は襲い掛かる黒い影を蹴散らしながら愚痴をこぼしていた。

幽々子を倒したと思ったら桜吹雪みたいな弾幕に吹き飛ばされて気が付いたら桜が咲く雑木林の中に倒れていた。周りに魔理沙と咲夜が居ないという事はどこかではぐれてしまったからもしれない。

 

雑木林を抜けようとして飛ぼうとした時、突然斬りかかられたが持ち前の勘でなんとか回避することができた。そこにいたのはユウキから聞いていた堕ち神という妖の群れだった。

次々と襲い掛かってくる堕ち神を倒していくが、さっきの戦闘でもう体力が底を尽きそうだった。その所為で空を飛ぶ体力ももう残ってない。

 

でも私は歩みを止めることができなかった。多分“アイツ”はあの時と同じで一人で戦っている。また誰かの為に戦って、傷付いて、自分の事なんて後回しに考えているに違いない。なら、誰かが一緒に戦って少しでも無茶なんてさせないようにしないと…………。

 

そう思いながら歩いていると木の陰からまた堕ち神の集団が現れた。

すぐに御札を構えようとするがバランスを崩してその場に膝をついてしまった。立ち上がろうとしても私の身体はいう事を利かなかった。

 

 

「ああ、今日はツイてないわね」

 

 

木に寄り掛かって自分の最後を覚悟した。

堕ち神は無防備な私を見て一気に跳んで襲い掛かってくる。しかし、それは一筋の剣閃によって全て斬り裂かれ空中で塵となって空の彼方へと消えていった。

剣撰が放たれた方を見るとそこにはユウキと戦っていた白髪の少女と見覚えのない桃色の髪の女性が居た。

 

 

「危機一髪だったわね~」

「大丈夫ですか、どこかお怪我は」

「心配しなくてもいいわよ。そよりもアンタたちは」

「紹介が遅れました。私は魂魄 妖夢、こちらは双花椿希さんです」

「どうも~ユウキ先輩がお世話になってます~」

「アンタも咲妃と同じ元の世界のユウキの仲間ね」

「そうです~。それより先輩は?」

「多分あの西行妖っていう桜のところよ」

「もしや幽々子様もあの場所に‼」

「落ち着いて妖夢ちゃん、それに霊夢ちゃんもまともに動けなくなるわよ」

「お見通しみたいね」

「でもここにいつまでもいるのは危険だから、先を急ぎましょうか」

「私が道を開きますので心春さんは霊夢さんを」

「わかったわ。それじゃあ、少し我慢してね」

「頼むわよ」

 

 

私は椿希に肩を貸してもらうと妖夢の道案内で西行妖へと向かった。

ユウキ、お願いだから無茶だけはしないでよ……‼

 

 

 

 

 

神無 悠月side

 

 

「…………………………」

 

 

俺は幽々子を安全な場所へ移すと月美を構えて“彼女”と向き合う。

今でも月美を持っているだけで自分の喉元を掻っ切りそうな感じがして気が狂いそうになるのを無理矢理押さえているが、月美のお蔭でなんとか自我を保っていられる状態だ。

 

 

『ユウキ、無理しないで下さい』

「わかってる。だが、俺がやらねえとみんなが」

『確かに、今の状態ではここを離れるのはこんなんです。けど……‼』

「この場でアイツとまともに立ち向かえるのは俺だけだ。仕方ねえだろ」

『分かりました』

 

 

月美を何とか説得すると俺は改めて“彼女”と向かい合う。

“彼女”はいまだ俺を見つめたまま動こうとしない。まるでこちら側が動くことを待っているようにも見えるが、それ以前に本当に“そこにいるのか”と考えてしまうほどその存在は薄く、とても不気味思えた。

 

 

『まるで亡霊ですね』

「亡霊だろうと何だろうと、相手が動く前に仕留めるぞ」

『そうですね。それにユウキならすぐに対処できそうな気がしますし』

「言ってくれるな。…………じゃあ、行くぜ‼」

『はい‼』

 

 

俺はその場から思い切り踏み込むと“彼女”との距離を一気に詰めた。それでも“彼女”は眉ひとつ動かさず俺の事を光のない瞳で見つめている。不気味な悪寒が走るがそれを振り払うように抜刀すると“彼女”の身体を袈裟に斬り裂く。

しかし、それにはいつもの手ごたえが無かった。いや、それ以前に何かを斬ったという感覚さえなかった。ふと斬った先を見たらそこには彼女の姿は無かった。

 

 

「な……に……」

「――そんなので、私は斬れないわよ」

 

 

それは俺の背後から聞こえた。人間の体温など感じさせない冷たい声、だがそれと同時に落ち着くような優しい感じがした。

 

 

『ユウキ‼』

「……‼」

 

 

俺は無意識に刃を喉元へ持っていこうとしていた。

咄嗟に我に帰ると素早く刀を持ち変えて背後にいる“彼女”に斬りつける。“彼女”は笑うと背景に溶け込むように消え、その身体を斬りつけることなく虚空を裂いた。

“彼女”が西行妖の前に現れると小太刀を突きだして西行妖から桜吹雪の弾幕を放った。俺は後ろに跳んで距離を置いくと舌打ちをした。

 

 

「これは面倒なことになったな」

『さっきまでの霊夢さんたちの気持ちがよく分かったような気がします』

「だったら当たるまで攻撃するだけだ‼」

「――そうれはどうかしら?」

 

 

俺が再び踏み込もうと足を地面につけた瞬間、複数の図太い根が地面を割って這い出てきた。“彼女”が小太刀をこちらに向けると根が指示に従うように俺に向かって襲い掛かる。

迫りくる根を斬り落として地面からは新たな根が槍のように突き出してきてキリがない。

 

 

『これ全部西行妖の根ですかね?』

「んなこと言われなくても気付いてるよ」

『まさかあの西行妖、意志を持ってるの……』

「別におかしいことは無いだろ。今までだってそんな奴見てきたんだからな」

 

 

俺は根を斬り払いながらいまだ咲き続ける西行妖を睨む。

その時、地面から伸びた根が俺の足に巻き付き身動きが取れなくなってしまい、槍のように鋭い根が俺の身体を突き刺すように襲い掛かる。

一瞬死を覚悟して目を閉じるが、痛みや突き刺されたような感覚は無かった。ゆっくりと目を開けるとそこには見慣れた友人の姿があった。

 

 

「紫……‼」

「ユウキ、大丈夫かしら」

 

 

紫は目の前にけっはいを這って襲い掛かる根を食い止めていた。しかし、根はそれを破ろうと何度も突き刺しと叩き付けを繰り返していた。

 

 

「アンタこそ、大丈夫かよ」

「西行妖の力がこの程度なら何とか食い止めることくらいはできるわ」

「……なら安心だな」

『ユウキ、今のうちに幽々子さんをこちら側へ』

「そうだな。…………紫、後で話は聞かせてもらうぞ」

「ええ、こうなってしまった場合、もう隠し事をする必要もないわね」

 

 

そう言ったゆかりの表情には少しだけ影が見えた。それはいつも胡散臭そうに笑っている時とは違い、今までよりも真剣な表情そのものだった。

 

俺は木の影に隠れさせていた幽々子を抱えながら西行妖から離れ、紫が施した結界の中へと寝かせた。改めてみると幽々子の身体が徐々に薄れていっているように見える。

 

 

「紫、話してもらおうか」

「……わかったわ」

 

 

そして彼女は語る。

一人の娘が背負った死よりも苦しい運命の物語を………………。

 

 

 

 

 




空亡「復活した西行妖、ばらばらとなった主人公たち、堕ち神の集団、何か熱くなってきました」
美羽「あれ、これってもう最終回?」
空亡「いやいや、まだまだこれからですよ‼」
美羽「ああ、私たちの物語はここからだ、って言うやつ?」
空亡「縁起でもないこと言わないで下さいよ」
美羽「にしても、うまい具合にばらけたわね」
空亡「そうですね。組み合わせの方はすこし悩みましたけど」
美羽「しかし、堕ち神の群れを出すって唐突ね」
空亡「本当は西行妖に殺された者達の亡霊を出そうと思ったのですが……」
美羽「どうしたの?」
空亡「月美さんに泣きながら『それだけは止めてください‼』と懇願されまして……」
美羽「そういえば、あの子って幽霊が苦手だったわね」
空亡「まあ、こっちの方がオリジナル要素があって面白いじゃありませんか」
美羽「そうね」
空亡「そういうことで、次回もお楽しみにしていてください」
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