東方絆紡録   作:空亡之尊

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終わらぬ宴会の誘い

神無 悠月side

 

 

「えーと、次の食材は……」

 

 

俺は手元に持ったスマホをじっと見つめた。

反対側の手には袋いっぱいに詰め込んだ食材を持ち抱えている。今回はさすがの俺でも少し重いかなと思うほどの量だが、メモを見る限りこれでもまだ半分のようだ。

何で俺がこんなにも買い込んでいるのかというと、また博麗神社で宴会をやるらしく、これはその買出しという事だ。ちなみに、宴会をやる理由は俺にもよくわかっていない。

 

 

『大丈夫ですか?』

「ああ、少しの理不尽なら何とか耐えられる」

『しかし、ここまで宴会が続くと少し怖いですね』

「そうだな。この前の宴会から三日も経ってなんじゃないのか」

『皆さん、暇なんですね』

「『こっち』は『あっち』に比べて自由だからな。それ故にやることが無いんだよ、きっと」

『「あっち」側の人達が聞いたら皮肉以外の何物でもありませんね』

「まったくだな」

 

 

俺らがそんな話をしていると次の買い出し場所である八百屋が見えてきた。

中に入るといつも店番をしている女店主と二人の買い物客が話し込んでいた。しかし、その二人の後姿には見覚えがあった。

ふよふよと浮いている半霊に触り心地の良さそうな尻尾、特徴がありすぎて吹き出しそうになる。

 

 

『あれ、間違いなく妖夢さんと藍さんですよね』

「あいつら以外にいねえだろ。あんな格好してる奴」

『それもそうですね。……にしても珍しい組み合わせですね』

「名前を付けるなら『苦労二人組』だな」

『いや、どちらかといえば『苦労一人半組』ではないでしょうか?』

「ああ、言われてみれてみれば……」

「楽しそうな話をしてるわね」

 

 

俺らが店の入り口で話をしていると急に後ろから声を掛けられた。振り向くとそこにはさっきまで目の前の二人と楽しそうに談笑していた女店主がニコニコと笑顔を浮かべながら立っていた。

黒く長い髪、紅い瞳、彼岸花が刺繍された着物、間違いなくここの女店主だ。

見開いた目で彼女が居た元の場所を見ると、話していた二人も目の前の状況が理解できずにこちらを見ている。スマホの中の月美なんて驚きすぎてアホ毛の先まで固まっている。

 

 

「あら、みんなそんなに固まってどうしたの?」

「妖夢、藍、この人がどうやって移動したか見たか?」

「い、いえ、まったく」

「振り返った時にはもうそこに」

「……そうか」

 

 

俺は二人の話を聴いた後に背後に立っている彼女をじっと見つめた。

彼女はいまだに笑顔を絶やさずに首を傾げて俺たちを見ている。多分、俺らがいくら問い詰めても答える気なんてさらさらないだろう。経験者は語るとはまさにこのことだ。

 

 

「はあ……何でもないですよ。紅音さん」

「うふふ、憶えててくれたのね」

「顔と名前は嫌でも覚えますよ。あんたのような人は特に」

「どういう意味かしら?」

「雲のように気紛れでつかめない人は印象に残りやすいというだけだよ」

「失礼ね」

 

 

彼女、紅音さんはそう言いながら元いた場所へと戻って行った。

その後、俺は残りの食材を買い付けると少しの世間話をしてその場を後にした。ついでに妖夢たちと一緒に博麗神社まで帰ることにした。どうやら俺と同じ目的だったようだ。

 

 

『今日はなんだか疲れました』

「何を言ってるんだ。これからだぞ」

『え?』

「これから幽々子様と皆様方の宴会用の料理を作らないといけませんからね」

「さすがに幽々子とあの人数じゃ人手が足りないからな。あとで咲夜に頼むか」

「助かります」

「いやいや、むしろ俺の方が手伝ってもらって助かってるから、そんなに気にすんな」

 

 

俺は空けた手で妖夢の頭を優しく撫でた。その行動で彼女は顔を俯かせたが、隣で浮いている半霊の方が少しだけ赤くなっているように見えた。……これはこれで面白い反応だ。

 

 

「……君は誰にでもそうするのだな」

『ユウキがほぼ無意識でやってることですから、何も言えませんよ』

「それは分かっているのだが、なぜだか胸の奥がむずむずしてな……」

『(……ああ、この人も堕ちちゃいましたか)』

「ん? どうした、藍」

「い、いや、何でもないぞ」

「そうか? なんだか耳と尻尾の方が元気なくしているようにも見るが」

「き、気のせいだ」

 

 

藍は首を振って必死に否定しているが、さっきまでの会話を聞いていたから事情は察している。しかし、ここで言ってしまえば本人に悪い。

俺は荷物を持ち変えると今度は藍の頭を撫でた。恥ずかしそうに払いのけられたが、九本の尻尾は嬉しそうにゆらゆらと揺れている。……これはマジでくせになりそうで怖い。

 

 

「はあ、君も紫様に少しだが似ているな」

「……俺ってそんなに悪いことしたか? したのなら謝るからそんな認識はしないでくれ‼」

「異変の時並に必死ですね。そんなに紫様と同じというのが嫌なのですか?」

「嫌だ‼ あんな人の迷惑も顧みないし胡散臭い性格の奴になんて似たくもない」

『元の世界で散々弄ばれてきましたからね。紫さんに似た人に』

「大変なんだな。……って、そういう話ではなくてだな」

「何だよ?」

「人を惹きつける魅力というのか、そんな感じが紫様と似ているといっているんだ」

『なんとなく分かります。現に私はユウキの事、好きですし』

「お前の場合は主としてだろ? 本命が居るくせに何を言う」

『ちょ、それとこれとは今は関係ないですよ‼』

 

 

珍しく動揺する月美を眺めながら俺は頬を緩めた。

 

 

「さて、うるさい奴は黙らせとくとして。……藍」

「何だ?」

「俺にはそんな魅力なんてねえよ。あったらもう少しマシな人生歩んでる筈だからな」

「どういう意味だ?」

「――俺はみんなに思われてるほど綺麗なモノじゃないってことだ」

「ユウキさん?」

「――羨ましいよ」

 

 

俺は誰にも聞こえないように呟くと足早にその場を去った。

最後の言葉は、一体何に向けて言ったのか、正直俺にも分からなかった。

 

 

 

 

 

明星 美羽side

 

 

「ここは平和ね」

 

 

人里の通りを眺めながら私は呟いた。

『こっち』は妖怪やら得体のしれないものが多く存在しているというのにバカに平和だ。同族同士で日夜争いやっている『こっち』とはえらく違う。

私の呟きを聞いていた彼女はこちらを見ながらニコニコと笑って言う。

 

 

「ここのみんなは幻想郷を受け入れてるから」

「それはそれは残酷なことで」

「あら、紫ちゃんの真似? とっても似てるわね」

「冗談じゃないわ。あんな半端モノの妖怪と一緒にしないで」

 

 

彼女の何気ない言葉に私は妙に苛立ち、彼女のを睨みつけた。でも、彼女は一切動じずに私を見つめている。全てを見透かしていそうな澄んだ瞳をこちらに向けて。

 

 

「そうかしら? 私から見たら二人とも少し似てると思うわよ」

「ちなみにどこら辺が?」

「誰かの為に必死になっているところかしら?」

「……否定できないのがさらにムカつくわ」

「うふふ、図星だったみたいね」

 

 

彼女は楽しそうに笑う。それは誰から見ても心から楽しんでいる。

 

 

「アンタの方がアイツに似てるわよ。誰よりもね」

「……そうね。でも、もう戻れないわね」

 

 

彼女の瞳の色が徐々に哀しみと後悔、それを塗り潰す狂気に変わっていく。

この人相手にスキマ妖怪の話は禁句のようね。

 

 

「アンタらの事情には干渉する気はないわ。だからそれこれ以上はやめましょうか」

「そうしましょう。それに、私にはこういうのは似合わないから」

「そういうこと、自分の言うモノかしら?」

 

 

私はくすっと笑いながら目の前にハザマを開いた。

 

 

「アンタに貸してもらった“コレ”、中々居心地がいいわね」

「それは良かったわ。これからもよろしくね。でも、あまり無理はしないでね」

「解ってるわよ」

 

 

ハザマに入って入り口を閉じる時、私は彼女の方へと振り返った。

 

 

「またね。紅音」

「いつでも待ってるわよ。美羽ちゃん」

 

 

彼女、紅音の絶えない笑顔を遮るようにしてハザマは閉じられた。

 

 

 

 

 




悠月「タイトルと話が噛み合っていない件について、駄作者」
空亡「最初はこうなるつもりはありませんでしたが、書き始めたらなんだかおかしな方向に」
月美「だからってこれはヒドイ有様ですね」
悠月「どうすんだよ、これじゃタイトル詐欺として批判が来るぞ」
空亡「っ、かくなる上は……」
月美「どうするともりですか?」
空亡「非日常編・参で苦労人だけを集めた特別企画でもやります」
悠月「それはまた……カオスな回だな」
月美「この後書きよりはマシですよ。それでは、今回はここまでです」
空亡「悪い意味で期待を裏切られた皆様、この度はどうも失礼しました」


次回予告
開かれた宴会で真相に気付くユウキ。それを見ていたのは紫と幽々子の二人だった。
非日常編・弐、どこかで始まる戦い、どうぞお楽しみに‼
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