東方絆紡録   作:空亡之尊

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どこかで始まる戦い

神無 悠月side

 

 

「……おかしい」

 

 

俺は楽しく行われている宴会を眺めながらそう呟いた。

みんなそれぞれが持ち寄った酒を呑み交わしながら俺らが一生懸命に作った料理を食べて楽しんでいる。この光景はいつ見ても俺の心を紛らわしてくれている気がする。

けれど、ここ最近行われた宴会を見ていて俺の中に不透明な疑問が浮かび上がってきた。

 

 

『この雰囲気、何か感じますね』

「月美、お前はどう思う」

『誰かが無理矢理引き延ばしている。そういう感じですね』

「引き延ばす……この宴会の事か」

『恐らく、宴会という事柄が終わってしまうのが悲しいんだと思います』

「まるで子供みたいな考えだな」

『その考え、子供だけには当てはまらないと思いますよ』

 

 

そう言って月美はスマホの画面にあるサイトを映し出した。

それは贈り物としてどこかの企業が宣伝しているプリザーブドフラワーのページだった。

 

 

『こういうのを考えたのだって人間の大人ですよ』

「そうだな。案外、誰だって子供なのかもな」

『誰だって終わるのは嫌ですよ。花が枯れるのも、宴会が終わるのも』

 

 

月美はそう言いながら静かにページを閉じると俺に背を向けて座った。

 

 

「けれど、プロローグがあるように、エピローグがあってこそ物語は美しい」

『その言葉、もしかして美羽ちゃんの?』

「アイツなら、こんな事を起こした奴に言うだろうなと思ってな」

『ふふふ、いつも邪険にしてるくせに、本当は信頼してるんですね』

「幾度も殺し合った仲だ、これくらいは予想できるさ」

『ちょっと妬いちゃいますね』

 

 

月美はそう言い残してスマホの奥へと潜っていった。

俺が知ってる中で一番子供っぽいのは月美だと思っているが、それを言ったらますます機嫌を悪くしそうだ。今はそっとしておくのが賢明だろうな。

 

 

「……で、アンタたちはいつまで覗き見してる気だ?」

 

 

俺がジト目で傍の木を見つめるとその影から紫と幽々子が出てきた。

 

 

「あらら、バレちゃったわね」

「気配は消してたと思ってたのにね~」

「なめるなよ。人の気配探れないで殺し合いができるか」

「大体の事情は知っていたけど、あっちでは殺伐とした生活をしていたのね」

「どうだろうな。俺たちにはあれが“日常”だったから」

「……狂ってるわね」

「お互い様さ。狂った人間と幻想になった奴、どっちも似たもん同士だ」

「………………………」

 

 

俺の自嘲と皮肉の言葉に、紫は俺を睨みつける。それは自分の夢をバカにされて怒っているようにも見えた。だが、それ以外にも彼女から哀しみらしき感情が読み取れた。

こんな重苦しい雰囲気に傍らにいた幽々子が痺れを切らして俺と紫の間に割って入った。

 

 

「二人共、今日は楽しい宴会よ? そんな顔しちゃダメよ」

「……そうだな。紫、悪かったな」

「……いいのよ。言い始めたのはこっちだから」

「それじゃあ、ゆっくりできるような場所にでも移動するか」

 

 

俺はそう言うと二人を連れて歩き出した。

 

 

 

少年祈祷中

 

 

 

「やっぱりここだな……」

 

 

俺は神社の屋根の上に腰を下ろすといつもの様に月を仰ぎ見た。

紅霧異変解決の宴会の時からこの場所に来ることが多くなり、いつの間にやら宴会での特等席みたいになってしまった。欠点と言えばその度に霊夢から注意されるくらいだ。

 

 

「なんでこんな所がいいのかしら」

「いいじゃない。たまには静かにお酒を呑むのも悪くないわ」

「幽々子は気楽ね。少し羨ましいわ」

 

 

紫はそう言いながら小さく開いたスキマから一升のお酒と三つのコップを取り出した。幽々子はコップを受け取ってお酒を注いでもらうと有無を言わさずに飲み始めた。花より団子だな。

 

 

「ほら、貴方も」

「悪いが、俺は呑む気はないぜ」

「そういえば、貴方今までお酒飲んでなかったわね」

「アルコールは苦手なんだよ。酔った時の記憶がなくなるからな」

「あら、酔った時のユウキを見てみたかったのに~」

「それは残念だったな。そういうことで、俺は大人しく緑茶でも飲んでるよ」

「渋いわね。まるで妖忌みたいね」

「妖忌?」

「妖夢のお爺ちゃんで師匠よ。もう何年も前にどこかへ行ってしまったけど」

「へぇ、妖夢の師匠か……」

 

 

今の妖夢を育て上げた人か、いつか手合わせしてみたいものだ。

そんな事を考えていると、遠くの方で強い妖力を感じた。

 

 

「――この感じ」

「どうやら“彼女”のようね」

「この異変の首謀者か」

「人聞きが悪いわね。彼女も悪気があってやってるわけじゃないのよ」

「いつも主催場にされているこっちからすればとんだ迷惑だよ」

 

 

度重なる宴会のお蔭でここ最近の霊夢の機嫌は最凶になってたからな。ここ三日間はロクに近付けも出来なかった。もし下手に彼女の気に障ったら夢想封印(物理)を喰らわされてしまうからな。

 

 

「だからこんな異変、早く終わればいいんだよ」

「それが嫌だから彼女はみんなの心を萃めているのよ」

「知るかよ。宴会がやりたかったら自分から声掛けろ」

「……冷たいわね。いつもは超が付くほどのお人好しなのに」

「伸ばしてもない手をわざわざ取るほど俺も優しくねえよ」

 

 

俺は水面に映る月を見つめながら紫に告げる。

 

 

「……でも」

「ん?」

「そいつが俺に向けて手を伸ばしたなら、俺はいつでも手に取るつもりだぜ」

「前言撤回、やっぱり貴方はお人好しよ。それも重度のね」

「いつも言われてるよ」

 

 

俺は苦笑しながら気配を感じた方へと視線を向ける。

紫は気付いていないようだが、その妖気の傍にもう一つ“俺たちと似た力”を持った魔力を微かに感じる。この独特の気配は間違いなく“アイツ”だろう。

 

 

「――さあ、今宵は魅せてくれよ」

 

 

俺の言葉を合図にするように妖気と魔力がぶつかり合う。

終わりを拒んだ者と終わりを望む者、果たしてどちらが勝つのやら………………。

 

 

 

 

 

???side

 

 

「……よかったのかしら?」

「何をです?」

「美羽ちゃんに今回の異変の解決を任せて」

「楓恋は心配性ですね。私が大丈夫と思えば大丈夫ですよ、きっと」

「美命様の事は何よりも信頼しているけど、前回の事を思うとね」

「前回は身勝手動いて八雲紫と衝突したのを罰しただけですよ」

「つまり、今回は美命様直々の命だから多少の勝手は許されるわけね」

「監視だけを任せていたら体が鈍りますからね。少しくらいは遊ばせないと」

「それは貴方自身もなんじゃないんですか?」

「ふふ、そうかもしれませんね。私もたまには遊びたいものです」

「だったら私目がお相手いたしますが?」

「悪いですが、私は仲間を傷付ける趣味はありませんよ」

「相変わらず、優しいわね」

「よく言われます」

 

 

 

 




空亡「ようやく動き出す人がまさか貴女とは……」
美羽「あら、私じゃ何か不満でも?」
空亡「いや、まさか読者様も貴女だとは予想もしなかっただろうと思いましてね」
美羽「確か前に言ったわよね。私が主役の話を出すって」
空亡「だからって、まさか本編に関わるものとは、貴女も傲慢ですね」
美羽「あら、傲慢は私が最も好きな言葉よ♪」
空亡「久しぶりの登場でテンションが上がりますね。ま、いいことですが」
美羽「ふふふ、ユウキの期待通り、楽しい舞台を魅せてあげるわ」
空亡「それでは、次回もお楽しみに」


次回予告
騒がしき宴会を終わらせる為に動く美羽、楽しき宴会を続ける為に戦う鬼。
東方萃夢想、百鬼夜行と一人舞台、どうぞお楽しみに‼
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