東方絆紡録   作:空亡之尊

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百鬼夜行と一人舞台 後編

明星 美羽side

 

 

「さあ、派手に踊りましょうか」

 

 

私は立ち上がった彼女に剣先を向ける。

ある程度の斬撃波まともに入ったと思ったのだが、彼女の身体には斬り傷一つ付いていない。やっぱり本来の力の四分の一しか残っていない状態じゃたかが知れてるわね。こんなのじゃそこら辺の堕ち神を退治するのが限界でしょうね。

彼女は私の事を睨みつけると一枚のカードを取り出した。

 

 

「符の壱『投擲の天岩戸』」

「……スペルカード、少しは楽しめそうね」

 

 

彼女はその場から飛び上がると腕を回し、その腕に周囲の岩を引き寄せ一つの大きな岩の塊を纏わせた。やがてそれが大きくなると彼女は勢いよくそれを私にへと投げつけた。

彼女の能力は“密と疎を操る程度の能力”、簡単に言えばあらゆるものの密度を操作する能力。それを使って自分の周りの岩を腕に収束させたのでしょうね。まったく面倒ね。

思考を巡らせているといつの間にか大岩の塊は私の視界を覆っていた。私はその場から跳びあがると大岩を踏み台にして空中で身動きを止めている彼女の上空を陣取った。

 

 

「な……‼」

「狂詩曲『紅のラプソディ』」

 

 

剣を構えると彼女に向けて容赦なく斬撃を振り下ろす。

咄嗟に彼女は目の前で腕を交差させて防いだが、振り下ろされた剣の衝撃は殺しきれず地面へと勢いよく落下する。その衝撃辺りに砂埃が立ち込める。

着地した私は彼女の姿を確認しようと砂埃が舞う中、目を凝らしてみた。その時、砂埃の向こうで小さな影が飛び上がったのが見えた。

 

 

「ん?」

「符の弐『坤軸の大鬼』」

 

 

その声が聞こえた上空へと視線を向けると、巨大化した彼女が私に向かって落下してきた。これも能力の応用で、自分の密度を高めて巨大化した。と考えるのが定石でしょうね。

そんな事を考えながら、私はスマホを取り出すと徐にシャッターをきった。

 

 

「あら、これはまた……」

「ふにゃ‼」

 

 

口元をニヤッとさせながらそれを避けると、彼女は大きな音を立てながら着地した。元に大きさに戻って彼女は振り返って私の事を睨みつけている。………………顔を真っ赤にして。

 

 

「あ、あんた‼ 戦ってる最中に何撮ってんだよ!?」

「ふふふ、真上からスカート履いた少女が落ちてきたら見えるモノだってあるでしょ?」

「だからって撮ることはないだろ‼」

「これが終わった後の脅迫材料としてありがたく使わせてもらうわ」

「あんたは鬼か‼」

「鬼は貴女でしょう?」

 

 

私は小馬鹿にするように彼女を煽ると、彼女は顔を真っ赤にして地団太した。

長年生きていても、“こういうの”には慣れていない奴が多そうですこし楽しみだわ。

しばらくすると彼女はその場で静止した。よく見ると彼女の周りのモノが浮いている。

なにかを仕掛けてくる前兆だと感じ、私は彼女に向かって走り出した。攻撃しようと近付いた時、彼女の身体が霧へと変わって空中へと飛んでいく。

 

 

「あら、逃げる気?」

「まさか、ここらでいっちょ勝負を着けようと思ってね」

「丁度いいわ。こっちもこの後の尺があるから早めに終わらせたいのよね」

「あんた、何を言っているんだい?」

「気にしなくてもいいわ。どうせメタ発言ですもの」

 

 

彼女は姿を現すとその手にはスペカが握られている。

 

 

「それじゃあ行くよ‼ 『百万鬼夜行』」

 

 

今度はさきほどまでの接近型のスペカとは違い、古典的な弾幕型のスペカのようね。だけど、その弾幕の密度は他とは比べて濃く、そしてなによりも視界を覆う霧によって避けにくい。

 

 

「百万鬼夜行…………たった一人の貴女が使うと皮肉ね」

「こんな状況でも減らない口だね‼」

「こんな状況だからよ。空元気でも、悲観するよりはマシだから」

「あんた……」

「それじゃあ、こっちからも行くわよ‼」

 

 

目の前に迫った弾幕を斬り払うと彼女の周りを旋回しながら近づいていく。中心に近づくごとに弾幕の密度は濃くなっていく一方だが、生憎と私にはこれしか戦法が無いのが難点なのよね。

彼女の弾幕を斬り伏せていくと一瞬、弾幕の切れ間を見つけた。間一髪でそこに滑り込むと、二振りの剣を交差させ構える。

 

 

「さあ、フィナーレよ。交響曲『白のシンフォニー』」

 

 

彼女へと一気に距離を詰め、通り過ぎる合間に目にも止まらぬ連撃を彼女へと喰らわせた。

急ブレーキをかけてその場に立ち止ると、彼女は音を立ててその場に倒れ込んだ。

 

 

「ふぃ~これにて異変は終了、でいいわよね?」

「…………………………」

「ね~大丈夫? もし死んでたら流石に美命様に怒られちゃうんだけど?」

「……ったく、自分でやっておいて調子のいいお嬢さんだよ」

「よかった。まだ生きてるみたいね」

「当たり前だ。この程度で鬼の四天王が務まるか」

「でも、意外とあっさり私に負けちゃったわよね~?」

 

 

私は仰向けに寝転がる彼女を笑顔で見下ろす。

 

 

「くっ……今すぐにでもその顔ぶん殴りたい」

「ダメよ。無理したら流石に鬼でもタダじゃすまないわよ」

「優しいのか馬鹿にしてるのか分かんないな、あんたは」

「弱い者いじめをするほど、私は人としての道は踏み外してないわ」

「そうかい……」

「……しばらく待ってなさい」

 

 

私はそう言うと目の前にハザマを開いてその中から小さな小瓶を取り出した。

中身は何とこ綺麗な緑色の液体が入っており、小瓶に張られたラベルには『ポーション的な何か、すなわち回復薬(多分)』と書かれている。

 

 

「はい」

「はい、じゃないよ‼ それ絶対危ないやつだろ‼」

「大丈夫よ。『あっち』での回復成功率は50%だったから」

「ちなみに残りの半分は?」

「……原因不明で亡くなったけど奇跡的に帰ってきたわよ?」

「つまり私に一度死んでこいと!?」

「別にいいでしょ。地獄にだって鬼は入るんだし、これでもう一人じゃないよ」

「何いい顔でサラッとヒドイこと言ってんだよ‼ あと、地獄の鬼とは全くの別物だから」

「ぎゃーぎゃーうるさいわねっ‼」

「うっ‼」

 

 

私は暴れる彼女を押えながら無理矢理『ポーション(仮)』を口に入れた。

彼女の顔色が青やら紫やら土色やらと変わっていくが、最終的には色々と落ち着いてきた。

しばらくして彼女は起き上がると自分の身体を眺めた。よく見ると彼女の身体の傷が治っている。

 

 

「よかったわね」

「よくないよ。うぇ~まだ味が残ってるよ」

「良薬口に苦しとはまさにこの事ね‼」

「勝手にいい感じで締めくくろうとするな‼」

「けど本当によかったわ。実は成功率が20%以下だったなんて口が裂けても言えないわ」

「もうあんたの事を信じるのはやめるよ……はぁ~」

 

 

彼女は色々と疲れたように溜息を吐く。

さすがにあんな戦闘の後に臨死体験させられる身にもなれば当然のことね。

 

 

「ところで、異変終わらせてくれるわよね?」

「ああ、ここまでコテンパンにやられちゃ、ね」

「まあ結局、いくら宴会を開こうと、離れて行った仲間は戻っては来ないわよ」

「わかってたさ。こんなことして戻ってくるほど、世の中は甘くないってね」

「なら、なんで止めようとしなかったの?」

「さあ、ただみんなが宴会しているのを見ていると、不思議と私も楽しかったからかな」

「根暗な奴がクラスメイトのバカ騒ぎを傍から見ているのと一緒の心情ね」

「どんな例えだよ」

 

 

彼女はそう言うと乾いた笑みを浮かべた。それを見た私はただ黙って彼女の隣に腰を下ろした。

ふと空を見上げると夜空一面に星々が煌いていた。

 

 

「プロローグがあるように、エピローグがあってこそ物語は美しい」

「なんだい、その言葉」

「私が未来永劫尊敬する人の言葉、終わり良ければ総て良し、深い意味なんてないわ」

「なんだい、そいつも随分と遠回しな言葉を言うもんだね」

「そうね。そういうところが似たのかも」

「えも、そうだね。無理矢理先延ばしてもいつかは終わりが来てしまう」

「ええ、だからエピローグくらいは美しくないと後味が悪いでしょ」

「そんな事すら気づかなかった私は、一体……」

 

 

彼女は幾多に煌く星々を眺めながら悲しげにそう言った。

楽しそうに宴会をしているあっちとは違い、こっちは重苦しい雰囲気で正直息苦しい。

私も少し言い過ぎたかなと、今更反省してもどうしようもない。こういう時は‼

 

 

「よし、宴会に行くわよ」

「え?」

「私ってこういう場面だとテンションが下がって調子が狂うのよ」

「いや、だからって何で宴会に行くことになるんだよ」

「だってあっちにはユウキが居るし、それに……」

「ん?」

「本当は貴女もみんなと一緒に宴会を楽しみたいんじゃないかなと思ってね」

「そ、それは……でも、異変を起こした張本人だぞ」

「さあ、あっちもこれが異変だって気付いてるのは数少ないと思うわよ」

「そうかもしれないが……」

「貴女は鬼でしょう? 自分の心に嘘吐くつもりなのかしら?」

「……っ‼」

「隙あり」

 

 

私の言葉に彼女ははっとした表情に変わった。

その瞬間を見て私は彼女を抱きかかえると一気に走りだした。

 

 

「な、あんた‼」

「ふふふ、このまま博麗神社まで突っ走るわよ」

「か、勝手な事を」

「あら、みんなと宴会するのが嫌なのかしら?」

「それは……」

「それは?」

「あーそうだよ‼ 私だってみんなと宴会したいよ‼ 文句あるか‼」

 

 

彼女は自暴自棄みたいに喚きながら私の腕の中で暴れる。

 

 

「ふふ、素直でよろしい」

「でも、みんな受け入れてくれるかな……」

「あらら、ここがどこだか忘れたの?」

「……え?」

「すべてを受け入れる幻想郷でしょ? だったら大丈夫よ」

「……そうかな?」

「あら、鬼のくせに随分弱気ね。もしかして拒絶されるのが怖いのかしら?」

「言わせておけば…………いいだろう、私だって鬼の四天王の一人だ、怖いものなんてない‼」

 

 

彼女はそう言って飛び降りると私よりも先に走っていった。

やっぱり私には相手を挑発し、煽る役の方が似合っている。

 

 

「何をしている。早く行くぞー」

「調子のいい鬼ね。まったく」

 

 

呆れるように溜息を吐くと彼女のあとを追って走り出した。

大丈夫、誰よりも受け入れてくれる“お人好し”がいるから、きっと受け入れてくれる。

だから、もう一人で涙を流すことはもうないわよ。

 

 

「『百鬼夜行と一人舞台』、これにて閉演させていただきます」

 

 

 

 

 




空亡「いかがでしたでしょうか、今回の話は」
美羽「中盤からとんだ茶番劇だったわね」
空亡「いやいや、シリアスのままで終ると美羽さんの評判が悪くなると思いまして」
美羽「まあ、戦闘中にも散々言ってるし、それもそうね」
空亡「茶番を挟みたいだけで戦闘を短くしたのはご了承ください」
美羽「楽しめたからいいわ。それより、ユウキとのシーンが一回もないのはどういう事よ‼」
空亡「だって、この後にユウキの絡みを足すと長くなりますし」
美羽「なんだとー‼」
空亡「そんなわけで、次回も楽しみにしていてください‼ ではっ」
美羽「逃げるな‼」


次回予告
集められた外来人たち、そこで明かされる真実とは⁉
非日常編・弐、役者たちの思惑、どうぞお楽しみに‼
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