神無 悠月side
「――それじゃあ、始めるか」
博麗神社の居間、テーブルを囲んでいる人物たちに俺はそう告げた。
俺から右に座っているのは現在紅魔館で居候兼仕事をしている霧晴 咲妃。
そして左で半ば寝ているのは現在白玉楼で静かに居候している双花 椿希。
最後に目の前に置いたスマホに礼儀良く座っている俺の愛刀の夢燈 月美。
以上の『あっち』の仲間たちで今日は集まっている……………………のだが。
「行くよ♪ 禁忌『レーヴァテイン』‼」
「なんの‼ 凍符『パーフェクトブリザード』‼」
「チルノちゃん、危ないよ~‼」
「あ~あれはピチュッたな」
「氷精如きがフランに勝てるはずもないのに」
「アンタら、そんなこと言ってる暇があるなら今すぐ止めに行きなさいよ」
「お嬢様、紅茶をお持ちしました」
「あら~美味しそうね」
「人様のを見て涎を流さないで下いよ、幽々子様」
「しょうがないわね。藍」
「畏まりました。橙、手伝ってくれ」
「わかりました‼」
「あ、私には酒を持ってきてくれ~」
襖の向こうからはいつも以上、いやいつも通りに騒がしい声が聞こえて来ていた。
いつも気紛れに訪れる幻想郷住民が今日に限ってみんな集合してしまった。その内三人はこの幻想郷を揺るがそうとした異変の首謀者というのはまた滑稽の話である。
「……………………どうしてこうなった」
『偶然って恐ろしいですね』
「いいじゃない。あの頃に戻ったみたいで少し懐かしいわ」
「ふにゃ~……わたしも、静かな方より少し騒がしい方がなんだか落ち着きますね~」
「お前ら、とうとう人間としての感覚すら麻痺したのか?」
「失礼ね。これでも『まだ』人間としての常識はわきまえているつもりよ」
「そうですよぉ。流石に五月蝿すぎたら少し『お灸』をすえますよ~?」
『ほら、お二人共「今は」人間としてまともじゃないですか』
「うん、お前らがもうすでに手遅れだったことを忘れてたよ」
俺は頭を抱えて溜息を吐くと話を戻す為にもう一度仕切りなおす。
「お前ら、今日は現状報告の為に集まったことを忘れたのか?」
「ええ、流石の私も集まった理由を忘れる程平和ボケしている暇はないわ」
『“あの人”の為にも早く帰らないといけないですからね』
「本当ですよ。私が居ないと事務所が悲惨に状態に……」
「咲妃先輩は心配性ですねぇ」
「椿希だって人の事は言えないだろ?」
「何のことでしょうか~?」
『柊妓ちゃんのこと、心配じゃないんですか?』
「“あの子”なら私よりもしっかりしているから大丈夫ですよ」
「確かに、椿希よりはしっかり者だから心配するほどでもないか」
『それもそうですね』
「ヒドイですよ~」
椿希は怒っているのかいないのかよくわからない表情で俺の事をポカポカと叩いてくる。
普段からこういうキャラのくせに、戦闘の時になると俺よりも殺気を纏っているのが未だに信じられない。人間、裏と表があってこそ生きていけんだろうな。
「先輩たちだって“一日”経っても連絡が付かないって、部長さんが心配してましたよ」
「それは………………ん?」
「………………え?」
『椿希ちゃん、今なんて』
「ですから、部長さんが心配して」
「いや、その前だ」
「ん? 先輩たちが“一日”経っても連絡が付かなくて……」
「それだ‼」
「ふぇ?」
俺は勢いよく彼女の目の前に詰め寄った。
突然の俺の行動に椿希は目を白黒させて俺を見つめている。
「椿希、貴女が幻想郷に来たのって『あっち』の時間ではいつ?」
「え~と、神隠し事件の報道がされてからそう間もない頃です」
『ごめんけど、スマホの中見させて』
「いいですよ。それよりも皆さん、どうしたのですか?」
「いや、気になったことがあるから調べたいだけだ」
「???」
『ユウキ、ただ今戻りました』
「で、どうだった?」
『椿希ちゃんのスマホの履歴を調べた結果、私たちが幻想入りしてから一日しか経っていません』
「やっぱり、そういう事か」
「え? どういうことですか?」
「今から説明するから、耳の穴かっぽじってよく聞けよ」
俺は今までの経緯(幻想入りしてからの出来事)を椿希に話すことにした。
少年少女祈祷中
「……ということだ。気付いたことは?」
「それは……流石におかしいですよね」
俺は椿希に話し終えるとそれぞれの矛盾点に気付いた。
それは互いの時間軸が大きくずれていることだ。『こっち』ではもう一年近くも経過しているというのに、『あっち』では一年どころか一日しか経っていないという。
普通ならあり得ないと一蹴するのだが、生憎とここは常識に囚われることなく非常識に生きる幻想郷だ。おそらく時間軸も結界やらなんやらが関係すると思うが………………。
「まかさまだ一日しか経っていなかったとはな」
『それも、未だに神隠し事件の報道が載っていましたね』
「色々な意味で進んでいないというわけね。時間も事件の進展も」
「いえ、事件については大きく動きましたよ」
「「え?」」
「行方不明になっていた人達、無事に戻ってきたみたいですよ」
「マジか」
『マジです。しかし、全員いなくなっていた期間の記憶が無いようです』
「それはさすがに予想の範囲内ね…………でも、そうなると」
「ああ、俺らを誘い出す役目が終わったから解放した。そう考えるのが妥当だろう」
今回の出来事の発端である神隠し事件、それを調査する為に動きだした俺たちが続けて三人も幻想入りさせられ、その直後に行方不明の人達が帰ってきた。偶然にしては出来過ぎている。
「こうなると、結界を張っている美命がどうも怪しくなるな」
「姉さんも動いてますからね。ある意味、本気ですよ」
「冗談で別世界に送り込むほど、あの方たちも暇ではないでしょう。ちなみに私は楓恋でした」
『美命会長に生徒会メンバー、ただ事で済む話ではなくなってきましたね』
「むしろ、アイツ等のうちの一人が絡んでただで済んだ話があるか?」
「「『ありませんね』」」
俺らは互いに顔を合わせると揃って溜息を吐いた。
これから俺らがどうなるのか、それはアイツ等のみぞ知る、ということになるだろうな。
明星 美羽side
「た~だ~い~ま~」
私はハザマに帰ってくると迷わずベットへと倒れ込んだ。
そう、例えるならば徹夜でコミケ会場に並んで観客と言う名の荒波に呑まれ、必死に戦利品を買いあさった時のと同じような疲労感だ。
そんな私の状態を見て、優雅に紅茶を飲んでいた楓恋が私へと視線を向けた。
「あらあら、今日は随分とお疲れね」
「そりゃ疲れるわよ。あんな天然迷路、完全攻略するなんてどんな無理ゲーよ」
「ちなみに今回の依頼は?」
「“迷いの竹林”の地図の作成、完成できればご褒美アリとの条件付き」
「よく頑張ったわね。いつもなら適当にやって終るのに」
「ご褒美が無かったら速攻で終らせてユウキの姿を目に焼き付けてるわよ」
「つまり、その苦労に値するご褒美ってことね。気になるわ」
「貴女はただ面白いものに興味があるだけでしょ?」
「その通りだけど、何か問題でも?」
彼女は空かした笑顔でそう答える。
……正直、今の精神状態だと何を仕出かすかわからないからやめてほしい。と言う気力もなく、私は疲れ切った瞳を向けながら彼女に教える。
「後の異変への介入、それの許可よ」
「――それは、すごく興味があるわね」
「といっても、何の異変かは教えてもらってないんだけどね」
「ならどうして?」
「決まってるでしょ。ユウキの傍にいたいのよ」
「純情ね。私にはもうできないわね、そんな恋」
「よく言うわ。美命様と二人きりの時は貴女から甘えているくせに」
「な、なんで貴女が知ってるのよ!?」
「あら~? はったりで言ったつもりなんだけど、もしかして当たっちゃった?」
「~///‼‼‼‼‼」
珍しく顔を赤くして絶句している楓恋を尻目に、私は口元をニヤッとさせるとそのまま寝入るように夢の中へと逃げた。
「おやすみなさい、ユウキ……♪」
空亡「そんなわけで、非日常編・弐はこれにて終了ですね」
悠月「振り返ると本当に非日常な光景だったな」
月美「どちらかというとギャルゲの好感度アップイベントのように見えましたが」
空亡「次の異変への場繋ぎなのですが、そう言う捉え方も出来ますね」
悠月「おい、お前ら」
月美「そしてやっぱり私の台詞が少なすぎます‼」
悠月「お前はスマホの中にいるから仕方ないだろ」
月美「有名Pの〇ネちゃんはもっと喋ってますよ‼」
空亡「ちょっと、勝手に名前ださないで下さいよ‼」
悠月「荒れてるな。そういうことだから、次回は恒例の予告だぜ。お楽しみに」