明星 美羽side
「行くわよ。夢符『二重結界』」
霊夢はそう告げると自分の周囲と私の背後まで至る広範囲へと二種類の結界を張った。彼女はその場から御札を周囲に投げつけるがそれは結界の中へと消えた。注意深く周りを見るともう一つ張られた結界からさっきの御札が飛んで来た。
「二種類の結界を経由して攻撃する弾幕みたいね」
「見たままの感想ね」
「でもこの弾幕、ただワープして攻撃してるだけじゃないみたいね」
「…………………………」
「よく見ると景色が逆転してるし、弾幕自体は真っ直ぐ飛んできてるだけね」
「一瞬でこれを理解するなんて、やっぱり只者じゃないみたいね」
「それを確認するためだけにこんな子供騙しな弾幕を仕掛けたの?」
「それもあるわね。夢符『封魔陣』」
彼女は意味深な笑みを浮かべるとスペカを掲げ地面に投げつけた。するとそこから紅い帯のように連なったお札が四方八方へと飛び、私の周りを囲むように展開される。相手の弾幕を打ち消す技だと思っていたけれど、こういう使い方もあるのね。
「でも、こんなもので私を縛れると思っているのかしら?」
私はそう呟くと助走もなしに一気に走りだした。幾重にも張り巡らされた結界の隙間を掻い潜りながら彼女の下へと向かう。それを危険視した彼女は手に持っていたお札を私に向かって投げつけるとそれは軌道を変えながら私を追って向かってきた。
「踊りましょうか。円舞曲『蒼のワルツ』」
剣を逆手に持ち変えて構え跳びだした。同時に周囲の結界を斬り裂きながら彼女の下へたどり着くと至近距離で満面の笑みを浮かべながら剣を叩きつけた。そのまま彼女は地面へと真っ逆さまに落ちていくが寸前で身体を翻すと見事に着地した。
「危ないわね。死ぬかと思ったわ」
「当然よ。だって殺す気でやらないと楽しくないじゃない」
「物騒ね。『あっち』じゃそれが普通なの?」
「ほんの一部だけよ。でも、みんな必死なのは同じね」
「訳ありみたいだけど、聞かないでおくわ」
「噂通り、他人にはとことん興味がないみたいね」
「面倒なのが嫌いなだけよ」
「ふふ、その割にはユウキにご執心のようだけど?」
「…………今は関係ないでしょ」
「そう……やっぱり気に食わないわね」
「言ってなさい。霊符『夢想封印・散』」
彼女はそう言って再び飛び上がると周囲に御札と弾幕と陰陽玉を無差別にばら撒いた。それらを斬り払いながら彼女を追おとしたが、距離を詰めようとすれば容赦のない弾幕に道を遮られる。
弾幕が周囲に広がったその一瞬を狙って一気に距離を詰めようと加速したその時、彼女の表情がニヤリと笑ったように見えた。
「もらったわ。霊符『夢想封印・集』」
その瞬間、周囲に広がっていた陰陽玉が彼女の周りを回りだし、そこから弾幕を放つとその弾幕は静止し御札へと変わって一斉に向かってきた。斬り払った御札はその場で再び静止するとしばらくしてまた動き出し私へと迫ってくる。
「しつこい弾幕ね。まるでどこかのスキマ妖怪ね」
「紫もそうだけど、あんたもアンタで大概だと思うわよ」
「失礼ね。私が人をバカにするのはその人の本心と本気を見たいからよ」
「さっきから口達者なアンタが言えた口なのかしら?」
「私は本心から述べているから問題ないのよ」
「……なんだか、アンタもユウキに似てるわね。主に雰囲気が」
「そう思うのなら貴女の目は節穴ね。紛い物の月にでも惑わされたのかしら?」
「そうやってすぐに話を逸らして…………似すぎてムカついてくるわね」
彼女は怒りを言葉に込めると周囲の竹林に結界が施された御札が幾つも張り付けられた。
「霊符『夢想封印・瞬』」
彼女は御札を投げつけながら突進してくると一瞬のうちの別の場所へと現れて再びお札を投げつけてくる。その後も現れて御札を投げつけて突進してくると別の場所に現れて攻撃の繰り返しだ。
おそらく最初に見せた二重結界の応用、結界と結界の間を自在に移動することで攻撃させる隙も与えず、一方的に攻撃するまさに結界専門である博麗の巫女だからこそ成せる業ね。
「さすが博麗の巫女と言われるだけはあるわね」
「潔く負けを認めたら?」
「冗談を、私は負けるわけにはいかないのよ……」
「え?」
「彼の事を知ったような口で語る“お前”に好き勝手に言われたままなのは癪に障るのよね」
私は殺気を全開にするとそれを剣に込めて構える。
「弾幕ごっこも終わりよ。鎮魂歌『灰のレクイエム』」
彼女が現れた瞬間に合わせてその場所に瞬時に移動するとすぐさま一撃を加える。彼女はすぐに別の場所へと移動するがそれを追ってまたすぐに移動して一撃を加える。その後もそれの繰り返し。
いくら結界を使って瞬間移動を駆使しようと、パターンさえ理解すればどの場所に現れるかの予想ができてすぐ行動に移せる。
しばらくして弾幕の効果が消えていくとすぐ近くに彼女は倒れ込んだ。
さっきまでので計272回、本来なら死んでいるところだけど、彼との約束で無駄な殺生はしないことになっているから少しは手加減してあげたわ。
もうすぐ私の能力の効果も消えるころだし、ここはあのスキマ妖怪にでも任せましょうか。
「また会いましょう。似た者同士さん」
私はそう言い残すとその場を後にするように歩き出した。
似た者同士、それは果たしてどんな意味を表しているのでしょうね。
「さて、あそこまでは暇だし、歌でも唄っていきますか」
私は瞳を閉じて思考を巡らせた。
こんな月夜の晩にとっておきの歌といえば、あれね…………。
かごめかごめ、籠の中の鳥よ
何時何時出会う、月が満る晩に
罪と罰が許された
アナタの隣は誰もいない
空亡「今回は少し短めでしたが、どうでしたか?」
美羽「はっきり言って物足りなかったわ」
空亡「まあ物語の関係上、ここで本気になってもらっては困りますけどね」
美羽「あ~も~私も久しぶりに本気で殺し合いたい」
空亡「我慢してください。今回はすこし見せ場は用意しますから」
美羽「約束よ~‼」
空亡「はいはい。それでは、次回もお楽しみに‼」
次回予告
第三遊戯、瀟洒な従者が仕掛ける完全タネなしトリック、見破ることはできるのか?
東方永夜抄、紅時計~スカーレット・クロック、どうぞお楽しみに‼