東方絆紡録   作:空亡之尊

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宵闇の妖怪

神無 悠月side

 

 

「迷った……」

 

 

木漏れ日が照らす森の中で俺は嘆いた。

右を見ても、左を見ても、前を向いても、後ろを向いても、あるのは無造作に生えた木々のみ。空を見上げるも木の葉が邪魔で太陽の位置が確認できない。

これはあれだ。将棋やチェスでいう、詰み(チェック)の状態だ。って、これは前にも言ったような気がする。

 

ちなみに、なんで俺がこんな所にいるのかというと、霊夢からこの近くに魚が釣れる湖があるという情報を聞いて、それを確かめるべく神社を出ていってしまった。まあ、湖では大量に連れたのでよかったのだが、その後の帰り道が分からくなってしまい、今の有様というわけである。

部長の後先考えない性格が俺にも移ったのだろうか?

 

 

「さて、どうしようか」

「ねえねえ」

 

 

声のする方に視線を向けると、そこには俺のコートの裾を掴んでいる少女が居た。

短い金色の髪に血の様に紅い瞳、白黒の服に黒いロングスカート、頭にはお札の様な赤いリボンが結ばれている。少女は物欲しそうな目で俺の事をじっと見上げている。

 

 

「こんにちは。お嬢さん」

「こんにちわー。こんな所で何してるの?」

「ああ、ちょっと道に迷ってな」

「そーなのかー」

 

 

少女は笑顔で両腕を広げるとふわりと宙に浮いた。

 

 

「なるほど、妖怪か」

「そーだよー。人喰い妖怪だよー」

 

 

少女は無邪気にそう答える。

一応俺は人間の筈なのだが、目の前の少女はそんなことも気にせずにふよふよ浮いている。

 

 

「そうか。なら、俺を喰うの?」

「しないよー」

「………え?」

 

 

少女の答えに俺は抜けた声を上げた。

人喰い妖怪は、その名の通り人を喰らう妖怪だ。例えそれが可愛らしい少女の姿をしていたとしても、その本能は変わらないはずだ。

しかし、少女はその気など一切無いようで、俺の周りを未だにふよふよと飛んでいる。

 

 

「可笑しなお嬢さんだな」

「だって、ずっと前に約束したから」

「約束? ……あ」

 

 

少女がその場でぐるっと一回転すると、少女の服のポケットから何かが落ちた。

地面に落ちた何かを拾い上げると、それは失くしたと思っていた黒いカードホルダーだった。

 

 

「これは……」

「それはね、昨日森の中で見つけたの」

「そうか……」

「もしかして、それユウキのだったの?」

「ああ、失くしていて少し困っていたんだ」

「そーなのかー。だったら返すね」

「ありがとな」

 

 

俺はカードホルダーをポケットに入れる。

 

 

「でも、その中に入ってたのって“スペカの素”だよね?」

「“スペカの素”?」

「あれ? もしかして“弾幕ごっこ”知らないの?」

 

 

少女が不思議そうに首を傾げる。

弾幕ごっこ、正称スペルカードルールとは幻想郷内での争いごとを解決するための擬似的な決闘、という名のただの遊び。そしてその際に使われるのがスペルカード、発動宣言をすることによってカードに刻み込まれた弾幕を発動できる。それで、カードホルダーに入っていたカードがそれの素となる“スペカの素”だ。

 

今朝、霊夢と魔理沙が弾幕ごっこをした後にボロボロになった二人に詳しく聞いていた。

余談だが、弾幕ごっこをやった原因は“どっちが三色団子を奢るか”という、全く持ってくだらない理由だった。ちなみに、勝者は霊夢だった。

 

しかし、まさかホルダーに入っていたカードがスペカの素だったとは………………。

幻想郷での争いごとに使われる弾幕ごっこ、それに用いられるスペルカード、それの素となるカードがこのホルダーに入っていた。

美羽はこれからの面倒事に必要になる物だと言っていたが、まさか面倒事って………………、

 

 

「ん? どうしたの?」

「いや、少し考え事をしてただけだ」

「そーなのかー」

「そうなのだよ。……って、そういや名前聞いてなかったな」

「え? あ、うん……そうだね」

 

 

少女はそう言うと俺の目の前に着地した。

一瞬、少女は俺の顔を見て悲しげに表情を曇らせた気がした。

 

 

「私の名前はルーミアだよ」

「俺は神無 悠月だ。よろしくな、ルーミア」

「よろしくね、ユウキ」

 

 

ルーミアはニコニコと笑いながら握手する。

どうやらさっきのは気のせいだったようだ。

 

 

「ところで、ユウキはどうしてここに?」

「あ~それが道に迷ってな、困ってんだよな」

「ふ~ん。だったら私が案内してあげる」

「いいのか?」

「いいよ‼」

 

 

ルーミアが元気よくそう言うと俺の後ろに回って背中をよじ登り始めた。そして、ルーミアは登り終わると俺の頭を抱えたまま「ふにゃ~」と気の抜けた声を上げた。

 

 

「なんで肩車?」

「気にしない、気にしない」

「………………そうだな」

「そーなのだー」

「それじゃあ、案内頼むぜ」

「任せろー」

 

 

俺はルーミアを肩に乗せたまま、彼女が指差した方へと歩いて行った。

 

 

 

                     少年少女祈祷中

 

 

 

「着いた~」

 

 

見慣れてしまった神社の境内に着くと俺は深い溜息を吐いた。

空を見上げるともうすっかり茜色に染まりきっていた。

 

 

「早く夕食の準備をしないとな」

「それじゃあ、私はもう帰るね」

「あ、どうせだからルーミアも食べて行けよ」

「え? いいの?」

 

 

ルーミアは目を輝かせながら俺を見つめている。

やっぱり、人喰い妖怪と呼ばれるだけあるから食欲は人一倍あるのだろう。

 

 

「ああ、ここまで送ってもらった礼だ」

「わはー♪」

「それじゃ、先に居間に行っててくれ。霊夢にはあとで伝えておく」

「わかったー」

 

 

ルーミアは両腕を広げて嬉しそうに飛んでいった。

うん。やっぱり子供は笑顔が一番だと、彼女を見つめながら俺はそう思った。

しかし、さっきから俺の心には腑に落ちない思いあった。それは、俺が一瞬だけ見たルーミアの悲しそうな表情だった。今でも、その時のことが頭から離れない。

 

 

「……とりあえず、霊夢に報告してくるか」

 

 

胸にモヤモヤとした気持ちを抑え込みながら、俺は霊夢の下へと向かった。

 

 

 

 

 




空亡「今回はルーミアとの出会いでしたが」
悠月「あれ、これってもうちょっと後の方なんじゃねえのか?」
空亡「理由は主に僕が好きなキャラだというのと………」
悠月「110……あ、ここって電波届かないのか」
空亡「なに自然に通報しようとしてるんですか」
悠月「ロリコンは撲滅すべきだと思う」
空亡「子供に好かれる上に懐かれてるあなたにだけは言われたくありませんね」
悠月「で、続きは」
空亡「ぐぬぬ……後々のフラグというものですよ」
悠月「ちゃんと回収できるのか不安だぜ……」
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