双花 椿希side
「参ります‼ 獄界剣『二百由旬の一閃』」
妖夢は勢いよく走りだすと同時に傍にいた半霊が私の周囲へと飛んできて大玉の弾幕を放ってきた。彼女の斬撃を避けるついでに弾幕を避けると大玉は弾け、小さな弾幕として私へと向かってきた。私は軽やかな足取りで弾幕を避けると今度は弾幕の向こうから彼女が攻撃を仕掛けてきた。
「おっとっと……危ない危ない」
「あの、ふざけないでください」
「ふざけてなんかないわよ。これでも本気よ」
「私にはそうは見えませんが……」
「ひどいわね。それじゃあ、妖夢の本気はその程度なの?」
「言ってくれますね」
「ふふ、私だって本気で戦ってくれる人にはふざけずにちゃんと戦うわ」
「でも、雰囲気はいつものままのように思えるのですが?」
「……そうかしら?」
私は口元をニヤッとさせると押えていた殺気の一割を妖夢に当てた。
彼女は一瞬だけ怖気づいて一歩下がったが、持ち前の根気でなんと踏みとどまっている。
「どう? これでもいつもの私かしら?」
「……確かに、この殺気は凄まじいものですね」
「さて、降参する?」
「まさか、俄然やる気が出てきましたよ‼」
「その生気のみなぎった瞳、見てるとこっちも楽しくなるわね」
「いざ‼ 人符『現世斬』」
彼女は刀を鞘に納めると目にも止まらぬ速さで突進してくると、私を横切る瞬間にそれ以上の速度の居合切りを放った。身体を逸らしてそれを避けると後ろの方で急カーブする音が聞こえた。
「まだまだ‼ 人鬼『未来永劫斬』」
「やれやれ。『睡蓮華』」
彼女が突進してくるのと同時に私も走りだし、互いを横切る瞬間、それぞれの刃がぶつかり金切り音が鳴り響いた。その後もそれの繰り返しで、傍からは一閃同士のぶつかり合いにしか見えないほどのスピードで戦っていた。
しばらくするとお互いの攻撃は止み、その場で背中を向い合せて立っている。
「なかなかいい剣筋ね。さすが冥界一の盾を誇っているだけはあるわね」
「椿希さんこそ、幽々子様がお目に掛ける程はありますね」
「やっぱり幽々子ちゃんにはわかるのね」
「ええ、あの方はずっと人の生き死にを見てきたお人ですから」
「でも、だからこそ私は私を好きになれないわね」
「え?」
「ふふ、こんな話より今は遊びを楽しみましょう」
「……はい。断迷剣『迷津慈航斬』」
彼女は楼観剣を振りかざすとその刃に光が宿っていく。
溜めの攻撃は普通なら打たれる前に潰すのが鉄則だけど、私はあえて放たれるまで待っている。
力を溜め終えた彼女は私の方へと刀を振り上げたまま突っ込んで来た。
「……『千日紅』」
刀が叩き付けられる瞬間、柄でそれを防ぐと相手を引き寄せるように回転しそのまま彼女の背中に回し蹴りを放った。その衝撃で彼女は周りの竹林をなぎ倒しながら吹っ飛んでいったが、刀を地面に突き刺して何とか踏みとどまった。
「やっぱり、身体は憶えているのね」
「くっ……今のは」
「我流、と言ってもほとんどが受け流しや防御なだけの護身術よ」
「それでも、まさか今のを真正面から受け止めるなんて……」
「威力を殺せば、どの攻撃もただの斬撃よ」
「ならば‼ 魂魄『幽明求聞持聡明の法』」
傍にいた半霊が揺らめきだすとその姿は妖夢と瓜二つの者へと変わった。それは刀も例外ではなく彼女らは二振りの刀を構えると同時に私へと攻撃を仕掛けてきた。お互いの半身なだけはあって、そのコンビネーションは良いものだ。
半人半霊といっても、実質は二対一という非常に不利な状況ね。
「だからこそ、楽しいのよね」
押されている状況にもかかわらず私は口元をニヤッとさせた。
「行きます‼ 天界剣『七魄忌諱』」
「行きます‼ 六道剣『一念無量劫』」
二人の声が立体音響のように反響すると、虚空に無数の剣閃が走りそこから色鮮やかな弾幕が放たれた。それを避けようと移動したとき、もう一人の放った八芒星の剣閃に囲まれてしまっていた。逃げ場はない、普通ならこんな状況を楽しむ余裕なんて無いはずなのに…………どうしてこんなにも私は楽しい気持ちになっているのだろう。
「ふふ……『彼岸花』」
私は鞘に刀を納めると目にも止まらぬ速さで抜刀し、辺り一面の弾幕をすべて斬り伏せた。
その剣閃は近くにいた彼女らにも届き、本体である妖夢はそれを防ぐが、もう一人の半霊は反応が遅れ斬撃を受けて元の半霊へと戻った。
「あ~らら、元の可愛い半霊に戻っちゃったわね」
「何なんですか今の」
「居合切りの応用よ。ただ、スピードが違うだけ」
「……何なんですか、貴女は」
「言って無かったかしら? 私、“天災”なのよ」
「天災……ですか」
「さて、そろそろ終わりにさせましょうか」
「はい‼ 『待宵反射衛星斬』」」
彼女は刀を天高く振り上げると雲に隠れていた月が再び照らし出し、刀に光が反射して眩しさに目がくらむ。長い溜めの後、月光が揺らぐ瞬間に斬りかかってきたと思えば、いつの間にか刃状の弾幕に囲まれていた。刹那でも反応が遅れれば恐ろしい無差別攻撃ね。
「なら……咲き乱れ」
私はもう一度鞘に納めると向かってくる彼女を迎え撃つ。彼女が私に刃を振りかざした一瞬、私は片足を踏み込むと勢い良く抜刀し、八つの斬撃を身体に浴びせた。彼女は私の真後ろで刀を構えたまま立ち止まり、私も刀を垂らして立っている。
「……双花一心流『八重桜』」
私は静かに鞘に刀を納めると、カチャっという音と同時に彼女は地面に倒れ込んだ。周りに配置されていた弾幕もそれと同時に消え去った。
刀を元のブレスレットに戻すと倒れている彼女の下へと振り返った。そこには疲れて眠っている妖夢を嬉しそうに膝枕している幽々子ちゃんの姿があった。
「ふふ、この子も随分無茶をしたわね」
「幽々子ちゃんも人が悪いわ。こんなことで私の戦いを見たいなんて」
「だって、貴女と弾幕ごっこをしても避けてるばかりで面白くないんだもの」
「私はユウキ先輩みたいに弾幕は撃てないから。それに……」
「ん?」
「たとえ亡霊だとしても、大切なお友達を傷付けたくないの」
「その割には、妖夢に容赦なかったけど?」
「それはそれぇ~これはこれぇ~♪」
私は歌うように誤魔化すとゆゆちゃんは優しく微笑んだ。
「さて、私はこの子が目が覚めるまでここに残るわ」
「ごめんね。久しぶりで私も手加減が効かなくて」
「いいのよ。だって、全部峰打ちだったでしょ」
「見えてたのね。さすがゆゆちゃん」
「妖忌や妖夢の戦いを見ていたら自然と分かるようになったのよ。それに」
「ん?」
「なんだか遠い昔に見たことあるような気がしたのよ」
「……そう」
「ふふ、今のは気にしないで。早くユウキの下に向かいなさい」
「わかった。できたら一緒にお月見しようね」
私はそう言い残すとその場を後にするように走り出した。
過去に決着をつけたつもりだったけど、どうやらそう簡単に拭えないみたいね。
空亡「これでようやく、四面が終わりましたね」
椿希「最後が私なんて光栄です~」
空亡「しかし、やっぱり自機組が全敗というのは……」
椿希「しょうがないですよ。だって私たちチートですし」
空亡「これ以上ないほど納得する理由ですね」
椿希「強すぎる設定にした駄作者さんが悪いのですよ~?」
空亡「言い返せません」
椿希「では、いよいよ原作に戻りますね」
空亡「そうですね。では、次回も楽しみにしていてください」
次回予告
竹林の奥へと進むユウキたち一行、だがその行く手を兎詐欺の罠が阻む。
東方永夜抄、シンデレラトラップ、どうぞお楽しみに‼