東方絆紡録   作:空亡之尊

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シンデレラトラップ

神無 悠月side

 

 

「ったく、面倒だな」

 

 

俺は竹林の中を走り抜けながら俺はふてぶてしく呟いた。

魔理沙からの弾幕ごっこを終えた後、自分の勘を辿って竹林を走っていたが、あれからいくら進もうとそれらしい建物や気配すら感じない。改めて迷いやすい竹林なんだと思わされた。

 

 

『どうですか?』

「ダメだ。さっきから同じところばかり回ってる気分だ」

『持ち前の勘はどうなさったんですか?』

「……俺の勘も、自然の創りだした迷路には敵わないようだ」

『ユウキの勘が通じないなんて、どんな竹林なんですか』

「俺が知りてえよ。でも、とりあえず進むしか……‼」

 

 

速度を上げようと足を踏み入れたその時、地面が抜け落ちた。間一髪でそれを飛び越えて地面に着地するが、スイッチが入ったような音が響き、今度は竹槍の束が上空から降ってきた。咄嗟にひるがえしてそれを避けながら走るが、その度にトラップが発動して色々な方向から色々な罠が襲い掛かってくる。

 

 

『あわわわ……何なんですかー‼』

「侵入者用の罠って考えるのが普通だよな」

『これじゃあ先に進めませんよ』

「いや、むしろ好都合だ」

『え?』

「罠が仕掛けられているのを辿っていけば、少なくとも仕掛けた張本人のところに行けるからな」

『なるほど……逆転の発想ですね』

「それじゃあ、突破していくぜ‼」

 

 

迫り来る数々の罠を掻い潜りながら先へと進んでいく。

それに、さっきまで感じられなかった気配も薄々と解るようになってきた。というよりも、罠が発動したところに白いウサ耳を付けた少女達が見え隠れしている。

 

 

「ウサ耳……妖怪兎か」

『なんでまたこんなことを』

「恐らく、この先にいる奴の手下だろうな。紅魔館で言う妖精メイドみたいな」

『なるほど。ってことは、今回の異変の首謀者って?』

「兎と月に関係する奴k――」

「隙あり。『エンシェントデューパー』」

 

 

その瞬間、誰かの声が竹林にこだますると俺の左右を囲むように赤色のレーザーが放たれ、後ろからは青い弾幕、左右からは赤い弾幕が迫ってきた。注意深く避けていくが相手が見えないと対処しようがない。

 

 

「さてさて、どうするか」

『何とか相手の場所を突き止められませんか?』

「無理だな。ご丁寧に周りの妖怪兎に混じってどれが本体かも分かんねえよ」

『じゃあどうすれば……』

「決まってるだろ……全部避けながら先に進む‼」

『無茶苦茶ですよぉ‼』

「それはいつものことだろうが。行くぜ‼」

『ええい、ままです‼』

 

 

俺はクラウチングスタートの体制を取ると一気に踏み込んで走り出した。

進むにつれて弾幕も薄くなってきたが周りの妖怪兎による弾幕もあって一向にその密度が減る兆しはない。斬り払って進めばまだマシなのだが、魔理沙との戦いで月美も消耗している。無理をし過ぎたら歯がこぼれて使い物にならなくなってしまう。

 

 

「ああ、面倒だ」

『すみません。私が不甲斐ないばかりに』

「気にすんな。まだ半分しか力が戻ってないんだろ?」

『はい。美月様からそう告げられました』

「やっぱり“アレ”がないとだめなのか……」

『そんなことより、今はこの状況をどうにかするか考えましょうよ』

「それなら心配ねえよ」

『え?』

 

 

弾幕が一瞬途切れるのを見計らうと今度は俺の前方と後方を挟まれた。そしてまたあの青い弾幕が今度は横から、赤い弾幕は前後から飛んで来た。

やっぱり、このスペカは使用者の配置によってパターンが変わるようだ。俺は今さっき飛んで来た青い弾幕の方向へと視線を向けると力強く足を踏み込む。

 

 

「――そこだ‼」

 

 

俺は気配を察してその方向へと走り、竹林を抜けるとそこには一人の少女が居た。

くせっ毛のある短めの黒髪、桃色の半袖ワンピース、ふわふわな白いウサ耳を生やしている。

少女は俺を見ると驚愕に顔を歪め、逃げようと後退りをする。

 

 

「見つけたぜ」

「げっ、もう来たの⁉」

『アナタですか、あんな罠を仕掛けたのは』

「ああ、この因幡てゐ様の罠をすべて掻い潜るなんて、どんな人間かと思ったけど」

「まさかこんな奴だとは思っていなかったって感じだな」

「お師匠様に聴いてた奴等の情報とまったく違うからね」

『お師匠様? その方がこの異変を起こしたのですか?』

「そうだよ。でも、まさか誰よりも先に来たのが人間だったのはさすがに驚いたね」

 

 

てゐは俺の方を見ると面白そうに笑った。

因幡、兎、エンシェントデューパー、どこかで聞いたことがあると思えば、そういうことか。

 

 

「因幡の素兎、スペカの『太古の詐欺師』ってのはこれが由来か」

「へえ、君みたいな人間がそんな昔話を知ってるなんて。ますます気になるね」

「これでも神職の家系なんでな、そういう類ならいくらでも知ってんだよ」

『改めて聞くと、本当に二十歳ですかと疑問を持ちますね』

「うるさい。それよりも、一つ聞かせてもらおうか?」

「なんで月を偽っているのかでしょ? そんなの……」

「「教えるわけないじゃん/教えるわけないよな」」

 

 

俺とてゐはお互いにニヒルな笑みを浮かべてそう言った。

 

 

「キミみたいな得体も知れない人間にそう易々と教えたら私の立場がなくなるわ」

「だろうと思ったぜ。なら、力づくで聞かせて貰うだけだ」

『しかしユウキ、私は……』

「心配すんな。あんな黒兎、素手で十分だ」

 

 

俺はてゐを見てニヤッと笑った。

彼女はそれを見て面白くないのか俺を睨みつける。

 

 

「人間のくせに言ってくれるね」

「生憎、俺には時間がないんでな。手短に終わらせるぞ」

「なら、私を捕まえることだね」

「二兎を追う者は一兎をも得ず、だが一匹ならどうにかなる」

「フフ、その自信今すぐ打ち砕――」

「師走『月歩』」

 

 

俺はその場でトントンと足踏みをすると彼女が目を瞑った隙にその背後へと移動した。

移動原理は不明瞭だが、某死神の瞬〇に似ていると認識してもらっても構わない。

 

 

「はい、捕まえた」

「え?」

「本来は敵との間合いを詰める時に使う代物だが、状況が状況だから仕方ない」

「え、えぇ!?」

「まあ、そういうことだから――」

「いやいやいや‼ 何さりげなく会話を続けようとしてるの‼」

『てゐさん。今はそんな事より、約束通りこの異変について話してもらいますよ』

「アンタだけはまともだと思ったのに‼」

『こう言う時はその場の雰囲気に乗るのが楽なんで、諦めてください』

「そ、そんな……」

 

 

てゐは疲れ切った様子でその場に手をついた。

早くしないと尺が持たない、とどこからか強いられている気がする。

 

 

「それじゃあ、話してもらおうか?」

「うぅ……それでも話す気にはなれないわ」

「まあ、そうだよな」

「でもその代り、永遠亭までは案内してあげるわ」

『永遠亭?』

「そこにウチのお師匠様と姫様が居るわ。異変の事ならあの人達に聴くのね」

『いいんですか? わざわざそんなことをして』

「なるほど、そういうつもりか」

『え? どういうことですか?』

「案内するのは、その人たちに何かあったとしても大丈夫だという自信があるから。だろ?」

「勘が良いわね。ええ、あの二人はそんじょそこらの妖怪や人間にやられるほど弱くないわ」

「むしろ、そうじゃなかったらこんな異変なんて起こせるはずねえからな」

「たしかに。アンタと姫様、少し話が合いそうな気がしてきたよ」

 

 

てゐはそう言うと立ち上がり、竹林の中を歩いて行く。

俺もその後を追うように歩き出した。

 

 

 

 




空亡「今回は出番の少ないユウキと兎詐欺ことてゐさんの遭遇でした」
悠月「おい、一言余計だぞ」
空亡「今回はオリキャラの導入が多いのでそういう風になるんですよ」
月美「いいじゃないですか。私なんて今回も台詞が少ないんですから‼」
悠月「お前の不満の矛先は俺ではなく駄作者に向けろ」
空亡「ヂリ賃になるだけですから諦めてください」
月美「そんな~」
空亡「さて、ようやく永遠亭組が出てくるわけですが……」
悠月「この流れ、どうせ俺の番じゃないんだろ?」
空亡「そうです。それについては、次回を楽しみにしていてください。それでは」


次回予告
月は人を狂わせ、兎の紅い瞳は幻覚を魅せる。そのとき、蒼き瞳は何を視る?
東方永夜抄、狂気の月~Perfect Blue Eye、どうぞお楽しみに‼
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