東方絆紡録   作:空亡之尊

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悠久幻想郷 ~Sacred of Blade

明星 美羽side

 

 

「……騒がしいわね」

 

 

私は玄関の方を見ながらそう呟いた。

聞き慣れた弾幕の音に聞き覚えのあるナイフの音、どうやら動いたのはユウキだけじゃなかったみたいね。でも、これでこれで残っている主戦力は二人だけになった。

 

 

「それにしても長い廊下ね」

 

 

私は目の前に永遠と続く廊下を眺めながら忌々しく呟いた。

さっきから見えるのは板張りの廊下と障子や襖だけ、本当に進んでいるのか疑問に思うほどこの廊下が長く感じられる。前に冥界の階段で無限ループにはまってしまった事を思い出してしまった。

 

無限ループの主な使い方といえば、よくゲームで足止めなんかに使われたりしているわね。私も初めの頃は小一時間も無限ループにはまってしまい、美命様に涙流されながら笑われたわね。あれからゲームなんてやってないし、これが終わったらまたしてみようかしら。

 

 

「だから、そんなので殺されないわよ」

 

 

私へ振り向きざまに手をかざして飛んで来たものを掴むと口元をニヤッとさせた。

よく見るとそれはリボンの付いた矢で、ご丁寧にヘッドショットと四肢を狙って放たれていた。

 

弓矢を放り捨てると廊下の向こうからやってくる一人の女性の姿が見えた。

後ろで三つ編みをしている長い銀髪、左右で赤と青に分かれた特殊な配色のフリルの付いた半袖とロングスカート、頭には赤い十字マークが入った青いナース帽、手には弓が握られている。

女性は私の事を値踏みをするようにじっと見つめている。

 

 

「……こんな所に人間が何の御用かしら?」

「白々しいわね。貴女ならわかってる筈わよね、八意 永琳」

「それを知ってるなんて、もしかして月の使者……」

「残念ながら違うわ。好奇心旺盛なご主人様のリストに乗っていたのを思い出しただけよ」

「ちなみに聞くけど、どんなリストかしら?」

「『幻想郷要注意人物情報(別名・面倒な奴等リスト)』という、至って良心的な資料よ」

「別名の方で悪意しか感じられないのだけど」

「まあ、その別名は私が考えたんだけどね~」

 

 

私はふざけるように微笑むと、彼女は怪訝そうな表情をこちらに向けた。

今のリストのことについて怒っているのか、それとも私のこの態度に怒っているのかどっちかね。

 

 

「はあ~大体貴女がどんな人間なのかは分かったわ」

「へえ、これだけで人間性を理解するなんて、流石月の頭脳と称されることはあるわね」

「ところで、どうすれば帰ってくれるのかしら?」

「嫌われちゃったわね。もちろん、月を元に戻してくれるのなら潔く帰るわよ」

「それは無理ね。心配しなくて、今夜が終われば月は戻すわよ」

「満月が終われば月の使者から逃れられる。これはそれまでの苦しい時間稼ぎの為?」

「…………天丸『壺中の天地』」

 

 

彼女は有無を言わさずスペカを発動させると廊下の向こうから光の弾が現れ、私を囲むように集まると外側へと弾幕を放ち視界を遮った。内側にも弾幕を放ってきたけど、それほど手強いとも思わなかったその時、弾幕の向こうからさきほどの弓矢が飛んで来た。

咄嗟に剣を展開してされを防ぐが、それは完全に私の心臓や頭を狙ってきている。

 

 

「祓え‼ 子守唄『碧のララバイ』」

 

 

私は剣を構えるとその場で大きく薙ぎ払い光の弾や弾幕もろとも吹き飛ばした。

剣を撫で下ろして目の前を見ると、そこには弓を構えて動じない彼女の姿があった。

 

 

「普通の人間じゃないわね、貴女」

「永遠の時間を生きてる貴女たちに比べればマシよ」

「そこまで知っていて、一体何が目的なの?」

「はっきり言って無いわ。ただ、私は自分の主の命のままに動く一本の剣だからね」

「そう……可哀想な子ね」

「同情は要らないわ。特に千年も罪と罰から逃げ続けている貴女からはね」

「余計なお喋りが多いわね。蘇生『ライジングゲーム』」

 

 

彼女は目障りな虫を排除するような瞳で私を見るとまた弓矢を放ってきた。それを軽くあしらうように斬り払うと弓矢が弾け、私の周りを青い弾幕が囲った。彼女は再び弓矢お放つと同時に周りに弾幕をばら撒いた。逃げ場のない弾幕に囲まれ、弓矢を弾いても再び囲まれ、目の前からは弾幕が迫ってくる。

 

 

「頭脳派の割に狡猾な弾幕ね」

「その口を黙らせるにはどうすればいいのかしら?」

「さあね? 叙事詩『橙のエピック』」

 

 

私は次に弓矢を放つタイミング合わせて剣を投げ飛ばすと同時に走りだす。剣は放って間もない弓矢に当たりそこに弾幕が広がり、その頃には私はそこに辿り着き投げた剣を手にして斬りつけた。

間一髪で後ろへと飛んで避けた彼女は私を睨みつける。

 

 

「口先だけじゃないみたいね」

「フン、口先だけの雑魚なんて哀れな道化以下の存在よ」

「あら、それは貴女も同じように思えるのだけど」

「そういう事は私に勝ってから言うのね」

「そのつもりよ。神脳『オモイカネブレイン』」

 

 

彼女のから光の弾が放たれると廊下の中央を陣取り、そこから全方向へと高速の弾幕をばら撒きだした。よく見ると一部だけ弾幕が行き届いていない空間があり、それは時計回りをするように移動している。私は空間に沿うように弾幕を避けていくと、光の弾からはレーザーが、彼女からは小さな弾幕がまんべんなくばら撒かれる。

 

 

「うわ~嫌な弾幕。月の頭脳が聞いて呆れるわ~」

「さっきから、貴女ふざけてるの?」

「ふざけてないわよ。本気、真面目、一生懸命の三拍子よ」

「とてもそうは見えないわね」

「人間は見た目で判断はできないでしょう。実年齢『ピー音(排除されました)』歳のおばさん♪」

「…………………………」(プツン)

 

 

私の台詞に弾幕が止むと彼女から殺気にも怒気にも嫉妬にも似たオーラが見える。

どうやら女性限定の禁句はこの幻想郷でも通じるようね。これは使えるネタが増えたわ♪

 

 

「……殺すわよ」

「そうそうその瞳‼ 手加減無しで私の事を殺しにかかるような殺気と思念が籠った美しい瞳‼

 ああ、いつ見ても心が引き締まるわ。殺し合いはそうでなくちゃ面白くもなんともないのよね」

「遺言はそれだけでいいかしら?」

「う~ん。私の遺言は『貴方の人生という舞台に共演できただけで私は満足です。ユウキ……』と言って彼の目の前で安らかに眠るのが私の理想だから…………まだ死ぬわけにはいかないわね♪」

「その理想、叶わなくて残念ね。天呪『アポロ13』」

 

 

彼女は笑っていない笑顔でそう告げると周囲に赤と青の弾幕をばら撒いた。弾幕は一定の位置まで行くと停止し、彼女の下へと収縮すると一斉に拡散した。

アポロ計画、それは人類が初めて月に辿り着いた歴史的な計画。しかしアポロ11以降、有人機が月面に辿り着くことは無かった。アポロ13はそれを表しているように見える。

 

 

「まあウチの主の情報では、月の民が撃退しているという仮説が立てれている模様~」

「貴女だけじゃなくて、その主とやらにも話を聴く必要があるわね」

「フフ、やれるものならやってみなさいよ。ただし、この私を倒せたらの話だけどね」

「自信満々ね。そこまで慢心していると、いつか足元をすくわれるわよ」

「それはご忠告どうも。でもね、こっちは貴女よりも地獄と絶望を味わってきている身だから」

「どういう意味よ?」

「結論だけ述べれば、これは慢心じゃなくて私の本気の演技だという事よ」

「戯言を……秘術『天文密葬法』」

 

 

彼女はスペカを発動させると今度は大量の光の弾が現れて私の周りへと集まってきた。光の弾からは内側へと向けて密度の濃い弾幕を放ってくると、あらゆる方向から弓矢が飛んでくる。身動きもままならない上に見えないところからの射撃、歩が悪いわね。

 

 

「だからこそ、面白いのよね。夜想曲『黒のノクターン』」

 

 

私は剣を下ろし、次の弓矢が飛んで来たタイミングに合わせてその方向へと片方の剣を勢い良く振り上げる。その衝撃で弾幕と弓矢が吹き飛ぶと光の弾の向こうに彼女の姿を捉えた。彼女の下へと走るともう片方の剣で彼女の身体を斬り裂いた。

周囲に鮮血が飛び散ると彼女は顔を歪めながら後退りする。しかし、その傷はみるみるうちに治っていっている。

 

 

「不老不死の蓬莱人、いや、死ねない罪人と言った方が似合っているわね」

「あら、不老不死なんて人類の夢だと思うんだけど?」

「死ねない以上の苦しみなんて他にはないわ。人の夢で儚いを表したいい例よ」

「……そう考えるのね、余程の地獄を見てきたのね」

「言ったはずよ、同情は要らない。情け人の為にならず、故にそれは殺し合いでは不要」

「貴女は、殺し合いの中でしか自分の存在価値を見いだせないのね」

「それもあるけど、何よりこれ以上弱い自分を見せるのが単に嫌なだけよ」

「……そう」

「さて、こんな無駄話をするくらいなら、早く終わらせましょうか」

「ええ。禁薬『蓬莱の薬』」

 

 

彼女は今までになく優しく微笑むとスペカを発動させた。彼女を護るように周りにはレーザーが走り、その中心からはこれまでのスペカと類似したような弾幕が放たれる。その密度は時間が増すごとに濃くなっていき、終いには視界全てが弾幕に覆われていた。

 

 

「絶対絶命を覆すにはとっておきの切り札は、最後まで取っておくものね」

 

 

私は口元をニヤッとさせるとポケットから一枚のカードを取り出した。

そこには彩られた舞台の上、白いドレスを身に纏った金色の瞳をした少女が描かれている。

 

 

「私の剣技は神を殺す‼ 神殺『剣たちの創聖交響曲(セイグリット・オブ・ブレイド)』」

 

 

スペカを発動させると私の瞳が金色に輝きだし、私の周囲に11本の剣が現れる。

それぞれは意志を持ったように動きだすと迫り来る弾幕をすべて斬り伏せ、私が走りだすと共についてくる。剣は主を護る為に存在する。それを体現するように、剣たちは私を弾幕から護る。

 

 

「これで終り……幻奏曲『紫のファンタジア』」

 

 

私は全ての力を一点に集中させると剣の柄を彼女へと突き立て、彼女の身体を廊下の向こうへと吹き飛ばした。本来なら防御した相手に使う技だけど、手早く終わらせるにはこれの方が早いからいいわね。

一応無事なのか彼女の方へと視線を向けると、彼女は廊下の向こうから来た影に支えられていた。

 

 

「随分派手にやってるな、美羽」

 

 

彼、ユウキはそう言いながら抱きかかえた彼女を廊下の端へと座らせた。

 

 

「相変わらず、女性には優しいわね。だから惚れられるのよ」

「うるさい。俺が何をしようと、俺の勝手だ」

「困るのよ。これ以上、ライバルが増えたら厄介だもの」

『ああ~それはなんとなく分かる気がしますね』

「おい、何お前までコイツの話に賛同してんだよ」

『いや、だってここ最近になってからユウキの被害者が増えてきているのは事実ですし』

「人の事を連続殺人犯みたいに言うな」

「そうね。どちらかというと女性の心を盗む大泥棒と言った方が的確かしら?」

『あ、それが良いですね』

「よくねえよ。ったく……」

 

 

彼は深い溜息を吐くと私の横を通り過ぎていく。

 

 

「……この先は気を付けなさいよ」

「……ああ、そんなこと百も承知だ」

「……相変わらず、命知らずな所も素敵ね」

『……今回の異変、こことアナタ以外に関わっている奴がいるみたいです』

「……薄々気付いてたわよ。こっちは任せなさい」

「……気を付けろよ」

「……そっちこそな」

 

 

彼はそう言って通り過ぎると廊下の向こうへと消えていった。

さて、こっちはこっちで“アクシデント”の対処に向かいましょうか。

 

 

 

 

 




空亡「今回は月の頭脳こと、永琳さんとの対決でした」
美羽「やっぱり弾幕ごっこは私には性が合わないわね」
空亡「皆さん近接武器ですからね。オリキャラのほとんどはそうですよ」
美羽「その上、あの月の煩悩ってば意地の悪い弾幕ばっかだし」
空亡「あの方の弾幕は慣れないとまず被弾しますからね」
美羽「でも、それを華麗に回避する私ってばやっぱり凄いわね」
空亡「……そう言えばスペカについてですが」
美羽「あれは咲妃と同じね。詳細については後日のキャラ紹介でいいわね。(無視された)」
空亡「それでは、次回も楽しみにしていてください」


次回予告
偽りの月は夜空に輝く、二人の天災はそれを眺めて何を思う?
東方永夜抄、ルナティック20××、どうぞお楽しみに‼
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