東方絆紡録   作:空亡之尊

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ルナティック20××

双花 椿希side

 

 

「あら~ここはどこでしょうか?」

 

 

私は夜空に浮かぶ偽りの月を眺めながらそう呟いた。

あれからなんとなく勘頼りに進んでみたけど、どうやら完全に迷ってしまったようですね。

はてさて、これからどうしましょう。ここから戻ることは恐らく無理ですし、助けを頼もうにも他に人はいないみたいだし、こうなったら自力でここを抜けるしかないようですね。

 

 

「しかし、やっぱり普通の月とは違いますね」

 

 

眺める先の月はいつものように輝いて見えるけど、何かが違う気がした。

そもそも、なんで月を偽る必要があるのだろうか。人間には一切の被害もなければ、その存在に気付いている者は少ない。妖怪にとっては居心地の悪い気もするけど、いまだに何も起こる気配はない。ここまで来て、改めてこの異変の意図が理解できなくなってきた。

 

 

「な~んて、バカな私が考えても仕方ないか」

「ええ、本当にそうですね」

 

 

私は後ろから聞こえた声の方へと咄嗟に振り返るとそこには見覚えのある人物が居た。

寝癖のついた紫かかった黒髪のセミロング、シンプルなズボンと背中に『天災』と書かれている黒のジャージと紺色のスカート、口にはいつものチュッパチャップス的な何かを咥えている。

その人物は近くの竹に寄り掛かりながら私の事を見て口を開いた。

 

 

「その無計画な性格、やっぱり直した方がいいですよ」

「そんなこと言うなんてひどいよ~」

「否定するくらいなら今の状況を自分で打破してくださいよね」

「もぅ~久しぶりに会ったっていうのに冷たいな~ひかりちゃんは」

「うるさい」

 

 

そう言って彼女、愛識 光輝こと“ひかり”ちゃんは私を睨んだ。

彼女とは元の世界の仲間であり同じ学園の同級生、部活メンバーの中では一番の頭脳派です。

今は舞彩先輩の事務所でプログラマーとして働いていると聞いたけど、噂では未だにハッカーとしての経験を活かして稼いでいるとか。ちなみにそっちの方が本業らしい。

口調や容姿から男の子と間違われやすいけど、こう見えて出るところは――――‼

その時、私の視界を闇が覆うと同時にこめかみに鋭い痛みが走った。

 

 

「あああああ‼‼‼‼‼ な、何するのぉ‼」

「いえ、何やら余計な事をしゃべっているように思えたので」

「なんで分かっ――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛‼‼‼‼‼」

「……もっと強くしてほしいですか?」

「わかったからぁ~‼ 謝りますから許してよぉ~‼」

 

 

涙ながらに懇願するとすっと拘束が解け、私は地面に座り込んで頭を押さえた。

ひかりちゃんは手首を回しながらこきこきと鳴らしている。その瞳はやっぱり冷たいけど、いつものひかりちゃんで少し安心した。

 

 

「ところで、ひかりちゃんはどうしてここに?」

「実は僕も部長さんから七不思議の調査を依頼されまして、その途中でここに迷い込みました」

「やっぱり、みんな同じ事情と方法で連れてこられているんだ。……生徒会には会った?」

「ええ、久しぶりに黒淵と会いましたよ。相変わらず、眠そうでしたけど」

「あはは~呑気な人だよね~」

「彼の代わりに言っておきます。お前が言うな」

「はうぅ~。で、ひかりちゃんは今はどこに居候してるの?」

「この先の永遠亭という屋敷ですよ。ちなみに、異変の首謀者もそこです」

「え、異変?」

「……その様子では、忘れかけていましたね」

「えへへ~ひかりちゃんに久しぶりに会えたから嬉しくてつい~」

 

 

私は呑気に笑って誤魔化すと、彼女はやれやれと言いながら溜息を吐いた。しばらくすると彼女は何も言わず歩き出した。

 

 

「あれ? 何処に行くの?」

「どうせですから、そこまで案内しますよ」

「いいの? 仮にも居候させてもらっているところでしょ?」

「別にいですよ。来たからと言って、アナタは邪魔するような人ではありませんからね」

「まあ~私はこの異変が終わって先輩とお月見できればどうでもいいよ~」

「相変わらずですね。あと、あの人ならすでに永遠亭に着いている頃だと思いますよ」

「なんで分かるの……?」

「なんとなく、そんな気がしますから」

 

 

彼女はそう言うとすたすたと歩き出す。

一見ドライな性格と思われる彼女は、実は超が付く典型的なクーデレで、ユウキ先輩に対して何の恥ずかしげもなく愛の告白をするほどだ。昔部活内で波乱が起きたのはいい思い出だ。

 

 

「しかし、今回は人が多いようですね」

「ああ~そういえば美羽先輩や咲妃先輩も動いてるんでしたね」

「まったく、いつもいつも騒がしい人達ですね」

「相変わらずつれないな~ひかりちゃんは」

「はあ~道中は暇なので今回の異変の詳細でもお教えしましょう」

「え~そんなのどうでも……」

「え?」

 

 

一瞬、ひかりちゃんが悲しそうな瞳をしたように見えたけど、やっぱり変わっていないみたいね。

 

 

「……ううん、何でもないから教えて」

「解りました。では椿希、アナタはかぐや姫という物語を知っていますか?」

「バカにしないでよ。私だってそのくらいの知識は持ってるわよ」

「それなら話が早い。実はこの異変の首謀者、そのかぐや姫なんです」

「………………え?」

「実はこの異変の首謀者、そのかぐや姫なんです」

「いや、大事な所を二回も言わなくても分かってるよ。けど……」

 

 

私は真剣な表情をしている彼女を心配するように見つめる。

 

 

「なんですか、その『頭大丈夫かな……』とでも言いたそうな瞳は」

「だって、いきなり首謀者がかぐや姫だなんて、驚く以前に理解できないよ」

「では手短に説明します。かぐや姫は月の民で不老不死、物語では月に帰ったという描写がされているが本当は逃げていた、今でも身を隠す為に子の竹林でひっそりと暮らしている、以上です」

「……うん、なんとなく分かったんだけど、それとこの異変に何の関係が?」

「物語では十五夜の晩、つまり満月の夜に月の民がかぐや姫を迎えに来たと伝えられていますよね」

「そうだね………………あれ? もしかしてこの異変って」

「察しがいいですね。そう、この異変の目的はその追手を誤魔化す為です」

 

 

彼女はそう言うがその表情はどこか呆れているように見える。

 

 

「しかし、彼女らももう少し幻想郷について調べるべきでしたね」

「ん? どういうこと?」

「『幻と実体の境界』と『博麗大結界』、それらが張られていることで幻想郷は外からは認識できない。だから、その月の民の追跡を気にする必要などなかったというわけだ」

 

 

私たちの会話に割り込むように影の向こうから現れたのは、人里で出会ったけーねちゃんだった。

 

 

「おお~けーねちゃん~さっきぶり~」

「あ、ああ、そうだな。……そちらの彼は?」

「愛識光輝、この能天気の保護者みたいなものですよ。あと、僕はこれでも女です」

「そうか、それは悪かったな」

「いいですよ慣れましたから。ところで、僕らに何の用でしょうか?」

「いや、私の知り合いがこの先の姫に喧嘩を売りに行くような予感がしたから、それを注意しに」

「へ~その知り合いってどんな人? もしかしてけーねちゃんの~?」

「そんなんじゃない。ただ付き合いが長いだけだ」

「それなら、ご一緒にいかがですか?」

「いいのか?」

「遅かれ早かれ、この異変も終わりそうな予感がしますし」

「旅は道連れってよく言うしね~一緒に行こうよ~」

「なら、お言葉に甘えさせてもらおうか」

 

 

けーねちゃんがそう言うとひかりちゃんは歩幅を合わせるように歩き出した。

その時、私たちは気付くべきだった。暗く冷たい視線を向ける“もう一人の首謀者”の存在に。

 

 

 

 

 




空亡「今回は……まあ、時間稼ぎです」
椿希「はっきり言いましたね~」
光輝「僕を出すための口実と椿希の出番を増やしたかっただけですね」
空亡「異変に対して一人オリキャラを増やすのが定番になってしまったので」
椿希「私はひかりちゃんと会えて嬉しいからいいよ~」
光輝「僕はこの子の面倒をまた見なくてはと思うと不安ですね」
空亡「まんまユウキと同じ反応ですね」
椿希「あ~早く先輩と会いたいですね~」
光輝「この後の展開を予想しましたけど、多分会いませんよ」
椿希「え? なんで?」
空亡「今回は裏ルートを歩いてもらう予定ですからね」
光輝「詳しい話は後ほど、次回も楽しみにしていてください」


次回予告
絶世の美女と伝えられるなよ竹のかぐや姫、彼女は偽りの月を見つめ、何を思う?
東方永夜抄、竹取終夜~Luna Criminal、どうぞお楽しみに‼
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