東方絆紡録   作:空亡之尊

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君まで届け、明日への焔 裏

明星 美羽side

 

 

「―――ッ」

「―――ッ」

 

 

月照らす下、静かな竹林の中で鋭い剣閃の音がこだまする。

その音は私たち互いの思いとは裏腹に、凛とした美しい音を奏でている。

しかし、その一撃一撃は確実に互いを殺す気で放たれていることには違いはなかった。

 

 

(―――殺す)

 

 

私は静かな殺気を孕ませながら右の剣を振り払うが、眼帯の青年、剣崎は軽々とそれを受け流す。

続けざまに左の剣を相手を斬り裂くように振り上げるが、その直前に剣を足で踏みつけられて阻止され、その刹那、相手の回し蹴りが容赦なく私に放たれると数m先へと吹き飛ばされた。

 

寸前のところで防御できたからダメージはそれほどでもないが、今ので確信した。

今目の前にいる青年は強い。少なくとも女子供に対して容赦ないことだけは今ので分かったわ。

 

 

「その程度か?」

 

 

彼は口元を吊り上げながらそう言った。それに対して私の中の殺意が膨れ上がった。

私は剣を構えなおすと一直線に彼の下へと迫り目にも止まらぬ斬舞を繰り出す。しかし、それすらもすべて一本の剣にいなされ、彼の表情は微かに笑っていた。

 

―――ッ‼

 

斬撃がぶつかり大きく体制を崩すと後ろへと飛んで距離を取った。

今さっきまでの戦闘がまるで嘘だったかのように、その場が静寂に包まれる。

 

 

「……はあ……はあ」

「どうした? さっきまでの勢いがないが」

「うるさい」

「その程度の力であの人達に歯向かうなんてな。洒落にもならねえな」

「うるさい」

「言っておくが、俺なんかに手間を取るようじゃ、あの人達と戦えるわけねえだろ」

「うるさい」

「やっぱり、所詮貴様は――」

「うるさいっ‼‼」

 

 

私は柄にもなく大声で叫んだ。それは焦りからくる醜いものだった。

ここまで力の差を見せつけられれば、流石の私でも今までの余裕などなかった。いつも相手の神経を逆なでるのを趣味としている私がその側に回るなんて、とんだ皮肉ね。

こんな時、彼ならどうやって打破するかしら……………………って、決まってるじゃない。

私は口元をニヤッとさせると真っ直ぐな瞳で目の前の彼をみつめた。

 

 

「フフフ……アハハハハハハハハハハ‼‼‼‼‼」

「なんだ? とうとう頭でも狂ったか」

「それは違うわ。元々“私たち”は狂ってるわよ」

「なに?」

「そうよね、こんな所で立ち止まるようじゃ彼に顔向けなんてできないわね」

「貴様、さっきからなにを……ッ‼」

 

 

その時、彼の瞳が大きく見開いた。

恐らく見えたのでしょうね、私の瞳が金色に染まっていることに。そして、私の周りに展開された剣たちの禍々しくも神々しい姿に。

それに対して気に留めなかった私は狂気に満ちた瞳を彼に向けてこう言った。

 

 

「私は舞台上で踊ることしかできない剣、明星美羽‼ お前を殺す事なんて造作もない‼」

 

 

私は狂気と自信に満ちた笑みを彼へと向けると走り出した。

一瞬にして懐に潜り込んだ私は躊躇なく彼へと斬りつける。私の心情を表すように展開された剣たちは踊りだし、それぞれが意志を持ったように彼へと襲い掛かる。

 

 

「アハハッ‼ やっぱり私はこういうのが似合ってるわ」

「っ、何だよこの数の暴力は」

「これが私の剣の能力、幻想郷的に言うなら『剣が舞う程度の能力』とでも名付けようかしら」

「剣が舞う……文字通り剣舞ってわけか」

「そうよ。1本でダメなら2本、2本でダメなら13本ってね‼」

 

 

私は両手の剣を交差させて斬り払うと目前で受け止められた。けれど、私の笑みは消えなかった。

周囲に展開していた剣たちがガラ空きとなった彼の身体へと刃を突きたてながら襲い掛かる。

 

 

「……っ」

 

 

彼は私の剣を弾くとその場で大きく剣を振り払うと周りの剣たちが四方八方へと吹き飛ばされた。

剣たちはふらつきながらも私の元へと集まり、彼へと威嚇するようにゆらゆらと揺れている。

 

 

「気味の悪い剣だな」

「失礼ね。この子たちは私の大切な家族よ」

「剣が家族か、寂しい奴だな」

「そうでもないわよ。この子たちは決して私を裏切らないから」

 

 

私は片手の白い剣を優しく撫でた。

それは傍らから見ればさぞかし滑稽に見えたのでしょうね。

 

 

「さぁて……それじゃあどうする?」

「……俺の目的は遊び過ぎたバカを連れ戻すこと。それ以上はあの方も望まない」

「だったらさっさと帰ることね。私だって無駄な戦闘はしたくない主義なのよ」

「それじゃあお言葉に甘えて……」

 

 

彼はそう言って私に背中を向ける。

 

 

「ああそうだ。どうせだからお前らも相手してやれ」

 

 

彼は腕を高らかにあげると指を鳴らした。

その瞬間、私の周りに複数の影が現れた。それらは黒いローブを羽織り、顔と思わしき所は包帯で巻かれ、その合間からは気怠そうな紅い瞳が覗かせている。

影たちは紅い瞳を私へと向け、その様子からは殺気しか感じ取れない。

 

 

「こいつら……歯車のとこにいたのと同じ」

「俺の眷属、『無謀な旅人』だ。それなりに強いからな」

「アハハ、そんな心配は無用よ」

「―――それじゃあ、大いなるアルカナに幸あらんことを」

 

 

彼はそう言い残すと闇の中へと消えていった。

この場に残ったのは複数の『無謀な旅人』と呼ばれる影と私のみ。

 

 

「……っ」

 

 

剣の姿がすぅっと消えると、私はその場に膝をついてしまう。

さっきは強気な態度で答えたけど、流石に短時間で能力を使い過ぎたわね。

影たちは主の命令通りに動いているのか、徐々に私の元へと刃を垂れ下げながら近づいてくる。

 

 

「ああ……これはヤバいわね」

 

 

私は無理矢理口元をニヤつかせながら周囲を見渡す。

久しぶりね、こういう絶体絶命な状況。あの時は千体の堕ち神だったけど、こっちのほうがあれより十分恐ろしいわね。……いや、どっちもどっちね。

影たちは一定の距離まで近づくと刃を振り上げながら私へと跳びかかってきた。

それなのに、私は口元は未だにニヤついていた。そして、刃が私へと振り下ろされた。

…………しかし、私の身体に痛みは感じることはなかった。

 

 

「フフフ、これが小説なら、ふざけたご都合主義の展開ね」

 

 

私はこの展開が分かっていたかのように顔を上げる。

そこには、ムカつく笑みを浮かべる蒼いメイドと紅い淑女が影の攻撃を止めていた。

 

 

「こんな奴等に醜態を晒すなんて、らしくないですね」

「後先考えずに力を解放した所為よ。自業自得ね」

「アンタら、文句言うためにここに来たのかしら?」

「…………………………そんなわけないじゃない」

「おい、こっち見ろ」

「もう、楓恋ちゃんったら、美羽ちゃんが心配だからってここまで来たのに」

「出鱈目言わないでくれるかしら?」

「うふふ~楓恋ちゃんは素直じゃないですね」

「黙らないと食うわよ?」

「楽しそうね、アンタら」

 

 

私は汚れを叩きながら立ち上がると目の前の影共に視線を向けた。

影たちは警戒するように、それと同時に不思議そうに首を傾げながらこっちに目を向けている。

しかし、一部の影はそんなことなど気にも留めずに再び襲い掛かる。

 

だが、その攻撃を遮るように横から見慣れた奴らが飛び蹴りを放って影を吹き飛ばした。

ソイツらは私たちの目の前で着地するとどこかの誰かさんのように気怠そうな溜息を吐いた。

 

 

「まったく、嫌な予感がしたから来てみれば……」

「とんだメンバーとの再会ですね」

「それよりも危険視するモノが違うと思いますがね」

「お前ら、容赦ないな」

 

 

そこにいたのは咲妃と椿希、そして光輝と半妖だった。

四人は目の前の影を一瞥するとすぐに私たちの方へと目を向けた。

 

 

「これはまた面倒事に巻き込まれていますね」

「アンタも人の事は言えないでしょ、天才さん」

「私はいつでもそんな感じですけどね」

「貴女には言って無いわよ、天災」

「相変わらず無駄口を挟むのね、食人鬼」

「口が悪いわよ~咲妃ちゃ~ん」

「何なんだ、この状況は……」

 

 

その場で茶番劇を繰り広げている皆を見て半妖は頭を抱える。

ただの半妖がこの場の空気についてこれるわけもないのは至極当然ね。

その時、私の脳裏に一つの考えが思い浮かんだ。

 

 

「そうだ、ねえそこの半妖」

「なんだ? あと私の名前は……」

「知ってるわよ。それじゃあ上白沢 慧音、貴女に頼みたいことがあるわ」

「頼み?」

「恐らくこの先にユウキが居ると思うから、彼にこれを届けてほしいのよ」

 

 

私はポケットから異変に乗り出す前に手渡された水晶のネックレスを取り出した。

これは元々ユウキの所有物だったが、とある戦闘で粉々に砕け散ってしまった。これはそれを修復したものらしい。いや、この感じは正真正銘の本物だ。

これは月美の半身、彼の切り札、早くこれを渡さないといけないと私の勘が告げている。

 

 

「できれば早く、お願いね」

「それはいいが、大丈夫なのか?」

「心配無用よ。アイツ等の茶番を見てたら元気が出てきたわ」

「ならいいが……気を付けろよ」

「はいはい」

「“はい”は一回」

「は~い」

 

 

彼女はそう言うと竹林の向こうへと走っていった。

それを見送った私は身を翻して茶番劇のところへと向かっていった。

 

 

「アンタたち、おふざけはこれくらいにしてくれないかしら?」

「そうでね。周りの影も五月蝿いですしね」

「あの影って実体あるのかしら? だったら一口食べたいわね」

「僕も、堕ち神とは違う化け物、是非とも調べたいですね」

「サラッと恐ろしいこと言いますね」

「ここにはまともな人なんていませんからね~」

 

 

私たちは口々にそう言いながら影の前へと立ちはだかる。

それぞれの手には自分たちの『鍵』が握られている。

 

 

「それじゃあ、行くわよ‼」

「「「「「ええ‼」」」」」

 

「御心のままに――創剣・メシア」

「真実を霧へ――影剣・ファントム」

「その身に滾れ――喰剣・ブラット」

「真実を見据え――漸刀・霧恵」

「生命を咲かせ――儚刀・桜良」

「孤独を語れ――護刀・光姫」

 

 

光が瞬き、それぞれの手には刀と剣が握られている。

前にもこういう事があった気がするけど、できれば思い出したくないわね。

 

 

「さて、ここからは私たちのステージよ」

 

 

 

 

 




空亡「これで裏ルートも終わりましたね」
美羽「え? 私の出番これで終わり?」
空亡「裏ルートはこれ以上のネタが思いつきませんでしたから」
美羽「だからって、「私たちの戦いはこれからだ」的な終わり方はあんまりよ」
空亡「その分今まで出番あったからいいじゃないですか」
美羽「納得いかないわよ。この私の出番がこれで終りなんて」
空亡「ふてくされないで下さい。こっちだってリアルで大変だったんですから」
美羽「駄作者の事情なんて知らないわよ」
空亡「……ユウキとのデート回」
美羽「!?」
空亡「それでは、次回もお楽しみに‼」
美羽「ちょっと、今のは何よ‼」
空亡「それでは~」
美羽「勝手に終わるな~‼」
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