東方絆紡録   作:空亡之尊

73 / 106
下書きが無くなっていてそれを探していたら投稿が遅れました。


白沢悩み相談

神無 悠月side

 

 

「今日はこのくらいでいいか」

 

 

俺は手に持った食料を見て呟いた。

この前(前回)獲った魚を何かとトレードしながらかき集めたが、思ったよりもいいものが集まって内心喜ばしい気持ちで胸がいっぱいだ。これならしばらくは金には困らなくて済むな。

 

人里の通りを歩いていると寺子屋から子供たちが帰っている姿とそれを見送る慧音が見えた。みんな楽しそうな表情で自分の家へと帰る子もいれば、友達と一緒に話しながら帰る子もいる。

こんな光景を見ていると自分にもあんなに無邪気だった頃の思い出なんてなかったと、少し心細い感情が込み上げてくる。

 

 

「せんせい、さようなら~」

「さてと、俺も帰るとするか」

「ああ、また明日な。……ん? 君は」

 

 

子供たちを見送った慧音と目と合った。

 

 

「よう。今日も子供たち相手にご苦労様」

「なあに、長く続けていればそんなに疲れるものでもないよ」

「ふふ、慧音みたいに真面目な先生はやっぱり違うな」

「そうだ。外には寺子屋のような場所があると聞いたことがあるが?」

「ああ、俺もついこの間まではそこで世話になっていたんだよな」

 

 

俺は遠い目で空の向こうを眺める。

そういえば、蓮子さんにメリー先輩、今頃何してるんだろうか?

 

 

「ユウキ?」

「すまない。少し考え事してた」

「そうか。ところで、実はその事で少し話をしたいのだが、いいかな?」

「わかった。それじゃあ、月美」

 

 

俺はスマホを取り出すとその中から寝ていた月美を放りだす。

 

 

「ふぁ~い……なんでしょうか、ユウキ~」

「悪いがこの荷物を博麗神社まで運んでおいてくれ」

「いいけど~ユウキは何するの?」

「俺は慧音に少し用事ができた。帰りが遅くなるかもしれないが頼む」

「わかった。じゃあ先に行ってるね」

 

 

月美は寝惚けた目を擦りながら荷物を持って博麗神社へと歩いて行った。

 

 

「大丈夫なのか? 彼女一人で」

「心配ねえよ。実際、あれでも俺より強いからな」

「意外だな。君より強い人が居るなんて」

「俺は弱いよ。恐らく、この幻想郷で誰よりもな」

「どういう意味だ?」

「俺は誰かの力を借りなきゃまともに戦えない。ただの人間だってことだ」

「…………………………」

「与太話が過ぎたな」

「いや、それよりも中に入ろう。ここで立ち話をしても疲れるだけだ」

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

 

俺は慧音の案内で彼女の家へ向かった。

 

 

少年少女祈祷中

 

 

「すまないな、あまりいいもてなしができなくて」

「別にいい。今日会ったのは偶然だったからな、用意できなくても仕方ない」

 

 

彼女が申し訳なく差し出したお茶に俺は口を付けてそう言った。

俺がいるのは寺子屋近くに建てられた彼女の家、その中の居間に卓袱台を挟んで二人向き合って座っている。真面目な彼女なだけあって周りは綺麗に整頓されている。

そんな彼女は、俺の方を見て微笑んでいる。

 

 

「どうした?」

「いや、君は優しんだなと思ってな」

「そんなことは無い。俺は思った事をそのまま言っているに過ぎない」

「だからだ。下手に飾ったお世辞よりも、本心からの言葉は誰だって嬉しいものだ」

「その反面、人を傷付けることも多いけどな。ったく、嫌な性格だよ」

「そうか? 私は羨ましいと思ってるが」

「物好き以外には嫌われるだけだぞ」

「ふん、別に構わないさ。嫌われるのには慣れている」

 

 

そう言った彼女の表情が少し曇ったように見えた。

半妖、彼女の場合は妖怪に憑かれた所為でそういう体質になってしまった。幻想郷では何事も無く過ごせているが、以前までは周りの環境に恵まれていなかったことが見て取れる。

 

 

「……すまない。嫌な事を思い出させてしまって」

「気にしないでくれ。今となっては苦い思い出だが、私は今の現状に酔いしれていたいのだよ」

「そうだな。ここは物好きが多い、理想郷なんて呼ばれている理由がよく分かる」

「ああ、こんな私でもここの人間達は受け入れてくれた。一部は煙たがる奴らもいたけどな」

「でも、今は寺子屋の教師をしながらこの人里を護ってんだろ?」

「そうだ。受け入れてくれたここの人達に少しでも恩返しがしたかったからな」

 

 

そう語る彼女の瞳には強い意志が籠っていた。

それはとても純粋で、この先にある何かを見ているように感じられた。

 

 

「立派だな」

「君だって変わりないさ。異変の時にはいつも誰かを救っていると聞いているしね」

「俺がやってきていることはそんな立派なことじゃない。ただ…………」

「見捨てておけないだけ、だろう?」

「ああ、アイツ等はいつも誰かに助けてもらいたいと願っていた。けどその声は誰にも届かなく、ずっと助けを待つだけしかできなかった。そう思うと、考えるよりも先に身体が動いてしまう」

 

 

俺は自分の手の平をじっと見つめる。

 

 

「でも、それでも救えなかった奴らもいる」

「堕ち神の事か?」

「……アイツ等だって望んであんな生き方をしていたわけじゃない。本当なら生まれることもなかった存在だ。でも、そこにいるのなら、俺はあいつらの事も助けてやりたかった」

「……優しいという言葉だけでは表しきれないな」

「これは俺の傲慢だ。救えなかったアイツ等を救いたいなんてのはただの偽善だ。それが分かっていてもこんなに思い悩んでしまう。優しいんじゃない、それしかできないだけだ」

 

 

俺は自嘲するように笑う。

初めの頃はこんなこと思う事なんて無かったはずなのに、いつの間にか俺も弱くなったな。

そんな俺を見て、彼女は優しく語り掛けてくる。

 

 

「確かに、そこまで綺麗事すぎるとただの偽善だな」

「…………………………」

「でも、たとえ偽善だったとして、誰かを救いたいという想いは本物の筈だろう」

「……どうだろうな」

「妹紅に聴いたよ。手を伸ばせばその手を取ってくれるお人好しだってな」

「余計な事を言ってくれるな。ったく」

「そうだな。でも、このことを話してくれた妹紅は楽しそうだった。私が初めに会った時よりも。

妹紅は言ってたよ、ユウキが救ってくれたってな」

「……そうかよ」

「君は人助けを偽善というが、その偽善でも救われた人たちはたくさんいるんじゃないのか?」

 

 

俺は彼女にそう言われ、今まで出会ってきた奴等の事を思い出す。

 

 

「……そうかもしれないし、そうでもないかもな」

「私だって人の心が分かるわけではない。でも、少なくとも君に救われた人はいる」

「それだけは変わらない。とでも言うつもりか?」

「ああ、そうだ」

「ったく、教師ならもっと気の利いた言葉でも言ってくれればいいものを…………」

「今のでは不満だったか?」

「……いや、ありがとう。少しは気が晴れたよ、先生」

「ふふ、どういたしまして」

 

 

互いに言葉を交わすと自然と微笑んだ。

ちょっとした用事のつもりが悩み相談する羽目になるとは、こういう経験も高校以来だな。

けどまあ、これで少しは気が晴れたから良かったと俺は思っている。

 

 

「あ、悩みついでにもう一つ」

「なんだ?」

「実は……最近あることで不眠に悩んでいる」

「それは大変だな。で、ある事とは?」

「ああ、慧音は知ってるかどうかは忘れたが、俺は外来人だ」

「それは知っている。初めて会ったころに服装を見てそう思ったからな」

「で、俺はとある人に頼まれてその最中に幻想入りしてしまった」

「それは八雲紫から聞いた。なんでも、君の大切な人だと」

「大切な人では間違いないが、言い換えるなら、リーダーだな」

「そうか。それで、そのリーダーがどうかしたのか?」

 

 

彼女の質問に俺は顔を伏せながら言葉を紡ぐ。

 

 

「心配なんだよ」

「ああ、もしかして外の世界に取り残されている彼女の事が「違う、そうじゃない」え?」

「確かにその事に関しても少し心配だ。だがそれ以上に心配することは………」

「な、何だ?」

「あの人がそう遠くないうちに幻想入りしそうで正直言って怖い」

「………………え?」

「好奇心旺盛なあの部長のことだ。俺らが一日いなくなっただけでもその原因は探るだろうし、しかも今の流れだと美命に連れてこられる可能性だってある。そう思うと夜も眠れない」

「そ、それのどこが不安なんだ?」

「あの人を例えるなら嵐だ。その場を荒らすだけ荒して自分が満足したらとたんに静まる。無視すれいいだけの話だが、それをやると機嫌が悪くなって後々の収拾がつかなくあるから面倒なんだ」

 

 

俺は頭を抱えながら語り続ける。

 

 

「あの部長がこっちに来ると思うと不安と胃の痛みで夜も眠れない。……今度、永琳に胃薬と睡眠薬でも処方してもらおうかなとも考えている今日この頃だ」

「…………………………」

「まあ、その時になればなんとかなるだろ。………慧音?」

 

 

ぎこちない笑みを浮かべながら彼女の方へと顔を向けると、彼女の様子が少し変だった。

慧音は黙ったまま俺の方へと近付き、次の瞬間、無言で抱きつかれた。

 

 

「え、え?」

「大丈夫だ、そう思い悩むな。君には私たちが居るだろう」

「いや、それは十分承知してるけど」

「もしもつらくなったら私でも頼ってくれ。少しは助けになれるかもしれない」

「わ、わかった」

「だから……そんなに……っ」

「え、慧音、もしかして泣いてるのか? え、なんで? 俺なんか悪いこと言ったっけ」

「こんな私でも……っ……お前の役に……っ」

「慧音ぇぇぇぇぇ!?」

 

 

その後、静かに涙を流す慧音を落ち着かせるのに苦労した。

なんだろう、この胸に残る罪悪感のようなモノは………………。

 

 

 

 

 




空亡「今回はシリアス回でしたね」
月美「駄作者さん、日常パートに重い話を持ってくるのはやめましょうよ」
悠月「そうだな。普通、日常パートってほのぼのするのが主流だろ?」
空亡「僕もそうしようとしてるんですけど、なぜか話がそっち方向にずれてしまい」
月美「ちなみに、今回の元の話はユウキが教師をやる予定だったらしいです」
悠月「今のとは全くの真逆だな」
空亡「例の如く、話が思いつきませんでした」
月美「駄作者さんって人にものを教えるのが下手ですからね。教師なんて……はっ」
悠月「今回の出番が少なかったらご機嫌斜めだな」
空亡「しばらく出番が無いのに、困りましたね」
月美「え!?」
空亡「それでは、次回もお楽しみに」
月美「ちょっと、今のってどういう意味ですか!?」

次回予告
満月は人を狂わせると云われるが、お前の瞳に比べればまだ可愛いほうだな。
非日常編・惨、君の瞳は心を揺らす、どうぞお楽しみに‼
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。