神無 悠月side
「♪~」
永夜異変から一ヶ月の月日が過ぎた頃のとある晩、俺は鳥居の上で鼻歌を歌っていた。
傍らにはいつもの団子とお茶、夜空には金色に輝く満月、前回は大勢押しかけてきて月見を楽しむ余裕はなかったが、今回こそは静かにのんびりとこの時を過ごしたい。
「今日はご機嫌ですね」
「久しぶりの月見なんだ。嬉しいに決まってるだろ」
「前は賑やかだっと聞きますが?」
「賑やかなのも良いが、俺は静かに楽しみたいんだよ」
「この場合、私も居ていいんでしょうか?」
「良いに決まってるだろ。今更何言ってんだ、バカ」
「そうですか……ふふ」
月美は何かを察したように微笑む。
「なんだよ」
「いいえ。ユウキが素直になってくれて嬉しいだけです」
「……うるさい」
「それより、今宵も誰か来そうな予感がしますね」
「マジかよ。流石に今日は来ないと思って団子の量ケチったのに」
「(来そうな時の人数に合わせて団子を買ってたんですね。優しい)」
「で、誰が来そうなんだ?」
「私の予想では意外な組み合わせってことですね」
「意外な組み合わせ?」
俺が今まで出会った仲で意外な組み合わせを探っていると、ふと、音が聞こえてきた。
何かが飛んで風を切る音、シャランシャランという澄んだ音、俺の名前を呼ぶ聞き覚えのある声。これだけで意外な組み合わせの一人が誰だかわかった。
俺は音が聞こえてくる方へと視線を向けるとその人物はもう目の前まで来ていた。
「ユーーーーウーーーーキーーーー‼‼‼‼‼」
「っ‼」
楽しそうに七色の羽根をはためかせながら飛んで来た彼女を俺は抱き留めた。
腹部に凄まじい衝撃が走るが、その事を彼女に悟られないように歯を噛みしめる。
痛みに耐えていると、胸に蹲る彼女が嬉しそうに顔を上げる。
「久しぶり、ユウキ♪」
「ああ、久しぶりだなフラン」
眩しいほどの笑顔を見せる彼女、羽根も嬉しそうに揺れている。
「うふふ、嬉しそうで何よりですね」
「あ、月美も久しぶり♪」
「はい、お久しぶりです。時間通りですね」
「うん。ちゃんと約束守ったよ」
「そうですね、偉い偉い」
月美はそう云うとフランの頭を優しく撫でる。
フランは撫でられながら気持ちよさそうに目を細めている。
「おい、約束って何だよ」
「ああ、実は……」
「今日の月見に誘われたのよ」
声の聞こえた方へと顔を向けるとそこにいたのはこれまた意外な人物、妹紅だった。
彼女は片手に袋のようなモノを持っている以外、他に変わったところは無い。
意外な組み合わせといえば意外だが、なんとなく共通点が読めた。
「『妹』と『紅』か。中々安直な発想だな」
「私も他の来る人を聞いた時は呆れたけどね」
「というか、お前もよく来たな」
「あれから私も少しは人との関わりを持とうかなと思っただけよ」
「それだけでも十分な進歩だよ」
「……それより」
妹紅は俺の方、というより俺の膝の上に座っているフランを見ている。
「随分とその子に懐かれてるのね」
「まあ、この子もお前と似たような境遇で知り合っただけだ」
「なるほど。じゃあ、その子も……」
「??? お姉さん誰?」
「自己紹介が遅れたわね。私は藤原妹紅、ユウキの友達よ」
「私はフランドール・スカーレット、フランて呼んで」
フランは笑顔を浮かべながら妹紅へと手を差し伸べる。
妹紅は一瞬戸惑って自分の手と彼女の手を交互に見ると、ふっと笑って彼女手を握る。
「ええ、よろしくねフラン」
「よろしく‼」
「ふふ、微笑ましい光景ですね」
「お前、こういうの予想して集めただろ」
「それもありますが、私としては…………」
「対人関係に疎かった二人を引き合わせることで仲良くさせようとしたんだろ?」
「よく分かってますね。でも、この光景を見たかったでってのもあります」
「……部長に毒されてないか?」
「さあ? どうでしょう」
月美は誤魔化すように笑うと傍らの団子を頬張る。これ以上詮索しても誤魔化されるだけだと思った俺も団子を頬張る。いつの間にか妹紅も俺の隣に座ってフランと一緒に団子を食べていた。
左に月美、右に妹紅、膝にはフラン、両手に花なんて言葉じゃ表せられないな。
「それにしても、ユウキはモテモテですね」
「そうか?」
「そうですよ。こんな可愛い女の子三人に囲まれるなんて、軽いハーレムですね」
「ははは、殺されてえのか?」
「ねえ、ハーレムって何?」
「え? あ、いや、その……」
「ハーレムというのh「お前は一旦黙ってろ‼」いたっ」
「まあ、女性がいっぱい居るってことよ」
「そうなんだ~」
「ありがとう、妹紅」
「いや、私も適当なこと言って誤魔化しただけだから」
妹紅に礼を言っていると、隣で頭を押えながら涙目で睨んでいた。
「いてて……何するんですか」
「お前こそ、なにフランに変な知識教えようとしてんだ」
「いいじゃないですか。この子だってこう見えて495歳ですよ?」
「心はまだ子供なんだよ。だから変なことを教えるな」
「は~い」
「お前も大変だな」
「もう慣れたよ。こんな茶番劇」
溜息を吐きながらお茶を飲んでいると、フランがじっと俺の方を見ていることに気付いた。
「どうした?」
「ユウキと月美って、仲良しだね」
「周りから見ればそうだろうが、付き合ってるこっちは大変なんだけどな」
「でも、いつも楽しそう」
「……俺ってそんなに解り易いか?」
「少なくとも、知り合って長くない私でもよくわかるよ」
「妹紅にだけは言われたくないけどな」
「私と輝夜の事を言ってるのか?」
「殺し合いするほど仲が良い、そんな言葉がある」
「物騒な言葉ね。でも、一概に間違いとは言えないわね」
妹紅はふっと笑い、月を見上げる。
「あれから変わったみたいだな」
「そうね。ユウキのお蔭で私も変われたわ」
「私も、ユウキが助けてくれたおかげでこうしてみんなとお月見できるんだよ」
「ふふ、可愛い娘二人にそう言われると照れるな」
「か、可愛いなんて///」
「えへへ///」
妹紅は照れ臭そうに頬を掻きながら顔を逸らし、フランは嬉恥ずかしそうに頬に手を当てる。
うん、二人共反応が可愛い、そう感じた。
「ユウキもお人が悪いですね」
「人を弄ぶのが好きなのは『私立探偵部』全員の趣味だろ?」
「それもそうですね」
「さて、それじゃあ、しばらく月見でも楽しむとするか」
俺らはその後も他愛のない会話をしながら月見を楽しんだ。
こうやって月を眺めて過ごすのは、やっぱりいいものだな……………………。
明星 美羽side
「楽しそうね~」
私はベットに横になりながらユウキが月見をしている光景を見ていた。
あの永夜異変から数週間、疲労やら体調不良でずっと寝たきりだった。原因は恐らく能力の解放を短時間で二度も使用したことと、剣崎との戦闘で思ったよりもダメージを受けていた事でしょう。
二年間のブランク、思ったよりもこれが響いたわね。
「悔しいわ」
「まあまあ、そんなに落ち込まないで」
「いつもの威勢が全くないわね。面白くない」
「アンタたちは気楽でいいわね」
私は目を伏せながら力無く呟く。
ブランクがあったからとはいえ、得体のしれない奴に完膚なきまでぶちのめされ、敗北。
その所為で私のプライドはボロボロ。いつもの演技も、上手く演じる自信が無い。
こんな姿、ユウキにはとても見せられない。そう思うと瞳から涙が流れる。
「あ~あ、バカみたい。こんなことで私が悩むなんて」
「美羽ちゃん……」
「まったく、調子が狂うわね」
「真珠、楓恋、美命様に――」
「あ、そうそう、美命様から伝言よ」
「なに?」
楓恋はポケットから一通の手紙を取り出すと、乱暴に私へと投げ渡した。
そこには美命様の筆跡でこう書かれていた。
『リベンジできない敗者は本当の敗者です。貴女は決して弱くありません』
「――ったく、言ってくれるわね、ウチの主様は」
「で、もう一つ報告があるけど、どうする?」
「決まってるでしょ」
私はベットから跳び上がり、布団を捲り上げるとともにいつもの服装へと早着替えする。
今の私の表情はいつもの様に人の神経を逆なでるような余裕の笑みを浮かべている。
「私は『高天原生徒会』の明星 美羽、主の命令とユウキの頼みは絶対よ」
「ユウキ君と美命様は同位置ですか。美羽ちゃんらしいですね」
「やっぱりこっちの方が美羽らしくていいわ」
「さて、どういうのか聞かせてもらおうかしら?」
こんな所で立ち止まっていられない。
いつかこの借りは返してあげるから、覚悟しておいてね、剣崎……‼
空亡「さて、今回はいかがでしたかな?」
悠月「いつもよりはマシだったな」
月美「妹紅さんとフランちゃんの組み合わせ、やっぱりいいですね」
美羽「駄作者はあの作品を三週もしてるみたいよ」
二人「「うわ」」
空亡「あの~そんなゴミを見るような眼で見ないでいただけませんか?」
悠月「大丈夫かよ、色々と」
空亡「……それよりも次回からの事なんですが」
三人「「「話逸らしやがった‼」」」
空亡「また美羽さんが主役で行きますよ」
美羽「このタイミングだと、花映塚ね」
悠月「前の萃夢想より長いが、まあ大丈夫だろ」
月美「頑張ってくださいね」
美羽「任せなさい。すぐに追わらせてユウキとデートよ‼」
空亡「そういう事なので、次回から楽しみに」
悠月「おい、誰か最後のツッコめ」
次回予告
四季折々の花々が咲き誇る幻想郷、それは何かの始まりを告げていた。
東方花映塚、幻想郷開花宣言、どうぞお楽しみに‼