東方絆紡録   作:空亡之尊

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此岸と彼岸の河渡り

明星 美羽side

 

 

「……相変わらず、不気味な場所ね」

 

 

私は懐かしそうに周りを見渡しながらそう呟いた。

ここは三途の河、この世である此岸とあの世である彼岸を分かつ三途の川が流れており、昼でも夜でもない空はの代わりに周囲は控えめに輝く霧が立ち込めている。川には死滅した魚が泳ぎ、岸辺には積みかけた丸石が処かしこに置かれている。

そして案の定か、そこらかしこに幽霊と思われる人魂が列を作って並んでいる。

異変の影響もあってか、あちこちには紅い彼岸花が咲き乱れている。

 

 

「此岸に彼岸花、面白くもない洒落ね」

 

 

私はそれを見てそっと呟くと目的の人物が居る場所へと向かう。

しばらく歩いていると一つの船着場、といっても岸辺に小舟が着けられているだけの場所だけど。そしてその近くの大きな岩に一人、気持ちよさそうに寝転がっている女性が居た。

 

癖のある赤髪をトンボでツインテール、半袖にロングスカートの着物のようなものを着用しており、腰巻をしている。傍らには漫画の死神がよく使うであろう大きな鎌が無造作に置かれている。

 

信じたくはないものだけど、ここに寝ているのが三途の河の水先案内人である死神。

周りを見ると普段はこんな仕事をしないであろう他の死神たちが切羽詰まった状況で幽霊を彼岸へと運んでいる。が、ここに居る死神はそんなことお構いなしと呑気に寝ている。

 

 

「ったく、起きろ、サボり魔‼」

「きゃん‼」

 

 

私は溜息を一つ吐くと寝ている彼女へと思い切り拳骨を放つと、彼女は可愛い声を上げてその勢いで岩から転げ落ちる。

腕を組んで待っていると、殴られた額を摩りながら摩りながら欠伸を掻く彼女が顔を出した。

 

 

「ったいな~何だい何だい、いきなり………………あ」

「おはようございます。よく眠れたかしら、小野塚 小町さん?」

 

 

私は彼女に対して決して笑っていない笑顔を向ける。

それを見て彼女はバツが悪そうな表情のまま固まっている。

 

 

「あ、明星‼ なんでこんな所に‼」

「ちょっとした野暮用よ。今すぐにあの閻魔のところに案内しなさい」

「い、いや、今はそれどころじゃn「サボってたこと、報告するわよ?」わかった」

 

 

私の言葉に彼女は一瞬怯えると、すぐさま小舟へと乗り込んだ。

上には逆らえない。上下社会の厳しさがよく分かるわね。うちも人の事は言えないけど。

私が船に乗り込むと、小舟は水音も立てずに沖へと流れ出す。

 

 

「それじゃあ、頼むわよ」

「とほほ、今日はただでさえ船頭の仕事が大変だってのに」

「それなのに呑気に昼寝して、貴女もたいぶ出世したわね」

「皮肉ならよしてくれ。後で四季様に聞かれたクビになっちまう」

「どうせアイツのことだから、もう知ってると思うけどね」

「ああ~なるべく考えないようにしてたってのに」

 

 

舟を漕ぎながら彼女が頭を抱える。

まあ、あの閻魔のことだからクビにはしないでしょうね。代わりに説教二時間コースかしら。

 

 

「で、なんでお前さんがこんな所に、それも四季様に用って」

「幻想郷で起こっている幽霊の暴走についての苦情。主に一人の死神の職務怠慢について」

「それについては上手いこと誤魔化してくれ。頼む」

「まあ、それは半分冗談だとして」

「つまりは半分本気だったってことかい」

「いいから。蛇足だけど、ちょっと調べてほしい人が居るのよ」

「調べてほしい人? アンタが惚れている男の事かい?」

「違うわ。私が調べたいのは、私の知り合いが居るかどうかよ」

「どういう事だい?」

「簡単な話、死んでるか生きてるかわからない人間をはっきりとさせたいのよ」

「成程ね。いかにもお前さんらしい用事だね」

「うるさい。それより、最近どうなの仕事の方は?」

「見ての通り、自由気ままにやらせてもらっている有様だよ」

「こんな仕事に就いてちゃいい男の出会いもなくて寂しいわね」

「そんなこと言うなら値にも誰か紹介しておくれよ」

「そうね。暇な時にでも幻想郷をぶらついてたら出会うかもね」

「なんだよ、その胡散臭い占いは」

「予感よ。彼の凶運が未だに健在ならの話だけど」

「???」

「……着いたみたいよ」

 

 

私たちが話をしている間に小舟は彼岸へと流れ着いた。

そこには何も無い此岸とは違って、どこまでも広い花畑が広がっていた。昼も夜も、季節も、時間という概念もなく、ただそこには暖かな光に積まれた世界が広がっている。周りには使者である人間が閻魔からの裁きを受けるまでぼーっと突っ立ている。人はここに来ることで自分が死んでいると感じることができる。

 

 

「ここも相変わらずね」

「そうだね。さて、四季様のとこまであたいが案内するよ」

「お願いするわ。こんな状況じゃ、まともに取り合ってくれそうにもないけど」

「まあ、ダメでもともとだよ」

「そんな心配はありませんよ」

 

 

会話に割って入ってきた声に覚えがあった私たちは声の主がいる方へと顔を向ける。

そこには久しぶりだが、見間違えることの無いちょっと背伸びした少女が立っていた。

右側が少し長い緑髪のショート、白いブラウスの上に紺色のハイネックベストと短めのプリーツスカート、頭には王冠を模した紺色の帽子を被っている。手には奇妙な形の文字が書かれた笏を持っている。

彼女はこちらへとゆっくり歩み寄ってくると、一瞬私の方を見て、すぐに視線を小町へと向ける。

 

 

「小町、貴女の仕事は何ですか?」

「ゔ……え、え~と、船頭です」

「そうです。貴女の仕事は死者をここへと運んでくるのが役目ですよね」

「仰る通りです。はい」

「それに今回は六十年に一度の大事な時期、船頭の仕事が大切なのはわかっていますよね」

「はい……」

「ではなぜ、貴女のところから死者は運ばれるのがこうも遅いのですか?」

「そ、それは……」

 

 

小町は困ったようにそっぽを向いて頬を掻いている。

彼女、四季 映姫・ヤマザナドゥは幻想郷の死者の管理をしている円まで、小町の上司でもある。閻魔は役職で数多く存在してるが、彼女は主に死者を裁くのが役目。ちなみに二交代制らしい。

 

その他で語ることといえば、彼女の説教が長いという事。語っていることは理に適っているモノだけど、その話の長さに内容よりいつ終わるのかという思考に辿り着いてしまうのが難点。

その恐ろしさを一番理解している小町は、さっきから私に向けて助けてと瞳で訴えている。

 

 

「ったく、しょうがないわね」

「大体貴女は――」

「小町を説教するのは後にしてくれないかしら、子閻魔」

「貴女は、まずその呼び方をやめなさい」

「いいじゃない。お子様背丈な閻魔さまにはピッタリよ」

「失礼ですね‼ お子様とは何ですか、私だって立派な閻魔です‼」

「必死なところも可愛いわね~♪」

「からかわないで下さい‼」

 

 

私は映姫の頭を撫でながら楽しそうに笑う。

彼女はそれを振り払おうと私の手を叩くけどあんまり言いたくないから余計に可愛く見える。

その光景を近くで見ていた小町は助かっという安堵と少し驚いた表情をしている。

 

 

「あの四季様を完全に弄んでるなんて」

「堅物は嫌われるか弄ぶか、それが私たちのルールよ」

「極端なルールだね」

「変わり者が多い幻想郷にはお似合いのルールだと思うけど」

「コラー‼ 無視しないで私の話を聞きなさい‼」

「そんな事よりも子閻魔」

「子閻魔ではありません‼」

「どっちでもいいわ。それより調べてもらいことがあるのよ」

「何ですか、そんなに改まったりして」

「実は調べてほしい人間が居るのよ」

「なんで急にそんな事を……いえ、そんなことを聞いても無駄ですね」

「よく分かってるじゃない。詳しいことはこれに書いてるから」

 

 

私は1枚のメモを映姫に渡すとその場を立ち去ろうとする。

 

 

「要件は分かりましたが、貴女はどちらへ?」

「しばらくの間、ここらを散歩してるわ。彼岸なんてそうそう来れるモノじゃないしね」

「それじゃ、あたいが付き添いを……」

「貴女は本来の仕事に戻ってください」

「きゃん‼」

「漫才ならM-1でやって頂戴。じゃあ、後でね」

 

 

私はその場を後にすると彼岸の向こうへと歩き始めた。

その時、私は知らなかった。私の事を見つめる無感情な瞳の存在を………………。

 

 

 

 

 




空亡「小町さんの出番が多くて映姫さんの出番が少なくなってしまいましたね」
美羽「キャラを複数出すとどっちかに偏るのがここの悪いとこよね」
空亡「日々精進します」
美羽「それより、あの二人と私の接点、どう説明する気よ」
空亡「一度あの世を見たってことで」
美羽「適当ね。でも、それぐらいしか語れないのよね」
空亡「そういうことです。ちなみ次回は戦闘ありです」
美羽「へえ~相手はやっぱり最後に出てきた奴?」
空亡「いえ、貴女ですよ」
美羽「え?」
空亡「そういうことで、少し投稿は遅れますが、次回もお楽しみに」


次回予告
人にはそれぞれの過去がある。もしそれと対峙した時、今の自分は何ができるのか?
東方花映塚、黄昏に染まる彼岸、どうぞお楽しみに‼
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