明星 美羽side
「あ゛あ゛~~~鬱だわ~~~」
私はベットに寝転びながら天井を仰ぎ見る。
身体中には斬り傷を隠すように真っ白な包帯が巻かれ、すぐ傍には真っ赤な血液が入った献血パックと私の腕を一本の管が繋がれている。さながら病院の一室の様な光景ね。
何も出来ないという状況が元々嫌いな私はやるせない気持ちを言葉にして発散することしかできない。本当は暴れたい気分だけど、お目付け役に安静にしてるようにと言われてるから動けない。
この間に報告書の内容でもまとめておこうと思う。
まず、今回起きた幽霊の暴走による四季の花々の開花について。これは後で幻想郷の歴史について書かれている書物に詳しいことが記載されていた。
この異変は昔から六十年周期で起きていており、その原因が幻想郷の生命線である博麗大結界がその周期で緩くなる。それに加え外の世界では死者が増えて幽霊が増加し、三途の河は大混雑。その有り余った幽霊が憑りつき花が咲き乱れるのがこの異変の全貌。
本当の意味で異変だったけど、これなら私が彼岸まで行ったのは全くの無駄足だったわね。
しばらくベットの上で呻いていると傍にいた奴がジト目で睨んでいることに気付く。
白いシャツの上に黒のベストを着た灰髪の青年は無愛想な表情で私を見ている。
無愛想なのは元々だけど、今の感じは目の前の状況に鬱陶しがっているように見える。
「……怪我人は静かにしてろ」
「なによ~怪我人には発言の権利もないわけ? 白音」
「……身体に数十か所の斬り傷、神殺装束使用での疲労、加えて心身的な過労」
「ゔ……」
「……これだけのことがあって元気なのは逆に凄い」
「それって褒めてるの? それとも呆れてるの?」
「……どっちも」
そう言って彼、黒淵 白音は手元のカルテを机に放り投げる。
コイツの話によれば、私の身を心配した美命様に彼岸に行くようにと命じられて彼岸まで出向いたらしいらしい。一応コイツは医療関係に詳しいという事で私の手当てをし、今に至るというわけである。
「……美羽らしくない」
「私なら三途の河でも渡って帰ってくるとでも思ったの?」
「……美羽がここまでやられてるのが意外だった」
「……それについては後で報告書にまとめるわ」
私は溜息を吐くと再び天井を仰ぐ。
昔の私ならあの程度の相手に怪我一つしなかったのに、今ではこの様。
剣崎の件といい、今回の無断行動といい、流石の美命様でも堪忍袋の緒が切れそうね。これじゃ、報告書を掻くのも最後になりそうな予感がするわ。
虚ろな目で天井を見ていると何かを思い出したかのように彼が声を上げる。
「……そうそう。途中で死神に渡されたものがある」
「小町から?」
「……なんでも、美羽が探してた人について調べた結果らしい」
「アンタ、どういう状況でこれ貰ったのよ」
「……三途の河を泳いでたら偶然すれ違い、説明、納得、貰った」
「小町がバカなのか、白音がバカなのかよくわからないわね」
呆れながら彼が差し出した手紙を手に取る。
そこに書かれていたのは簡易的でよく分かりやすい言葉で一言。
「『死んでいない』、か……」
「……誰のこと調べてたんだ?」
「気にするほどじゃないわ。どうせ結果を知っても何も出来ないことに変わりないわ」
「……ユウキの想い人」
「‼ 勘が良いわね」
「……美羽は自分が思っている以上に解り易い、楓恋がそう言ってた」
「ったく、やっぱりアイツは苦手だわ」
「……で、なんでそんなこと調べてたんだ?」
「暇潰しよ」
「……暇潰しで死に掛けたら世話無いな」
「皮肉も言うようになったわね。前はそんなこと言う事なんてなかったのに」
「……ユウキや美羽のお蔭、俺がここまで変われたのも」
彼はそう言って柔らかな笑みを浮かべる。
十年前、初めて出会ったころからは想像も出来ない事だったけど、今となってはこれが普通と思えるようになってきた。
「嬉しいこと言ってくれるわね。これでも貴方より年下よ?」
「……美羽は大事な仲間だから、そんなこと気にしない」
「純粋ね。ある意味、ここのメンバーでまともなのは白音くらいよ」
「それはどういう意味ですか~?」
「聞き捨てならない内容ね」
そう言って会話に入ってきたのは不機嫌そうに頬を膨らますマリィと笑っていない笑顔を浮かべる楓恋の二人だった。そういえば、ここって許可された人間なら自由に出はいりできるところだったわね。あまりにも独り暮らしが長かったから忘れてたわ。
「……おかえり、楓恋、真珠」
「シロ君、ただいま~」
「じゃじゃ馬が暴れないようにちゃんと見張っていたかしら?」
「……大丈夫、暴れたら大人しくさせるから」
「そう、大丈夫だったみたいね」
「人を馬と同じにしてんじゃないわよ。あとアンタに大人しくさせられたら三途の河に逆戻りよ」
「確かに、シロ君って強いからね~」
「……手加減というのがイマイチよくわからない」
「せめて怪我人に手加減できるように精進してよね。お願いだから」
「……善処する」
白音は無愛想な表情のままガッツポーズをする。何だかシュールね。
「で、二人揃って私に用なんて、もしかして解雇通知かしら」
「「…………………………」」
「え? 何で二人揃って目を逸らすのよ?」
「「…………………………」」
「ねえ、お願いだから何か言って‼ マジなの? 冗談で言ったつもりなのにマジなの?」
「「…………………………」」
「ねえ、白音。二人が冷や汗流しながら何かを堪えるように拳握ってんだけど、どう思う?」
「……親友の好きな人に告白して付き合うことになりそれを親友にどう告げるか悩んでいる様子」
「どこの修羅場よ。って、この二人が好きなのは美命様でしょ」
「……美命様がやってたゲームの場面にこれと似たのがあった」
「何やってんのよ美命‼」
思わずベットから起き上がってこの場に居ない美命にツッコむ。
その拍子で傷が痛んで悶えていると、白音に枕を押し付けられすぐに寝転ばせられる。
「……怪我人は安静に」
「ツッコまさせたのはどこの誰よ」
「まあ、茶番はこのくらいにしておいて」
「話を始めましょうか」
「おいそこの二人、ちょっと後で話がある」
「はいはい。で、話なんだけど」
「絶対泣かしてやる……」
恨みの籠った瞳で楓恋を睨みつける。
「結果的に言うとクビですね」
「軽っ‼ 私の唯一の仕事なのに扱いが軽い」
「理由は自分の胸に手を当てて考えなさい」
「それについては納得するわ。私が言ってるのは扱いよ」
「……楓恋に口出ししても美羽じゃ敵わない」
「解ってるわよ、そんな事……」
私は頭に手を当てて溜息を吐く。
しばらくして落ち着くと自分が置き去りにされた状況を理解する。
「はあ~しかし、これで職なしね」
「これが職業ならとんだブラック企業ですね」
「これから当分暇になりそうだし、また世界見聞旅行でも出かけようかしら」
「何言ってんのよ、別に仕事がなくなるわけじゃ――」
「あ、でもこれだとユウキの愛おしい姿を間近で見れないじゃない‼」
「……それが重要な事?」
「重要に決まってるじゃない‼ 普段からお近づきできない彼のあんな姿やこんな姿を誰にも邪魔されずに見れるのよ‼ これが私にとってのご褒美………仕事なのよ‼」
「美羽ちゃん、ストーカーだね」
「ストーカーじゃない、ただ愛する人の何もかもを知りたい恋する乙女よ」
「言い方があれだけど、要するにストーカーでしょ?」
「違うって言ってるでしょ‼」
「……女ってみんなこうなのか?」
「少なくともこの子だけよ。だから安心しなさい」
「……やっぱり美羽は面白い」
少年少女祈祷中
「で、結局私はどうなるのかしら?」
「美命様からの要件は二つ、一つは幻想郷の暦で二年間の監視行動(ご褒美)禁止」
「……もうそれだけで私のテンションはピアニッシモ(ダダ下がり)よ」
「……美羽、キャラが被るから『……』はやめて」
「はいはい、二つ目は何よ?」
「この空間、ハザマの使用を禁ずることですね」
「え? それじゃあ元の世界に帰れって事?」
「いえ、美羽ちゃんが言っていた『黄昏』と『影』、その背後の『組織』が動き始めましたからね」
「そう簡単に情報収集をやめる気なんてないわよ。あの人は」
「じゃあどこに住めばいいのよ?」
「……この流れからして幻想郷のどこか?」
「ご名答よ。正確には幻想郷で一稼ぎしてもらうみたいよ」
「一稼ぎって、どうして私がそんな事……」
私が文句を言おうとした瞬間、目の前に一枚の髪が投げ出された。
そこには私が通販で購入した物品の名と0がいくつも並んだ数字が掛かれている。つまり請求書。
「え、なにこれ」
「これまで貴女が使ってきた物に対しての請求額よ」
「有料だったの!?」
「ちなみに金額はざっと見、0が7つは入ってると思います」
「―――――!?!?!?!?!?」
「……絶句してる」
「おお、これがよく言う言葉にならないという事ですね」
「とどめを刺したのはマリィだけどね」
「……楓恋も同罪」
「あら、くだらない事を言うのはどの口かしら?」
「……楓恋、無罪」
「ふふ、良い子ね」
「アンタら、何やってんのよ」
「あ、美羽ちゃん戻ってきた」
「危うく小町の船に乗るところだったわ。まあ、寝てたから助かったけど」
「で、話の続きだけど」
「言わなくても察しはつく。どうせそれを払わないと“処刑”でしょ?」
「その通りよ。優しいわね」
「ええ本当、嬉しすぎて涙が出てくるわ~」
「……はい、ハンカチ」
「ありがと。それで、どうやって働けと?」
「それは…………」
その時、私の一つの物語が終わったと思った瞬間に次の物語が始まりを告げられる。
しかし、その代償に私は大事な物を失った…………………………。
「「「ダメだコイツ、早く何とかしないと」」」
「聞こえてるわよ……(怒)」
空亡「まあ、これで花映塚も終わりですね」
美羽「しっくりこない終わり方ね」
空亡「……あれからの展開が思いつきませんでした」
美羽「何でこの駄作者は自分の首を絞めるのかしら」
空亡「そんな事より、美羽さんも大変ですね」
美羽「なんでこの私が仕事なんか。面倒だわ」
空亡「ユウキだって働いてますし、そのくらいはしてくれないと」
美羽「でも、どうやって稼げっていうのよ?」
空亡「ああ~それについては今度という事で」
美羽「(なんだろう……絶対嫌な予感がする)」
次回予告
おふざけ度100%、ギャグ要素しかないドタバタ会議‼
非日常編・惨、生徒会共の戯れ会議、どうぞお楽しみに‼
番外編もよろしく
http://novel.syosetu.org/35311/