神無悠月side
「ここが妖怪の山か……」
俺は舞い落ちる落ち葉を眺めながらそう呟いた。
秋の紅葉に染まる山の景色、いつ見ても心を躍らせてくれる。
これで人当たりの悪い妖怪が居なければ最高なんだけどな。
スマホの中にいる月美も、その光景を見て目を輝かせているが、何か引っ掛かっているようだ。
「どうした?」
『いえ。なんかここ、神様の気配が多いような気がして』
「幻想郷だからな。八百万の神でも居るんじゃねえのか?」
『……少し心配になってきました』
「ああ、そういえばお前って『神殺之刃』だったな」
俺は月美の『特性』について思い出した。
『神殺之刃』、俺の祖先が面白半分と復讐半分で創った“神だけを殺す刀”。現在は俺たちと美羽たちでそれぞれ十本所持している。
今は堕ち神を倒すために用いられているが、昔は神を斬るために使われていた。それは月美も例外ではないが、ほとんどその記憶は無い。だが、『特性』だけは色濃く残っている。
『……斬りたい』
神に対する異常なまでの殺戮衝動。
今は緩和されているが、神を斬りたいという衝動は未だ消える気配が無い。
苦悶の表情で歯を噛みしめている月美、俺はそれを見て溜息を吐いた。
「……今回は引っ込んでろ」
『え?』
「お前を抑えられる自信がねえからな。必要な時以外は奥に引っ込んでろ」
『で、でもそれじゃあ』
「できるだけ穏便に済むように進むさ。ただし、いざという時は無茶も承知で手伝ってもらうぞ」
『……わかりました』
月美は渋々それを受け入れると、画面の奥へと消えていった。
俺はスマホを仕舞うと、溜息を吐いて気持ちを切り替え、妖怪の山へと歩み始めた。
少年祈祷中
「……綺麗だな」
紅葉が舞い落ちる山道を歩きながら、俺はそう呟いた。
紅く彩られる山の景色。遠くから眺めるのも良いが、こうやって山道を歩きながら内側の景色を見るのもまた一興だな。
まあ、山頂にいる無謀な輩(霊夢に喧嘩を売った奴)に会いに行くって用事がなければまだいいんだけどな。
「ま、今は紅葉の観光でも楽しんでおくか」
そんな事を思いながら歩いていると、何やら美味しそうな匂いが漂ってきた。
匂いからして焼き芋の甘い香り、俺はそれに吸い寄せられるように山道から外れていく。
しばらく進んでいくと、違う山道に出た。匂いの元を辿っていると、道の端に小さな祠が二つあった。
「紅葉と豊穣を司る二柱の神、ね……」
俺はポケットの中をあさると、中から二つの饅頭を取り出した。
俺も一応は神職に生まれた身だ、こういうのをを見ると何も供えずにはいられない性質のようだ。
「そういうわけだ。どうせだから食うか?」
「「え?」」
俺がそう言って振り返ると、後ろにいた少女達は驚いた。
一人はフェーブの掛かった金髪のボブ、赤い上着に裾に掛けて赤から黄色へと移り変わるグラデ―ション生地のロングスカート、頭には楓の髪飾りを付けている。何だか大人しそうな子だ。
もう一人はカールした金髪のボブ、黄色い上着に黒いロングスカートとオレンジのエプロン、頭にはブドウの飾りが付いた赤い帽子を被っている。こっちは何だか明るそうに感じる。
俺は二人に向かって饅頭を投げると、それぞれ手に取った。
「貰っといてくれ」
「え、でもこれ」
「あんたら、ここに書いてある神様だろ?」
「そうだけど……なんで分かるの?」
「勘だな」
「適当なのね」
「あと、そっちの方から美味そうな匂いがするからかな」
俺は隣にいる少女を指さした。
「あはは。それだけで分かるってのも凄いわね」
「笑うところじゃないでしょ」
「でも嬉しい。お供え物なんて久しぶりだから」
「そうね。こんな所に来てくれる人なんて近々減ってきたから」
二人は互いに溜息を吐く。
「神様も苦労してるな」
「まあね。それより、こんな所に人間が何の用なの?」
「ちょっとここのてっぺんにいる奴に会いに来ただけだ」
「てっぺん……ああ、この前幻想入りした二柱ね」
「知ってるのか?」
「この山だとその話で持ちきり。なにせ、あの博麗神社に喧嘩を売りに行ったって」
「いくら信仰が欲しいからって、何もあそこに行かなくてもって思うのよね」
二人は山頂の方を見上げながらそう語る。
どうやら、上には二柱の神様がいるようだ。それにしても、博麗神社の譲り渡しの理由が信仰を得るため………………元々、博麗神社は信仰がない気もするけどな。
「とりあえず、向かってみるか」
「もしかして、この先に進む気?」
「まあ、ウチの鬼巫女が暴れる前にことを納めねえとな」
「大変なのね。でも、この先に進むのは危険よ」
「これでも身体能力には自信があるんだ。とにかく避けていくさ」
「人間なのに無茶するわね」
「良い暇潰しだよ」
俺は小さく笑い、元来た道へと戻って行く。
その時、後ろから呼び止められる。
「そう言えば、名前聞いていなかったわね」
「……神無悠月、通りすがりだ」
「悠月ね。私は秋静葉、紅葉を司る神よ」
「秋穣子よ。お姉ちゃんとは違って豊穣を司る神よ」
「そうか」
俺は二人を一瞥して歩き出す。
しかし、俺はすぐに立ち止まり、振り返りもせずに小さく呟く。
「綺麗な景色と美味い食い物、どうもありがとな」
俺はそれだけを言い残してその場を立ち去った。
空亡「増える設定、減る文章」
美羽「まさにその通りね」
空亡「月美さんの設定は前から伏線染みたのを出してたんですけどね」
美羽「赤いものが苦手ってやつね?」
空亡「某ラノベで人切りの刀が血が苦手だという設定を見かけたので」
美羽「この作品、二番煎じが主流だからね」
空亡「失礼な。リスペクト、あるいはパクリと言ってください」
美羽「パクリはダメでしょ……」
次回予告
山頂を目指す一行が出会った厄神、ユウキの厄はどれほどの物なのか?
東方風神録、苦労人のダークサイド、どうぞお楽しみに。