神無悠月side
「まったく、珍しくヒドイ様だな」
魔理沙はそう言いながら俺に笑いかけた。
射命丸はそれを見て苦虫を噛み潰したような顔している。
「貴女は……」
「よう、久しぶりだな天狗。この前の三流新聞以来か」
「ヒドイ言い方ですね。真実を素直に書いただけですよ?」
「だからって『空き巣泥棒』ってのはちょっと傷付いたぜ」
「ご冗談を」
「ああ、冗談だ」
魔理沙は射命丸の問いに面白そうに笑いながら答える。
「それより、そんなお前が人間相手に本気になるなんて珍しいな」
「私にもいろいろあるんですよ」
「そうか。実は私もこの先に用事があるんだが?」
「当然、通すわけいかないですよ」
「だろうね。なら、ここはひとつ協力してやるか」
魔理沙は俺に振り向いてそう言った。
「お前まで付き合うことは無いだろうに」
「悪いが、私もこの先には興味があるんだ。嫌でも付き合うぜ」
『いいじゃないですか。旅は道連れですよ』
「むしろ道連れにされそうな予感がするな」
「そう言うなよ。お前と私との仲だろ」
「ほう、どういう仲なのか気になりますね」
射命丸は手帳と万年質を取り出してニヤニヤとした表情を向けている。
下手な対応をしたら社会的に大打撃を受けそうな記事を書かれそうだ。そんな予感がする。
「ゆ、ユウキとは別に何も無いぜ///」
「なるほど。解り易い反応ありがとうございます」
「だから、何も無いって‼」
『魔理沙さん……解りやすくて可愛いですね』
「お前までなんだよ」
「はあ……」
俺は頭を抱えながら溜息を吐いた。
とりあえず、これが終わったらあいつの手帳を奪い取ろう。そうしよう。
「魔理沙」
「な、なんだぜ?」
「一応聞いておくが、お前って速さに自信はある方だったよな」
「まあな。伊達に普段から箒は乗り回してないぜ」
「ならいい。とにかく、最高速でアイツを追ってくれ」
「お安い御用だ。それに、アイツには私も借りがあるからな」
「頼むぜ」
「ああ‼」
俺が箒の上に立って月美を構えると、魔理沙はミニ八卦炉を箒の先端へと放り投げた。
「振り落されるなよ」
「愚問だぜ」
「調子に乗らないことね。『幻想風靡』」
「そっちこそな。彗星『ブレイジングスター』」
射命丸が飛びだすと同時に、ミニ八卦炉から閃光が解き放たれた。
マスタースパークの発射を後方にすることによりその推進力で空を翔る魔理沙のスペカ。その姿は正に彗星のようだ。俺は何とか魔理沙の肩に掴まりながら体勢を保つ。
射命丸と交差すると同時に斬撃を放つが、僅かに速さが足りずに取り逃してしまう。
「ちっ……」
「まだまだ‼」
魔理沙は急速旋回して射命丸を追う。
彼女は後ろから追う俺たちを一瞥すると更に速度を上げる。
「まだ速くなるのかよ!?」
「だったらこっちも出力を上げるまでだぜ」
『いいんですか?』
「私も意地があるんだ。それに……」
『それに?』
「こういう時は全力で楽しんだ方が面白いからな‼」
魔理沙が心底楽しそうな笑みを浮かべると、八卦炉からの閃光がより一層強まった。
星屑を撒きながら空を翔る箒は徐々に射命丸を追い詰めていく。それ見て彼女は驚きを隠せない様子だった。
「!? なんで」
「人間を」
「嘗めるんじゃねえ‼」
俺たちの声に応えるように八卦炉から眩い閃光が放たれる。
その時、射命丸を通り過ぎる一瞬、全身全霊を込めた斬撃を彼女へと放った。
たった一瞬だったが、俺たちは幻想郷最速を超えることができた。
今の一撃で意識を刈り取られた射命丸は、重力に逆らうことなく地面へと落下していく。
「ったく」
「ちょ、ユウキ」
俺は箒から飛び降りて地面に着地すると、落ちてくる射命丸を抱き留めた。
顔を覗き込むと目を回している。どうやらさっきの一撃がかなり効いたらしい。
『ユウキって、口は悪いけど優しいですよね』
「何言ってんだ」
『だって、さっきまでほぼ殺す気でしたよね?』
「妖怪は頑丈だから殺す心配はないだろ」
『なら、今のは助けなくても良かったのでは?』
「……相手に怪我させると後味が悪いだけだ」
『はいはい』
「その宥め方やめろ」
「う~ん……」
そんな会話をしていると、射命丸が頭を振りながら目を覚ました。
流石妖怪、あの一撃を受けてこんな短時間で回復するなんてな。
「あれ、私は……」
「お目覚めか?」
「え? え!?」
「どうした?」
「な、何してるんですか!?」
目を見開いた射命丸の顔が徐々に赤くなっていく。
そういえば、今の状況って俺がこいつをお姫様抱っこしているところなのか。
「お前が地面に激突しそうなところをユウキが抱き留めたんだよ」
「そ、それはなんとなく分かってますけど///」
『おや~? そんなに顔を赤くしてどうしたんですか?』
「これは……その」
「お前ら、あまり人をからかうな」
「『ユウキに言われたくないぜ/ユウキに言われたくないです』」
「ははっ、そんなに仕置きされたいのか」
俺は射命丸を下ろすと月美を構える。
「ちょ、ユウキ、月美なんか向けてどうする気だぜ」
「決まってる。二人同時に灸をすえる方法は一つだけだからな」
『ま、まさか‼』
「そういうわけで、逝ってこい‼」
箒に乗って先へと逃げる魔理沙を追うように月美を放り投げた。
真っ直ぐ飛んでいく魔理沙は呆気なく月美と後頭部を激突させると、二人ともゆらゆらと落ちていった。
「バカは朽ちた」
「ホント、無茶苦茶な人ですね」
「お前に言われたくねえよ」
「これでも天狗の中では比較的まともな性格だと思いますよ」
「そうかよ」
「信じてませんね?」
「まあ、当然のことだな」
「あはは、そうですよね」
射命丸は乾いた笑みを浮かべてそう言った。
「……人間に負けたのが悔しいのか?」
「正直に言うとそうですね。これでもプライドってものはあるつもりなので」
「悪かったな」
「いえ。今回は私が冷静ではなかったのもありますし、それに」
「なんだ?」
「人間ってのは時に予想も出来ない事をする生き物だという事を、忘れていました」
「……そうか」
そう語る彼女の目は、さっきよりも清らかに見えた。
「さて、貴方はどうするつもりですか?」
「最初に言った通り、この先にいる神様のところに向かうさ」
「ならばこれだけ言っておきます。……くれぐれもご注意を」
「何だよ急に」
「この山に侵入してきた人間、私の耳には三人と報告がありました」
「それがどうしたんだ」
「――貴方と戦う直前、他の天狗たちはその三人と交戦中でした」
「それって……」
「くれぐれも、命を大事に」
俺は地面に突き刺さった月美を拾い上げると、文は別れを告げてその場を去った。
俺と霊夢と魔理沙、その他にも一人、この山に侵入した人間、それは一体誰なのか?
空亡「とりえず、あややファンの人すみません」
美羽「書いてたらいつの間にかあんなキャラになっちゃったのよね」
空亡「原作に忠実にしようとした結果がこれだよ‼」
美羽「まあ、最後には和解できたからいいじゃない」
空亡「うぅ……自分は結構好きなキャラの筈なんですけどね」
美羽「無駄に張り切るからよ」
空亡「これからは気を付けます」
美羽「でも、今回は一波乱ありそうね」
空亡「果たしてもう一人の侵入者とは誰なのか?」
美羽「次回に乞うご期待ね」
次回予告
妖怪の山山頂へと辿り着いた一行、そこに居たのは神様とバカだった。
東方風神録、古びた戦場跡 ~War forgotten、お楽しみに。