東方絆紡録   作:空亡之尊

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少女が視た幻想の殺風景

神無悠月side

 

 

「……派手にやったもんだな」

 

 

弾幕ごっこが終わった後、俺は二人の居る所へと足を運んだ。

そこには仁王立ちで立って満足気に微笑んでいる霊夢がいた。その視線の先には、御札や針が身体中に突き刺さった姿で地面に倒れている早苗の姿があった。……何このギャグ漫画の一コマ。

さっきの戦いでどちらが勝者なのかは明確だが、こうもはっきりしてると反応に困る。

 

 

「あら、遅かったわね」

「お前らが速過ぎるんだよ」

「こっちは売られた喧嘩を買っただけよ」

「その相手は見るからに満身創痍だけどな」

「どっちが悪役か分かりませんね」

「……それは私に喧嘩でも売ってるのかしら?」

「すみません。お願いですから両手に持った針を仕舞ってください」

 

 

命の危険を察した月美は目にも止まらぬ速さで頭を下げた。

満面の笑みを浮かべる霊夢、その手には霊気を纏った針が持てる限り握られている。敵に回せばただでは済まないだろうな。いや、普通に針なんて人に向けていい物じゃないだろ。

 

 

「まあ、こっちはやることやったから機嫌がいいわ。許してあげる」

「キャラがブレブレですね」

「何か言った?」

「いえ、ありがとうございます」

「それでいいのよ」

「漫才はそのくらいにして、聞きたいんだが」

「「漫才じゃない‼」」

「はいはい。……で、一応生きてるよな?」

「当然でしょ。私は害ある妖怪以外は殺さない主義よ」

「初めて聞いたな」

「初めて言ったもの」

「うぅ~……」

 

 

そんな話をしていると、早苗が唸りながら起き上った。

髪の左側を一房髪留めでまとめて垂らしている緑髪のロングヘアー、霊夢とは色違いで白と青を基調した巫女装束(何故か腋の部部はない)、頭には蛙と白蛇の髪飾りを付けている。あの時は後姿を見ただけだが、やっぱり人の面影はそう変わらないものなんだな。

早苗は顔を上げると、霊夢に向かって言葉を続けた。

 

 

「……なんでそんなに強いのに、貴女の神社に信仰が集まらないんですか」

「それは私が真っ先に知りたいところね」

「うぅ~これでは信仰が……」

「だったら博麗神社に分社でも作ればいいだろ」

 

 

俺の言葉に二人が一斉に俺の方を向いた。

 

 

「それなら麓の妖怪や人間からも信仰を得られるし、何より祭神が分からねえ博麗神社に足を運ぶ参拝客だって増えるかもしれないからな」

「ユウキにしては良い考えね」

「これでも一応神職やってたからな、無駄にそういう事には詳しいんだよ」

「……そんな設定もありましたね」

「おい」

 

 

俺が睨むと月美は顔を背けた。

その時、早苗が俺を見て目を見開いて固まっていることに気付いた。

 

 

「よう。久しぶり」

「あ、貴方は…………」

「あれ? もしかして忘れられてるんじゃありませんか?」

「……可能性は高いな。たしか最後に会った記憶が十年前だからな」

「思い出したことってないんですか?」

「う~ん」

 

 

俺は腕を組んで思い出した記憶をさかのぼる。

思い出すといっても、早苗とは遊んだ記憶というより面倒を任せられたという記憶しか残っていない。むしろ俺より妹たちと仲が良かった印象の方が強い。

 

 

「瑠璃と緋姫なr―――ッ!?」

 

 

そんな事を考えていた時、突然早苗に抱き着かれた。

霊夢と月美が驚いた表情で俺の方を見ているが、一番驚いているのは俺の方だ。

 

 

「良かった……‼ また会えた」

「えーと、早苗?」

「はい、なんでしょう」

「ついさっきまで忘れてた俺が言う台詞でもないが、俺の事憶えてるのか?」

「勿論。だってユウキさんは私の……」

「ん?」

「いや、その、昔よく面倒を見てくれたお兄さんですから」

「そうか。まあ、俺もお前の事を思い出してよかったよ」

「どうしてですか?」

「……霊夢にこの状況についての良いわけができるからな」

「え?」

 

 

早苗が振り向くと、そこには鬼の形相で俺の事を睨んでいる霊夢の姿があった。

とりあえず、この状況について説明するか。……ああ、どこに行っても同じだな。

 

 

 

少年説明中

 

 

 

「なるほど、幼馴染ね……」

 

 

そう言いながら霊夢はジト目で俺を睨んだ。ちなみに俺と早苗は何故か土下座させられている。

何でだろう、この話を咲妃たちにしたら同じ反応が返ってくる未来しか見えない。

ちなみに霊夢に説明している間、早苗は俺の事をじっと見つめていた。

 

 

「でも、幻想入りするために記憶を消すなんて、神様って凄いわね」

「その所為で今までの信仰を失ってしまいましたけどね」

「消えるよりはマシだろ。現に今は生き生きしてる」

「あの二人は相変わらずですよ」

「俺もそう思った」

 

 

早苗の言う通り、あの二人はいつまで経っても変わらない。

まあ、やる事成す事がただで済むレベルじゃないのが悩みの種なのだろう。

そんな話をしていると、早苗が思い出したかのように話を切り出した。

 

 

「そういえば、山に侵入してきた四人ってユウキさんたちだったんですね」

「ああ……途中で邪魔してきた天狗もそんなこと言ってたわね」

「あ、その事なんですが」

「どうかしたの?」

「どうやら、招かれざる客が来てるみたいなんだよな」

「招かれざる客とは、失礼な言い草ね」

「「「「――ッ!?」」」」

 

 

自然に会話に割り込んできた声に、その場にいた全員が振り返った。

皆の視線の先、幾つもの御柱のうちの一本、その上に足を組んで座っている一人の少女が居た。

少女は俺たちの視線に気付くと、感情が籠っていない瞳を俺に向けた。

 

 

「久しぶりね。ユウキ……」

「誰だ?」

「……やっぱり憶えてないのね。ううん、それも当然よね」

「何一人で納得してんだよ」

「ごめんなさい。こっちの話よ」

 

 

少女が愛想笑いを浮かべると、手元にある刀がきらりと光った。

そういえば、美羽から俺のことを知っている奴がいるって話をどこかで聞いたことがあった。

特徴はバカに長い刀、まさかコイツが………………。

考えを巡らせたとき、霊夢が俺の目の前にッチ肌カリ、少女へと眼を飛ばした。

 

 

「アンタ、見たことないけど外来人?」

「そうね。その呼ばれ方は気に食わないけど、その通りよ」

「どうやらユウキの知り合いみたいだけど、味方というわけではなさそうね」

「まあね。だって私たちが起こした事件の所為で、こんな所に迷い込んでしまったもの」

「――待ってください。それってもしかして!?」

「そう、世間で騒がせていた『神隠し事件』、一応その主犯よ」

 

 

少女は在り来たりな台詞のようにそう言い切った。

コイツがこんな事態を巻き起こした主犯。でもおかしい、だったらなんで美羽たちが俺らを幻想郷なんかに贈ったんだ? いや、まず部長はなんで七不思議の調査なんて事を………………。

謎は深まるばかりだが、今は考えるのはやめて、目の前のことに集中するか。

 

 

「一つ聞きたいことがある」

「なんでここに来たのかって質問なら、すで回答の準備は終わってるわ」

「どこまでお見通しなんだ。……いいから聞かせろ」

「怖い顔。……目的は一つ、東風谷早苗に用があるだけ」

「え?」

 

 

少女の言葉に、早苗は目を丸くした。

 

 

「どういうことだ?」

「ふふ、物語というものはいつもワンパターンなものよ」

「いきなり何を」

「夢を見る。異変が起こる。貴方が行く。道中での出会い。堕ち神との戦闘。宴会で終り」

「……おい」

 

 

無機質なナレーションのように言葉を紡ぐ少女、それを聴いて身の毛がよだった。

これまで起きた異変、その一部始終が彼女の言葉通りに行われてきた。ワンパターンな物語、それは意識しなければ何ともないが、それが誰かの『筋書き』だと思うと、不気味な恐怖が俺の身体を襲い掛かった。

そんな俺を少女は見向きもせず、視線を早苗へと向けた。

 

 

「そして、今からの『行程』は……」

「!? 早苗ッ‼」

 

 

俺は咄嗟に早苗へと歩み寄ろうとするが、目の前を視えない斬撃が遮った。

霊夢と月美はそれぞれ避けるが、その所為で早苗との距離が空いてしまった。

少女は御柱から飛び降りると、早苗の前へ着地した。

 

 

「予定よりも押してるから、強引に引き出してもらうわよ」

「貴女は、いったい」

 

 

少女は満面の作り笑いを浮かべると、早苗の耳元へと顔を近付けた。

 

 

「――真なる我、這い出てこい」

 

 

優しく囁くような声が聞こえた。

次の瞬間、早苗を中心に黒い光が広がった。

一瞬目が眩んだが、俺たちが視線を向けると、そこには倒れている早苗と“ソレ”が立っていた。

 

 

「――……」

 

 

“ソレ”は見下すような眼で俺を睨んでいる。

 

 

「さあ、“いつもの戦闘”の始まりよ」

 

 

少女は口元を吊り上げながらそう告げた。

無感情だった彼女が見せた、残酷で無邪気な喜びの表情を浮かべながら。

 

 

 

 

 




空亡「穏やかに終わると思ったところで黒幕登場」
美羽「展開が急ね」
空亡「言わないで下さい。これでも気にしているんですから」
美羽「まあ、紅白巫女と常識欠如との修羅場を期待していたのに残念ね」
空亡「それを書く文章力は僕には在りませんよ」
美羽「この章を書くだけで一ヶ月も費やすアンタには無理な話ね」
空亡「いつか半月で書いてやる」
美羽「時間があったらね」
空亡「ゔ………」


次回予告
早苗の闇から生まれた神、それは誰よりも彼女の心を理解していた。
東方風神録、在り来たりな奇跡は誰の為 前編、どうぞお楽しみに。
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