東方絆紡録   作:空亡之尊

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在り来たりな奇跡は誰の為 中編・銃

天宮星哉side

 

 

「ここまで来ればいいか」

『そうね』

 

 

守矢神社の本殿に辿り着いた俺はそう呟いた。

本来ならケロちゃんが寝てるところだけど、今はどこかに出掛けているようだ。まあ、その方が気楽に戦えるから俺は助かるんだけどね。

 

 

「さてと、久々に行きましょうか」

『余裕ね』

「俺を誰だと思ってるんだよ」

『コスプレとアニメと女子をこよなく愛しているバカ?』

「物凄く的確です。はい」

『で、実際のところはどうなの?』

「う~ん……実際まずいかも」

『言わんこっちゃない』

「まあ、どうにかなるでしょ」

『そんな呑気な』

 

 

後ろを振り返ると、ケロちゃんの影が殺気立ちながら俺の方を睨んでいるようだった。

 

 

「神遊びしましょうか。ケ~ロちゃん♪」

「――開宴『二拝二拍一拝』」

 

 

影が二回のお辞儀、二回の柏手、一回のお辞儀をすると、それに合わせて弾幕が展開された。

左右交互にレーザーが放たれると、拍手のような音ともに弾けた弾幕が影の背後から迫り、その後に最初と同じレーザーを同時に正面へと放った。

拝礼の作法が『開宴』の合図か、中々しゃれてるな。

 

 

「それじゃあ、こちらも」

『……そういえば、主人はスペカ持ってったっけ?』

「ないですな」

『じゃあどうするの』

「だ~か~ら~♪」

 

 

俺はニヤリと笑ってポケット探ると、数枚のカードを取り出した。

 

 

「ユウキと別れる時にこっそり“借りて”おきました」

『“盗んだ”の間違いでしょ?』

「今は気にしない」

『まったく、やるならきちんとやりなさいよ』

「お任せを。斬符『水龍浄化』」

 

 

俺はスペカを目の前に投げると、星羅で狙い撃った。

三発の銃弾は蒼い光を纏うと、影が放つ弾幕を掻い潜りながらその身体を捉えた。銃弾が影に当たると、水飛沫が弾けると共に弾幕が終わった。

ユウキのスペカ、中々使えそうだな。……死ぬまで借りておこうかな?

 

 

「――土着神『手長足長さま』」

 

 

魔が差しそうになっていると、影から闇が漏れ出し、異様に長い手足を形作った。

影はその手足を伸ばして俺の背後を遮ると、前夫から弾幕を放って追い詰めてきた。

前門の弾幕に後門の手足、笑えない冗談だな。

 

 

「斬符『愛糸之恋』」

 

 

影へと星羅で狙いを定めて引き金を引くと、銃弾の軌道に沿って紫色に光る糸が放たれた。

それは易々と躱されてしまうが、背後にある本殿に直撃すると、角度を変えて跳弾した。

三発の銃弾を別々の方向へ撃ち続けると、周囲には蜘蛛の巣状に糸が張り巡られ、長い手足の闇もすっかり消え失せた。

 

 

「――神具『洩矢の鉄の輪』」

 

 

影が見構えると、その手元にフラフープ様な鉄の輪を作りだした。

影はそれを幾つも生成すると、俺に向かって投げると同時に接近して斬りつけてきた。

頭を下げてそれを避けた時、その鉄の輪が錆びていることに気付いた。

 

 

「星羅、若干無理させるけどいい?」

『多少の無理なら承知の上』

「だったら久しぶりにやろうかな。“俺の戦い方”」

 

 

俺は投げられた鉄の輪を避けると、影の懐へと跳び込んだ。

影はそれ以上接近されまいと手に持っていた鉄の輪の斬りつけようとするが、そのタイミングに合わせて、俺は鉄の輪を銃で薙ぎ払うと同時に引き金を三回引いた。

一発は鉄の輪を破壊し、残り二発は影の身体を抉り、爪痕のような傷を残した。

 

 

「黒爪(ブラック・クロウ)……久しぶりに決まったぜ」

『余韻に浸っている暇はないわよ』

「――蛙狩『蛙は口ゆえ蛇に呑まるる』」

 

 

影は俺から距離を取ると、そこを中心に渦巻くように蛙の形をした弾幕を展開した。

それだけなら避けるのは余裕だが、中心からその弾幕が弾け始めた。俺は拡散する隙を突いて既に弾けた渦の中心へと走った。しかし、そこは影の間近だった。影は嘲笑うと、再び弾幕を展開し始めた。

まるで蛇に追いかけられた挙句に呑み込まれた蛙の気分だな。

 

 

「ならば、腹の中で暴れてやりますか。斬符『桜華乱舞』」

 

 

俺は鳥居の真下にいることに気付き、その左右の柱へと銃弾を放った。

二発の銃弾は柱に当たると角度を変え、中心にある影の身体を一閃するように通り過ぎると、再び跳弾して影を斬り裂く。それ繰り返していくうち、鳥居に下では無数の剣閃が乱れた。

剣閃に耐えきれなくなった影は弾幕を消して後ろへと下がった。

 

 

「――土着神『ケロちゃん風雨に負けず』」

 

 

影が手を合わせると、頭上から水色の弾幕が雨の様に降り注いできた。

気合避けでもなんとかなるが、弾幕の密度が濃い所為で影を視界に捉えるのが難しい。

名前の割にはえげつないスペカだ。俺はこの雨風に涙が出てきそうになった。

 

 

「ケロちゃんの前に俺が負けそう……」

『バカなこと言う余裕はあるみたいね』

「これでも精神的に来るもの有るんですよ」

『負けたら予約していたフィギア、取り消すわよ?』

「死ぬ気で頑張らせてもらいます‼」

『それでいいのよ』

「畜生‼ 斬符『暁月』」

 

 

ヤケクソになりながらも、照準を影に合わせる。

弾幕の濃さ? 今そんなこと気にしてる場合じゃないですよ‼

俺は引き金に力を入れて引くと、スペカを撃ち抜くと同時に凄まじい勢いで弾幕を打ち消しながら影に直撃した。

……よかった。これで俺の聖域が守られた……‼

 

 

「よし‼」

『……どこまで欲望に忠実なのよ』

「貴女にはわからいでしょうね。一ヶ月も待って予約した俺の気持ちが‼」

『はいはい。それより、次が来るわよ』

「――土着神『七つの石と七つの木』」

 

 

影は空中へと飛ぶと、頭上から色鮮やかな七本の気を地面に突き刺した。

その後に、これまた色鮮やかな弾幕をばら撒いてきた。途中途中に突き刺された木が邪魔で思うように動けないが、この程度なら避けるのに十分だ。

だが、思った以上に弾幕が濃い所為で狙いが付けにくい。

 

 

「星羅~何か案ある?」

『“お得意の技”でも使ったら?』

「ここ最近やってないからな~……成功率下がっちゃったし」

『ちなみにどのくらい?』

「最低でも80%ってところかな」

『十分よ』

「だよね」

 

 

俺は木を盾にしながら走る周ると、ポケットからコインを取り出して空中に放り投げた。

影の視線がそちらへと向くと、俺はそのコインに向かって銃弾を放った。放たれた銃弾はコインに見事命中すると角度を変え、影の眉間へと飛んでいった。

 

 

「『ワンコインショット』……中々だね」

『そういうのだけは上手いのよね』

「これだけが取り柄ですから」

「――土着神『宝永四年の赤蛙』」

 

 

その時、場の雰囲気が一気に変わった。

影の周りに闇が集まると、同じ姿をした分身が弾幕の尾を引きながら俺の方へと向かってきた。

俺は横に跳んでそれを避けるが、その背後から分身が鉄の輪で斬りつけてきた。

分身二体だけでも厄介だというのに、その上弾幕まで張ってくるとは。

 

 

「まずは分身を……」

『ここで悪い知らせ。残弾ゼロよ』

「もっと早く言ってくれませんかね‼」

『把握しないでバンバン撃ってたアンタが悪いでしょ』

「言い返しきれねえ‼」

 

 

俺が苦い顔をすると、分身が通った跡の弾幕が拡散し始めた。

急いでそれを避けるが、その先では分身が待ち受けていた。

分身は絶え間なく攻撃してくるし、弾幕は時間経過で拡散する。もうリロードする暇がない。

 

 

『その程度ですか?』

「なに?」

『これでは“黒猫”の異名が聞いて呆れますよ』

「……フフ、そこまで言われたら」

 

 

俺は向かってくる分身を蹴りで薙ぎ払った。

 

 

「いいところ見せないといけませんね」

 

 

俺はパーカーの内側から弾倉を取り出した。

しかし、分身が振るった鉄の輪によってそれを空中へと放り上げられてしまった。

俺はその場で分身の攻撃を避けながら星羅から使用済みの弾倉を取り出し、投げ捨てる。

分身に足払いにして転ばせると、落ちてくる弾倉に合わせて銃を横に振ってそれを納めた。

 

 

「最期だ。斬符『無夜』」

 

 

俺は口元をニヤッとさせると、全弾発射(フルバースト)で引き金を引いた。

黒い光を纏った銃弾は真っ直ぐ影へと飛び、その身体を撃ち抜くと霧になって消え去った。

 

 

「さて、“本命”との戦闘でも見てきますか」

 

 

俺は星羅を手元で回すと、湖の方へと歩き出した。

 

 

 

 

 




空亡「どうでしたか? 初お披露目」
美羽「ユウキのスペカを使うなんてね。しかも銃ヴァージョン」
空亡「でも、あの人スペカ使わなくても十分強いですよ」
美羽「コイン撃って軌道変えるなんて荒業、コイツと委員長くらいだものね」
空亡「ちなみに、星哉さんの技はAtoZほどあります」
美羽「何よそれ」
空亡「それについてはまた後ほど。次はいよいよ本命、楽しみですね」
美羽「また長くなりそうね」


次回予告
神遊びその三、堕ちた現人神との最終決戦、絆スペルのコラボ炸裂‼
東方風神録、在り来たりな奇跡は誰の為 後編、どうぞお楽しみに。
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