浮かれた五条悟は死ね   作:moti-

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 ここから連作の感じで話が進みます。
 五条悟は少しばかり出てくるの先になります。すみません。


近年でのでかいことといえばって感じだよね。

「──つーことで、任務なわけだけど……ぶっちゃけ私には荷が重いよぉ……学生にやらせないでよぉ……」

 

「同感だけど、今年に関してはやっぱりどこも人手不足なんだろ。

 てーことでいくぞ(あずさ)ー、気張っていきましょー」

 

「うぅ、いのちゃんがいじめる! 泣くよ!?」

 

 2011年、7月。

 強力な呪霊の大量発生により、オレにも任務が回ってくるようになった。

 本来は高専に匿われている立場で外に出てはいけないとされているオレも、駆り出されている。

 形振りかまってはいられないらしい。

 

 ということで、オレとしてははじめての呪霊退治の仕事だ。

 

「わかってると思いますけど──危ないと思ったら退いてください。二人ともまだ未来を背負ってるんですから」

 

「わかってます」

 

「……では、帳を降ろします。ご武運を」

 

 ため息一つ。

 一級としての認定は特例でされているのだが、だからといって経験が伴っているわけではない。

 だから、正直な話をすると不安だ。

 

 呪胎。

 特級仮想怨霊に成長する可能性を持った呪霊だ。

 初陣は既に済ませているが、少なくとも呪霊との戦闘経験一ヶ月未満の人間に戦わせるものではない。

 

 が、それでもなおオレが行かなければ行けない理由がある。

 

 今回の呪霊の生息地には、何人もの人間が閉じ込められているのだ。

 術士も非術士も含め。

 おそらく死んでいない。が、すぐに治療しなければ死ぬだろう。

 

 だからこそ特級に通用する可能性が高く、軽度ながら反転術式による治癒を持っているオレが派遣されたというわけだ。

 ぶっちゃけオレを殺そうとしてるんじゃないかとは思うが、しかし相方である彼女は一度特級を祓った経験だってある。

 

「そういえばいのちゃんさぁ。ごじょ先生からなんかもらってたよね。ラブレター? なんて書いてあった?」

 

「んー? まだ見てない。あとで見ろって言われたから任務終わってから見ようかなって」

 

「ラブレターなのは否定しないんだ。にへへへ」

 

「あっちげぇ今のなし! 忘れて!」

 

「やー。にへへ」

 

 やめろや。

 

 中綿(なかわた)(あずさ)

 高専二年であり、準一級術士だ。

 その服装は戦地に赴くとは思えない、ふざけたくまさんきぐるみ(顔は出ている)。とはいえこれも冗談というわけではなく、彼女の術式に必要なものなのである。

 

「……煙ってる?」

 

「火災かもね。あー、なるほど。たしかに火災への畏れだって溜まってるか。時期が時期だもん」

 

 そう言えばまぁそうだけど。

 ずけずけと奥に進んでいく。

 随分とシンプルな構造の建物だ。

 ──生得領域は展開されてないらしい。

 

 この調子だと接敵はすぐだろう。とはいえ、地下に入り組んでいる場所らしいので少しばかり厄介だ。

 

「……いたな」

 

 見つけたのは、おそらく被害者の姿。

 肺が大きく動いている。生きていることを確認し、梓と顔を合わせて頷き合う。

 そして、オレはゆっくりと近づいた。

 

「……肺が焦げてるっぽいか。これなら治せる」

 

 目を通して、正のエネルギーを用意する。

 それをゆっくりと通し、体の欠損を埋めるように正常な形に治していく。

 よし。

 これで治癒は完了なはずだ。

 意識が戻った彼らに、帰り道の方向を教えて撤退してもらう。

 術士も混じっているのならきっと大丈夫だろう。

 

「見事なもんだねー。私ったら反転術式さっぱりだよ」

 

 オレも正攻法じゃやり方がいまいちわからないけど。

 とはいえ、そういう事情をあんまり言って良いわけでもなく。結局黙るのだった。

 

「さて」

 

 残るのは、奥に続く部屋のみ。

 そこがどんな惨状になっているのかはわからないが、おそらくそこに標的はいる。

 そういう雰囲気がある。

 

「いくか」

 

 部屋の扉の前に立って、

 

 ──「赫」を放った。

 

 出力最大で放ったそれは部屋に充満していた煙を吹き飛ばし、その奥にあった壁を突き破って空気の通り道を作る。

 強制換気である。

 

「……やってなかったら危なかったかもー」

 

「一酸化炭素中毒で普通に死ねるなぁこれ」

 

 だからこそ締め切っているのだろうか?

 ともあれ、部屋の中に丸まっている()()を見つけた。

 

 呪胎だ。

 おそらくもう目覚めるのだろう。

 今のうちに仕留めることができるのがベスト。

 

「オレが」

 

「了解」

 

 言葉は少ない。

 両目に呪力を籠め、「茈」を放つ──が。

 上空に勢いよく飛び出したその姿を認め、効果がなかったことを悟る。

 正面に大穴が空いた。これでますます戦いやすくなる。

 

「目覚め」「か」

 

「喋った……?」

 

 声が二つ聞こえたのは気のせいか。

 いや、違う。きっと実際に二つ声が発声されたのだ。

 

 喋る呪霊。それも流暢に。

 つまり、等級は相当に高い。

 なるほど。特級に扱われるわけだ。

 

「いのちゃん、呆けてる暇はないよ!」

 

「わかってる!」

 

 いまので「茈」の脅威はバレただろう。相手もきっと相応に注意をしてくるはずだ。

 みなぎった呪力。それを惜しみなく身体強化に回しつつ、オレはどう動くのかを模索する。

 

「我が名は」「大火(たいか)

 

 火災の呪霊ということは間違いない。

 ということは、術式はおそらく火に関連するもの。

 先程の煙もおそらくはその効果。

 

 ──おそらくは、その煙が効果の本体。

 相手に火とともに病毒を撒き散らす術式。

 こういうときに、ニュートラルな無下限の術式がほしかったと思う。

 ないものねだりをしても仕方ないとはわかっているのだが。

 

「言葉が通じるとちょっとラクかも」

 

 と、声が響く。

 接近した梓が、呪霊の体に拳を叩き込んでいた。

 一撃一撃が重たいそれ。

 到底細身の少女の体から繰り出される攻撃とは思えないほどの一撃は、大火と名乗る巨体を大きく吹き飛ばしていた。

 

 吹き飛んだところを、オレが「蒼」で引き戻す。

 帰ってきた呪霊に対して、梓は正確に蹴りを通した。

 

「私の術式はシンプルだよ。自分の着てる服のイメージで基礎能力が変わるの。

 ほら、どう? このくまさん。かっこよくて、かわいいでしょ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 術式の開示。

 シンプル、故にリターンは少ないが。

 それでも彼女にとって、少しの強化は莫大なものである。まるで無限に思えるほどに。

 

 速度を増した拳が呪霊の顔面に叩き込まれた。

 が、それをものともせずに指で印を結んだ姿を見て、すかさず「蒼」で彼女を引き寄せる。

 

「半焼」「半焼」

 

 つまり全焼だなわかった。

 途端に燃え盛る呪霊の姿。退いたのは正解だ。

 

 そして、炎を纏った大男がそこに立つ。

 

「第二ラウンドかな?」

 

「んー、これで終わりだと良いねぇ」

 

 






 戦闘は残り二話です。
 最後の一話をこれから書きます。


 ちなみにこの連載は残り10話もしないうちに終わると思います。
 終了までちょっとほのぼのパートを離れるかもです。申し訳ない。
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