「ていうかさー祈。グラサンつけたりしてみない?」
いきなりの悟の問いに、返すものを一瞬模索する。
しかし考えても現れてくれなかったので、「んー」だとか言ってみて、その真意を探ることにした。
「サングラス? なんでまた、いきなり……」
「眼を隠すためだよ。ちょっとでも隠しといたら、「茈」出ないんじゃない?」
「おそらく、そう……だと思う」
だけど。
だからと言って、その提案を受け入れたくない思いがある。
最強ド高貴少女にそんなもの、似合わないのだ。
メガネならいいと思う。
「いいから、とりあえずやってみなって」
「あっちょっ」
悟に無理やり付けさせられた。
鏡でwithグラサンの顔を見る。
「違う……こんなの、ド高貴なオレじゃない……違うんだ……」
かわいい。
かわいいが、違うのだ。
いやでも待ってちょっとアリかもしれない。
ド高貴じゃないけど、いいかもしれない。いやまていいぞこれ。ちょうど後ろに悟がいるため、ヤンキー兄に付き添って大人のようにしてるみたいでいいぞこれ。
「五千兆点……!」
「最初どんだけ高いのそれ」
そりゃもう言語で語れないくらい。
「でも、これで外歩くの照れるなー。これじゃきっと芸能界にスカウトされちゃうよ」
「祈って自意識高すぎるよね」
「ってことで眼帯にしない? それならきっと憂いのある感じでド高貴感増すから」
「まずド高貴って何? ていうか眼帯だとどっちか出るかもしれないじゃん。危険じゃない?」
「だからオレ、右目隠すね」
「待って待って「赫」危険だから逆にしようか」
「え、でも吸い込むよりよくない……?」
「……そうかもね」
ということで、右目に眼帯を付けることにした。
現在買い物中。悟も付き添いに連れ出して。
女子って買い物が長いし多いらしいので。
最強をこんなにも連れ回していいのかとも思うが、彼自身が言い出したことなので問題ない。
そういうことにしておいた。
それに緊急の案件が出てきたとき、すぐに悟が向かうという約束をしているのだ。
だからそちらについて、あれこれ気を回さずにいる。
オレの案件じゃないので悟に丸投げだ。
「夕食って、何がいいかな?」
「祈のセンスに任せる。強いていうなら肉がいい」
「デザート買って帰る?」
「当然」
即答だった。
なんだかんだしっかり何がいいのかの提案をしてくれるので、すごく助かる。
前世のオレなら、きっとこうして答えることもなかっただろう。
性格が終わっているくせして、こういうところにイケメンのオーラを感じさせてくる。
性格面で超妥協することになるが認めよう。五条悟という男を。
オマエならこの祈ちゃんと結婚するに値すると。
なんて言ってみるけれどコイツとの結婚を断ったときまた監禁されるので選択肢がない。
五条悟と結婚。
これがもう確定されていた。
泣きたい。
「──痛っ!? 眼帯超いたっ!?」
「なんかイラッとした」
「まだ何も言ってないよ!?」
「まだって、つまりなにか言おうとしてたってことだよね?」
「あっちげぇ今のなし! 訂正! 取り消し! 消印有効!」
「最後のなんかおかしいね」
そうだろうか。消印有効、何がおかしいのだろう。
疑問を解消するため、ジャングルの奥地に向かったオレ。そこで行われていた……
「何ていうか、祈ってすごく感情豊かだよね」
「えっ、そう? 照れる」
「今のどこに照れる要素があった?」
脱線。
「いっつもさぁ。怒ったりしたときに感情を殺してるじゃん」
「そうだね」
「辛くないの? それ」
「んー……」
辛いか辛くないかで言ったら、辛くない。
そもそもオレ、意識してやってるわけじゃないし。
けれど悟から見るとそう見えるわけだ。
感情ってわからない。
人間って難しい。
「辛くないよ。無意識でやってることだし」
「そうかぁ? 結構気を使うことだと思うけどね」
「そうなんだ。少なくとも、オレにとって」
「なるなる。じゃああんまり気にしないことにするよ」
しかし肉系か。
一体どういうものを望んでいるのだろう。
悟の好みを知らない。それを知っているくらい長い付き合いじゃない。
だから、少し悩む。
オレの趣味に付き合ってもらおうか。
そう思って、適当にタレをカゴに入れた。
「おっ、今日生姜焼き?」
「こういう簡単なヤツしかまだ作れないんだ……許して?」
「いいよいいよ。誰かと会食するの楽しいでしょ。それにだいたいなんでも美味しくいけるし」
「え、意外。たっかいとこ行きまくってるかと思ってた」
「行くけど、学生時代とか自前で用意してたからね。さすがにそのときからずーっとそういうところにいくわけでもないだろ?」
自炊もできるんだ。
もっと意外。
となると、意外と料理得意だったりするのだろうか。
オレよりもうまい可能性が出てきた。
もしそうだったら教えてもらおう。
なんでもわかるやつに聞く。それがオレのやり方なのだ。
そのまま、流れでいるものを買っていく。
「おやつ買おっか?」
「わーい!!」
二十歳児が両手を上げて喜んでいる。
なんだこいつ。
「何がいい?」
「冷静に考えたら元々こっちのお金だよね」
まぁそうなんだけどさ。
それを言っちゃおしまいだと思う。なので聞かなかったことにした。
カゴに投げ込まれるあれやこれや。
オレの超かわいく華奢で弱々しい手じゃ持てないくらいお菓子がどっさり投入される。
「んぎーんぎぎー」
「あー、もう。持ってやるから」
「買いすぎだと思うよ!」
──数日後。
こっそりとソロでの買い物にチャレンジしたときのこと。
「あら、祈ちゃん」
「あ、店員さん。今日も来ちゃいました」
ウルトラ最強レジェンド女児のオレを目にかけてくれる店員さんと、空いているレジで会話。
「今日、お兄さんいないの?」
「あ、悟あれでも忙しいんで。
今日ちょっといなくて!」
「そっか。荷物持てる?」
「少なめにしました!」
ちょっと食後のスイーツを買いにきただけなので。
購入。
買いすぎたのかそこそこ重たいそれを手に提げて、帰る間際。
「あのね、祈ちゃん。一応言っとくと」
「?」
一体なんだろう。
オレが疑問に頭を傾げると。
「お兄さんのことが大好きでも、外であんまり出したらだめだよ? お兄さんにそういう視線が行っちゃうから」
「……えっ」
盛大に衝撃。
いや、オレ悟のこと好きじゃないし。
許してないこともたくさんだし。
なんだかんだ結婚することになったけど、それでも好きじゃないんだけど?
ていうかそうじゃなくて。
「祈ちゃん、すごくかわいいから。だから、こう……お兄さんに、ロリコン疑惑が……ね?」
「兄妹説……どこ……?」
「あんまり兄妹に見えないんだよね。……祈ちゃんが家計握ってるところとか。なんか、やりとりが」
「……………………」
五条悟について、悪い面をよく知っているから素直にこう思ったことなどなかったが。
うん。
今回に限って心底同情する。
かしこをつけると美少女になれるって聞きました。かしこ。
ドヤ顔でやったことがミスってて怒りのあまりに「は行」を殺したつもりですがもし生きてたらお伝えください。
地獄の果てまで追いかけて息の根を止めます。かしこ。
皆様のおかげで色がつきました。
ありがとうございます。これからものんびりと続けていくかもしれないのでお付き合いいただけると作者が喜びます。敬具。