浮かれた五条悟は死ね   作:moti-

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反転術式三銃士

「反転術式三銃士を連れてきたよ!」

 

「反転術式三銃士?」

 

 いきなり突拍子のないことを言い出すのには慣れているが、それにしては随分と突然だ。

 ていうかそもそも反転術式ってなんだ。

 まだ教えてもらってないんだけど、ひょっとして当然のように応用のアレやらされるのだろうか。

 オレは天才だから反転術式がどういうものなのか大体推測できる。

 たぶん「赫」を使うのに必要なものだ。

 だって前に術式反転って言ってたし。ふふん。

 

 オレの完璧すぎる推測はさておきとして、悟は自分を指差した。

 

「まずはこの僕、五条悟! 最強だから使えるに決まってるよね! ちなみに今も使ってるよ!」

 

「はぁ」

 

 次に、隣にいる女性を指差して。

 

「そして家入硝子! 現在高専で医師として活動中! 僕の同級生!」

 

「はじめまして」

 

「はぁ」

 

「以上だ!」

 

 二人じゃねぇか。

 オレの疑問を見透かしたように、悟はこちらを指して言う。

 

「三人目に祈がなるんだよ。大丈夫、呪力操作は上手だしきっとできるようになるって! いつになるかわかんないけど!」

 

「はぁ~~~?」

 

「この馬鹿が無茶苦茶なこと言ってるだけだから、別にできなくてもいいよ。他人の治癒ができるくらいになってくれたら、私としては助かるけど」

 

「あ、はい。がんばります」

 

「ちょっと待った祈なんか僕と硝子との対応違くね?」

 

「はぁ」

 

「はぁ~~~? こっちは一応君の命助けてるんだよ? もっと敬ったりしない? ねーねー祈ねー」

 

 そういうところだと思う。

 

「そもそも、反転術式ってどうやるの?」

 

「ほら、アレだよ。ひゅーいとやってひょいって感じで」

 

「ひゅーいとやってひょいだね」

 

「はい解散」

 

 わかんねぇよ。理論で説明しろ。

 こっちはそんな感覚派じゃないんだよ。天才だけど。ベクトルが違うんだって。

 そんなふうなこと言われても困るだけだから。

 

「ていうかさー、そもそも反転術式ってなに?」

 

 家入さんが悟の頭を叩いた。

 ちゃんと叩けているあたり、たぶん自分でも自覚があるのだろう。

 悟は家ですら無下限呪術を稼働させている。なので、普通は触れることもかなわない。

 

 つまりこれは自分でも悪いと思っているということだ。

 ばかやろー。

 

「そっかそっか! そこから説明しないとだね。

 そもそも呪力っていうのは負のエネルギーなんだ」

 

「ふむふむ」

 

「前に術式を家電に喩えたよね? 今度はそれを人の体としよう。

 人の体は正のエネルギーでできている。だから、負のエネルギーである呪力では強化はできても再生することはできない。

 怪我を埋めることはできない」

 

「あっ、わかった! つまり正のエネルギーを作るのが反転術式なんだ!」

 

「ご明察! イエーイ!」

 

「イエーイ!」

 

 ハイタッチ。ふふん。やはりオレは天才である。

 そして同時に、術式反転のメカニズムもわかった。

 正反対のエネルギーで行使するのだから、その効果もまた裏返るというものだ。

 

 無下限呪術ならば、負のエネルギーで発動するものが「蒼」。これはモノを引き寄せる力。

 正のエネルギーで発動するものが「赫」だ。これがモノを弾く力。

 虚式「茈」に関してはこのどちらもを衝突させ発生する「仮想の質量」を放出する技である。

 なんというか、ゲームのバグ技でありそうな。

 

「無表情なのに明るいものだな」

 

「びっくりするくらいね。見てよあの顔。絶対馬鹿なこと考えてる」

 

 だってこんな美少女が明るくないとかダメじゃん。

 世界の損失ですよ。

 

「ていうか、反転術式って別に術式じゃなくない? ややこしいよ」

 

「生得術式のことを一般には術式って言うからねぇ。確かにややこしいと言えばややこしい。

 でも、それを言ったら領域だってそうなるんじゃない?」

 

「そもそも領域ってなに?」

 

 家入さん、二発目。

 ぺしんといい音が鳴った。

 

「そうか、基礎の呪力操作しか知らないのか。うっかりうっかり。生徒と混同してたよ」

 

「しっかりしろよ五条……あんた一応この子の夫になるんだろ?」

 

「それがさー」

 

 と、ここで悟は口を尖らせて。

 

「最近、祈と遊びにいったときにロリコン扱いされるんだよね。どうにかならない?」

 

「事実ロリコンだろ」

 

「違いますぅー、全然、全然、ずぇーんぜん違いますぅー」

 

「でも匿うだけなら結婚する必要はなかったんじゃない?」

 

「えっ、そうなの?」

 

 おい二十歳一般最強術士。

 なんだかんだこれまで我儘を通しまくってたらしいのになんでここでそんな鈍感さを出すのか。これがわからない。

 

 脱線。

 話を反転術式に戻す。

 

「要は、負のエネルギー同士を掛けて正のエネルギーにするってわけ」

 

「なるほど……なるほど?」

 

 軽く呪力を動かしてみる。

 呪力同士を掛け合わせるって言ったって、よくわからない。

 咸卦法か何か?

 

「わからん!」

 

「どう伝えればいいかな……」

 

「え? 祈できないの? マジで? ほらこれだよこれほらほら、え? わかんない? センスねぇ~」

 

 左目を隠しつつ睨んだ。

 それにより発動された術式順転「蒼」が悟を引き寄せる。

 そのまま目線の動きで部屋の外へと運んでいくと、悟は扉を弾き飛ばしながら吹き飛んでいった。

 あ、あいつ何気に無下限ガード全開にしてやがる大人げねぇ。

 

「……ヨシ!」

 

「よしよし、よくやった」

 

「ひっでぇ。僕じゃなかったら大怪我だぞ? 全く」

 

 続けて五条悟は言う。

 

「でも目線での制御はできるようになったっぽいね。まさか僕で試されるとは思わなかったけど。……ったく、扉直さなきゃいけないじゃねーか」

 

「……ん? そう言えばちょっと待て五条。そこで立ってろ」

 

「はぁ?」

 

 家入さんの言葉通り、悟は入り口で立ち止まる。

 彼女に手を動かされ、オレは今度は右目を隠した。

 

「このまま「赫」を撃って」

 

「はい」

 

「ちょっ、バカ」

 

 言い終わるのを待たずに、放たれる「赫」。

 それが悟を更に吹き飛ばす。

 

「……何がしたかったんだオマエ」

 

「ご苦労さま。おかげで興味深いことがわかったよ」

 

「はぁ?」

 

 彼女は指を二本立てて、説明を始めた。

 

「呪力は最小の状態でも2以上なのはわかるよな? 五条が昔言ってた天与呪縛の特例を除いて、だけど」

 

「あー。そうだな」

 

 なにそれ知らん。

 

「反転術式は負のエネルギー同士をかけ合わせて放つものだろう? これに関しては過不足なく正のエネルギーにするために、出力は二乗になるはずだ」

 

「あーね。でもさっきのは()()()()()()、だからおかしいってことだろ?」

 

「そう。目に術式が宿ることはままあるけれど、片方ずつで効果が反転しているというのはおかしいし」

 

「そもそもの性質が反転してるんだよ。僕が言うんだから、間違いない」

 

「でも、そうなると術式を二つ持っていることになってしまう。合ってるだろ?」

 

「それはまぁ、そうだけどな」

 

「つまり出力の過程で、術式が反転するに足る理由があるはずってことじゃない?」

 

 天才だけど何言ってるのかわからん。

 とりあえず、オレの目がおかしいということはわかったが。

 わからないのでとりあえず首を傾げておいた。

 

 と、こちらを見て黙り込む二人。

 何か言ってほしい。困る。

 

「あー。簡単にまとめると、だ」

 

「はい」

 

「ひょっとすると、左目自体が負のエネルギーでできている可能性があると、私は疑ってる」

 

「はぁ? なにそれ、呪力で出来てるってことか? んなわけねぇだろ」

 

「出力が変化しないのは、左目が呪力で出来てるから?」

 

「かもね。いや、ただの推論だ。間違ってる可能性のほうが高いだろうから、あまり気にしないでくれ」

 

 でも、呪力で体が構成されてるのって呪霊じゃなかったっけ。

 IQ200を誇るオレはきっちりその教えを覚えている。えっへん。

 

 五条家は御三家。呪術の名門だ。

 そんな場所が、呪霊の交じるものを生み出すことはないと思うけど。

 

「でも、スーパーの人はオレの目見えてますよ?」

 

「……わからんな。うーん、違うかも。変なことを言ったな」

 

「そもそも本当に呪力で出来てるなら、僕の眼で気づけないわけないだろ?」

 

「それはわかってる。ただ、もしそうなら、目を経由することで反転術式はできるんじゃないかって思っただけだよ」

 

「目を経由、ねぇ……」

 

 言われた通りに呪力を左目に。

 そこから、その呪力を右目に寄せる。

 左目を瞑ってから、「蒼」を発動。

 

「──おおっ」

 

 と、悟がまた吹き飛んだ。

 壁をぶち抜いて、遠くへと飛んでいく。

 

「……驚いた。まさか本当にできるとはね。ほとんど冗談の域だったんだが」

 

「……嘘だろ? ちょっと見せて」

 

 オマエのほうがよっぽど嘘だろだよ。

 

 戻ってきた悟は、顔をぐいっと近づけて左目を覗き込む。

 いや鼻がほっぺにくっついてるが。近いが。

 

「は? いやいや、普通の目だぞ? どういうことだ?」

 

「まぁ、まだ呪力に関しては解明されてないことも多いから、ちょうど彼女がそれなんだろう。

 私のほうでもなんとかして調べていくから……そろそろ退いたほうがいいんじゃない?」

 

「は? なんで」

 

 近いからだよ。

 オレの目線での訴えで、合点のいったような顔をして悟は立ち上がろうとする。

 ちなみに体を離さずに立ち上がろうとしたので、オレの頬に彼の唇が触れたりなどした。

 

「んー、やっぱよくわかんねぇや。ってあれ? 硝子どこ行った?」

 

「……………………」

 

 今のは不幸な事故なので、別に怒ったりはしない。

 

 けど、それでも軽く吹っ飛ばすくらいは許してほしい。最強の称号に免じて。








 来年もよろしくおねがいします。
 なんか全然TINTIN(ぐるぐる)しないや
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