浮かれた五条悟は死ね   作:moti-

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【警告文】

 キャラの心象の勝手な推測・捏造があります。
 また、ぼかしておりますが原作のネタバレがあります。呪術廻戦8~9巻部分です。
 それ以上のネタバレはありませんので、ネタバレが嫌いな方はその二冊だけを読んで頂いてからの読了をおねがいします。
 そうでない方はこのままどうぞ。


あれ……この五条悟、浮かれてないぞ……? 浮かれた五条悟とは一体……うごごご……

「──誕生日?」

 

 いや、知らんし。オレが知ってるとお思いか。

 そういう意図を込めてヤツを睨むが、まったくわかっていないよう。普段の勘の良さは完全に消えているらしい。

 まぁ、普段の生活で頭って使いたくないよね。

 オレは天才だからやるけど。

 

「ちなみに僕の誕生日は12月7日! 盛大に祝ってくれていいよ!」

 

「ふーん。あ、家のほうに聞いたらわかるんじゃない? オレ、自分の誕生日覚えてないし」

 

「反応薄っ、そういうのはせめてカルピスだけに留めてくれ」

 

「いや……だって濃ゆいし……」

 

「祈のは味しないんだよ」

 

「そう?」

 

 そうだろうか。これがわからない。

 

「あと、家のほうに君の記録は一切残ってないね」

 

「ほえー」

 

 そうなんだ。

 ってことは、オレの誕生日は完全に闇の中。

 まぁ、別にいいけど。

 

 そもそも毎日誕生日気分になれるし。ふふん。

 これも財布を握るものの特権である。

 

「祈はほしいものをあんまり言ってこないけど、気軽に要求してもらって大丈夫だよ? 金あるし。

 ゲーム機とかどう? ポケモンやろうぜポケモン。なんか対戦賑わってるらしいじゃん」

 

「あー」

 

 そういえば、この時代ってBWの時代か。

 アナログテレビの終了もまだしてないし。

 

 オレには2018年までの記憶がある。

 未来を知っている、と言えば聞こえは良いが、実際はそれにも穴がある。

 実のところ、前世で起こった事件やらの記憶はもう完全に曖昧だ。

 それに首相の名前すらも。政策名だって、完全に覚えていない。

 一般常識に近いこれらを覚えていないのは相当な欠落だ。穴は大きい。

 

 けれどポケモンくらいならオレも覚えている。

 

「いいね」

 

 まぁオレ最強だから。

 初心者に過ぎない五条悟になんか絶対負けないし。

 

「じゃ、買いに行こっか」

 

「は?」

 

 今は月曜日、夜七時。

 うら若き少女を連れ回すにはすこし遅い時間じゃないだろうか……?

 オレがおかしいのだろうか。

 

 でもこんな美少女を連れ出して、万が一何かあったらどうするんだ。

 いや、こいつが最強だっていうのは知ってる。知ってるけど、知ってるからこそ思う。

 

 何かあったときに相手のほうが危ない、と。

 そういうことである。

 

「もー、なんでそんないきなり……」

 

 

 

 

 まぁ晩ごはん楽できるからこっちとしては嬉しい提案だったけど。

 フードコートでのんびりとハンバーガーをつまみながら、悟の隣に置いてある今日の戦果を鼻歌まじりに眺める。

 

「大収穫!」

 

 買ってもらったDSi。

 悟はLLを。オレは手の小ささ的に普通のものを。

 この神話級美少女はおてての愛らしさも世界級だった。ふふん。

 なので大きいと手に合わなかったわけだ。かなしい。

 

 今はちまちまチーズバーガーをつまんでいる。

 

「晩飯それだけでいいの? 少なくね?」

 

「オレみたいな美少女にはこれくらいがちょうどいいのです」

 

「ふーん」

 

 ファストフードっていいよね。

 わかりやすくジャンキーな味。

 鼻歌を歌いそうなくらいに上機嫌なオレを見て、悟が「でもさ」と言い出した。

 一体なんだろう。

 首を傾げる。

 

「ちゃんと食わないと肌荒れるよ」

 

「はーデリカシーねーな死ねー」

 

「無表情でしれっと毒吐いたね」

 

 こんな美少女に向かってなんという言い草か。

 こっちは悟がいない間大量の美容本読み漁って勉強してんだぞこのやろー。

 ちゃんとそこらへんしっかりしてるから今日くらいはいいじゃん。そうじゃん。

 このやろこのやろ。

 そんなのだから性格が終わってるとか言われるんだぞ。

 

「いや、でも僕の言ってること間違ってなくない?」

 

「オレ、正論嫌いなんだよね」

 

「なるほど」

 

 家入さんに悟の学生時代のことをちょこっと聞いた。

 友人にこう返してギスったことあるらしいじゃん。

 

 流石にそれを言われたらなんとも言えないのか。彼は言葉を続けることはなかった。

 きっと、これ以上は不毛だと思ったのもあるだろう。

 

 わかってることを指摘されるのはいらっとするとはいえ、さすがにこちらも大人気なかっただろうか。

 少し申し訳ない気分になりつつ、沈黙が嫌だったので「ごめん」と謝っておく。

 

「なんで?」

 

「なんで、ってほら。ちょっと嫌な言い方したし」

 

「うへー。そう言われると昔の僕が超嫌なヤツみたいじゃん」

 

「いや、まぁ、それは違わないと思う」

 

「言うねぇ」

 

 炭酸が飲めないから、オレンジジュースで。

 ハンバーガーをちまちまと食べ進めつつ、飲み物で口の中をさっぱりさせる。

 

「…………」

 

「……なに?」

 

 食べている間、やけに悟がこちらを見てくるので、そう聞いた。

 

「いや、なんでもないよ」

 

 絶対なにかあるだろ。

 そう思ったけど、オレは何も言わない。

 彼の目は、なぜか真剣なものだったから。

 

 

 

 

「よーしとうちゃーく!」

 

「なるべく早く済ませてきてねー」

 

 ひらひらと手を振って、振り返る。

 

「あれ? こないの? 好きなもの買ってあげるよ?」

 

「お前は僕の母親か。このスーパー、祈といると僕がロリコン扱いされるんだよ。だから」

 

「あー。そうね。ごめん! じゃあ頑張って早く終わらせる!」

 

「はいはーい。おねがいね」

 

 彼女がスーパーの中に消えた後、彼は闇夜に歩き出した。

 

「よぉ、五条悟。子守りか?」

 

 現れたのは一人の男だ。

 呪力を纏うさまを見ればすぐにわかる。術士であると。

 彼が五条悟の前に姿を現した理由なんて明白だ。

 最強の証明がほしい。

 あるいは、彼にかかった莫大な賞金がほしい。

 

 そういった呪詛師が、高専時代から変わらず彼を狙っている。

 

「まぁね。で? やる気?」

 

 返しながら、相手の実力をすぐに悟った。

 弱い。そもそも、「最強」になってから数年だ。そんな今になってもなお狙ってくる連中が、勘違いした雑魚でないわけがないのだが。

 仕方のないことだ。

 これまでもやってきた。

 そしてこれからもやっていく。

 これはどこまでも当たり前の、「いつも」を彩るパーツでしかない。

 

「おうとも。いやぁ、しかし、まっさか、五条悟がロリコンだったとはな……そういうタイプじゃないと思ってたが。意外も意外よ」

 

「……祈の側だし、特別に殺さないであげようと思ったけど。やっぱり殺そうかな」

 

 開戦。

 とはいえ、語るまでもなくその顛末は知れている。

 完成した無下限呪術の遣い手を正面から倒せる存在なんて、この時代にいるわけがないのだ。

 

 

 

「──ごめーん! 遅くなった!」

 

 今回は、感情が表情によく出ていたと思う。

 そう思うのは、自分が彼女に慣れてきたからか。

 戻ってきた祈の頭を撫でながら、五条悟はずっしりと詰まった買い物袋を引き取った。

 

「今日はいっぱい歩いたなぁ」

 

 その言葉には笑みで返す。

 

 わざわざ歩いて外に出る理由は、実のところ特にない。

 車も用意させようと思えば用意させられる。

 

 なのになぜそうしないのかと言うと。

 

『──お前……あのガキが、自分の地雷だって……喧伝するために、わざわざ……』

 

 そんなわけないだろう、と思う。

 そんなわけないはずだ、と思う。

 けれど。

 

 かつて、わずかながら同じ時間を過ごした仲間のために怒ることはできなかった。

 

 ひょっとすると、彼は証明がほしいのかもしれない。

 自分の伴侶に何かあったとき、それのために怒ることができるという証明が。

 五条悟が、冷酷に染まりきっているわけではないという証明が。

 

 

『殺したければ殺せ。それには意味がある』

 

 

 そんなの、あのときにできなかったことが証明しているというのに。

 けれど、四年の月日では埋めきれなかった欠落がある。

 二十歳になった。もう少しで二十一歳になる。

 けれど最強の青年は、まだまだ大人にはなれなかった。

 それこそ、まるで無限が隔てているかのように。

 

 

 

「──寒いね。今日は」

 

 風が吹く。

 息が白く染まるような時期だ。

 幼い体には堪えるだろう。そう思って、傍らの少女を見た。

 

 全くの無表情。

 平時の彼女は、その奥の色を何も見せてくれない。

 五条悟にとって、五条祈という少女は親戚だ。

 七の年の差。それはあまりにも大きい開き。ひょっとすると、無限にも思えるほどに。

 彼女は十年の月日を監禁されたまま過ごした。

 七年でそう思うのだ。果たしてそれは一体、どれだけの苦痛になるのだろう?

 

 たとえ、彼女に自我がないとしても。

 

 関係性は呪いだ。

 

 昔、従兄妹として産まれた少女を見に行ったことがある。

 彼女はまるで太陽など知らぬかのように、白い肌と髪をしていた。

 

 そして再び会ったときも同じく。

 彼女は太陽など知らぬかのように、白い肌と髪をしていた。

 

 ──関係性は呪いだ。

 

 五条悟は最強になった。

 五条家どころか、呪術界に対してもその我を通せるほどに、彼は力を持ってしまった。

 だから、いつものように彼女を助けることにした。

 

 呪術師は万年人手不足だ。

 毎年任務に挑み、死ぬ高専生がいる。

 一般の呪術師だってそうだ。

 毎年何人が死んでいるのだろう?

 

 五条悟は強い。

 ともすると一人で日本という国家を転覆させられるほどに。

 けれど、彼一人が強いだけではダメなのだ。

 

 高専時代。

 親友との決別。その一件で、彼はよく知っている。

 

「月が綺麗だね」

 

 五条悟らしからぬ考えを打ち切るために、他愛のない言葉を紡ぐ。

 特段それに意味も、意図もない。

 ただあるがままを表現しただけ。

 

「……………………」

 

 おや、しかし。

 無表情だった彼女の頬に、一瞬朱が差したような?

 今の言葉の何が琴線に触れたのかわからなかったが、そのような反応を見せた彼女に彼は疑問を抱く。

 

「……実際には言ってないらしいぞ」

 

「あ、ごめん全然そういうつもりじゃなかった」

 

「~~~っ、死ね!」

 

 蹴るな。

 

「うー……」

 

「……まったく、世話が焼けるね」

 

「……っ!? や、やめろー! この神が作りたもうた美少女ことオレに軽率に触れるんじゃなーい!」

 

 そんなバカバカしいことを言う彼女を無視する。

 勝手に人を蹴って、それで足を痛めたのだから完全に自業自得である。

 

 けれど、彼女のそんな馬鹿らしさこそ、どことなく心地いい。

 五条悟は。

 こうした彼女との日々こそが、彼を彼らしくしてくれるのだと、なんとなく。心の奥でそう思った。

 

 

「──だから! このお姫様抱っこはやめろー!」




 あけましておめでとうございます。
 なんかすごく真面目な感じになりました。新年一発目にちんちんはまずいと指が勝手に思ったのかもしれません。そこで踏みとどまれる人間でよかったです。
 五条悟にしてはナイーブすぎないかと思ったけど、過渡期ということでひとつ許していただけたら……。

 前書きの警告を一話にも掲載してきました。
 もっと早くやっておけばよかったというのはまったくそのとおりです。申し訳ありません。
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