浮かれた五条悟は死ね   作:moti-

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呪いの考察は規模が大きいのでわからなくなる話。

「……鬱陶しいなぁ」

 

 時計がかちこちと音を鳴らす。

 衒学的で不躾なそれは、まるで現世の理から外れたような独特の響きを携えている。

 とはいえ、こうもやかましくカチカチカチカチと聞かされると、鬱陶しくもなるものだ。

 いっそのこと全部破壊してやろうか。そう思って、目に呪力を宿す。

 

「はいストップー」

 

「むぐぇっ」

 

 と、そのタイミングで猫のように襟首を掴まれた。

 喉が絞まらないように配慮されている。そういう優しさがあるならもっとちゃんと抱き上げるとかの選択もあったろうに。

 しかしながら、ルール違反をしたのはこっちだ。

 その点においては反省しなければならない。

 

「……これ、ホントに壊しちゃ駄目?」

 

「駄目駄目。効果は説明しただろ? んー、やっぱり精神感応に対する耐性がないね。

 これだと洗脳の術式なんかに出くわしたらアウトかも? 呪言もきっと効きすぎる」

 

「呪言は呪力でガードしときゃいいんだろ。だったらできるよ」

 

「不意打ちでも防げると思うかい?

 いくら呪力操作がうまくても、戦闘ができるとは限らないんだよ。

 僕の無下限のガードだって条件が整えば無効化されるんだし」

 

 むー。

 

 オレがやっていたのは、術式への対抗だ。

 呪術には精神に対して影響する術式も当然多い。

 一般の呪術認識というものは「相手を病にする」などといったものがポピュラーだ。

 病は気から。

 つまり、この場合「気を削ぐ→病にする」といったプロセスも成り立つわけで。

 そういうわけで、精神に対して働きかける呪いは多い。というか、メジャーな部類だ。

 誰もかれもが攻撃的な術式を持っているわけじゃない。原始的な呪いというものを行使する呪術師──呪詛師は当然存在する。

 

 特にオレは最強こと五条悟の、生きた付け入る隙である。

 スマホを入手したことでオレの危機が悟に伝わりやすくなったとはいえ、それでもそういう状況に陥らないように、オレがなるべく対処できる必要がある。

 

 ということで、悟に頼んでみた。

 すると精神に対して働きかけてくる呪物を利用して少しばかり訓練することに。

 

 ちなみに今使っているものは、異常にうるさい時計。

 針の音で自分を破壊させるように誘導し、破壊した人間に自己破壊の衝動を呼び起こす。

 オレがそんなことになったら、自分自身に「茈」をぶちかますことになりそうだ。

 いやでもこんな美少女をオレが壊すことなんてあるか?

 オレは美少女だぞ? そんな呪いくらい鏡を見て克服できるんじゃないだろうか。

 

 と思ったが、これの恐ろしいところは「ただうるさいだけ」、また「自己の破壊が条件」というところだ。

 自分の存在の消失は最大限の対価となる。

 縛りとしてもっとも重い。故に発動する能力は強力になる。

 

 なんて傍迷惑な呪物なんだろう。

 それにめちゃくちゃ陰湿である。

 見た目はいい感じのアンティークなものだから余計にそう思う。

 プレゼントを装って呪殺とか、そういう使いみちなのかもしれない。

 人を呪わばなんとやらというから、そのために入手した自分自身が死ぬことになるかもしれないけど。

 

 撤去されていく時計。

 そんなに雑に放っておいていいんだろうか……。

 

「祈は呪いの理論とか察しとか、まぁ頭いいんだろうね。けど実践となると極端に弱くなる。

 要は頭固いのかな。どうしても理屈を優先しようとしてる」

 

「それはまぁ、そうだけど……」

 

「硝子タイプかな。それか「窓」。どっちにしたって矢面に立つのは向いてない」

 

 知ってる。

 けれど、どちらも状況によっては戦地に赴くことだってある。

 そういうときに対処できるようにならなきゃいけないのである。

 

 悟には「術士としての訓練のため」と主張した。

 だから術士としての評価をされている。

 

 つまるところ、オレは現状術士として向いてないんだろう。

 

「まぁ、場数を踏めばどんどん慣れるさ。術式自体はすごくいいんだ。どうにかなるって」

 

 そういって悟は締める。

 それが気休めのための言葉とはわかっていた。

 わかっていても、それで大丈夫だと思ってしまう自分が嫌だった。

 

 

 

 

 

 呪力はどこにでもある。

 というか、呪力はおそらく「それらしい行動」によって生産される。

 生贄を用意する。それを恐怖させて殺す。

 取り決めを用意する。その条件を満たす。

 ──こんなふうにすれば、おそらく呪力を生産することは可能だ。

 

 また、絵画などの芸術的領域でもよく「魔力」などというワードが利用される。

 魔法は学問としての呪術と言い換えてもいい。

 世界の神秘は、実のところ一本化される。手段や目的が変わってくれば、当然のように言葉は移り変わるのだ。

 そのため、この魔力というものは「呪力」に置き換えることが可能。

 

 芸術的領域での「呪力」は、強烈に目を惹きつける要因と考えていい。

 それはある種極まった技法に対して使われることもあるし、また別の分野で使われることもある。

 そうなると──そうなると、だ。

 

 呪術理論とはまた離れた領域に近づいてくるが、呪力を誘引・発生させる記号というものがおそらく存在する。

 これはおそらく呪印とは異なる。

 それは技法の中に混ざり込んでいるのかもしれないし、また別のところに介在しているのかもしれない。

 

 ──が。

 現高専生にはこういう術式を持つ人物がいる。

 

 顔を隠すことで自らを霊媒にし、降ろした力を利用することができるという術式。

 

 これは少しばかり穿った解釈になるが、おそらく「持物(じぶつ)」だ。

 顔を隠すための布。

 それを用い、自身を降霊させるものであると正体を特定させる。これの特定に関しては本人の意思で行える。

 

 持物は絵画技術である。現代でもよく利用される技法。

 いわゆるイラストワークの「決まりごと」。またの名をアトリビュートとも呼ぶ。

 基本は西洋絵画の見方としての常道。

 

 最近は萌え絵というもので溢れかえっている。当然そのファンアートだって多く存在するわけだ。

 このとき、目の描き方が同じで体つきが似通っている場合の、個人の特定手段は?

 髪型や服装、持ち物などである。

 

 つまり持物とは、道具や身につけるものなどによってその持ち主の存在を確定することができるもの。

 逆説的に、道具を利用することによって別の存在の力を応用しているというのがオレの意見だ。

 

 アトリビュートを利用すれば、おそらく別の大いなる存在の力の利用が可能。

 例えば逸話などからの呪力の引用が可能となる。

 

「……ん! ひょっとしてこれか!?」

 

「お、どした?」

 

 隣を歩く悟に、オレの考えた結論を披露。

 

「呪力って、おそらく関係性がきっかけで発生するんじゃない!?」

 

 ふふん。天才である。

 こう思ったきっかけは簡単だ。

 持物によってパイプをつくり、そこから呪力を引っ張ってくる。

 逸話レベルともなると当然大量の呪力と強力な能力を持つが、その呪力はどこから持ってきたのか。

 決まっている。畏れなどからだ。

 

 恐怖は繋がりになりえる。

 故に多くの人が繋がり、それによって発生した呪力がどんどんと流れ込む。

 

 ふふん。どうだ、この発想。

 

「呪力はまだまだ謎なことも多いから、ひょっとしたらそうかもしれないね。

 でも祈」

 

「ん?」

 

 なんだろう。この完璧な考察に穴はないと思うけど。

 

「関係性っていうなら、この世の何にでも見いだせるし……広くなりすぎない?」

 

「あー」

 

 考証とか難しいよね。

 だからこれはあくまで仮説にすぎず、また立証するアテもないと。

 

「それじゃーまたあとで〜」

 

「ん、じゃーね!」

 

 

 

 ということで帰宅。

 部屋に入って、机の上にメモがあることに気づいた。

 

『授業に使いたいしこないだ祈が作ったやつ借りてくね〜』

 

 ……いや待て。

 髪の毛の残り的に小さいバージョンながらスペアも作って、今は洗濯してるけど。

 いやそれでも待て。干している洗濯物を確認。

 

 ない。

 

「あいつ絶対殺す……!」

 

 いくら呪具だからとはいえ人の下着取ってくって、流石にそれは超えちゃいけない一線じゃない?





 昨日呪力 #とはってなったのでいろいろ調べつつ勉強してたんですが……難しい……。
 まぁ術式によって世界観が違うとかふつーにあるっぽい世界なんで真面目に考えるだけアレかもですが。
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