虹の花咲くその日まで   作:T oga

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今回の話が第1部最終回になります。

少しだけ長めですが、どうぞご覧下さい!



20話 壊れていく夢の欠片

「ここの部分は一人ずつ歌った方がいいかも」

「そうですね……じゃあ、ここからここまでと、ここからここまでに分けて……」

「じゃあ、かすみんはここ!ここ歌いたいです!」

「あ、みんなの音域って知らないや~。まずそこ分かんないとパート分け出来ないよね~」

 

 なんとか、一応、全員曲が完成して……ついにスクールアイドル同好会はお披露目ライブへ向けて動き出した。

 

 今は俺が作曲して、せつ菜が作詞した曲を持ち込んで、部室でパート分けについて話しているところだ。

 

「こーちゃん、みんなの音域って把握してる~?」

「あぁ、なんとなくだけどな。まとめると……こんな感じか」

 

 俺の私物であるノートパソコンの画面を見せると、しずくがそれを見て感激する。

 

「わあ、先輩すごいです! これで歌のパートは考えやすくなりますね」

「えー、でもかすみん自分の好きなとこ歌いたいな~」

「出来るだけ希望に沿えるようにするから、安心しろ中須」

「コースケせんぱーい!ありがとーございまーす!」

「音程外すようなら、別のパートにするけどな」

「だ、大丈夫ですよ~! かすみんの実力見てて下さい!」

 

 そんな感じで部室で話していると、せつ菜が遅れてやってきた。

 

「ごめんなさい!少し遅れてしまいました!」

「せつ菜先輩、遅いですよ!何してたんですか~?」

 

 おそらく、生徒会の仕事だったんだろう。

 

「まぁ、とりあえずこれで全員そろったな。じゃあダンスレッスン始めるぞ~」

 

 せつ菜はまだ全員に生徒会長の中川菜々である事を隠している。一体、いつ言うつもりなんだろうか?

 隠し通せるようなものだとは到底思えないし……

 

 少し心配ではあるが、今はまず目の前の事に集中だな。

 

 

 

 そうして練習は進んでいき……

 

「Bパートの足を揃えるところ。全員合ってないな……」

「あ、彼方ちゃんもそう思った~。やっぱ角度とか揃えたいよね~」

「それもあるけど、まずスピードが揃ってない」

「私、少し早かったでしょうか?」

「いや、せつ菜はそれでいい。彼方とエマもう少しだけ早めに出来るか?」

「わかった~」

「うん。頑張ってみるね」

「桜坂はさっき彼方の言ってた角度が悪いな。もっと足下げて合わせられるか?」

「高すぎましたね、ごめんなさい」

「それで中須だが……」

 

 俺は言うかどうか少し迷ったが、結局言う事にした。

 

「全体的に振りが小さい」

 

 俺がそう言うと、中須はこう返してくる。

 

「でもぉ~、その方が可愛いじゃないですか~」

「やっぱり、そう言うと思ったよ……」

 

 これが、俺が中須に言うか迷った理由そのものだ。確かに中須のダンスは全体的に振りが小さい。しかし、その振りの小さいダンスが中須本人には合っているようにも思うのだ。

 

「うーん……とにかく、もう一度通しでやるか」

「「「「はい!」」」」

 

 もう一度、イントロから踊り始める5人……

 

 それを見て、やはり疑問が湧いてくる。

 

 本当にこれでいいのだろうか……?

 

 

 正直に言うと、俺は自分の作ったこの曲もあまり気にいっていない。一応、完成はさせたが、せつ菜のCHASEやDIVEのような満足いく形にはなっていないのだ。

 

 何より、俺はこの曲を歌ってステージに立っている5人の姿を全く想像出来ていない。

 

 せつ菜と桜坂、彼方とエマと中須に分ければなんとなくイメージが湧いてくるような気もするんだが……なんかバランス悪いんだよなぁ……どっちも一人足りない気がする。

 

 

 結局、この日はこれ以上いい出来になる事はなく、そのまま解散となった。

 

 

「こーちゃん、どうかした~?」

 

 帰り道、俺の自転車の後ろの荷台に跨がっている彼方がそう聞いてくる。

 

「いや……別に……」

「かすみちゃんのこと?」

「……中須だけじゃないよ」

「うーん……彼方ちゃんも皆も、確かにせつ菜ちゃんと比べたらまだまだだけど、頑張って練習していけばきっと大丈夫だよ~」

 

 彼方はそう言うが、俺はそうは思えない。

 

「…………」

 

 何て言ったらいいかわからず黙ったまま家へ向かう。

 

「こーちゃん……」

 

 彼方もそんな俺に対し、何も言えずに黙ってしまった。

 

 

 

 次の日──

 

「すまないな、彼方……コホッ」

「ううん。大丈夫、安静にね」

「あぁ……」

 

 俺は体調を崩してしまい一日学校を休んだ。

 

 金曜日であった為、その次の土日も家で安静に過ごし、月曜日登校した時……

 

「あっ、良かった。今日はいらして下さったんですね。体調は大丈夫ですか?」

 

 音楽科の教室に中川が訪ねてきた。

 

「もう体調は万全だよ。ちょっと風邪気味だったから大事をとって休んだだけだ。それより中川はどうしたんだ? 教室まで来るなんて珍しいな」

「実はちょっと話したい事があって、昼か放課後……時間空いてませんか?」

 

 生徒会で何か困った事でもあったんだろうか? それとも同好会の事か?

 とにかく放課後は同好会の練習もあるだろうし、昼のがいいな。

 

「昼、大丈夫だぞ」

「じゃあ昼、生徒会室に来て下さい。待ってますから……」

「お、おう……」

 

 何かあったんだろうか? 中川はあまり元気がない。そういえば今日の朝、彼方も何か考え事をしてるようだったし……生徒会の用事ではなく、俺が休んだ金曜か、土日の同好会で何かあったと考える方が自然だな。

 

 

 そして、昼。昼食を食べた後、俺は中川との約束通り、生徒会室へと向かった。

 

コンコンコン

 

「音楽科三年、内村輝助です。生徒会長に呼ばれて来ました」

 

 中川以外の誰かがいる可能性も考慮し、俺がそう言うと、生徒会室の中から声が聞こえてきた。

 

「来て頂いてありがとうございます。今は私しかいないので大丈夫ですよ」

「そうか、んじゃ失礼しまーす」

 

 中川一人との事なので、軽ーく入室。

 

 思えば、去年までは俺が生徒会室の中から人を招く立場だったが、今では招かれる立場になってしまった。

 

 まだ生徒会をやめて一ヶ月ほどしか経っていないが、もう生徒会室が懐かしく思えてくる。

 それほどまでにこの生徒会室は思い入れのある場所なのだと実感した。

 

「それで、話ってのはなんなんだ?」

「実は……」

 

 そうして、俺は中川から金曜日の同好会での出来事を聞かされた。

 

 まぁ、要約すると、せつ菜と中須の方向性の違いで喧嘩になってしまったという事らしい。

 

 音楽の方向性の違いで解散するバンドやアイドルグループなどは珍しい話ではない。

 俺もせつ菜と中須の方向性が違う事は把握出来ていた。把握していたのに、問題を先送りにした罰が下ったのだろう。

 

 驚きはしたが、納得も出来てしまった……

 

 金曜日はせつ菜と中須の衝突の後、そのまま解散。次の土曜日にラインで話し合って、同好会は一旦休止する事にしたそうだ。

 

「すまないな、俺がちゃんと具体案を出せてたら……」

「いえ、もういいんです。かすみさんは本当に可愛らしいですし、エマさんや彼方さんも私とよりも彼女と一緒のがステージで輝ける気がするんです」

 

 中川も俺と同じ事を思っていたようだ。確かに中須とエマ、彼方でグループを組めば上手くいくだろう。あともう一人誰かに入ってもらえばとてもバランスの良いグループになると思う。

 

「桜坂は?」

「しずくさんは同好会が休止したら、演劇部に打ち込むそうです」

「そうか……」

 

 最後に俺は一番知りたい事を中川に尋ねる事にした。

 

「それで……結局、せつ菜はどうするんだ?」

「せつ菜は……もう居なくなりました……」

 

 なんとなく、そう言う予感がしていたが、いざ言われるとやはり……悲しい。

 

「本当にいいのか?」

「……はい。もうスクールアイドルになって大好きを届けたいって夢は叶いましたから。せつ菜が文化祭で歌ったから、こうして彼方さんやエマさん、かすみさんやしずくさんがスクールアイドルに興味を持って下さったんです。これも輝s……内村先輩のおかげです。今までありがとうございました」

 

 そう言って少し悲しげに笑う中川の顔は生前の母に良く似ていた。

 

 そんな彼女を止める言葉は何故か、全く浮かんでこない……

 

 ……結局、俺は母が自殺したあの時から何も変わっていなかったのだろう。

 

 

 

「そうか……お前がやりたいって言って始めたスクールアイドルなんだ。お前が辞めたいなら俺に止める資格はないよ……」

 

 本当は止められるなら止めたい。だけどなんて言えばいい? ……俺にはわからない

 

 変わりに出た言葉は今後の同好会についての疑問だった。

 

「同好会は……どうするんだ? さっきは休止って言ったけど……」

「私が始めた同好会なので、一度廃部にします。私とせつ菜が話して廃部になったって説明すれば皆さんも納得してくれると思います。……恨まれるでしょうけど」

「……お前は同好会に何か問題があった時はこうするって決めてたのか」

「……さすがは内村先輩ですね。……そうです。同好会のメンバーにもせつ菜の正体が私だって言わなかったのはもし問題が起きたら、私とせつ菜の話し合いの結果廃部になったと説明する為でした」

 

 本当に……バカ真面目なやつだよ。お前は……

 

「かすみさんの事ですから、また自分で同好会を作るはずですよ。去年の私には出来なかった方法で……」

 

 確かに中須なら、5人のメンバーなんてすぐに集められそうだ。

 

「内村先輩。もしかすみさんに頼られたら、ちゃんと協力してあげて下さいね。私の時と同じように……」

 

 中川にそう言われ、どう返事するか迷った。

 

 少しの逡巡の後、俺はこう言う事にした。

 

「……わかったよ。その代わり一つだけ交換条件だ」

「……え?」

「お披露目ライブを優木せつ菜のラストライブにしろよ。辞めるならせめてケジメはつけろ」

 

 俺の言葉に中川は静かに頷いた。

 

「……わかりました」

 

 

 そして、職員会議で普段より早く授業が終わった木曜日のとある日。

 

 優木せつ菜は最後のステージで決別の咆哮を上げたのだった。

 

 




ここまで読んで頂いてありがとうございます!
後半ちょっと暗い展開になって書くの少し辛かったけど頑張って書きました~

次回からの第2部はアニガサキ本編に突入します!……が、その前に第1部のダイジェストをお送りしたいと思います!

序章からここまで読んで下さった方はダイジェストを飛ばして下さっても構いませんよ

第2部1話である『21話 終わりの日』はこちらから読めます!

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