騎士王、異世界での目覚め 〈リメイク〉   作:ドードー

12 / 15
12

 ーリ・エスティーゼ王国ー

 

 銀の風のメンバーと別れ、軽く街を眺めながら歩く。道は舗装されてなく、建物も歴史を感じる、と言うよりも古ぼけた印象を受ける。

 

(こうして他の国を観ると、国の運営という面では帝国は優秀だな)

 

 帝国では気にならなかったが、王国に来てからは目に付く事が多い。

 

(確か、王国はガゼフとか言うのが一番強いらしいが、情報から察するに、プレイヤーやNPCではなさそうだ)

 

 この世界はユグドラシルではない。自分の姿がユグドラシルで使っていたアバターである為、ゲームが関係ない事はないだろうが、世界観がユグドラシルでない事から、自分のみこの世界に来た可能性もある。

 

 勿論、この世界が未来のユグドラシルといった可能性もあるだろう。自分の種族が人間でない以上、時間の経過に気づかないこともありえる。

 

 どちらにしても他のプレイヤーがいる可能性もいない可能性もある。

 

(この世界に自分以外のプレイヤーが存在するのか?『はい』か『いいえ』その答えだけでもほしいところだ)

 

 さてどうしたものか、と考えながら街を歩くが、流石に広い。既に昼は過ぎている為適当な宿を探すべきだろう。街の探索は明日ゆっくりすればいい。

 

(とりあえず冒険者組合に行くか。依頼を見るついでに駆け出しの為の安宿ぐらいは紹介してくれるだろう)

 

 なんだったらあの時、銀の風についていけば、などと思いながら組合を目指す。

 

 道なりにはそれなりに店が連なり、客足もある。街の整備は帝国に比べれば粗末なところがあるのものの、街には活気があり豊かだと言える。

 

 国として腐敗が進み、帝国に呑み込まれるのも時間の問題と聞いたが、そこに住む人々にはそこまで関係ないのかもしれない。

 

(土地が豊かなおかげで、低い能力でも国が延命出来てしまう。高い能力を持っていてなお、痩せた土地のせいで緩やかな衰退さえできなかった彼女だったら何を思うのか)

 

 最近はこんな事を考える事が増えた。自分が影響を受けているのは自覚している、価値観が変わってきているかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 そんな中冒険者組合に到着する。扉を開け中に入る、既に日が傾き始めてることもあり組合内に人は少ない。銀の風はもうきて帰ったのか、まだ来ていないのかは分からないがいないようだ。

 

 扉を開けた音に反応してこちらを見た者は、冒険者も組合職員も一様に驚いた反応を示す。私の格好への反応は慣れたものだ。帝国では慣れた者もいたが、こちらでは初対面なのでしょうがない、帝国の組合を利用し始めた時を思い出す。

 

 そのまま依頼書が張り出されているであろう掲示板まで足を運ぶ、やはりと言うか目ぼしい依頼は残されていない。残っているのはどれも割に合わなさそうな依頼ばかり、分かっていたことなので早々に切り上げ受付のカウンターの方に移動、受付の職員に話し掛ける。

 

「少しいいか?」

 

「お〜、何の用だ?」

 

 如何にもやる気のない声で話し掛けてくるが、この男がここの受付の担当者の様だ。見た目中年の男は頭を掻きながら、眠そうな目でこちらを見てくる、今にもあくびをし出しそうな気の抜けた顔だ。

 

 タリアとはえらい違いだ、こんな男に受付を任せて、ここの組合は大丈夫なのか疑問に思う。

 

「残ってる依頼はあれだけか?」

 

「おう、あれだけだ」

 

「討伐依頼であれば、組合に溜まったやつの消化を手伝ってやるが?」

 

 私のそんな言葉に、目の前の男は訝しげな視線を送ってくる。

 

「おまえさんランクは?」

 

「シルバーだ」

 

「パーティは?」

 

「ソロだ」

 

「んだよ、思わせぶりな事言いやがって。悪いがシルバーのソロに頼むのはねーよ」

 

随分な言われようだが、初対面だ仕方がない。

 

「それは悪かった、次からはもっと謙虚にしよう」

 

 依頼が本命ではない為、別に噛み付いてまで実力を示す必要はない。そう思い軽く返答すると

 

「ほぅー、自信過剰な割には、今のを受け流せるのは大したもんだ」

 

 少し感心した、と言わんばかりの顔でそう言われた。

 

「初めて見る顔だな」

 

 男は改めて顔を覗き込んでくるが、実際に見えるのはフードの奥に僅かに目がぐらいだろう。

 

「帝国から来た。今日着いたばかりだ」

 

「お隣さんからか、何か用があったのかい」

 

「いや、護衛依頼で来ただけだ」

 

 さっきまで眠そうな顔をしていたが、物珍しさから私に質問を飛ばしてくる。

 

「その歳で女だったらソロを選ぶ気持ちもわかるが、パーティは組んでおく事を勧める」

 

 こちらの声で若い女と分かったのだろう。

 

「向こうでも言われた」

 

「お、そうか。まあ、さっきは何だかんだ言ったが、ソロでシルバーまで来たのは大したもんだ」

 

「冒険者もまだ初めてひと月程だがな」

 

「ほっ、そりゃ凄え。ひと月でシルバーまで来るソロは中々見ないな。その分だとまだまだ上がりそうだな」

 

「一人旅が長いんでな。必要な事が身に付いただけだ」

 

「なるほど、確かにおまえさんみたいなのだったら、任せられそうなのもあるにはあるが、割に合わないもんばっかりだ。今日は諦めて明日の朝来な」

 

 机の下から依頼書の紙束を出し、ペラペラと2、3枚めくるが、その後首を振る。

 

 やる気がなさそうなこの男だが、何だかんだ冒険者の事を考えて仕事をしている様だ。

 

「分かった、ならそうするとしよう。ただ、聞きたいんだが、何処かに宿は無いか?」

 

「宿?」

 

 全く別の話を振った事で男は若干固まる。

 

「そうだ。格安でいい、寝る場所が確保できれば充分だ」

 

 そう言うと、思い当たるものがあるのか

 

「確か、こっから西の方に安いのがあった筈だな。確か名前は……

 

 

 

 

 

 組合の扉をくぐり外に出る。適当な宿も分かったのでとりあえず宿を取ってから、町の探索をするとしよう。

 

 そんな事を思いながら組合を出てすぐ、声を掛けられる。

 

「あ」

 

「やっほー」

 

 私を見つけたクルドの声とそれに気づき、ラミカが軽く手を振ってくる。

 

「ドールさんも組合に?」

 

 私が組合には行く予定はない、と言っていたのをナイルは疑問に思ったようだ。

 

「ああ、本当は町を見回ってからの予定だったんだが、こちらの方が都合が良くてな」

 

「何かいい依頼ありました?」

 

「いや、無いから明日出直して来いと言われた」

 

 銀の風は一応依頼を確認しに来たらしい。

 

「ほら、やっぱり無いって」

 

「ではやめますか。先に食事にしましょう」

 

「あ、ドールさんも来なよ、せっかくだしさー」

 

 1週間も一緒にいたわけでは無いが、ラミカはやたらと親しげに接してくる。本人の気質なんだろう。

 

「無理にとは言いませんが、どうです?」

 

 行ってもどうせ食事は出来ない、なので適当に断る。

 

「悪いが、食事は先程済ませたんだ」

 

「もーそういうのばっかり、いいじゃん少し付き合ってよ」

 

 私のいつものような適当な返しに、ラミカは若干頰を膨らまし、強引に腕を引っ張って歩き出す。

 

「あ、ラミカっ」

 

 ナイルか咎めるように言うがラミカは私の腕を離さない。

 

「分かった分かった、少し付き合おう」

 

「そうそう、人間諦めが肝心だよ」

 

 ケラケラと笑いながらそう言いつつも、ラミカは食堂に着くまで私の腕を離さなかった。

 

 

 

 

 外は既に日が落ち、家内の灯りが目立つようになる頃、私は銀の風おすすめの食堂でテーブルを囲んでいた。

 

「あれ?本当に食べた後だったの?」

 

 席についても料理を頼もうとしない私を見てラミカが気まずそうに尋ねてくる。

 

「そう言っている」

 

「あ〜〜と、ごめんね」

 

「別に怒っていない、食事はしないがこう言うのも悪くない」

 

「すいませんね、付き合わせてしまって」

 

 ナイルも少し申し訳なさそうな顔をするので、気にしていないと伝える。思えばこの世界に来て、目的なく人と集まるのは初めてかもしれない。こういう時間もたまにはいいだろう。

 

 そこまで広くはないがそれなりに人気の食堂らしい。一般の客がいるにはいるが、ほとんど冒険者だと思われる。

 

 そんな中激しい音とともに扉が開け放たれる。何事か、と視線が集中する中、開けた当人はそれを気にしてる余裕は無いようだ。

 

「冒険者はいるか! いるならすぐに組合か西地区の共同墓地に行ってくれ!今大量のアンデッドが発生している」

 

 そう叫ぶように言うと、こちらの反応も確認せずに急いで走り去った。まさに時間が惜しいと言った感じだ。

 

 いきなりのことに客達は静まり返っていたが、徐々に冒険者達が騒ぎ出す。

 

「アンデッドだって?どうする?」

 

 クルドがナイルに判断を仰ぐ。

 

「一度宿に戻りましょう。装備がなければどうしようもないですし」

 

 そう言い立ち上がる。

 

「ドールさん、付き合わせておいて悪いですが、僕達は宿に戻ります。貴女はどうしますか?」

 

(まずは大量発生の規模がどの程度か確認したい。駆除活動はその後だな)

 

「とりあえず共同墓地とやらに向かうとしよう。状況を把握したい」

 

「そうですか。貴女なら大丈夫だと思いますが、気をつけてください」

 

「ああ」

 

 ナイル達は慌ただしく食堂を出て行った。それを見送った後私も食堂を出ると共同墓地を目指して走る。

 

 夜の街という事で人通りがなく、目的地まで楽に進めそうだ。

 

 

(大量のアンデッド、おそらく共同墓地という場所も関係している)

 

 普通に考えられるのは、共同墓地の死体を利用して何者かが起こした騒ぎ、と言うのが一番分かりやすい。

 

 そもそも自然現象的な災害の可能性はあるのだろうか。

 

(まあ、何者かが仕組んだんだろう)

 

 しばらく夜の街を駆ける、近くの家の屋根に飛び乗り、屋根伝いに進むがまだ街は静けさを保っている。

 

(被害はまだ出ていないらしい、それも時間の問題だろうが)

 

 墓地が近づくにつれ家が少なくなった為、屋根伝いという高所の移動が出来なくなり、そのまま道に降りて墓地を目指す。

 

 食堂に来た男の騒ぎようにしては、未だ被害らしい被害は無い。意外と大した規模ではなく既に沈静化したか、誤りや偽りの情報だったのか。

 

 そんな事を考え始めた頃、共同墓地にたどり着いた。そこには衛兵らしき男達が、墓地の方を見ながら話し合っている。

 

 私が近づいて行くとこちらに気づいたのか、墓地区切る城壁から降りてくる。

 

「何者だ?」

 

 私は冒険者プレートを掲げながら応える。

 

「冒険者だ。アンデッドが大量に発生したと聞いて来たんだが、見た限り大ごとではなさそうだが?」

 

「あ、ああ。実はさっき冒険者の二人組が来て、アンデッドの群勢を倒してしまったんだ。信じられないだろうが、さっきまでそこはアンデッドで溢れるほどだった」

 

「ほう、高ランクの冒険者か」

 

 私が納得したような仕草を見せると

 

「いや、プレートはカッパーだった」

 

「カッパー?どんな二人だったんだ?」

 

「黒いフルプレートの男とマントを羽織った女だ、男の方はデカイ剣を片手で振り回せるほどだ」

 

「有名なパーティではないのか?」

 

「少なくとも俺は知らない、初めて見た。でも絶対実力はカッパーじゃねえ」

 

(私も似たようなものだ、おそらくそういった類だろう)

 

「とりあえず私も行かせてもらおう、組合にも話が伝わっている、他の冒険者もじきに来るだろう」

 

「おう、何だ組合にも話がいっていたのか。気をつけろよ」

 

「ああ」

 

 衛兵と別れ墓地を進むがちらほらとアンデッド、言う所のスケルトンが蠢いている。進むにつれその数は増えてはいるが、所詮は下位アンデッド、どこまでいっても有象無象に過ぎず障害にはならない。

 

「ふんっ、数だけは多いな」

 

 スケルトンは脆く、剣のひと薙ぎで両断され崩れ落ちると動くのをやめる。一体一体は大したことはないが、全て相手にするわけにはいかない。進行に邪魔な最低限を切り捨てつつ先を急ぐ。

 

 カッパーだが実力のある無名冒険者、アンデッドの大量発生。少々引っかかる、衛兵の反応からも、二人組の冒険者はこの騒ぎを最初から知っていたかのような行動をしている。

 

(裏があるか、もしくは別の何かか)

 

 この異常事態、場合によってはその二人組が首謀者、もしくは首謀者と繋がっている可能性もある。

 

(まあ、仮にそうだったとしても、私は正義の味方でも何でもないが。帝国ならともかく、そこまで労力を割く気は無い)

 

 夜の闇の中、月の光に照らされ、大きな石造りの建物の輪郭が僅か見えた頃、骨の擦れ合う音とは別の音が聞こえ始めた。人の話し声だ。

 

 

 

「お主ら一体何者じゃ?」

 

 しわがれた声が二人組の冒険者へ問われた言葉だった。

 

「依頼を受けた冒険者だ」

 

 鎧の男が応える。

 

 声が聞こえた時点で近くの木の陰に身を隠す。この様子を見るに少なくとも冒険者二人が黒幕と繋がっていることはなさそうだ。依頼と言うのがどういう事かは不明だが。

 

 おそらくあの老人が黒幕なのだろう。

 

「我らズーラーノーンに楯突く愚か者どもが」

 

「ズーラーノーン?」

 

「はっ、それすらも分からない愚かさとは、まさに救いようが無いな」

 

 どうやらこの騒ぎはズーラーノーンという組織が起こしたらしい。

 

「そうか。だが生憎私達は、救いが必要なお前達ほど脆弱では無いのだ。救いなどと言うものは必要ない」

 

「ふんっ、減らず口を」

 

 嫌味に対して老人が言い返すが、鎧の男が剣を突きつけ、さらに続ける

 

「それと、お前達の中に刺突武器を使う奴がいるはずだ。伏せておくつもりか、はたまた私達に臆したか」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。