騎士王、異世界での目覚め 〈リメイク〉   作:ドードー

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 ーバハルス帝国首都ー

 

 早朝の冒険者ギルド、朝からいくつもの依頼が貼り出される。主に昨日受理された依頼であり、それを掲示板に追加し、自分の受け持つ受付を整理して、冒険者ギルドの受付嬢としての仕事が始まる。

 

「さて、今日も一日頑張るとしましょう」

 

 今日も今日とて仕事、私がこの仕事もついてすでに四年目であり、慣れた手つきで書類の整理終わらせ、冒険者の対応をする。早朝といえど冒険者は来る、生活がかかっている冒険者にとっては、より楽でより報酬のいい依頼を探す為、当たり前といえば当たり前である。なので朝来る冒険者は意外にも多い、そして昼に近づくにつれ冒険者は減り夕方には依頼を終えた冒険者でまた溢れる。

 

「はい、こちらの依頼ですね。少々お待ちください」

 

 いつものように事務処理を進め昼に近づいた頃、一人の冒険者が現れる。その姿はマント、フード、手袋さらに首元から布を巻きつけてある。一見すると怪しい姿だが最近はよく依頼を受けに来るドールという冒険者だ。

 

 以前魔狼の素材を持ち込んだのが初めで、次来た時に冒険者登録した冒険者、一人旅というしおそらく女性なので警戒するのもわかるが、ここは帝国首都なんだしそこまで警戒しなくてもと思うも、人それぞれ事情はある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が二回目にギルドを訪れ冒険者登録した日の事である。

 

 その日はギルド長が出かけており、更に上司が休みとあってとても忙しい一日だった。いつもなら夕方に入る前には自分の仕事は終わるはずが、それ以外の仕事もしなくてはいけなく、同僚達と手分けしても中々終わらず、結局はかなり遅い時間に帰ることになった。

 

 いつも人が行き交う道も人気はなく静まり返っている、不気味な雰囲気さえ感じる道を早足で歩くが、ふと立ち止まり顔を横に向ける。目を向ける前には建物同士の間にある、月の光さえも届かない暗い道がある。

 

 

 この道は裏道であり私の家まではこちらを通った方が早い、普段なら通らないがどちらにしろ今は夜、暗いのも同じ人気がないのも同じ、ならいいかそう思ったのがいけなかった。

 

 

 裏道を小走りに近い早足で家まで急ぐが、物が乱雑に積まれた物陰からのっそりと大柄な男が現れる。

 

「ヒッ」

 

 思わず小さな悲鳴が出る、すると更に後ろから足音が聞こえ振り向くと、何処にいたのか複数の男が歩いてくる、心臓の音が聞こえ冷や汗が流れる。

 

「あ、あのちょっと通りますね」

 

 震えた声で前の男に話し掛けながらその横を通り過ぎようとするが、男の横まで来て腕を掴まれ口を抑えられる、分かっていた事でも縋る思いだった。もしかしたら偶然人がいただけで人攫いではないのだと、でも現実は非情だった。

 

 

「そういうのは、あまり好きではないな」

 

 

 しかし幸運でもあった。

 

 

 その空間に声が響く、私を抑えている男が体ごと振り向いたため私の目にもその人物が映った、頭から足元まで隠すその異様な姿と凛とした声、確か今日冒険者登録した人だ、たしかドールさんだっけか、ふとそんな事を思い出した。

 

 そこでようやく男が動き出した、私を捕まえているのがリーダーらしく声を出さずに顎で指して指示を出していた、すぐに後ろの男達がナイフなどの武器を抜きながら襲いかかる。

 

 特に構えることもせずに流れるような動作でかわす、腰の片手剣にすら手を伸ばさずにただかわし続ける、焦りと苛立ちから大振りな攻撃をした男が勢い余ってよろめく、その瞬間ドールさんは片手で相手の肩を抑え腹に強烈な膝蹴りを打ち込む、鈍く重い音がした相手はかすれた息を吐きながな倒れ動かなくなる。

 

 一人沈んだ、その事実に思いのほか動揺した残りの男達は更に焦る。相手が武器すら抜かないのが余計にプレッシャーとなっているのだろう。残りも最初の男の焼き回しのように一人二人と確実に倒され、最後の一人は片手で首を締め上げられて動かなくなった。

 

「さて、お前で最後だ」

 

 あっという間に一人となったリーダーの男はゆっくりと近づいてくるドールさんに向けて、私をおもいっきり突き飛ばし逃走を図る。地面にぶつかることを覚悟して身を硬くするが、優しく勢いが殺される、抱き止められたのだと分かるころにはふわりと宙を舞っていた、私を抱え飛んでいるんだと理解したのはドールさんが蹴りでリーダーの男を壁に叩きつけた後だった。

 

 抱えられた時にフードが浮かび僅かに見えた顔は黒目黒髪の美人さんだったと思う。なにぶん夜月の光で僅かに見えただけなのだそこまで確証はない、腕の中から降ろされた時は少し残念で名残惜しと感じてしまったがそういう訳にもいかない。早くお礼を言わなければ、その後すぐにお礼を言ったが。

 

「気にするな、私が偶然通りかかった貴様の運が良かっただけだ」

 

 そんな事を言われてしまった。

 

「そんな助けて頂いてそういう訳には…」

 

「と言ってもこれといって…ん?貴様、もしかしてギルドの受付にいた…」

 

「あっはいそうです、貴方の冒険者登録をさせて頂いた受付嬢でタリアと申します」

 

「そうか、それならいずれまた、ギルドで世話になる。その時に、恩を返してくれればいい」

 

「あ、あの」

 

 地面に伸びた男達を見下ろしながら、どうしようか考える。私が巻き込まれた以上、私が憲兵を呼んで処理してもうべきなのだが、ここで一人にされるのは心細い。

 

「ああ、その男共もこちらでどうにかしよう。さあ夜も遅い早く帰るといい」

 

 助けてもらった上に、そこまで押し付けてしまうのは心苦しいが、襲われそうになった事が、想像以上に精神に負荷をかけていたようでその言葉に甘える事にした。

 

「そ、そうですか、ではお言葉に甘えて、今日はありがとうございました。ギルドには必ずお越し下さい、私の出来る限りお役に立ちますので」

 

「ああ」

 

 そうして私はドールさんと別れて家に帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 その後しばらくドールさんはギルドに来ることがなかったが最近は連日依頼を受けにギルドに来ている。

 

「こんにちは!ドールさん。今日も、依頼を受けに来たのですか?」

 

「ああ、昨日は助かった、中々悪くない依頼だった。今日も頼む、何かいい依頼はあるか?」

 

 冒険者ギルドでは掲示板に貼ってある依頼と受付に強さを目安に依頼を出して貰うやり方がある、出して貰う方は初心者であれば冒険者にとってありがたく、上級者であればギルドにとって処理してほしい依頼を受けて貰うことが出来る、ドールさんはその後者である。

 

 口調こそ高圧的であるがその物腰は柔らかくこちらの仕事に対する敬意を感じられとても仕事が進めやすい、同僚達は怪しい外見からあまり接したがらないが私はドールさんは恩人だし悪い人ではないと思う、それに周りは知らない秘密を知っているようでちょっぴり優越感もある。

 

「いえ、ドールさんの腕があっての依頼です。確か…あった、これなんてどうでしょう?ドールさんであれば大丈夫だと思いますが」

 

 ドールさんのために選んでおいた依頼書を束の中から引っ張り出して見せる。

 

「トロールか、もう少し報酬のいいのはないのか?多少危険でも構わない」

 

「残念ながらこれより報酬がいいのとなると、これとこれぐらいしかないんですよ」

 

 そう言って二枚の依頼書を見せる。

 

「どちらも、報酬がそこまで高い訳でなく。何より距離があるので、これが一番いいかと」

 

「なるほど、いや悪いな、一番いいのを出してくれたのか。ではこれにしよう、頼めるか」

 

「いえいえ、仕事ですから。ではこちらの依頼ですね、少々お待ちください」

 

 手早く依頼書の手続きを完了させる。

 

「はい、手続き完了です」

 

「では、討伐に行ってくるとしよう」

 

「はい、いってらっしゃいませ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在私はオートマタを使って帝国首都で冒険者として活動している。

 目的はいろいろあるがあえて挙げるとすれば、冒険者としてのある程度の立場が欲しいのが一つ、帝国では冒険者の立場はそこまで高くないが王国などに行く場合には便利なものとなる。

 それなりに上級の冒険者になれば行動の信憑性や信頼性が高まるので、より円滑にことを進められるだろう。同盟者に頼むのもいいんだが、皇帝と関わりのないそれなりの立場というのも大事だ、何でもかんでも同盟者ではあっという間に繋がりがバレる。

 

 それに冒険者ギルドはなかなか情報が入る、情報収集を兼ねて夜徘徊していた時に偶々助けたタリアには随分懐かれ、そのおかげで最近の噂話から依頼の傾向なども教えてもらえる。レイナースからも聞けるのだが情報源が多いことに越したことはないだろう。

 

(それはそれとして、依頼をさっさと終わられておきたい。いつも通り、目撃場所から探知を広げて探すとしよう)

 

 首都から出て道沿いに目撃場所を目指す、人目のないところまで行き走り出す、本来の体ではないが使っているのはオートマタ走ればそれなりの速度が出る目撃場所までそれほど距離もない走り続ければすぐに着く。

 

 トロールは最近そこにやって来たらしく縄張りにしようとしているらしい、すでに複数回人が襲われてるらしくその内の生き残った商人が依頼を出した。

 逆に言えばトロールはそこから離れ難く依頼を受ける方としては探索も容易にで有難いものだ、そうただ行って近くを探し見つけて狩るそれだけのはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 四人の冒険者、男二人に女二人、その中の男の一人が気まずげに口を開く。

 

「いや、その…悪かったな」

 

 

 

 

 事の起こりは目的地に着いた後、目撃場所の近くを探索してトロールを見つけたのだがすでに狩られた後だった。

 トロールを殺し素材をどうしようか、などと話しているところに私が現れたのだ。素顔が見えず、ほぼ全身を隠している私に四人とも警戒しながら、何の用だと尋ねてきたので、冒険者プレートを見せながらトロール討伐を受けた冒険者だと伝える。すると今度は警戒心を抑えて若干申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。

 

 先に狩られてしまったものは仕方がない、依頼を横取りしようという意図はないのだし、冒険者しかモンスターを殺してはいけない決まりがあるわけでもない。ましてや命を守るための防衛手段だったかもしれないのだ文句は言えないだろう。

 

「いや、仕方ないだろう、知らなければどうしようもない。今回は、私の運が悪かったという事だ」

 

 そう言うとホッとしたような顔をした

 

「そう言ってもらえると助かる。こちらとしても、悪意があったわけではないしな、全部は無理だが、少しなら素材を譲るが」

 

「いや結構だ、私が仕留めたわけではないしな。依頼を理由にたかるような、大人気ない事はしたくない」

 

 とりあえず一旦落ち着き私が首都に帰ると言うと、冒険者達もそこに帰るところだったと言う話になり、せっかくだし一緒に行かないかと誘われ同行することになった。

 

 首都に向かいながらいろいろ話を聞かせてもらった、彼ら四人はフォーサイトというチームらしく冒険者ではない。彼らは自分達で依頼者を探し、直接交渉して依頼を受けるらしく、彼らみたいな者をワーカーと呼び、そんなワーカーの中でもベテランのチームとのことだ。

 ワーカーは冒険者ギルドを挟まないことで、より多くの報酬で稼ぐことができるというのが利点だが、その分リスクや手間は増える。冒険者と比べても一長一短、どちらがいいとは言えないだろう。

 

「それにしても、あんたソロで依頼を受けてるのか?依頼を選ぶか、ある程度なんでもこなせないと、なかなかできないよな。いざという時も、カバーしてくれる仲間もいないしな、すごいと思うぜ」

 

 チームのリーダーだというヘッケランという男が話しかけてくる。

 

「まあ元々一人旅で、冒険者登録したのも、ここ二週間くらいの話なんだがな」

 

「へ〜、じゃあもっとすごいな、たった数日でもうシルバーまできたのか」

 

「運が良かったのだろうな」

 

「ははっ、謙遜することもないんじゃないか」

 

 

 

 

 

 そんな話もしながら首都の入り口まで来る。

 

「そうだ俺たちこれから飯なんだが、せめて飯ぐらい奢るが、来ないか?」

 

「気にしすぎだ、それにこの後は用事がある悪いな。食事の代わりと言ってはなんだが、時間が合えばお前達のこれまでの話なんかが聞きたいな」

 

「それくらいならお安い御用だ、なあ」

 

「ええ、そうね」

 

「ではそのうち会おう」

 

「おう、じゃあな」

 

 そんな挨拶をしてフォーサイトと別れる、ああ言ったがとくに用事があるわけではない。この体では食事が出来ないので、それを回避するための方便だ。

 それはそれとしてなかなか悪くない繋がりを持てたかもしれない。冒険者とは違うワーカーという存在、ワーカーとしての情報もあるだけ便利だろう。冒険者では受けられなくてもワーカーに回ってくる仕事などもあるだろう、いるかもしれない他のプレイヤーの情報を集めるためにも、情報源はあるだけ便利だ。

 

(しばらくは冒険者として情報収集と息抜きがてらゆっくりするか)

 

 

 

 

 

 

「なあ、あいつのことどう思う?」

 

 ヘッケランがチームの皆に尋ねる。

 

「私は予想に反して付き合いやすい人だと感じたけど、見た目はあれだけど素材を断ったあたり、人ができてそうだし悪い感じはしないわね」

 

「そうですね、第一印象と比べればいいと思いますよ。声からしても女性でしょうし、ソロでシルバーというのもなかなかです、付き合いを持っておいてもいいと思います」

 

 ロバーデイクがイミーナに同意する。

 

「アルシェはどう見えた?」

 

 ヘッケランの質問がアルシェだけ違う意図に聞こえる、それには理由があるアルシェは特殊な目を持ちその目で見る事で相手の魔力を視覚的に測ることができる、つまり見るだけでどの程度の魔法詠唱者か分かるのだ。

 

「とても変な感じ、普通の見え方ではなく靄がかかっているような感じだった。実力は高いと思う、おそらく私以上」

 

「なっ、アルシェ以上!」

 

 イミーナが驚く、それもそのはずアルシェは第三位階魔法を使える魔法詠唱者、それ自体がそもそもいないのだ、それ以上となると冒険者ではまずいない

 

「なるほど、冒険者になったばかりというのは本当らしいな」

 

「確かにそこまで出来てシルバーはないでしょう、すぐに上がりますよ彼女」

 

「場合によってはワーカーに誘うのもありだな、金に頓着してないから厳しいか?」

 

「まあ今日見た限りでは冒険者で十分という感じでしたね」

 

「そういえば靄がかかっていたってのは?」

 

 ヘッケランはロバーデイクとの話を切りアルシェに尋ねる。

 

「分からない、何かのマジックアイテムで隠していたのかも」

 

「まあ顔まで隠してるしな、それだけの魔法詠唱者なら実力を隠そうとするのも頷ける」

 

「ねえ、とりあえずいつものとこで話にしない」

 

「そうだな、腹も減ったしそうしよう」

 

 そうしてフォーサイトはいつもの拠点に戻る。

 

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