満員電車の床に落ちていたものは……。
笑えない不条理(?)
グロテスクで、狂気っぽい話です。
筆者の気まぐれで話を追加するかもしれません。おそらく一話完結です。
まえがき
グロテスクな表現があります。
投稿日時がアレですが、年越しや正月は関係ないです。
2021/09/07 あとがきに追記しました(ネタバラシ的なものです)
ある秋の日。
雲一つない快晴。
満員の通勤列車の床……ドアの近くに、ちぎれた腕が落ちていた。
腕には肩の肉や肩甲骨までくっついていて、破れた赤黒いホワイトシャツをまとっていた。
「お客様にお願いいたします。駆け込み乗車は大変危険ですので、おやめください」
……という、女性の声のアナウンスが流れた。だが、アナウンスを真面目に聞いている人はいなかった。車内は、身動きもとれない状態だった。満員電車に慣れている風の人達は、スマートフォンの画面に夢中だった。
電車は平常運転で、停車するたびに、たくさんの人が降りて、乗って、押し込まれてぎゅうぎゅう詰めになり……を繰り返した。
ちぎれた腕は何度も何度も踏みつけられ、シャツが破れ、肉が剥がれ、骨が露わになっていった。やがて骨も砕けて、腕は、
押し込まれすぎた人の圧力で、ピシっとドアの窓ガラスにひびが入り、潰された人達のジュースのような血に染まった。 *1
電車が終点に到着し、何百人もの乗客が降りて行った。
ホームで、ドロドロした赤黒いものを吐いて膝をつくサラリーマンがいたが、他の乗客は、素知らぬ顔で歩き去って行った。
電車は空っぽになった。車内は血まみれだった。
乗り込んで来た清掃員が、黒く変色した肉片とピンク色の骨の破片を、長い火ばさみで拾って、金属製のバケツに入れていった。
3人の清掃員が、車内に大量の消臭剤を散布し、壁や床の血を洗い流していった。
鉄道会社の清掃事務所。
清掃員が、黒い肉片をバケツから、ペット用のエサ皿に移した。
部屋の奥から、ぶるぶる動く大きなちくわ *2 がやって来て、黒い肉片をブリブリと掃除機のように吸い込んでいった。
ちくわはヒルのように膨らんだ。 *3
唐突にスーツ姿の女性が表れ、左手でちくわをつまみ上げた。ちくわはビチビチと暴れた。
スーツ姿の女性は、ジャケットの下に包帯を巻いており、右腕が肩から失われていた。 *4
静物病院の、異様に明るい手術台。
ステンレス製の四角いトレーに乗せられたちくわを、青緑色の手術服を着てマスクを付けた3人が取り囲んだ。
ちくわに、細長い注射針が突き刺さった。
手術台の上に、『人工塩味料 ガロストラロ/ホキュキリ』と書かれたガラス瓶があった。
ちゃぽんっと、エチレングリコールの熱湯風呂に、ちくわが放り込まれた。
熱湯風呂に入れられたちくわの表皮が裂けて、中から、血煙と共に、魚……スケトウダラが泳ぎ出した。
スケトウダラは、真っ暗なネットの深海へと沈んで行った。側線から青白い光を放ちながら。
おわり
ちなみに、この電車の中には、体に爆弾を巻き付けたテロリストがいたのですが、人の圧力で起爆装置が壊れてしまい、自爆を断念しました。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
電車に乗っていると、閉まりかけたドアがもう一回開いて、発車後に「駆け込み乗車は大変危険ですので、おやめください」みたいなアナウンスが流れること、ありますよね。
あれ、ハッピーツリーフレンズだったら腕がちぎれるな……と、変なことを思いついて、あとは勢いで書きました。狂っていて、気持ち悪くなる方向で。そんなもの投稿するなって話ですが、吐き出したかったんですよ。今年のうちに。
ジャンルについて
判断が難しかったため、『ノンジャンル』としました。
2021/09/07 追記(ネタバラシ的なもの)
誤字報告をいただいたのですが……
『静物病院』は、誤字ではなく、『動物病院』に対して筆者が作った造語です。
『静物』つまり、 “ 生きていないモノを治療する病院 ” です。
まぎらわしくてスミマセン。
もちろん、誤字報告をいただけるのは非常にありがたいです。自分ではなかなか気づけませんし、ちゃんと読んでいただいている証拠ですから。
説明しちゃうと恥ずかしい、皮肉や言葉遊び(?)は他にもあります。
☆『赤黒いホワイトシャツ』 → ワイシャツの語源はホワイトシャツ。
☆『
☆『消臭剤』 → 消毒液や洗剤を使いそうな場面で消臭剤。
☆『人工塩味料』 → 甘味料はたくさんあるが、塩味料は作るのが難しいらしい。
☆『ガロストラロ/ホキュキリ』→読者が「何それ?」と思って調べてしまう効果を狙ったもの。
Googleで検索しても何も出てこない単語をでっち上げました。
一応由来はあります。
『ガロストラロ』 → アウストラロピテクスの変形。
『ホキュキリ』 → 某ゲームの効果音を擬音語化したもの(筆者が作ったオノマトペ)。
☆『エチレングリコールの熱湯風呂』 → エチレングリコールはエンジンの冷却水に使われる。
意味不明ですが、筆者はこのフレーズがお気に入りです。
☆『スケトウダラ』 → ちくわの原材料。