ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes 作:ほぼ読み専
AGE-1R ガンダムAGE1レイザーとは、「機動戦士ガンダムAGE」の
高速近接戦闘形態であるガンダムAGE-1スパローの発展型で、運用次第ではビームサーベル以上の切れ味を誇るものの、素材の問題で刀身が非常に重く、また超高速で振動することで切断力を上げているため摩耗しやすい実体剣「シグルブレイド」の欠点を克服すべく、スパローとは別のアプローチでもって考案された。
スパローの場合はシグルブレイドの小型化と装甲厚を減らした徹底的な軽量化に、機体各所に姿勢制御バーニアを追加することで、機体の推力で斬撃速度を高めて武器の重さと耐摩耗性の低さをカバーしようとしていたが、レイザーの場合はあえて大型化させたシグルブレイドの質量と慣性力でもって叩き切る、破壊力を重視した設計になっている。
スパローよりは頑丈で、かつ高機動タイプのガンプラ。GNドライヴの提供元になったダブルオーライザーと比較しても機体重量が遥かに軽く、加えてGN粒子によって刀身の摩耗も抑えることが期待できる……ということでこれらを組み合わせれば超高速で動き、一撃必殺の強力な近接戦闘が可能なガンプラを生み出せるのではとレイは考えたのだが──
「いや、それは流石に無理じゃないですか」
「ですよねー……」
お互いに軽い自己紹介をした四人はイヴがダブルオーレイザーを気にかけていること、ヒロトがGPDからの経験豊富なダイバーであることから、こうしてアドバイスを貰おうという流れで話をすることになった。
レイとしてはもっとイヴから話を聞いてみたかったのだが、肝心の彼女本人の言は「レイはヒロトと似ているから、きっとヒロトのほうが力になれると思うよ。私からあと言えるのは、
そんな経緯があった
「イヴと色々な場所に行くうちに揃えたんです」と言ってヒロトが出したのは、簡易的なキャンプセットのようなもので、折り畳み式のコンパクトな野外用のローテーブルの上にはキャンプ用の小型ガスコンロが置かれ、小さなケトルが湯気を立てて乗っている。
「あ、すみません。別にただ否定したいわけじゃなくって、えっと……発想そのものは悪くないと思います。でも……」
「ああうん。そうですね……いくらなんでもMGのパーツをHGに、それも別作品のガンプラにオーライザー無しでツインドライブで載せるのは無謀だった、と……」
「ええ、まあ。俺もコアガンダムを作るのにAGEを参考にしたことがありますから、シグルブレイドの欠点もわかります。確かにOOの実体剣みたいにGN粒子を纏わせれば、刀身の摩耗と重量の問題は解決できるでしょうから」
最新のフルダイブ型VRであるGBNではフィールドのテクスチャも現実と遜色ないレベルで作り込まれており、電脳の世界ゆえに環境汚染もない雄大な自然環境が広がっているディメンションもいくつかある。
ダイバーの中にはこういったフィールドを活用し、普段の生活ではなかなか難しい野外活動を楽しむ者たちもいる。各ディメンションには非戦闘区域として定められた風光明媚なエリアがあり、そこでは戦闘行為が行えないようになっているので、こういった屋外レジャーも一部で人気のコンテンツになっている。とはヒロトからの情報だ。
そのためこのような
「外でこんな風にお茶を飲むのって初めて。VRなのにいつもより美味しく感じる」
「セナはお外に出たことがないの?」
「うーん……実はね、わたし
「そうなんだ。あ、クッキーもどうぞ。これも美味しいよ。ヒロトと一緒に行った街で見つけたの」
「わ、ありがとう! それにしても、GBNはこういう事も出来るんだね。知らなかったなあ」
レイたちから少し離れた日当たりの良い岩に腰かけ、まるで仲の良い姉妹のように──どちらが姉なのかは敢えて言わないが──朗らかに会話するセナとイヴ。GBNで共に遊ぶようになって気づいた事だが、セナはゲームの中だと現実よりも少し情緒と言動が幼くなる。おそらくこちらのほうが彼女の素に近いのではないかとレイは考えている。
それはともかく、そのほのぼのした会話内容がレイにとっては強烈な流れ弾となった。
以前にレイがセナをGBNへ誘った時、彼女は「ガンプラバトルだけがGBNじゃない」という旨の事を言ったものの、セナの専用機制作に明け暮れた結果フォース「ゼラニウム」の活動内容といえば、フォースバトル、試運転、フォースバトル、試運転、時々フラストレーション発散のためにヴァルガに潜る……という「どこのガチ勢のフォースですか?」と問いたくなるようなものになり果てていたからだ。
「私って、なんてダメなヤツ……」
「ど、どうしたんですか?」
「いえ。ちょっとした自己嫌悪を」
「はぁ……あ、レイ、さん」
いきなり負のオーラを纏うレイに戸惑うヒロトだったが、少し畏まってから遠慮がちに切り出す。
「はい?」
「えっと、敬語とか別にいいですよ。俺のほうが年下ですし」
「あ、その……ごめんね? 初対面の人にはだいたいこんな感じなの」
ちなみにヴァルガ民は別である。人間性を捧げて闘争本能のまま生きる
「それに歳は関係ないよ。私は君をひとりのビルダーとして尊敬するから」
「そう……ですか?」
「うん。コアガンダム。これ……完全オリジナルのフルスクラッチでしょ? 私もGPDからガンプラバトルやってるけど、ヒロト君くらいの歳でこれだけのモノを作れるって正直凄いと思う。少なくとも私じゃ無理だった。っていうか、ヒロト君のほうこそ敬語じゃなくていいのに。
「あ、いえ、それは……すみません」
レイの指摘に恐縮したように縮こまるヒロト。お互いにリアルの年齢を知っている──自己紹介の時にセナがばらしたせいだ──ためか、彼としては年上相手にタメ口で話すことに抵抗があるようだ。
──真面目な子だなぁ。と内心で彼の育ちの良さに苦笑するレイ。
「でも、本当によくできてるよね。普通のHGより小柄だけど……これ、なにかギミックあるでしょ? SFSもオリジナルだからそれ関連かな?」
「……あはは、わかります?」
どこか面白がるようなレイの視線を受けたヒロトが困ったように曖昧に笑う。
「ああ、ごめんね? 別に探りを入れたいわけじゃなくって、ビルダーの性っていうか、見たことのない機体を前にすると色々考えちゃうから……」
「いや、そんな。俺もそういう気持ちはわかりますから気にしないでください」
ヒロトたちとの邂逅の際、間近で見せてもらったコアガンダムは目を見張る完成度で、それを作り上げたのがまだ中学生の少年という事実にレイは驚愕し、素直に彼のことを尊敬した。
「……
可愛らしい形のクッキーをお茶請けに、楽しそうにセナと喋っているイヴを見つめるヒロト。彼の瞳にはどこまでも
「それに、俺もログイン初日に機体がトラブって墜落しかけたことがあったんです……そこでイヴと出会わなかったら、きっとその日に辞めてました」
たかがゲームで、と言う者もいるだろう。しかし現実の事情が絡まない関係だからこそ紡がれる絆だってある。とレイは思う。ソロでヴァルガに潜っている時には知ろうともしなかったが、GBNを通じてセナという友人を得た今だからこそヒロトの気持ちにも共感できた。
「そっか……」
ヒロトの言葉に一言だけ返したレイはマグカップを傾ける。きっと彼らには彼らの事情があるし、ここであれこれと聞くのも野暮だろう。
§
「結局のところ、問題なのはGNドライブの出力に機体が耐えられないっていう一点なのよ。MGサイズの太陽炉をHGのガンプラに積み込むとか、我ながらどうかしてる発想だったわ」
「……解決方法としては、シングルドライブにしてみる、ツインドライブは採用して太陽炉をHGやRGサイズに置き換える、あたりですけど」
しばらくまったりとしていたレイとヒロトだったが、やがてどちらからともなく改造プランの話を再開する。なんだかんだ言ってもこの二人はガンプラを作るのが好きな人間で、話題はやっぱりこの手のことになってしまう。
「あとは……そうですね……大型のGNコンデンサーを搭載するとかでしょうか。瞬間的な加速にはあらかじめ貯蔵していた粒子を使う、とか」
「アヴァランチエクシア方式かー。確かにそれもアリだけど、粒子を使い切ったコンデンサーがデッドウェイトになるのが悩ましい……」
自分の「どうかしてる」発言をスルーしてくれるヒロトの優しさに感謝しつつ、むむむと唸るレイ。やがてなにか思いついたのかぱっと顔を上げた。
「あっ、じゃあマルチドライブに向いてる
「……また爆散しますよ」
時々──否、頻繁に暴走しかけるレイのアイデアにヒロトがツッコミを入れてブレーキをかけるという、どちらが年上なのかわからない会話をする二人。
「おーい、レイー、ヒロトー!」
するとそこへセナがウキウキした様子でイヴを伴いこちらにやってくると、なにやら嬉しそうに宣言する。
「今日はいまから皆でお祭りに行きたいと思います!」
仁王立ちをして言い切るセナを、きょとんとした顔で見るレイとヒロト。セナの後ろをついて来たイヴはちょっと困ったように笑っている。
「お祭り……?」
「……ああ、フォースフェス」
全くピンとこないレイとは異なり、ヒロトは心当たりがあったようで得心したように頷く。
「さっきセナと一緒にイベント案内を見ていてみつけたの」
そう言ってイヴが表示させたのは、GBN内の各種イベントを告知しているページだった。
『ベアッガイフェス開催!』と銘打たれたその告知は、ベアッガイ──
驚くことに専用のディメンションが用意され、エリア内に浮かぶ複数の浮遊大陸のような島群をまるまるテーマパークとして使っているという。しかも開催期間中には宝探しイベントも定期的に行われていて、まさに日曜である今日がその日であった。
「ねっ、ねっ、楽しそうでしょ? みんなで行こうよ!」
大きな瞳を期待でキラキラさせるセナだったが、ヒロトはそんな彼女を申し訳なさそうに見る。
「すみません。折角誘ってもらったんですけど、俺たちフォース組んでないんです」
「えっ、ウソぉ!?」
「てっきりイヴちゃんと二人でフォースを組んでるかと思ってた」
セナだけでなくレイも驚いてはヒロトとイヴの顔を順番に見る。フォースフェスとは名前の通りにフォースを対象としたイベントで、ヒロトのように無所属のダイバーでは参加することが出来ない。
「言われてみれば、GBNにログインしている間はイヴとずっと一緒だったからフォースってすっかり忘れてたよ」
「……ヒロトとはGBNでいつでも会えるから、ね?」
指摘されてようやく気付いたという顔のヒロトと、どこか濁すようなことを言うイヴ。
「ん? セナ、この宝探しイベントだけど、ヒロト君たちが別枠でフォース結成しちゃうと競争相手になるよ?」
「え!? あ、そっか……」
概要を見れば、戦闘行為は禁止とされている比較的平和なイベントのようだが、目指す宝はひとつしかなく、賞品は一番先に宝とされるものを発見したフォースにしか与えられないとある。
「じゃあじゃあ、この四人でフォースをもうひとつ作ろうよ。そうすれば……」
「えっと、それは……」
「セナ、落ち着きなよ。ヒロト君も困ってるでしょ」
テーマパークに宝探し。二つともセナにとっては未経験のイベントで、そのせいか、はしゃぎすぎて少し暴走している相方をレイが諫める。まるで縁日に初めて来た子供……とは思ったが、口には出さない。
「ふふっ……みんな楽しそう」
子供のようにはしゃぐセナ、それを宥めるレイ、困惑するヒロト。三者三様の賑やかな様をイヴは優しく見守る。GBNは仮想の世界だが、そこで生きているダイバーたちは現実となんら変わらない命の輝きを彼女に見せてくれる。そんなGBNがイヴは愛しくてたまらない。
「あー、もうわかった。わかりました。じゃあ、こういうのはどう?」
レイが提示したのはフォースに関するQ&Aが書かれているページだった。
「これ。フォースにはリーダーが許可したダイバーを仮所属って扱いでメンバーに出来るから、これを使って今日だけ二人をウチのメンバーにしましょう。これならどう?」
要は部活動の仮入部みたいな扱いである。ひとつのフォースにつき十人までという制限はあるが、最長で一週間、最短で当日のみという期間限定で、申請を出した無所属のダイバーをフォースメンバーとして扱う事が出来る制度で、フォースの立ち上げとは異なりダイバーのランクも問われない。
これは既にGBNをプレイしている者がリアルでの知り合いや友人をGBNに誘った際、気軽にフォースイベントを体験したり、初心者をランクアップのために急かすことがないようにと作り出されたものだ。
ただし意図的なパワーレベリングを防ぐ目的で、仮所属のダイバーが参加できるのはフォース向けのイベントミッションのみとなる。
「セナもこれでダメだったら諦めること。……二人ともごめん。嫌ならこっちは気にしないで、断ってくれてもいいから」
「二人も一緒に遊びに行こう! ね? イヴもいいでしょ?」
心底すまなそうにするレイと、期待に満ちた笑顔で遊びに誘うセナ。同い年だと聞いていたが、まるで姉妹のような二人の姿にイヴは微笑ましい気持ちになる。
「ヒロト。せっかくだから行ってみない?」
「わかった。イヴが行きたいなら俺は構わないよ」
微笑むイヴに快く頷いたヒロトは、ゼラニウムに一日だけのフォースメンバーとして参加することにした。
Tips
・フォースフェス
GBN内の公式イベントのひとつ。フォースを対象にしたイベントミッションなどが多いが、今回のベアッガイフェスのように特殊なディメンションを使った大規模なものからこじんまりした催しまで多彩。
季節に応じた様々なイベントも開催され、限定アクセサリや限定パーツといった報酬が貰えたりもする。