ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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Re;RISE本編ではあまり見られなかった姿のヒロト君が出てくるので初投稿です。


ベアッガイランドへようこそ!歓迎しよう!盛大にな!

ベアッガイランドへようこそ!

 

このディメンションはベアッガイをマスコットキャラクターにした一大テーマパークです。

 

大興奮間違いなしの絶叫マシンや、お友達と盛り上がれる様々なアミューズメントエリア。

 

恋人同士で訪れれば絆がより深まるスポットも!

 

フードコートには美味しくて見た目も楽しい限定メニューが満載!

 

夜間限定のイベントでは、夜空を彩る煌びやかな花火やイベント限定のパレードが、思い出に残るひと時を貴方に。

 

 

ただいま宝探しイベントミッション「Beargguy・Quest(ベアッガイ・クエスト)~失われしBの伝説~」開催中!

 

君もチャレンジして優勝賞品の限定ベアッガイ「武者凱(ムシャッガイ)」を手に入れよう!

 

 

 

 

「はー……正直GBNをナメてた……これはまた規模の大きなイベントだわ」

 

 イベント案内を兼ねた広告を読んでいたレイは、視線を上げて目の前の門を見上げると、感嘆するように溜息をついた。

 ベアッガイフェスの開催場所となっているのは専用に用意されたディメンションで、高空に浮かぶいくつもの浮遊島によって構成されたイベントエリアは、入場門とホワイトベースを模した巨大な城を擁するひと際大きな島を中心として、趣向を凝らした様々なアトラクションが大小色々な島ごとに営業し来場者を楽しませる。

 

 サーバーが許す限り、という制限はつくが、現実よりも遥かに広大で自由な空間を構築できる電脳世界。その利点を最大限に利用している一例がここにはあった。

 

「レイー! はやくはやくー!」

 

 ディメンションへのワープが終わりガンプラを降りた途端に走り出したセナは、レイ、ヒロト、イヴの三人を置いてけぼりにして入場ゲート前ではしゃぐ。彼女の外見もあってかその姿はまさに遊園地に来た子供そのもので、そんなセナを見たレイは小学生の頃の自分を思い出す。

 

「小学生の時に夢の国に行った私とおんなじリアクションしてるわ……」

「ああ、俺も覚えがあります」

 

 「セナまってー」と追いかけていくイヴを見送りながらヒロトが同意する。

 

「ヒロト君も行ったことあるんだ?」

「はい。レイさんと同じく小学生の時に家族旅行で。幼馴染と一緒に」

「私は地元の地域コミュニティの旅行だったなあ」

 

 日本で一番有名なテーマパークだけあり、なんだかんだ遊びに行った人間は多い。

 

「レイー、ヒロトー! はやくってばー!」

 

 待ちきれなくなったセナがぴょんぴょん跳ねて二人を催促する。

 

「ウチの子も急かしてるし、そろそろ行こっか」

「ははっ、ですね」

 

 自分たちが子供だった当時の保護者たちの気持ちが少しだけ理解できたレイとヒロトは、お互いに苦笑すると入場ゲートへと向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 日本で一番有名なテーマパークにおいて、ある意味でとても有名なアイテムがある。それはマスコットキャラクターたちの耳を象ったヘアバンドやカチューシャだ。

 来園客たちは夢の国の魔法にかかったように、皆それを着けてはひと時の非日常を謳歌するのだが、たまに帰りの電車に乗っても魔法が解けないのか、着けたまま帰宅して自宅の鏡の前で真顔に戻るうっかりさんもいる。

 

 ベアッガイランドでも似たようなアイテムを扱っていて、ここではベアッガイを象った熊耳のカチューシャ()()が、エリア内限定のアクセサリとして販売されていた。

 

 

 

「嫌ー! 絶対に嫌ー! 着けるならカチューシャでいいじゃん! なんでよりによって()()()なのよ!」

 

 入場ゲートからほど近い場所でみっともなく喚くのはレイだった。

 

「まあまあ、レイ。こういうのは場の雰囲気に合わせないと」

 

 そんな彼女の近くで説得にあたるのは、髪と同じ色をした巨大な熊の頭部の被り物をしたセナだ。入場ゲートの付近には「キセッガイコーナー」とポップが付いたダイバールックを変更できる場所があり、さっそく目を輝かせて突撃したセナがそこで着けてきたのが()()だった。

 

 ……実はこのベアッガイランド。エリア内限定のアクセサリはもう一種類ある。それがセナの被っているベアッガイの頭部で、口にあたる部分から本人の顔こそ見えているものの、着ぐるみの頭だけ残ったような姿はとてもアンバランスでシュールなことこの上ない。

 

 おまけにこの少女ときたら、レイにもそれを着けるように(お揃いになるように)お願いしてきたのだ。

 

「私もう高校生だよ!? そういうのが許されるのは小学生までだって! 無理無理絶対無理!」

 

 レイの言い分も一理ある。こういったアイテムは子供が着けるからこそ微笑ましいのであって、ダイバールックの身長が現実(リアル)と同じ167㎝のレイが装備すると、着ぐるみバイトの休憩中の人にしか見えない。

 

「セナはいいよ!? 小さくてかわいいから! でも私を見てよ! イベントスタッフでもないこんな身長(タッパ)の女がそんな恰好しても笑い者にしかならないよ!?」

「旅の恥はかき捨てって言うじゃん」

「旅じゃないし、かき捨てきれないよ!?」

 

 ぎゃーぎゃーわーわー騒ぐ二人を少し離れて見守るヒロトだったが、イヴの姿が見えないことに気づいて当たりを見回す。

 

 

「だいたいアッガイっていうのはジオン公国軍が開発した水陸両用MSの中でも生産性に重点が置かれてMS-06ザクⅡから多くのパーツを流用したことで先に開発が始まっていたズゴックよりも早く完成した上に生産性に加え運用コストの面でも優れたいわば簡易量産機の側面を持ちつつも水陸両用機の中では初の複座型でもあったことから訓練機として使用されただけでなく排熱量の低さから熱センサーにも感知されにくい特性を持ち偵察任務にも従事した優秀なMSでさらに運動性も陸戦用MSと遜色のないことから参加した作戦は多岐に渡る傑作機であって決してこんなマスコットになるMSじゃないの!」

 

 テンパっているのかよほど嫌なのか、長い長い機体解説を一息(ワンブレス)で言い切ったレイだったが、そんな彼女の抵抗を嘲笑うかのようにもう一つの熊頭がやって来る。

 

「レイもきっとかわいいと思うよ」

「イヴ!?」

 

 うっかり機体解説を感心しながら聞いていたヒロトは、やって来た人物を見て思わず普段は出さない大声を出した。その熊頭は誰あろう姿が見えなかったイヴだった。

 

 どこか浮世離れした雰囲気をもつ神秘的な美少女が、髪と同色の金色をした巨大な熊の頭部を被る姿はとてもインパクトのあるもので、長広舌をぶちまけたせいで膝に手を置いて息を切らせていたレイも、驚きのあまり目をむいて硬直する。

 

「ヒロトもきっとかわいいと思うの。だから、お揃いにしよ?」

 

 小首というには大きすぎる頭を傾げて、無垢な笑顔で無茶振りする少女(イヴ)にレイとヒロトは絶句した。

 

「イ、イヴが、そう言うなら、お、俺は、構わない、よ……?」

「ヒロト君!?」

 

 やがて再起動したヒロトが引きつった笑顔で了承し、まるでドナドナが聞こえそうな背中を見せながらイヴによってキセッガイコーナーへと連れて行かれる。

 

「これで三対一、だね?」

 

 嬉しそうな声に顔を上げたレイが見たのは、被り物であるはずのベアッガイ部分の瞳を怪しく光らせたセナの笑顔だった。どうやらこのベアッガイヘッド、ダイバーの感情と連動しているらしい。

 

 うわぁ、ネタ装備のクセに無駄に凝ってるなぁ。とレイは現実逃避気味に感心した。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 園内を行き交う多くのダイバー。グループだったりカップルだったりと形態は様々だが皆一様に楽しそうで、このフォースフェスをエンジョイしていることがわかる。そんな彼ら彼女らの中をグループ内でテンションが真逆な四つの熊頭の集団が歩く。

 

「さっきのアプサラスコースターは凄かったね! わたし現実でジェットコースターに乗ったことないんだけど、あんなに激しくぐるぐるするんだ」

「そうね。凄く早くて振り落とされるかと思っちゃった」

 

 集団の前を歩くのはセナとイヴで、こちらは実に楽し気にアトラクションの感想で盛り上がっている。ゆらゆらする紺と金のベアッガイヘッドも、彼女たちの雰囲気によってシュールさよりも微笑ましさが印象に残る。

 

「うぅ……やっぱ若い子はみんなカチューシャじゃん……被り物してるの子供かおじさんばっかじゃん……」

「ハハッ……レイ=サン、モウ、アキラメマショウ」

 

 一方で後ろを歩く赤と黒の熊頭二人の空気は重い。ちらちらと周囲を伺っては同調圧力に屈した己を呪うレイと、達観したかのように遠い目をしているヒロト。二人はセナたち同様それぞれの髪色と同色のベアッガイヘッドを身に着けている。前を歩く二人と比較すると……その姿はとてもシュールであった。

 ヒロトのほうは既に魂が解脱しかかっているようで、今突かれたらサラサラと砂のように崩れそうな儚さを感じる。アプサラスコースターで彼が風に乗って吹き飛んで行かなかったのは奇跡だった。

 

 隣を歩くヒロトの燃え尽きたような姿を見て、「思春期の少年になんて惨い仕打ちを……」とレイは戦慄する。ヒロトと同年代の少年の中には、逆にこういう事にもノリノリで楽しめるタイプもいるのだろうが、レイから見たヒロトという少年は、根は優しいが不器用でナイーブな傾向があるタイプで、心の傷は明らかにレイよりも重症だった。

 

 しかしそんな彼の様子が、逆にレイを奮起させることになる。

 

「──よしっ、もうこうなったら切り替えよう。せっかく遊園地に来てるのに、白けたテンションでいてもつまらない。ね、ヒロト君。今日はヒロト君もイヴちゃんといっぱい思い出作りを楽しもう?」

「レイさん……」

 

 「もうこうなったら私もはっちゃけちゃうから!」とあれだけベアッガイヘッドを嫌がっていた彼女が空元気を振りかざす姿を見て、なんとなくこちらを気遣うレイの意図を察したヒロトの目にも光が戻ってくる。

 

「そう、ですね……普段の俺たちだとこういうイベントには参加できないですし、楽しまないともったいないですよね」

「そうそう! 夢の国だっておじさんがヘアバンドつけたりしてはしゃいでるんだから、もう気にしないで楽しんじゃおう!」

 

 そう言って少し先を歩くセナたちを追いかけるレイの足取りに、もう迷いは見られなかった。

 

 

 

 あれだけ気にしていた恰好も、いったん吹っ切れてしまえば不思議とあまり気にならなくなるもので、セナたちに続いて次のアトラクションがある浮島へのポータルへ意気揚々と飛び込む二人。

 

「あっ、レイー! 遅いよー!」

「ごめんごめん。それで次はなにをするんだっけ?」

 

 転送された先で待ってくれていたセナがぴょこぴょこ跳ねて急かす。VRとはいえ初めての遊園地を楽しんでいる様子を見ると、さっきまでネガティブな愚痴を垂れ流していた自分が、セナ(友人)の楽しみに水を差していた事を自覚して申し訳ない気持ちになった。

 

 今度のアトラクションでは自分も目いっぱい楽しんで、セナと思い出を作ろう。そう決意するレイ。

 

「えっとねー、次は──」

 

 

 

 だがそれも、目の前の建物を見て霧散することになる。

 

 一律の大きさへ成型した多数の巨石を四角錐型に積み上げた巨大建造物。

 

 王の偉業を称えるがごとく雄大なそれ、世界遺産でも有名なピラミッドを象ったのは明らかであり、建物そのものはとても立派だ。VRゆえに敷地面積に制限されないアトラクションは、実物を現実で見たことのないレイにしても、その大きさは世界的に有名な観光地の本物と遜色ない規模を誇っているように見える。

 

 ──まあ、それも建物自体から視覚的に立ち上る禍々しいオーラが全てを台無しにしているのだが。

 

 

 

「ネオエジプト・オブ・ザ・デッドでーす!」

「ごめん無理」

 

 レイはホラーゲームが無理系女子であった。

 




Tips
・ベアッガイ
 GPD時代にとある有名プレイヤーの恋人が制作したアッガイの改造ガンプラ。元は個人が制作したものであったが、女性限定のGPD大会で活躍し、その愛らしい外見とギミックにより女性を中心に人気が出たことで正式にキット化され一般販売された。
 ベアッガイの他にもGPD時代に有名だったプレイヤーのカスタムガンプラは、一部が公式からレプリカモデルがキットになって限定販売されている。

 もちろん公式販売なので、製作者本人からの許可は得ている。
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