ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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【お知らせ】
 第二章一話「小さなガンダム」の冒頭に掲示板形式の記述を追記いたしました。拙作におけるGBN内でのスキルやGNドライブなどの説明があります。

拙作で初めて登場するタイプのガンプラがいるので初投稿です。


「この先には恐ろしい気配がする……」と言われると踏み出したくなるのはゲーマーの性だが大抵はヒドイ目にあう

 ベアッガイ・クエストとは簡単に言ってしまえば宝探しである。

 

 浮島ひとつという広大なフィールドのそこかしこに宝の在りかへと繋がるヒントを記した宝箱が設置されており、参加者はまずそれらを探すことからはじめる。

 宝箱には次のヒントとなる宝箱の座標や、宝へ直接繋がるヒントとなるベアッガイ像の所在に関する情報などが入れられているのだが、中にはハズレやクイズに正解しなければ情報を得られないものもある。

 

 宝箱は山中の岩場の隙間や水辺の川底、あるいは険しい森林の中など実に様々な場所に隠されていて、それらを見つけるのだけでもなかなかに骨が折れる。

 

『おーい、そっちはどうだ?』

『地中にはないみたいだなー』

 

 中にはアッグのような特殊なMSでもって地面を掘り返す剛の者もいるが、さすがにそこまで意地の悪い類のイベントでもあるまい……と今しがた通り過ぎた場所でやりとりしていたダイバーの姿を見たレイは思う。

 

 件のしっと団はどうなったかといえば、イベントエリアになっている島がMSに乗ってもなお広大であることと、開始直後にツーマンセルに分けた団員を散開させたことで、スタート地点から早々に飛び出したレイたちは今のところ遭遇していない。

 なんだかんだ言いつつ、一応彼らもイベント自体は真っ当に攻略するつもりのようだ。

 

「ねーねー、レイ」

「ん? どしたの?」

 

 コントロールスティックを握るレイの背後に立ち、彼女の肩へ手を置いて宝箱を見つけるべくきょろきょろと周囲を観察していたセナがひょっこりとレイの顔のすぐ横へと首を伸ばす。

 

「レイってさ、ガンダムには乗らないの?」

「へ? あー……そういえば最近はずっとモノアイ系だったか」

 

 身長差ゆえに背伸びをしてレイの背へと半ば寄りかかる態勢のセナへ視線だけを向ける。妙な質問をされたせいでレイは虚を突かれたような声を上げるも、すぐに何を言われたのかを思い至ると得心したように頷いた。

 

 セナの指摘した通り、彼女と出会ってからのレイは、これまでずっとジオン系のガンプラにしか乗っていなかった。

 

 ヴァルガでの遭遇時やそれ以降のミッションではイフリート・アサルトに、フォース戦などで水辺が近いエリアの際にはハイゴッグに乗り今もヅダを駆っている。

 

「や、別にジオン系オンリーとか、そういう縛りをしてるわけじゃないよ。たまたまタイミングが合わないってだけ。GPDでの愛機はガンダムタイプだったし」

「へー、そうなんだ。……ガンダム乗ってるレイかー……ふふふ……なんか想像できないなー」

「笑わないでよもー。GPDの時に使ってた子は今修理中なの。イワナガ模型(ウチ)で開いた最後のGPD大会でさ、()()()()()()()()()()()()()()()結構派手に壊しちゃったの。あと、それだけじゃなくて──」

 

 ──あのガンプラ()には思い出が多すぎるから。

 

 脳裏に浮かんだそんな言葉を咄嗟に打ち消したレイは、少しだけ間を開けてから別の理由を考える。

 

「実はさ、GPDとGBNって同じ所から出された同じガンプラバトルを扱うゲームなんだけど、これがまた全然仕様が違うのよ」

「えっ、そうなの?」

 

 GPD未経験のセナはレイの言葉に意外そうに目を丸くする。

 

「そうなの。ガンプラの基本操作はほぼ一緒なんだけど、もはや別ゲーレベルね……で、GPDで使ってた子たちはちょっとGBNだと使用感が変わっちゃってね。だからGBNはGBNで使うために別のガンプラを専用に組み上げたんだけど、それがたまたまジオン系ばっかりだったってわけ」

 

 

 GBNとGPD、両者の違いで一番大きな点といえば、自機にセットする「スキル」の有無やガンプラの破損以外にも「VR酔い」がある。

 

 GPDでは当然ながらGBNのようにガンプラのコックピットに乗り込んで操作するわけではない。インターフェースは筐体に固定された操作盤に付いたコントロールスティックとガンプラのメインカメラに連動したモニター画面──これはコンソール画面も兼ねる──のみのシンプルな構造で、動かしているガンプラが衝撃を受けても画面がブレるだけだ。

 

 フルダイブVRどころかHMD(ヘッドマウントディスプレイ)ですらないGPDでは、よほどの高速状態で複雑なマニューバをしない限りプレイヤーが酔うことはなかった。

 翻ってGBNはどうかと言えば、それはもう戦闘中は激しくコックピットが揺れる。設定で多少緩和は出来るが、それでもゼロにすることはできない。

 

 とはいえ平均的なVR適正を持っているならば、ある程度は()()でどうにかなる範囲ではある。よほどの高機動型かピーキーな機体設定にでもしなければ、通常のミッション程度ならば支障は出ないよう調整されてはいるのだ。

 

「私が使ってる個人用筐体も元は新し物好きな常連さんが買ったはいいけど、VR酔いが酷くてプレイできないからって格安で譲ってもらったものだし」

「へー。VR酔いってなったことないからわからないけど、そんなに辛いものなんだ」

「あー、やっぱりセナはVR適正高いんだね」

「うん。そうかも。VRゲームならどんな動きしても、どんな乗り物に乗っても平気……現実(リアル)だとすぐ車酔いするけど──っと、レイ! 宝箱!」

「ぬおっとぉ!?」

 

 会話をしながらも目ざとく宝箱を見つけたセナの声に慌てて機体を停止させる。彼女の示す方向へカメラを向ければ、木立の中、盛り上がった土を抱くようにして根を張る木の根元、そこに宝箱が覆われるようにしてひっそりと置いてあった。

 

「セナよく見つけたねー」

「えへへ、それほどでも」

 

 他の木よりも少しだけ根本が盛り上がっているとはいえ、この森林の中ではさほど目立つわけでもなく、さらに宝箱自体も保護色なのか暗い茶色に塗装されているため、かなり注意深く観察していなければ見つけられないほどには巧妙に隠されている。

 

 これは中身も期待できるか、とレイがその木へ機体を近づかせるが──

 

『モキュ!』

「へ?」

「わっ、なに?」

 

 宝箱の影から飛び出してきた一体のNPDが彼女たちの前に立ちふさがる。

 

「わぁ、ちっちゃなベアッガイだ! かわいー」

「プチッガイじゃん。園内にもいたけど、なんでこんなトコに?」

 

 飛び出してきたのは水色をした一体のプチッガイ。これはもともとベアッガイのサブマシンとして作られたガンプラで、今現在ではベアッガイの幼生体のような扱いになっている一種のキャラクターともいえる機体である。

 ベアッガイランドにも多数のNPDが配置され、入口広場では可愛らしいダンスを披露している姿が印象的だった。

 

『モッキュ! モキュキュモッキュ!』

 

 訝しがるレイと喜ぶセナの前で、そのプチッガイは小さな体を一生懸命に動かしてはなにかを訴える。

 

「……んー? どうしたんだろ?」

「なんか、ニュアンス的にこの宝箱は開けないで、って言ってるの……かな?」

 

 宝箱の前に立って首を横にふりふりしては、たまに腕を×の字にクロスさせる姿からレイがおおよその内容を推測するも、このイベントは宝箱を開けてヒントを得ないと進めないわけで。

 

「……どうしよ。折角見つけたわけだし、無理やりにでも開けちゃう?」

 

 と一歩機体を踏み出したレイだったが──

 

『モキュ! モキュモキュモ! モッキュー!』

 

 プチッガイがさらに必死になってぴょんぴょん跳ねてアピールする。

 

「……ねぇ、レイ」

「あー、うん。言わなくていいよ。……しょうがない」

 

 NPDだとわかってはいても、そのあまりにも健気な動きに絆されてしまうのは二人が年頃の少女だからか、一歩後退してプチッガイへと手を振り、その場を離れようとレイが機体を翻したその時──

 

 ──《CAUTION!!》

 

「はぁ!?」

 

 コンソールに表示された攻撃警告の表示にレイが驚愕の声を上げる。戦闘行為が禁止されたイベントのため完全に気を抜いていた。

 

「ちょ、どこのバカよ!?」

「レイ! あれ!」

 

 咄嗟にレーダーを確認しようとしたレイよりも早く、なにかに気づいたセナが彼方を指さす。そこには──

 

『のわーっはっはっはっ! 見つけたぞ宝箱ぉ!』

 

 森の木々をなぎ倒し、いや、()()()()()()()迫る紅色のエネルギーを纏った()()()()()()()──、否、これは頭部以外の部分が渦巻き状の光弾に包まれたガンプラだ。

 

 ──超級覇王電影弾

 

 機動武闘伝Gガンダムにて、主人公「ドモン・カッシュ」とその師匠「東方不敗」が放つ「流派東方不敗」の奥義のひとつ。簡単に言えば物凄いエネルギーを纏った()()()()だ。

 

「あいつ、しっと団の──ってヤバっ!」

 

 ネタみたいな機体のくせして再現が難しいはずのGガン系統の技を使う団長の実力に戦慄し、バックブーストを吹かして離脱を図るレイだったが、こちら目掛けて直進してくる相手の進路上には逃げ遅れたプチッガイがいる。

 

「あっ! プチッガイが!」

「まっかせなさいッ!」

 

 宝箱の前に取り残された形になるプチッガイ。あわや轢殺されるかと思われたが、レイのヅダJ型の左手首からアンカー付きのワイヤーが射出されると、その小さな機体を捉えて空中高く釣り上げる。

 

 その正体は第08MS小隊にて「グフカスタム」が使用していたヒートワイヤーだ。ヒートロッドの派生武器として劇中でも活躍したその武装をレイが改造したヅダJ型は装備していた。ちなみに「ヒート」とついてはいるが、ワイヤータイプへ小型化した関係で溶断機能はオミットされている。

 

『モッキュ~!?』

 

 前腕内蔵のウィンチで巻き戻されるワイヤーによって引き寄せられ、放物線を描いてヅダの腕の中へ着地したプチッガイは目を回してこそいるが外傷は見られない。

 

「ふぅ……間に合った」

「よかったぁ」

『モキュ~……』

 

 安堵する二人と一匹(?)だったが、

 

『はーっはっはっは! 残念だったな! 宝箱はいただいたぞ!』

「ちょっと! このイベントは戦闘行為禁止のはずでしょ! なに考えてんの!」

 

 まるで勝ち誇るように天高く宝箱をかざしているしっと団団長の機体を見て頭にきたレイが食って掛かる。

 

『はぁ~? ただの移動手段に文句を言われる筋合いはないんですがぁ~?』

「こいつ──!」

 

 しかし相手は知らぬ存ぜぬとばかりに涼しい態度。スタート地点でのやりとりを恨みに思っているのか、殊更に惚けた声音は明らかに彼女たちを小馬鹿にしたものだ。

 

『はっ! 負け犬の遠吠えは見苦しいなぁ~? どぉ~れ、この宝箱の中身は~?』

 

 もうこいつマジで撃ち落としてやろうか、とレイが内心で殺意を高め、無意識にトリガーに指を掛け──

 

「──レイ、離れたほうがいい。プチッガイが怯えてる……()()()()()()()()()()()()()()

『モキュー……』

 

 団長の煽りにも反応せず、ひどく硬い声音のセナに注意されて思いとどまる。彼女に言われて見てみれば、ヅダの手の中ではプチッガイが両手で顔を覆って蹲るようにして震えており、その様子はどうにも尋常なものではない。

 

 ことVRにおいては自分よりも遥かに勘の働く相棒の警告。真意を訊ねる間も惜しんで、全力でバックブーストを吹かし、機体を後方へ大きく跳躍させたレイの判断は結果として正しかった。

 

 ──思えば薄々嫌な予感はあったのだ。

 

 明らかにカモフラージュされ、セナがいなければ到底見つけることが出来ない場所にひっそりと置いてあったこと。

 

 わざわざNPDを配置してまで、箱を開けることに警告じみたメッセージのようなものを示していたこと。

 

 なによりカメラをズームにしてその姿をハッキリと捉えてみると、宝箱のあった場所には()()()()()()()()()のような残骸が残されているし、錠前の形がどう見ても悪魔の頭部を模していて──

 

『……は?』

 

 団長の間抜けな声が聞こえると同時だった。

 

「わっ!?」

「まぶしっ!?」

『キュ~!』

 

 開かれた宝箱から赤黒く毒々しい色の閃光が放たれて天を貫いた。

 

『は? へ? お、おい?』

 

 天空で八方向に別れた光は、そのまま宝箱を中心として拡散し地面に落ちるとバトルフィールドが展開。事態についていけず、棒立ちしたままの団長のガンプラがその中に囚われる。セナの警告に従って機体をさらに後退させていなければ、確実に巻き込まれていたであろうほどその範囲は広い。

 

 そして現れたのは一体のガンプラ。

 

 薄暮(はくぼ)の空を思わせる、暗い色をしたローブを纏ったような姿。

 

 フードを被ったような形の頭部からは特徴的な二本のねじくれた黄金色の角が見える。

 

 ()()()()()された姿ながらも、全身から赤黒いオーラ(禍々しいエフェクト)を立ち上らせ、先端に髑髏のついたワンドを持つ様は、さながらRPGの邪悪な魔法使いそのものだ。

 

「……サタンガンダム」

 

 思わず、といった風にレイが呟く。

 

 そう、宝箱から現れたのは、SDガンダム外伝「ラクロアの勇者」編のラスボス。魔王サタンガンダムだった。




Tips

・GBNとGPD
 同じガンプラバトルを扱うゲームだが、その実いろいろな箇所で勝手が異なる。
 中でもVR酔い関連は顕著で、GPDで名をはせた有名プレイヤーがこれによってGBNへの参戦を断念することになった事態が何件かネットで報告されている。
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