ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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「SDガンダム、いいよね……」なので初投稿です。


たとえどんな姿であってもラスボスを侮るべきではない

 SDガンダムとは「スーパー・デフォルメ・ガンダム」つまりガンダム作品に登場した機体ないし人物を、頭を大きく手足が短い低頭身で表現したキャラクター、およびそれを用いた作品群の総称である。

 

 このシリーズにおいて特徴的なのが、多くの作品でMS、MAはデフォルメされると同時に擬人化されていることだ。アムロ・レイをはじめデフォルメされたガンダム作品の登場人物と同様に人格を持ち、一人のキャラクターとして()()は描かれる。

 

 サタンガンダムとはその中でもヒロイック・ファンタジー風の作品であるSDガンダム外伝第一弾「ラクロアの勇者」に登場する、物語における「ラスボス」の地位にあるキャラクターだ。

 

 中世騎士物語のようなこの作品は、主人公である騎士(ナイト)ガンダムをはじめ日本人が想像する「中世風異世界ファンタジー(国産の有名RPG)」の要素が強く、「勇者」である騎士ガンダムと対を為すサタンガンダムはまさに「魔王」のような存在となっている。

 

『はっ! なんだSDか! 仰々しい演出の割りにはショボい奴が出てきたもんだ!』

 

 かなり凝った登場演出に固まっていた団長だったが、出てきたのがSDガンダム一体だとわかると途端に勢いを取り戻し、宝箱をその辺へ放り捨てて拳を構える。

 

『この「しっとタイタス」にかかればSDガンダムなんざ一撃で粉みじんよ!』

 

 レイは思った──オイオイオイ。死んだわ団長(アイツ)

 セナは考えた──あれだけ凝った演出で出てきたNPDが雑魚なわけないよね?

 プチッガイは──そっと黙祷を捧げていた。

 

『オラ死ねい!』

 

 力強い突進から繰り出される右ストレート。AGE-1タイタスのマッシブな腕は通常のMSと比較して拳も相応に大きく、SDたるサタンガンダムの全長に匹敵するサイズを誇る。

 

 だが己に迫る巨大な拳を前にしてもサタンガンダムに動揺する様子は一切なく、優雅とさえ言えるようなゆっくりとした動作で髑髏の杖を目の前に掲げる。

 すると虚ろな空洞であったはずの頭蓋骨の瞳が怪しく光り、

 

『──なん、だとぉッ!?』

 

 サタンガンダムの目の前まで迫ったタイタスの拳が、赤黒い半透明の障壁によって完全に防がれる。驚愕する団長。しかしそこでサタンガンダムの行動は終わらず、続けて杖を無造作に横へ一振り。

 

『──ぐあああっ!?』

 

 障壁をすり抜けてタイタスの胴体へ命中した衝撃波が、しっとタイタスの巨体を大きく吹き飛ばした。

 

 

「……わー、つっよ……」

 

 尻餅をついて天を見上げるしっとタイタスと空中からそれを睥睨するサタンガンダム(魔王)の構図に、レイの口から感嘆の声が漏れる。

 

 基本的にGBNにおいてSDガンダムというジャンルの機体はあまり人気が無い。その際たるものが多くのダイバーにとってSDのガンプラが「弱い」と認識されていることが原因だからだ。

 

 デフォルメされたことで短くなった手足はリーチ差による不利を招き、小柄な体は回避には適しているものの耐久力はなく、同時に相対した相手のコックピット(弱点)を狙いにくい身長差を生み出す。

 所持する武装も構成パーツ数の少なさや肉抜き穴が多いことが原因で、しっかりと手を加えないと威力が低い。これは本体にも言えることで、基本的にデフォルトの機体出力やパワーはリアルタイプと比較しても低めになっている。

 

 小さなボディを活かした偵察や斥候、リアルタイプにはセットできない豊富なスキルによる初見殺し。あるいは綿密な打ち合わせをしたフォーメーションで連携して戦うことに向いてはいるが、それらはいずれも初心者には難しい分野ばかり。加えて機体の真価を引き出すには熟達したビルダーとしての腕が求められる。

 

 ガンプラ(玩具)としてのSDガンダムは組み立てやすさや可愛らしい見た目から低年齢層向けではあるが、こと「GBNでの乗機」としては扱いづらい難しいものであった。

 

 

 だがこのサタンガンダムはどうだ。

 

 

『このっ! くそっ! おらああああ! ──硬すぎだろふざけんな!?』

 

 徒手空拳とはいえAGE作中屈指のパワーを誇るタイタスの拳や蹴り、果てはビームラリアットやビームスパイクを一切受け付けない障壁の堅牢さ。

 

『こうなったらハイパーモードで──ふべらっ!?』

 

 威力、射程、速度に誘導性、全てにおいて死角のない性能の衝撃波による攻撃。

 

 出典作品を考えればおそらくは魔法の一種と思われるが、ゲームに出てくる攻撃魔法には必ず付属するはずの再使用可能までの待機時間(リキャストタイム)が存在せず、さながらシューティングゲームのごとく連射してはしっとタイタスを滅多打ちにしている。

 

『ぶへっ!? ごばっ!? ちょっ! ま、まっで……』

「わー、えげつな」

「……こういうトコ見ると、GBNってやっぱりゲームなんだって実感するね」

 

 どのようなゲームにも共通することだが、基本的に敵性NPCというものはプレイヤーに倒されるために存在する。

 

 それは序盤の雑魚モブからラスボスまで()()例外はなく、このGBNにおいても同様だ。

 

 普段のミッションでダイバーたちが相手取るNPDという存在には、行動パターンにおいて明確に「隙」と言えるものが設定されているし、攻撃や回避の精度や機体のパラメータも対応したミッションの難易度に合わせたものにされ、きちんと()()()()()()()()()()として作られている。

 

 オンライン、オフラインどちらのゲームでも言えることだが、このあたりのバランス調整で下手を打つとユーザーからの苦情が殺到するため、ゲームの開発チームはこの部分にとても気を使う。

 その点GBNはよくできていると言え、()()()()()()()()()()苦情の類があまり寄せられることはない。

 

 まあ、つまりは、今回のようにあからさまな致死性の罠(デストラップ)だったり、『眠り姫の財宝』のような特殊なミッションで出現するほぼ即死罠の宝箱(ミミック)などは例外であり、この時ばかりは開発チームも自重という言葉を投げ捨てている……ということで、その成果がサタンガンダム(アレ)であるということだ。

 

 極論、GBNを運営する側というのは、二千万人規模のユーザーの中でトッププレイヤー(チャンピオン)たる「クジョウ・キョウヤ」すらも倒せるNPDを用意出来るわけで、そんな理不尽を今現在押し付けられているしっと団の団長はまさに嬲り者であった。

 

『く、くそったれ……俺は、こんなところでぇ!』

 

 彼とて実力は決して低いものではない。その証拠にしっとタイタスは全身に傷を負いながらも未だ五体が健在であり、駆動部分にも問題は生じておらず、弾幕をどうにか往なして態勢を立て直している。

 

 磁気旋光システムによる腕部のビームラリアットと、肩と膝のビームスパイクを巧みに用いて衝撃波の軌道を逸らして立ちまわる動作は、キックボクシングに似ているがおそらくそれだけはない。ゴッドガンダムを素体としてAGE-1タイタスの手足を用いているこのガンプラは徒手空拳しか攻撃手段がないため、これを十全に扱うにはダイバーにも格闘技に対する深い造詣が求められるはずであり、使いこなすには相当に難しい機体だと言える。

 

 そのようなガンプラを愛機としつつも、弾幕STGのごとき密度の攻撃──しかも一撃がかなりの威力──に晒されてもここまで凌ぎきる団長の操縦技術とビルダー能力は、実のところ「英傑」と称されるワールドランキングの三桁台のダイバーに迫るものである。

 

 そしてなによりも、彼は一人ではない。

 

『団長!』

『俺たちも加勢しますぜ!』

『よくも団長をやってくれたな!』

 

 島のあちこちから次々とガンプラたちが飛来してはバトルフィールドへと飛び込むと、傷だらけのしっとタイタスを庇うようにして立ち塞がる。

 

『お、お前ら……!』

 

 どうやらこのバトル、開発側はNPD(サタンガンダム)によほどの自信があるのか、ダイバーたちのバトルフィールドへの進入は制限されていないらしい。展開されているフィールド壁は中にいるダイバーの逃亡阻止と、内部の戦いで生じる余波で被害を出さないためのもののようだ。

 

『団長、しっと団一同、遅れてしまって申し訳ありません』

『弐号か……フッ、気にするな。お前たちの熱き魂があれば、もうなにも怖いものなどない!』

 

 集まった団員の数は十を越え、その中で先頭に立つのは赤くカラーリングされたAGE-1スパローの改造機。どうやらこの機体のダイバーが副団長を務めているらしい。

 

『さあゆくぞ! あのクソッタレなガンプラを叩き潰してやるのだ!』

 

『おおっ!』

 

 団長の音頭によって気炎を上げるしっと団だったが、──ここで残念なお知らせがある。

 

 

 ──サタンガンダムはまだ変身を残している。

 

 

 しっと団の鬨の声に呼応するようにして、サタンガンダムの双眸が赤く煌めく。

 

 するとにわかに空が曇り、紅い稲光が瞬く黒雲がバトルフィールドの上空に立ち込め、やがて一条の稲妻がサタンガンダムを貫く。

 

 ──GYAOOOOOOO!

 

 フィールドから離れているレイたちにも聞こえる大音声の雄たけびは、まるで竜の咆哮のようでもあり──

 

「……ブラックドラゴンになったかー」

 

 否、それはまさに竜の咆哮であった。

 

 ローブのようだった前面装甲が展開して深紅の翼となり、中央から開いた頭頂部には邪竜を象徴するドラゴンブレインが見える。より増大した禍々しさと圧倒的なプレッシャーを放つその姿は、サタンガンダム恐怖の正体たる「ブラックドラゴン」である。

 

『はっ! 今更変身したところで遅いわ! 戦いは数なんだよ愚か者ォ! ──てぇ!』

 

 上がったテンションのままに副団長の機体が腕を振り下ろすと、ガンプラの種類はバラバラながらも統率された動きでもって、しっと団の団員たちによる一斉射撃が放たれる。

 ネタみたいなフォースではあるが団長だけでなく所属するメンバーの練度もそれなりに高いようで、連携され途切れることなく放たれる射撃兵装による砲煙弾雨はブラックドラゴンの姿を覆い隠し、バトルフィールドに広がる爆炎と煙は外からの視界を一時的に遮る。

 

『──いよぉーしっ! 撃ち方やめぇーい!』

 

 冷静に団員たちの射撃兵装の残弾を把握していた副団長が指示を出せば、さながら訓練された兵隊のようにピタリと射撃が収まる。

 万が一も考えて、ある程度の残弾は残しているがあれだけの集中砲火である、いくら開発謹製のNPDといえども無傷とは言えまい。

 

 ──そう考えていた副団長は、次の瞬間、激しい衝撃とともに()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『──は?』

 

 彼が最後に残した言葉は呟きともいえない小さなもので、コックピットを破壊されたことで撃墜判定を受けたスパローは()()()()()()()上半身と下半身がテクスチャの塵となって消える。

 

『に、弐号ーッ!?』

 

 はたして、煙の晴れた先、副団長を一撃(一口)で仕留めた存在はそこにいた。

 

 ──それは巨大な銀の(あぎと)を持っていた。

 

 ──それはまるで巨大で歪な機械の(ワニ)のような姿をしていた。

 

 ──それは、こう呼ばれている。

 

 

黒魔神闇皇帝(クロマジンヤミコウテイ)……()()()()()()()()()()()()()()とか、そんなのアリ……?」

 

 コックピットで呟くレイの頬を冷や汗が伝う。

 

 ブラックドラゴンを守るようにして魔王の前に現れたのはSDガンダムシリーズの中のひとつ、「SD戦国伝天下統一編」に登場したラスボス。騎士ガンダムと双璧を成すSDガンダムの有名所である武者頑駄無たちと激闘を繰り広げた存在だった。

 

 見る人によっては「機動戦士ガンダムUC」に出てきた巨大MA「シャンブロ」にも見える外観は純粋に恐怖を駆り立てる異形であるが、なによりも驚異的なのは()()()()()だ。

 元はSDガンダムシリーズのものとは思えない巨躯は並みのHGサイズのガンプラを上回り、まさにシャンブロを彷彿とさせるほどで──

 

『あっ、勝てんわ、これ』

 

 ()()()()()()()()。完全に煙の晴れたバトルフィールドに出現している。黒と銀で構成された異形の群れがブラックドラゴンの元に集う様は、さながら魔王が戯れに召喚してみせて使い魔のようだがその脅威は決して魔王の手下程度のものではない。

 

『だ、団長ッ! 逃げぶべっ──』

 

 警告を発しようとした団員の機体が一瞬で副団長と同じく胴体を食いちぎられて宙を舞う。

 

 それを皮切りに残りの九体の黒魔神闇皇帝たちが、巨大な足で大地を踏みしめしっと団へと殺到する。

 

 ──そこからはもう一方的な蹂躙であった。




Tips
機体解説:しっとタイタス

素体キット:HGFCゴッドガンダム

武装
・ビームラリアット×2
 磁気旋光システムによって前腕に展開されるリング状のビームを用いた格闘攻撃。その破壊力は並みのガンプラならば真っ二つにするほど。
・肩部ビームスパイク×2
 肩部のアーマーが展開して四本のビームスパイクが発振される。ショルダータックルや肩を使った往なしに用いられる。
・膝部ビームスパイク×2
 膝アーマーから発振される三本のビームスパイク。ニーキックなどで用いる他、団長の巧みな機体捌きによって防御手段としても使われる。
・ハイパーモード
 ゴッドガンダムのハイパーモードを再現可能。

スキル
・飛行
 機体に重力下における飛行能力を付与する。
・流派「東方不敗」
 MF(モビルファイター)限定。
 機動武闘伝Gガンダムにおける流派「東方不敗」の技を再現可能。
 (※ただし威力は機体の完成度に比例する)

必殺技
・爆殺しっとナックル
 炎を纏った拳を相手に叩きつける。
 直撃したガンプラは動力炉が暴走し、内部から破裂するように自壊する。
 「リア充爆発しろ」という団長の怨念が形になったような技。

概要
 ゴッドガンダムの四肢をAGE-1タイタスのものへ変更したミキシングモデル。
 恋愛関係にある男女に嫉妬するくせに、素体に使っているのは「宇宙一恥ずかしい告白」で有名なGガンの主役機であるところに歪んだ拘りを感じる。ドモンとフリットは泣いていい。ただし同じような格闘機同士のミキシングなためか相性は良好で基本性能は高い。
 存在自体がネタみたいなくせに完成度は非常に高く、パイロットの腕もあいまってその戦闘力は三桁台のランカーに迫るものを持つ。
 あらゆる格闘技の技を使いこなし、一部ではあるが流派「東方不敗」の技すら再現する。
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