ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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これにてベアッガイフェス編は終わりなので初投稿です。


天王星の狙撃手

 ──まるでモンスターパニック映画でも見ているようだった。とレイは後に語る。

 

 シャンブロのごとき巨大さを持つ黒魔神闇皇帝の群れが、しっと団を壊滅するのには五分とかからなかった。

 

 さながら群れたワニに踊り食いでもされるかのごとく、次々としっと団のガンプラたちはその銀色の顎で砕かれる。ほとんど士気が折れかけていたとはいえ彼らとて一端のフォースである。ただ一方的にやられたわけではなく、しっかりと反撃もしていたのだが、いかんせん相手が悪すぎた。

 恐らくは装甲値のパラメータが特殊なものにしてあるのだろう。しっと団の攻撃は黒と銀の怪物にかすり傷ひとつ負わせることが叶わなかった。

 

『くそぉ! 俺が、俺たちがなにをしたってんだァァァァァッ!?』

 

 最後に残った団長のしっとタイタスはといえば、四体の黒魔神闇皇帝に四肢をそれぞれ食いつかれ、生きたまま手足をもがれると、とどめとばかりにブラックドラゴンが放った紅の雷が胴体を貫き、怨嗟に満ちた断末魔とともにテクスチャの塵となって消えた。

 

 しっとタイタスがダメージアウトによる撃墜判定を受けて完全に消え去るとバトルフィールドも解除され、まるで彫像になったかのように不気味に沈黙する黒魔神闇皇帝の群れとともに、ブラックドラゴンは粒子となって消えていった。

 

「……っはぁー……どうも宝箱を開けた下手人と、バトルフィールドに入ったダイバーだけを狙った罠だったみたいね。よかったぁ……」

 

 戦闘とはとても言えない一方的な蹂躙劇の一部始終を見ていたレイは、安堵した様子で詰めていた息を吐き出す。

 あのNPDどもはデストラップという性質上、きっと通常のダイバーでは絶対に勝てないよう設定されているのだろう。GPDではありえなかった存在だが、全てがデジタルデータで構築されているGBNでは、あのような理不尽な相手も運営がその気になれば用意できるということだ。

 

「……セナのおかげで助かったよ」

「いやいや、私じゃなくてお礼ならプチッガイ(この子)に──」

 

 とセナが言ったところで、カメラアイが捉えた手元の映像を見た二人は固まる。

 

 見ればプチッガイもまた粒子の欠片となって、天に上るようにして足元から徐々に消えていくではないか。

 

「……あー、そっか、この子の役目はもう終わったから……」

 

 納得しつつも少し寂しそうに呟くレイと、「ありがとね。ばいばい」とモニター越しにプチッガイへ手を振るセナ。

 

 宝箱の警告という役目を終えたプチッガイ(NPD)は、元気にヅダの掌の上で両腕を振って別れを告げると、全身が輝く粒子へ分解されきらきらと空へ立ち上っていく。

 

「──ん?」

 

 少しだけしんみりした様子でそれを眺めていたレイとセナだったが、不意にマップデータのとある座標に一つ、見覚えのないアイコンが表示されていることに気が付く。

 

「これは……」

「……宝への、ヒント?」

 

 プッチガイの顔をしたそのアイコンをタップして詳細を開いてみれば、そこには「シークレットヒント!」と金色の文字で表示されていた。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 座標に示された場所にあったのは、岸壁に埋まるようにして佇む巨大なベアッガイの石像だった。

 

 普通に探索していたのでは間違いなく見逃すような小さな谷の奥、所々が風化したような、まるで磨崖仏(まがいぶつ)を思わせるその像の前にはレイたちの乗るヅダと、連絡を受けて合流したヒロトのコアガンダムの姿もあった。

 

「ほー……これはまた、なんとも()()()というか」

「ハリウッド映画で見たやつ!」

 

 ガンプラから降りて磨崖仏ベアッガイを見上げるレイと、某考古学者が主人公の有名映画を思い出して興奮した様子のセナ。

 

「隠し要素か……凝ったイベントですね」

「なんだか神秘的な場所ね」

 

 こちらはコアガンダムの傍らで感心したようにベアッガイが彫られた壁を観察するヒロト。その隣ではイヴがこの場の静謐な気配に心地よさそうに目を閉じている。

 

「で、来てみたはいいけど、これからどうすれば?」

 

 その場で首をひねりつつヒロトと一緒に観察するレイを置いて、セナのほうはベアッガイ像をペタペタ触りながら、

 

「んー、なにかヒントが彫られてるとかかなー?」

 

 と呟いたその時だった。

 

【「隠されしベアッガイ像」を発見したあなたにボーナスヒント! 今から出題される課題をクリアできたら、宝の隠し場所の座標が明かされます!】

 

「お?」

「わっ」

 

 四人の目の前にそれぞれメッセージウィンドウがポップすると、スロットマシンのような画面に切り替わり、課題とやらが書かれているらしいリールが勝手に回転を始めた。

 

「えっえっえっ、ちょ、ちょっとまって……」

 

 慌てるレイに構うことなくやがてリールの回転が緩やかになり──

 

【ジャーン! 課題の内容は「スナイパー・チャレンジ」に決定しました!】

 

 停止したリールには「ジャンル:狙撃」と書かれていた。

 

「うぇっ!? よりによって狙撃!?」

 

 狼狽するレイを置き去りにしてなおもアナウンスは続く。

 

【制限時間は五分間! 一発だけの真剣勝負! 出現する的をガンプラの射撃武器を使って一撃で撃ち抜いてください! なお、誘導装置を搭載した武装を使用したり、このラインから先に機体や武装が出たりした場合は失格となります!】

 

 言いたいことだけ言ってメッセージウィンドウが閉じると、谷の入口あたりに一本の白線が引かれ、半透明の膜が立ち上がる。そして──

 

『モキュ!』

 

 白線の上には一体の白いプチッガイが出現する。ただ、その機体の背部にあるのはベアッガイが普段付けているリボンストライカーではなく、なにやらえらくゴツいブースターのようなもので。

 

「えっ、まさか……」

 

 小さな両手には丸印が描かれたボードを持っており、おそらくはそれが的なのだろうが──

 

『モッキュ~!』

 

 レイたちが止める間もなくブースターが点火。斜め前方へと勢いよく飛び出したプチッガイは、そのまま遥か上空へと飛び立っていった。

 

「とっ、とにかくガンプラに乗らないと!」

 

 プチッガイが残した飛行機雲を眺めていた一同だったが、レイの言葉と目の前に出現した残り時間を示すタイマー表示を見て我に返ると、慌ててそれぞれの機体へと乗り込む。

 

「ヤバい、ヤバい、ヤバいッ……!」

「え~……的って、アレ?」

 

 コックピットに乗り込んで焦るレイと途方に暮れたようにモニターを眺めるセナ。ヅダのカメラアイを最大望遠にしてもなお指先ほどの大きさにしか見えない的は、とてもではないがこの機体の装備ではどうこうなりそうもない。

 加えてボードを持つプチッガイは上空の風に煽られているようで、ただでさえ小さな的が上下左右にフラフラしている。

 

 ヅダJ型とはレイが独自の解釈を元にしてカスタムしたヅダの陸戦仕様機であるが、その装備といえば右腕に手持ちのザクマシンガンが一丁と左腕のシールド裏にシュツルムファウストが二本。背腰部にHGUCギラ・ズールのパーツを利用したウェポンラッチを増設してはいるが、こちらにあるのはジャイアント・バズが一つにポテトマッシャー型グレネード(柄付手榴弾)が二個と、近接装備のヒートホークが一本だ。

 

 元々レイ自身が狙撃戦が得意でない事と原作のMS IGLOOにリスペクトを込めたアレンジにしたのが仇になった形で、残念ながら精密な超長距離の狙撃など元より想定していない。

 

「こんなことならキット付属の対艦ライフル持ってくれば良かった……私は狙撃出来ないけど、セナだったら──」

「あ、ごめん。わたしも無理。狙撃機体って扱い難しいよね」

「……あ、そうなの?」

「……うん」

 

 互いに顔を見合わせてしょんぼり項垂れるレイとセナ。どうやら蛮族たる彼女たちは二人して狙撃という精密な作業が苦手らしい。

 

『あの……だったら俺がやってみてもいいですか?』

「……ヒロト君。でも、その装備じゃあ……」

「わたしでもわかるよ。その銃、狙撃向きのものじゃないよね?」

 

 せっかくの提案だったが通信ウィンドウに表示されるヒロトの顔に向けて申し訳なさそうな視線を送るレイとセナ。なにせコアガンダムの装備しているビームスプレーガンはザクマシンガンよりも銃身が短く、どう考えても射程が足りそうにないからだ。

 

『二人とも、ヒロトに任せて。──大丈夫。コアガンダム(この子)とヒロトならやれるから』

 

 しかしイブが落ち着いた様子で諭すように語り掛けたことで、レイはなにか考えがあるのかと思い直し、セナは直感で「なんか大丈夫かも」と確信する。

 

「……ま、どのみち私たちじゃどうにもなんないんだから、もうここはイブちゃんの言葉に賭けよっか!」

「そだね! ヒロトに任せた!」

 

 いい笑顔でサムズアップする二人をモニター越しで見たイブは嬉しそうに微笑み、ヒロトを心底信頼している曇りのない瞳で見つめる。

 

『──だって。ヒロト、頑張って!』

『……ああ! 任せろ!』

 

 イブに激励を受けたヒロトはSFSごとコアガンダムを浮上させ──

 

『──コア・チェンジ! ドッキング、ゴー!』

 

 音声入力による特殊コマンドを実行させた。

 

 背部のスラスターを灯してSFSから飛び立ったコアガンダム。

 

 そこにSFSから分離したパーツが次々にドッキングしていく。

 

 短かったコアガンダムの手足は合体したパーツによって延長され、そのシルエットは通常サイズのHGと遜色ない体型に。

 

 肩部と背部に合計三つのビットが装着され、胸部、腰部、頭部にもアーマーが追加。さらに頼りない見た目だったコアスプレーガンにも延長バレルが合体したことで、長い銃身を持つ狙撃銃に変わっている。

 

 

 ──それはヒロトが模索し、イヴと巡り合って見出した、【小さなガンプラの可能性】

 

 ──GBN(この世界)で出会った少年と少女が紡いだ絆の形。

 

 

「わぁっ! すっごい! おっきくなった!」

「なにかしらギミックはあると思ってたけど、想像以上だったわ……」

 

 天王星の名を冠するウラヌスアーマーと合体したその姿は、「ユーラヴェンガンダム」。狙撃能力に特化した、コアガンダムの強化形態だ。

 

 着地したユーラヴェンガンダムは三つのビットを展開。レイがよく観察してみれば、内蔵されたビームガンの銃口の他にセンサーらしきものを搭載していることがわかる。これらは単純な攻撃兵装ではなくマルチセンサーを兼ねたセンサービットのようだ。

 さらに脚部のスラスターが有線式の端末となって、上空を漂う小さな標的までの正確な測距まで行っている。

 

 そうして片膝立ちの姿勢を取ると、バレルが延長されたコアスプレーガン──否、「ビームシュートライフルU7」のバレルがさらに伸長しフォアグリップが展開、がっちりと両手持ちにして銃身を固定する。

 

『──すぅっ……』

 

 ヒロトはひとつ息を吸うと、精密狙撃モードに移行したことでフェザータッチに(軽く)なったトリガーボタンへと、そっと右手の人差し指をかける。

 

──弓ってさ、変に力むと絶対に失敗するんだよね。──

 

 つい残り時間を示すタイマーへと目をやり、少しだけ焦燥にかられそうになったその時、心の水面に最近弓道を始めたばかりの幼馴染の言葉が浮かび上がるように再生される。

 

 

 そうだ。力は要らない。引鉄にかける指はそっと添えるように。力まずに、自然な動作で──己にそう言い聞かせ、同時に各種センサーから齎される情報によって、未来予測まで含めたターゲットへとレクティルが重なるのを待ち──

 

『──ッ! 今──!』

 

 静かに、しかし力強い熱意の籠められた、呟くようなヒロトの声を打ち消すように、銃口から一筋の閃光が放たれる。

 

「──いけぇッ!」

「あたってッ!」

 

 晴天の空を切り裂くようにして迸るビーム。

 

 (あた)る──。という射手の確信を宿したかのように迷いなく突き進む一条の光は、レイとセナの目に鮮烈な軌跡を残して──

 

 

 

 

【Congratulations!】

 

 

 

 

 ──見事に的のど真ん中を撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 夜の帳が降りたベアッガイランドは、昼間とはまた違った煌びやかさに包まれている。

 

「いろいろあった一日だったけど、まさか初参加のイベントで優勝できるとはね」

 

 ライトアップされた観覧車のゴンドラの中から、電飾が眩しいパレードを見下ろす形で眺めていたレイが呟いた。

 

 ヒロトが完璧に狙撃を成功させたことで宝の在りか(ゴール)の座標を直接知ることが出来たレイたち。おかげで他の参加者の誰よりも早くそこへとたどり着き、見事、宝をゲットして優勝することができた。

 

「うん。楽しかったー! 今日はバトル以外でGBNってこんなに楽しいんだって初めて知ったよ」

 

 レイの対面に座り目を輝かせながらパレードを見ていたセナも顔を上げると満面の笑顔で答える。今、このゴンドラには彼女たち二人しかいない。レイとセナ、ヒロトとイブはそれぞれ二人組に別れて隣同士のゴンドラに乗っている。

 

 さすがにこんなシュチュエーションでヒロトとイヴ(ふたり)の邪魔をするほど彼女たちも野暮ではなかった。

 

「……それに、ふふふ」

「なに? 急に笑って」

 

 思い出し笑いをするセナを訝し気に見ていたレイだが、

 

「……だって、レイのあの怖がりっぷり……! あはははは!」

「なっ!? ちょ、あ、あれは忘れてよ!」

 

 昼間の醜態を思い出していたのだと告げられ顔を真っ赤にして抗議する。

 

「あははは! ごめん! なんだか急に可笑しくなっちゃって! 自分でも止められない! あはははは!」

「ちょっとセナぁ!?」

「ごめんってばー!」

 

 なおも大笑いするセナに詰め寄ったせいでゴンドラが少し揺れる。だが出会ってから初めて見るほどに、ここまで慌てふためくレイ(相棒)の姿がまたツボに入ったのか、しばらくセナは笑い転げていた。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 賞品として手に入れた「武者凱」のデータを見ていたヒロトは、隣のゴンドラがやけに揺れていることに気づくと顔を上げた。

 

「……なんだかレイさんたちの乗ったゴンドラが凄い揺れてる。大丈夫なのかな」

「んー、たぶん大丈夫だよ」

 

 ヒロトの隣に座ってゆったりとパレードや夜景を眺めていたイブがのんびりとした声を返す。騒がしい隣と違い、こちらのゴンドラはどこかまったりとした空気が流れていた。

 

 昼間は園内のアトラクションを存分に遊び倒し、最後は極度の緊張と集中を要する一発勝負の的当てをこなしたヒロトは流石に疲れが出てきたのか、パレードや夜景を楽しむ余裕もなく少し意識がうつらうつらとしだす。

 

 意識が途切れる(寝落ちする)と強制的にログアウトさせられるため、どうにか意識を保とうと頑張るのだが、わりと座り心地の良いクッションと適温に保たれたゴンドラの室内は、彼の抵抗を無視して眠りの世界へとゆっくり誘ってくる。

 

「……ヒロト、今日は楽しかった?」

「……ん? ああ……楽しかったよ」

 

 不意に肩に感じた重みと、心地の良い聞き慣れた声に僅かに意識がはっきりとしたヒロトは、どうにか薄目を開けて返事をする。

 

 ヒロトの肩へ頭を預けたイブはそんな彼の返事に嬉しそうに微笑むと、瞳を閉じてどこか願いを告げるように言う。

 

「……じゃあ、フォース、入ってみたらどうかな」

「……レイさんたちのフォースはタッグフォースだから、さ。俺が入ると二人の邪魔になるよ……」

 

 いまだ居座る眠気に夢心地のまま思いついた事を口にするヒロト。イヴはそっと自分の手を彼の手に重ね、ふるふると首を振る。狭いゴンドラに乗るには不向きだと、もうベアッガイヘッドを被っていない彼女の絹のような金髪が、月を連想させる不思議な芳香とともに優しくヒロトの頬を撫でた。

 

「……きっと、レイやセナみたいにヒロトと気の合う人がGBN(ここ)には沢山いると思うの。だから、そういう人から誘われたら、ね?」

「……ああ、そう、だね。フォースって、案外、悪く、ない、かも……」

 

 ついに眠気が限界にきたヒロトが途切れ途切れに言葉を返し、いよいよ寝落ちするかというその時──

 

 ガクン、とゴンドラが停止して、その衝撃でヒロトの目が覚める。

 

「はーい。お疲れ様でしたー。お気をつけて降りてくださいねー」

 

 隣を見ればいつの間にか立ち上がっていたイヴと入口を開けたスタッフがにこやかに挨拶をしていた。

 

「……ん? ふぁ……ああ、もう一周したのか……パレードとか全然見れなかった……」

「ふふっ……ヒロトは今日とっても頑張ってたからしかたないよ」

 

 イブに続いてゴンドラを降りるヒロトがぼやくと、先を歩く彼女が振り返り笑って労いの言葉をかける。

 

「おーい、ヒロトくーん、イヴちゃーん」

「ふたりともこっちに集まってー」

 

 観覧車を背にする位置にいたレイとセナが呼ぶ声が聞こえ、そちらへ行ってみると、見知らぬ男女のペアと共にいる二人の姿が見える。

 

「今日の記念に一枚、ね?」

「すみませーん。お待たせしました。お願いしまーす」

 

 どうやら記念写真を撮るために通りがかりのダイバーに頼んでいたらしい。

 

「おう、気にすんな。バッチリ撮ってやるからな!」

 

 彼女と思われる女性ダイバーと共にカメラを片手に待ってくれていたのは、OOのパトリック・コーラサワーそっくりの青年。どうやらキャラクタースキンを使っているようで、まさに劇中のキャラクターそのものだ。

 

「さ、並んで並んで」

「ヒロト君が真ん中ね」

「えっ、俺ですか?」

 

 レイとセナに促されて三人の女性の中心に立たされたヒロトが困惑するが、「今日のMVPだから!」とセナに言われてしまえば、彼女たちの好意を無下にもできずにあれよあれよと撮影ポジションに収められてしまう。

 

 背後に背の高いレイが立って彼の肩口から顔を出し、右には手を繋いだイブが寄り添い、左にはなぜか腕組みをして胸を張り、堂々と仁王立ちのようなポーズを決めたセナが並ぶ。

 

「おっと、少年。モテモテだな! 羨ましいぞ!」

 

 からかうように笑うコーラサワーだったが、横にいた彼女に「変なこと言わない!」と脇腹を小突かれると、苦笑いをしながらカメラを構えた。

 

「よーし、いくぞー。笑って笑ってー──」

 

 ──カシャリ。

 

 ライトアップされた観覧車を背景に、四人の少年少女の姿が一枚の写真に収められた。




Tips
・記念写真
 ヒロトのGBNアカウントのスクショフォルダにそっと仕舞われている一枚。ライトアップされた観覧車を背景に、彼を中心にして三人の笑顔の少女と共に撮られている。
 今はもう失われた、かけがえのない少女との幸せな記憶の欠片。
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