ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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主人公の新しい機体設定が超難産だったので初投稿です。


炎の魔人

 セナがディビニダドを相手取っている間、周囲の敵MSたちは黙してそれを観戦していたのかといえばそうではない。

 こちらはこちらで()()()()()()()()への対処に追われて、セナのガンダム・カイムを追いかけるどころではなかったのだ。

 

 ディビニダドの周囲には主に木星帝国の主力量産機であるバタラと、そのバージョンアップ機であるエレバドを指揮官機とするMS小隊が多数配置され、数は少ないが蟹に似た姿のMAであるカングリジョが混じる部隊編成をしていた。

 

 バタラとは異なる索敵能力を強化した細長い頭部を持つエレバドの一機が、正面から飛来したビームを避ける。しかし、回避先を予測していたかのように、()()()()()飛来した閃光によって、背後からコックピットブロックを貫通され爆散する。

 

 指揮官がやられて混乱するバタラの小隊。そこへまた別方向からビームの雨が降り注ぎ、通常のMSと比較すれば小柄なその機体を次々に火球へと変じさせる。

 あっという間に壊滅させられた小隊。最後に残ったバタラの一機が、撃墜される直前、頭部の特徴的なゴーグル状の精密照準用バイザーで捉えたのは、こちらへ接近する一機のガンプラの姿。

 

 特徴的なモノアイの頭部に赤色が目を引く肩部。それはレイが愛用しているガンプラの一体である、イフリート・アサルトであるのだが、今までとはシルエットが明らかに異なっていた。

 

 νガンダムのヘビー(H)ウェポン(W)システム(S)を思わせるような、胸部の分厚い追加装甲と、大腿部までを完全に覆う重厚なフロントスカート。まるで武器腕のようにまるごとビームライフルのような形状になった前腕部に、サンダーボルト系のMSを彷彿とさせるサブアーム付きの巨大なバックパックからは、二枚の実体盾が敵の射線から本体を守る。

 また、盾とは別のサブアームを介して接続された120mmマシンガンが脇腹から砲身を覗かせて弾幕を展開すれば、バックパックの上部に配されたガンダム・フラウロスから移植した二基のショートバレルキャノンも火を噴く。

 慌ただしく反撃を始める敵機の壁へ鈍重そうな見た目に反した機動力でもって切り込み、敵部隊の深くまで入り込むと、キャノン側面にある元キットの六連装ミサイルポッドを解放。放たれたマイクロミサイルの群れが広範囲の敵機を次々に巻き込んで漆黒の空に派手な花火を打ち上げる。

 

 鉄血世界でも珍しい重火力MSであるガンダム・フラウロスから移植した火器と、元キットのものに加えて、新造した強化型ビームライフル。以前より遥かに盛られた火力から放たれる弾幕によって、半ば包囲されるような形になりながらも巧みな位置取りと的確な射撃でもって周囲に破壊の嵐を振りまいている。

 

 ──イフリート・アサルト改め、『イフリート・ゲヘナ』

 

 尽きる事のない火によって罪人を焼き続ける地獄の名を冠した単眼の巨人。

 開幕の高出力ビームによる射撃。それを行った機体こそがセナの相棒、レイの操るガンプラだった。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 もともとイフリート・アサルトとは、「三代目メイジン」というGPDの有名プレイヤーが使用していた、「ケンプファーアメイジング」というガンプラにリスペクトを込めてビルドされたガンプラだった。

 

 機体各部に追加されたスラスターによる高機動と、バックパックに装備された推進器を兼ねるウェポンバインダーに格納された豊富な武装。これは脚部にも六連装ミサイルポッドと選択式で追加装備可能で、さらにそこへレイが考えたインファイト向けの装備としてスクリュー・ウェッブや脚部のヒートダガーのギミックを加えた。

 

 元ネタになったケンプファーアメイジングというガンプラは、三代目メイジンが第七回ガンプラバトル世界選手権において使用したカスタムガンプラであり、ウェポンバインダーによる高い機動性と局面に合わせて選択できる武装、専属のワークスチームによって作り上げられた当時最高峰の完成度と、なにより操縦者たるメイジンの技量によって目覚ましい活躍をしたガンプラである。

 

 なかでも特にアルゼンチン代表との決勝トーナメントにおける一戦は、ガンプラバトル史上に残る名勝負に数えられるほどで、その対戦を収録したアーカイブはレイも購入して何度も見返したものだ。

 

 しかしながらこのケンプファーアメイジングというガンプラ。公式からレプリカモデルのキットも出されているのだが、ガンプラバトル界隈においては実のところあまり人気がない。むしろ「メイジンが使ったガンプラ」というファンアイテムとしての需要のほうが高いまである。

 

 それというのもこのガンプラの基本設計(コンセプト)が搭乗者たるメイジンの高い操縦技術とバトルセンスを前提として作られたもので、凡百のファイターが扱ったとしても──ましてや原型機より性能が数段落ちるレプリカモデルでは「決め手」に欠ける機体構築なために、どうしても()()()()()()場面が出てくるのだ。

 

 汎用性はあるが一撃必殺の華々しさも逆転の切り札もない。「勝負の勝ち筋とは奇策や奇跡に頼らず、淡々と積み上げてゆくことでのみ示される」そんな堅実な姿勢を体現したかのようなガンプラであり、良く言えば玄人好みとも言える存在だった。

 そこでレイが採用したのがEXAMであり、イフリート改を素体に選んだ理由で、これを使ってヴァルガでもそれなりの戦果を出していた彼女は、ケンプファーアメイジング由来の機体特性をよく扱っていたと言えるだろう。

 

 しかし使っていれば自ずと改善点が見えてくるものであり、それはやはり汎用性ゆえの決定力不足に収束する。

 

 かのメイジンのようには成れないことへの諦念と、やはりメイジンは凄かったという尊敬がないまぜになった複雑な気持ちを抱きながらも、ヴァルガに潜る毎日を送る傍らで改造プランを練り上げる。

 もともとこのイフリート・ゲヘナの改修案自体は、着手した時期が先なのもありガンダム・カイムよりも先に完成していたのだ。ただ、レイが一刻も早く友人に相棒となる機体を届けたくて、実際の工作のほうをカイム優先にした結果後回しとなった。

 

 それが今こうして完成し、木星帝国のMS部隊を相手に大立ち回りを演じている。

 

 ──ミッション「終末を()ぶ竜」

 

 ガンダム・カイムとイフリート・ゲヘナの最終テストとして選ばれ、今レイたちが挑戦しているのは、とあるハイランカーが制作した高難易度クリエイトミッションだった。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 巨大な腕がセナの乗るガンダム・カイムを叩き潰さんと振り下ろされる。

 

 戦艦クラスの巨体に相応しい大きさを誇る巨腕は、もはや腕というよりも質量の爆弾だ。

 宇宙にも関わらず空気を押しつぶすような轟音が聞こえてきそうな攻撃。それは人間が羽虫を潰そうとする動作にも似ているが、しかしその掌は羽虫(カイム)を捉えることが叶わない。

 

「そりゃそりゃそりゃー!」

 

 コックピットで気の抜けるような掛け声をあげるセナがコントロールスティックを捻れば、思考補助を受けた機体(ガンプラ)はエメラルドグリーンの軌跡を引きながら、倒壊するビルのような腕を中心にして螺旋を描いて飛翔する。

 するとどうだ。一体の羽虫が通り過ぎた軌道をなぞるようにして巨大な腕には亀裂が入り、さながら雑に斬られた大根のごとくディビニダドの片腕がなます斬りにされスパークを散らしながら爆散した。

 

「片腕解体かんりょー!」

 

 実に上機嫌な声がセナの口から発せられる。

 事実、彼女は非常に機嫌が良い。

 

「──レイってすっごいなぁ」

 

 思わずといった風に感嘆の溜息と共に自然と友人への賞賛が漏れる。

 GBNで遊ぶようになってから、ここまで自分の思い通りに動くガンプラにセナは乗ったことがなかった。

 

 ガンダム・カイム(この子)に乗るようになってからは驚くことの連続だ。

 パチ組みのガンプラに乗っていた時、今まで感じていた()()()()()が──自身の思考とガンプラの動作のタイムラグが全くない。

 乱暴に機体を振り回しても関節が嫌な軋みを立てない。

 可動域に制限されて出来なかった柔軟で早い動きが出来る。

 自分の思い描いたマニューバを機体が差異なくトレースする。

 

 ──ガンプラって、こんなに自由に動けるんだ。

 

 パチ組みのガンダムでは、借り受けたお試しの機体では決して体験することができなかった。あの病院でレイと出会わなければ、きっとそれっきりGBNにはログインせず、この感動を味わうこともなかったのだろう。

 あのRX-78-2とそれを貸してくれた看護師には感謝しているし、お礼とお詫びを述べて紛失したパーツも補填したが、それはそれこれはこれ。

 セナにとってGBNでのガンプラとは、「どこか動きにひっかかりを覚える、ちょっと使いづらいロボット」という認識だったものが一新される、まさに人()一体とでも言うべき操作感をこのカイムは実現している。

 

 今彼女が思い出すのは寝不足ぎみに目の下にうっすらとした隈を作り、指先にいくつも絆創膏を貼り付けた親友の姿。

 

「絶対クリアするぞー!」

 

 高難易度だからなんだ。ハイランカーが作ったガンプラがなんだ。

 わたしにはこの剣がある。友達が自分のためだけに時間を削って研ぎあげた唯一無二の刃がある。

 

 ──戦友(とも)への感謝は戦果で示す。

 

 実に脳筋な思考だが蛮族度で言えばセナと同レベルなレイにとって、それこそが求めるものであることは間違いなく、ちらりと遠方を見やれば、敵機の群れる只中で弾幕砲火を躱しながら暴れまわる炎の魔人の様子がうかがえる。

 

「レイも張り切ってるみたいだし、さっさと墜ちて貰うよ! クラックス……えっと、なんとかさん!」

 

 事前に相方(レイ)から聞かされていたミッションの設定をまるっと忘れたことを脇に置いて、セナは対峙する巨大な片翼の天使へ向かって機体を飛ばした。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 クリエイトミッションとは、ダイバー個人が内容を作製したオリジナルのミッションを他のダイバーに向けて公開することができるコンテンツだ。

 運営からの審査を通過しなければ公開許可は下りない──つまり内容に不釣り合いな高額報酬を設定したり、クリア不可能なものは作れない──ものの、公開されたミッションは参加条件を満たしていれば基本どのダイバーでも受注することが可能で、その内容は実に様々である。

 

 主に運営の関係者が作る、ビギナー向けにとチュートリアルをさらに発展させたもの。

 登場するガンプラに拘りがあったり、戦闘とは関係ないところで難易度が高い、あらゆる意味でダイバーの趣味全開で作られたもの。

 未だにクリアした者が皆無であることで有名な「ロータスチャレンジ」をはじめとして、クリア出来るものならやってみろ、と言わんばかりに難解なもの。

 

 その中においてこの「終末を()ぶ竜」は、クリア報告こそあれかなり高難度のミッションに分類されていた。

 ワールドランキングの十位以下二十位以内に常駐する「クオン」というハイランカーが制作した本ミッションは、五つのフェーズからなる連戦ミッションになる。

 参加条件はBランクながらその難易度は折り紙付きで、第一フェーズこそCランクダイバーでもなんとかクリアこそできるものの、その後に控えるフェーズはいずれ劣らぬ強敵が犇めく地獄のような難易度である。

 しかしそれを差し置いてもこのミッションの最大の特徴は、なんといっても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であることだろう。

 

 そう、セナが相手取っている超巨大MAディビニダドをはじめ、レイの周囲に展開しているこの数えるのも億劫になるほどの膨大な木星帝国の軍隊は、全て一人のダイバーによって作り上げられたというのだ。

 

「私も大概だと思ってたけど、上には上がいるもんだわ……」

 

 機体に新たに追加されたガンカメラにより、今までよりも多くの敵機を捕捉できるようになったコックピットのモニターを睨みながらレイが零す。

 

 ──こんな大部隊を一人で作るとか、こういう人が「マグアナック三十六機セット」とか買うんだろうなぁ。

 

 「プレミアム財団B狂気の産物」とビルダーたちを震撼させた有名な商品を思い出しながらも、マルチロックオン機能によって捕捉した敵機へ次々と容赦なく射撃を叩きこむ。

 

 常に立ち位置を変え、向きを変え、まさに八面六臂の活躍をするイフリート・ゲヘナであるが、それでも一機である以上、どうしても死角というものは存在する。

 

 今もまた、宇宙空間という地の利を活かして足元の死角から三機編成のバタラが、脚部を大腿部に収納した高機動モードと、その軽量な機体による素早い機動でもってイフリート・ゲヘナへと近づく。

 編隊を組んだ前衛の一機は通常のビームライフルだが、後ろの二機が装備しているのはビームガトリング砲でありその火力は決して侮れない。

 

 静かに、しかし素早く近づいた三機は、射程範囲へと捉えたことで停止して照準用バイザーを降ろす。

 

 そうして撃ち方を始めようとしたところで──()()()()()()()()()ビームによってことごとく武装やコックピットを撃ち抜かれて爆散した。

 バタラ編隊のいた場所の周囲をよく見れば、そこにはケーブルで繋がった小さな砲台のようなものが漂っている。

 これはインコム、と呼ばれる宇宙世紀に登場した遠隔操作兵器の一種で、それはイフリート・ゲヘナの肩と脛の側面に追加された装甲からケーブルを介して接続されている。

 宇宙空間限定であり、またファンネルとは違って二次元的な動きしかできないものの、ニュータイプでなくとも扱えるこの兵装をレイは機体各所に計六基仕込んでいたのだ。

 

「GPDの時はオールレンジ攻撃に慣れるまで結構かかったもんだけど、GBNは便利よねー」

 

 レーダーマップを見て死角に入り込んできた敵機を撃墜したことを確認したレイが感心するように呟くと、目線を()()へと向けて微笑む。

 コンソール画面の先、そこには一体の小さなオレンジ色をしたハロが半ば埋まるようにして頭の半分を突き出し鎮座している。これはガンダム00において一部のガンダム、特にディランディ兄弟の搭乗したガンダムにサブパイロットのAIとして搭載されていたモデルであり、これもまたプラグインのひとつである。

 

 対人だとさすがに厳しいものの、ある程度は機体制御を任せることで回避運動や静止目標へ的確に射撃をするなどといったことが可能で、今回の改造にあたり導入した有線式遠隔攻撃武器(インコム)の制御を任せたり、射撃に集中したい時などの機体制御に役割分担させたりと、なかなかに使い勝手が良い。

 

 圧倒的な手数の多さでごり押す。

 

 研ぎ澄まされた一振りの刀のようなガンダム・カイムと対照的なイフリート・ゲヘナのその出で立ちは、まさに破壊の嵐を振りまく荒々しい炎の魔人そのものであった。




Tips
ダイバー:クオン
出典:GBN総合掲示板(青いカンテラ様)
 ワールドランキング十位以下二十位以上に常駐するハイランカー。
 有名なG-tuberでもあり、愛機である「ジャバウォック」とともにワールドランキング上位に君臨するその実力は確かで、個性的なダイバールックや愛される性格と言動にファンも多い。
 また、本人は自覚が薄いがなかなかの「ビルド狂い」でもあり、制作動画はレイも参考にしていてチャンネル登録もしている。


クリエイトミッション:終末を喚ぶ竜
出典:GBN総合掲示板(青いカンテラ様)
 製作者はクオン。
 制限時間は60分(フェーズ間のインターバル含めず)。ミッション受注条件はBランク以上の高難易度クリエイトミッション。
 クリア条件は制限時間までに最終ステージに控える製作者の愛機「ジャバウォック」を撃破すること。
 敗北条件は参加チームの全滅または制限時間の超過。
 全部で五つのフェーズに別れた連戦形式のミッションであり、第一、第二フェーズは地上。第三フェーズ以降は宇宙を舞台に様々な強敵たちと戦う非常にやりごたえのある内容。
 クリエイトミッションにおける敵NPD機は基本的に公式からデータだけをレンタルするのが普通だが、このミッションに登場する敵機は全てクオンの作ったガンプラを登録したものというのが最大の特徴。
 ディビニダドをフルスクラッチで作り上げ、さらにフェザーファンネルまで手作りしたり、プルーマを五十機以上制作するのはもはや狂気と言えるが、本人に自覚はない。
 GBNにおいてワールドランキング二桁上位という上澄みの人間がどういう者たちかをよく表したミッションとも言える。

 ちなみにチャンプはこのミッションをany%RTAして遊んでいたりする。
 重ねて言うが、GBNにおける上位陣がどういう人間かをよく表したミッションである。
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