ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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宴と小鬼

 セナの参加したレイドバトルは、結論から言えば彼女たちの勝利で終わった。

 

 だが、モンジューロの言葉の影響と、片手を失った状態のカイムでは動きに精彩を欠き、バトルをあまり楽しめずにセナとしては不完全燃焼となっていた。

 

「うむむむ……」

「バトルスタイルは激しいのに、意外と繊細なんだねぇ」

 

 ──百鬼のフォースネスト。

 

 断崖に建てられた和風の、武家屋敷のような趣のある建物の中をセナと並んで歩くローズは少し笑いながら言った。

 レイドバトルの後、ローズは月に一度開かれるフォースの集会にセナを誘い、それが偶然にも同じ日であったためレイドバトルが終了してから流れで彼女をここへ案内していた。

 

 板張りの長い廊下を歩きながらセナと会話するローズだが、その内心は少しの驚きと多大な興味に満ちている。

 

 あの強さの近接特化型であるモンジューロと互角に渡り合い、さらには二対一とはいえ自分たちのフォースリーダーを撃破したダイバー。さぞや極まったバトルジャンキーなのかと思いきや、こうして話してみればどこか幼く繊細な一面が見える。

 デタラメに強いくせに、敵の言葉を素直に聞いては気にする。セナが見せるギャップにローズの関心は惹かれていた。

 

 なにより、強いダイバーとの繋がりは、フォースミッションの協力の打診や個人的な手合わせなどメリットしかなく、よっぽどそりが合わない場合を除けば、持てるなら持っておけば損はしない。ローズが今回の百鬼の集まりにセナを誘ったのは、そういう打算もあってのことだった。

 

「……ふぅ。やめよ。わたし一人でいくら悩んでもしかたがない」

 

 GBNというゲームについてまだまだ理解が浅いセナは、そう言って思索を打ちきる。数多のVRゲームを嗜んできたと自負しているが、知れば知るほどガンプラバトルというゲームは己の培ってきた経験があまり役に立たない。だからこそ面白くもあるのだが。

 

「ガンプラに関してはレイに相談するとして、プラグイン、かぁ……」

 

 思えばカイムのプラグインは機体が完成してからほぼ手つかずの状態だった。

 

 GBNにおけるプラグインとは、他のゲームで言うスキルに該当するもので、搭乗するガンプラの機体コンセプトを決める重要なファクターである。

 レベルという概念がなく、バトルでの強さはガンプラの完成度とダイバーの操作技術に依存するGBNにおいて、プラグインはプレイヤースキルに関係ない、純粋な知識のみが必要とされる分野だ。

 

「わたしとしたことが、ゲームで大切な要素をすっかり見落としてた……」

 

 装備するプラグインの選定、他ゲーで言えばスキルビルドとは、ゲームにおいてとても大切な要素である。それはカードゲームのデッキ構築にも似ており、適当なものを選んでしまえばどれだけ腕があろうとも対戦で勝利することなど出来ない。

 モンジューロに指摘されるまでその事に気づけなかったセナは、いちゲーマーとして己の不甲斐なさに自己嫌悪してへこんでいた。

 

 これに関してはビルダーであるレイにも責任がある。

 

 というのも、GPDとGBNでは仕様が異なる部分が大小多々あるのだが……レイは深く調べることもせずGPD時代の知識、デカールパーツを選ぶノリでプラグインを選定していたからだ。

 なまじ同じ会社からリリースされた、同じガンプラバトルを扱うゲームだけに、レイもついつい昔の知識をアテにしすぎた。

 

 しかし、思わぬところで気づきを得られたことは運がいい。廃ゲーマーである自分と、熟練のビルダーであるレイの知識と経験を活かせれば、カイムはもっと強くなる可能性を秘めていると知れたのだから。

 

「? なにボーっとしてんだい。ほら、着いたよ」

 

 「帰ったらレイとじっくり相談しよう」そうセナが結論を出すと同時に、ローズに案内されるまま歩いていたセナは声をかけられたことで目的地に着いたことを知る。

 

「バトル好きな連中が集まるフォースだから、ちょっとばかしノリが荒っぽいけど、気のいいヤツらだから……ま、アンタなら大丈夫でしょ」

「まあね」

 

 現実(リアル)のセナは五十メートルも走れない身体だが、GBNでの彼女は一息でMSの頭まで飛び上がり、軍刀の一撃で巨岩を真っ二つにする。もし万が一ここにいる全員からPKを仕掛けられても、返り討ち……最悪は差し違える自信と気概がある。

 

「もうフォースに入ってるアンタを無理に勧誘することもないから、気楽に楽しんでいきな」

 

 そう言ってローズが障子張りの引き戸を開けた瞬間、──そいつは現れた。

 

 

「おい! テメェか! 二人がかりでバトルしといて、にいちゃんに……獄炎のオーガに勝ったとか言ってる卑怯者は!」

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 額に生えた一本の角。でっぷりと腹が突き出た恰幅の良い体型はどこかコミカルさを感じさせるが、セナに敵意を剥き出しにしている顔は険しく歪められている。

 

「こら! ドージ! いきなりなんだい!」

「黙れよ! 俺はコイツがどうしても許せねぇんだ! 二対一でバトル仕掛けて、セコいやり方でにいちゃんに勝ったとか抜かしてるのが! だいたい、どうしてこんなヤツを呼んで──」

 

 窘めるローズの言葉も聞かず、感情にまかせて捲し立てるのは、鬼のような姿をした少年のダイバー。オーガの弟であるドージは、セナを指さしてさらに何かを言おうとしたが……

 

 

 

「──ふぅん?」

 

 たった一言。小さく、だが、恐ろしいほどの冷たさでセナが発した言葉に動きを止める。

 

 アバターにはありもしないはずの全身の毛が逆立つような……()()()()()感覚に襲われて、ローズは思わず隣を見下ろした。

 

 彼女は知らない事だが、それは()()と呼ばれるものであり──文字通りに()()()()()()()()()セナを中心に場を支配して、ローズが障子戸を開けるまで聞こえていたわいわいとした喧噪は完全に消えていた。

 

 しん──と静まり返った囲炉裏のある大部屋に、セナの落ち着いた、だが氷のような冷たい声の残響が響く。セナを除いたその場の誰も口を開けず、ただ薪の爆ぜる、ぱち、ぱち、という音だけが聞こえるのみ。

 

 そうして少しの間沈黙に包まれた中で、セナは感情が抜け落ちたような無表情と、平坦な声音で対峙したドージに話しかける。

 

「キミが誰か知らないけどさ、わたしたちは別に、オーガを倒したって言いまわったりしてないよ」

「だ、だって……SNSで……」

「わたしはSNS(そういうの)やってないよ。それはあの時ヴァルガにいた他のダイバーが勝手に拡散してるだけ」

 

 セナの殺気に当てられ、顔を青くしながら絞り出すように放ったドージの反論もセナはばっさりと切り捨てる。

 

 それというのも、セナはそもそもSNSのアカウントの類はひとつも持っておらず、レイはガンスタ──ガンプラの写真投降SNS──のアカウントを持ってこそいるが、それは完全な鍵アカウントで本人以外は閲覧できない設定にしてある。

 完成したはいいものの棚に入りきらない作品を見返すための目的で使っているもので、強いて言えば使用した塗料の情報やら、制作時に印象に残ったことを備忘録として記している程度だからだ。

 

「け、けど、二対一なんて卑怯──」

「囲んで叩かれるのが嫌なら、ヴァルガなんて潜るもんじゃないよ」

 

 そもそもレイもセナもオーガ個人を狙い撃ちしていたわけではない。あの時は、ヴァルガに時々出没するハイランカーの誰かが引っかかればいい程度にしか考えていなかった。

 それに、囲んで叩かれるリスクならばセナたちも背負っている。事実、オーガを撃墜した後のセナは、押し寄せるヴァルガ民たちの数の暴力の前に膝を屈していた。

 

「ぐっ……」

「だいたい、当事者でもないくせして、他人のバトルにあーだこーだ言わないでほしいな」

 

 あのオーガとの戦いは、セナの中でも特に楽しかったバトルとして記憶している。それを部外者がしゃしゃり出てきてケチを付けることに、彼女は珍しくとても苛立っていた。

 

「他人じゃねぇ! お、俺はにいちゃんの弟──!」

「──もう止せ、ドージ」

 

 それでも何かを言い募ろうとしたドージを、低く、だがよく通る声が制止する。部屋の奥、囲炉裏の上座に座る男が発したものだった。

 

「にいちゃん……」

「あのバトルは食い応えのある良い(美味い)ものだった。それ以上でもそれ以下でもねえ」

「……」

 

 額に三本の角を持つ筋肉質な大男。和風の装いもあってか、まさに「鬼」のような見た目をしたダイバー。彼の発した聞き覚えのある声と──、なによりその身に纏う闘気を敏感に察知したセナは、今までの無表情が嘘のように楽し気に口角を持ち上げた。

 

「……オーガだね?」

「……あの時のガンダム・フレーム乗りか」

 

 部屋中に拡散していたセナの殺気がオーガに向けて収束される。彼もまたそれを感じ取ったのか、鋭い犬歯をむき出してにやりと笑った。

 

「キミの弟の言う事に同意するわけじゃないけど……今度は、タイマンでやろうよ」

「……ほぅ?」

 

 セナの挑戦とも取れる言葉に、ぴくり、とオーガの肩が動くが──、

 

「──と、言いたいけど、今すぐじゃない」

「あん?」

 

 突然霧散した殺気に、彼は意外そうに片方の眉を顰める。

 

「実は今ちょっと色々模索しててね。……そうだなー、キミ風に言わせると──()()してくるから、首を洗って待っててねっ」

 

 ぱちり、と可憐な容姿に似合うウィンクを添えて、あまりにも物騒な宣言をするセナに、

 

「……ククッ、そうかよ。だが、あまりチンタラしてたら、──今度は俺のほうから喰らいに行くぞ?」

 

 喉の奥を振るわせるような笑いを漏らして、オーガもまた楽しそうに返す。

 

 互いに己の力に自信と自負を持つ者同士、波長が合ったのか二人は無言で視線をぶつけあい──

 

 

 

「ハイハイ! そこまで!」

 

 わざとらしく手を叩き大きな声を出したローズによって場の空気が壊され、漂っていた緊張感が霧散する。

 

「オーガもセナもそのへんにしときな! ったく、折角面白いのを連れてきたってのに、ピリピリして肩がこっちゃうよ。ほら、セナはそこ座んな」

 

 セナの肩に手を置いて、囲炉裏の近くに用意された席に座らせると、

 

「さあ! 百鬼の宴をはじめるよ!」

 

 そう高らかに宣言した。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 ローズの音頭で始まった百鬼の集会は活気に満ちていた。

 

「この間挑戦したミッションが──」

「あれは敵側の増援のタイミングを覚えて──」

 

 ある所では難関ミッションの攻略に精を出す者たちが活発に意見交換を行い、

 

「前に話してた装備が完成したんだけど──」

「それはパラメータの配分が──」

 

 またある所では自機のカスタムについてビルダー同士で語り合う。

 

 大部屋に集まった様々なダイバーたちが、それぞれに楽しそうに、あるいは熱く語り合う。

 

「おぉ……まさにフォースって感じ」

 

 ざっと見て二十人近くものダイバーたちが集い、めいめいに交流をしている。それはセナがあまり経験してこなかったMMOならではの景色であり、レイと二人きりの時には知らなかったものだった。

 

「おう、邪魔するぜ」

「──どうも」

 

 用意された席の料理を楽しみつつ周りの喧噪に耳を傾けていたセナの近くに、どかりと腰を降ろしたのは顔に目立つ傷跡のある坊主頭をした髭の強面の男と、着物風の衣装を着て左目を長い前髪で隠した小柄な少年だった。

 

「オーガとの対戦ログ見たぜ。お前さん、見た目に反して中々激しいタチじゃねぇか」

「──強いね、アンタ。今度俺とも対戦しよう(やろう)よ。面白いバトルができそう」

「ん。それはどうも」

「俺はナッツ。こっちは──、」

「オボロ。よろしく」

 

 話しかけてきた二人から受けた自己紹介によれば、彼らは百鬼の一軍を務める実力者で、ナッツがSランク、オボロもAランクだと言う。

 

「お、なんだなんだ。もう食いモンがねぇじゃねえか。ホレ、これも食べな」

「わ、ありがと!」

 

 用意された膳をすっかり空にしていたセナの、見た目にそぐわない食欲を見たナッツが、片手に持ってきていた大皿を差し出す。それは焼き鳥のような見た目をした串の盛り合わせで、文字通り山となっていた。

 

「あむっ、もぐっ、うーん……これも美味しい!」

「ははっ、いい食いっぷりだ。そういやオボロ。お前もローズと一緒にあのレイドバトルに参加してたんだよな」

「うん。Aランクの限定戦だったから、手強いのもそこそこいて楽しめた」

 

 さっそくとばかり持参した串焼きを遠慮なく手に取り、パクパクと美味そうに食べるセナの姿をナッツは楽しそうに眺めて、会話のとっかかりとして先のレイドバトルの話題を出したその時だ。

 

「オ~ボ~ロ~! アンタ、レイドバトルの時どこにいたのよ! アテにしてた前衛がいなくてこっちは大変だったんだから!」

 

 肩を怒らせながらやってきたローズがオボロの首に腕を回し、ヘッドロックのような態勢で締め上げながら文句をぶつける。

 

「……最初に転移したポイントが離れてたんだから仕方ないだろ。合流しようにも戦域が遠すぎた。……あと、苦しい、やめろ……倫理コードに引っかかるぞ」

「うわはは! 運に見放されたなローズ! いや、逆にツイてたのか?」

 

 こんな面白いのを引っ掛けてきたんだからな、と、セナに視線をやってナッツが言う。

 

「はぁ……楽しくなかったと言えばウソだけどさぁ……さすがに()()モンジューロが相手じゃ胸やけしちまうよ。噂どおり、いやそれ以上にヤバかったわ」

「……それ、本当?」

「あの爺が……珍しいな……」

 

 ヘッドロックをかけられたままだったオボロが驚いたようにローズの顔を見上げ、ナッツもまた顎鬚をさすりながら思案顔になる。

 

「……あの居合い使いのダイバーってそんな有名なの?」

「知らねえのか? 対人戦好きな連中や古参の間じゃそこそこ有名だが」

「……“剣鬼”のモンジューロ。GPD時代からのファイターで、ガンプラバトル界隈だと最古参。GPDで有名だったメイジンたちほどじゃないけど、近接戦闘特化の尖ったスタイルで世界大会の個人戦の予選にも何度か出場してる」

 

 ナッツとオボロの雰囲気が変わったことを感じ取ったセナが疑問をぶつけると、返ってきたのは思いもしない情報だった。

 

「GBNに移ってきたのはサービス開始から結構経ってからで、こっちじゃフォースに所属はせずにソロでやってる。ほとんどミッションをやらずに対人戦ばっかやってるせいか未だにAランクだが……ありゃ典型的なランク詐欺だぜ」

「へぇー。すごいベテランだったわけだ……まあ、次会った時は天誅してやるけど」

 

 ナッツの話を聞いて、「レイだったら知ってたのかな」と考えるも、セナはGPD時代のガンプラバトルを知らないので、「とりあえず次に戦う時までにさらに己を磨き上げてぶちのめす」くらいしか思うところはないが。

 

「……つか、セナ、お前、レイドバトルで奴と戦ったのか?」

「戦ったもなにも、その剣鬼相手にアタシの前衛やってくれたから知り合えて、ここに誘ったのよ」

「逃げられたけどね」

「味方の被害を抑えて撤退させた、って事でしょ」

 

 セナとしてはいいように手玉に取られた、という感想だったが、ローズの視点では違ったらしい。物は言いようだが、ローズが言った事もまた事実ではある。

 

「マジか……噂じゃGPD時代より動きの()()が良くなってるとか聞いたぞ……根城にしてるディメンションから滅多に出てこなくて、ランキング戦でも見かけねぇが、時たまふらっとPvP系のイベントに出没するとは聞いていたが」

「ほー。なんかレアな人なんだね」

「反応が淡泊だね」

「そう? 次にやる時が楽しみではあるけど」

 

 オボロに言われたセナが不思議そうに首を傾げる。

 

 ガンプラバトルの歴史を知らないセナからすれば、モンジューロの過去の経歴だのは関係ないし興味もない。大切なのは今プレイしているゲームで、そこには強いプレイヤーがいる。それだけで彼女にとっては戦う理由になるし、倒すモチベーションに繋がるのだから。

 

「つくづくウチのフォース向きなタイプだな。……それだけに惜しい」

「ナッツ、そんな事言ってセナが入ったら、アンタがメンバーから外されるんじゃないの?」

「かもね」

「おい、お前ら……」

 

 オボロとローズにからかわれたナッツが苦笑いしながら何かを言おうとして、

 

「こいつを百鬼に入れるなんてオレは反対だからな!」

 

 乱入してきたドージに遮られた。

 

「ドージ、アンタねぇ……悪いねセナ。この子、最近調子悪くてさ。イライラしてるんだよ」

「ッ! 余計な事言うなよ! 俺だってな! 新しいガンプラ作ったんだ! それに……いや……とにかく! いつまでも弱いままじゃねぇ!」

 

 ローズから見たドージは、少し生意気な所はあれど、ここまで特定の誰かに敵意を抱くような性質ではなかった。心当たりがあるとすれば、最近あまりフォースで活躍できていない事なのだが……それにしても妙にセナを敵視してくるのは、彼の憧れである兄を倒した相手だからというのが多分に含まれているのだろうと考える。

 

「ほお、新しい機体が完成したのか。バトランダムミッションも近いからな。しっかり慣らしとけよ」

 

 会話を遮られたことや、何かを言い淀んだ様子に言及することなく、ナッツは気楽な調子でドージに話しかけるが、それを無視してドージはセナを睨む。

 

「お前なんかな! サシでにいちゃんとやったらボコボコにされんだからな!」

「……ったく、このコは」

 

 ドージが兄のオーガに強い憧れを抱いていることは知っていたが、ここまでとは思わなかったローズは呆れたように溜息をついて髪をかきあげる。

 

「機体を変更したなら慣熟訓練は怠るな──いっそ、兄貴みたいにヴァルガで修行でもする?」

「い、今は、ちょっと……」

「……ビビってる?」

「ビビってねぇっ! お、俺だってなぁ……!」

 

 オボロにからかわれたドージがホロウィンドウを立ち上げて、転移先をヴァルガに設定するが、流石にあのディメンションの悪名を知るだけに「OK」のボタンを前に指が止まり──

 

「お、いいねえ」

 

 このやりとりで存在を忘れていた戦闘狂(セナ)が立ち上がった。

 

「キミも強くなりたいんだよね? わたしと同じだ。それに、今ちょうどバトりたいところだったから……さっそく行こうか!」

「は?」

 

 ぽかんとするドージの手を、むんず、と掴み──

 

「じゃあ、そういうわけで、わたしは行くね。今日は誘ってくれてありがと!」

「ちょ、おま、離せよ! え、力つよ──」

 

 ローズを含む三人に向けてニコリと微笑んで挨拶をすると、ドージの代わりにホロウィンドウの「OK」を押してしまう。

 

 他の三人が止める間もなく、二人の体は粒子となって転移し──、

 

「バトりたいって……さっきまでレイドやってたのに?」

 

 ドージの時とは別の意味で呆れるローズ。

 

「……おい、オボロ」

 

 ジト目で隣を見るナッツ。

 

「──お、俺は悪くない」

 

 明後日の方向を見ながら、どこかで聞いたような事を言うオボロ。

 

 三者三様ながら、なぜセナが「ヴァルガの狂犬」とまで呼ばれているのか、その理由の一端を垣間見て……そして理解した。

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