ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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VSビルドダイバーズ それぞれの戦い

 「傭兵」と呼ばれるプレイスタイルがGBNには存在している。

 

 文字通りに報酬と引き換えに一時的な援軍として手を貸す。いわゆる助っ人、ヘルプのようなダイバーのことだ。個人で趣味に近い形でやる(ごっこ遊びでやる)者もいれば、採用試験を課してくる傭兵専門のフォースに所属して、さながら人材派遣会社か民間軍事組織(PMC)のような形態でプレイする者もいる。

 

 VRの世界でも現実(仕事)の真似事をして楽しいのかは人それぞれと言わせてもらうことになるが、この傭兵プレイ、報酬にBCを使うケースが最も多いため、それなりの腕前があるなら手っ取り早くBC(資金)を稼ぐのにはそこそこ有効である。もっとも今回のレイたちの報酬はレアなプラグインであるが、報酬の形態はケースバイケースなのでこういう取引もよくあることではある。

 

「さってとぉ、傭兵やるからには最低限の役割はこなさないとね」

 

 そして傭兵として雇われたレイは己の仕事を全うすべく、二機のガンプラと対峙している。

 

「で、相手はジムⅢのカスタム機と、あっちは……グレイズ? いや……鉄血ぽいアレンジをされてるけど、もしかしてジオン系……?」

 

 ユッキーのジムⅢビームマスターと、コーイチのガルバルディリベイクを視認したレイはそのように判断する。

 原型機の特徴を色濃く残すビームマスターはともかく、その相方はアレンジが利いているために推測が難しいが、それでも宇宙世紀好きなレイの記憶にいくつか引っかかる部位(パーツ)があった。

 

「ナノラミがあるかどうかで難易度変わるけど……まずはジムⅢを潰す!」

 

 鉄血アレンジということでナノラミネートアーマーを搭載していることを懸念しつつ、先ほどのV・Dの狙撃で主兵装の大型火器を喪失したビームマスターへと標的を絞ったレイが動く。

 相手に照準を定められないよう地上をランダムな軌道でジグザグにホバー移動しながら、近接攻撃の範囲に入らないように気を配りつつ両椀のメガ粒子砲と四基のインコムを時間差で連射。レイのイフリート・ゲヘナが備える豊富なビーム兵器は重力下でオールレンジ攻撃こそ出来ないものの、固定砲台として使用するには十分な性能を持っている。

 

『ユッキー君!』

『くう……っ!』

 

 イフリート・ゲヘナから放たれる五月雨のようなビームの嵐からユッキーを庇うコーイチは、機体が手にした巨大な質量武器(ハンマープライヤー)と重厚な装甲を盾にして射撃を凌ぐが、一機のMSとは思えない攻撃密度に防ぐことが精一杯でその場に足止めされてしまう。

 

 あからさまにビームマスターを狙い撃ちすることで、牽制手段の少ないコーイチの動きを制限。そうすることで二人を釘付けにしてイニシアチブを握り、常に自分に有利な位置取りをしながら攻撃を続けて片割れのユッキーを磨り潰すつもりだ。

 事前に第七士官学校とのフォース戦を見ていたレイは、相手フォースのガンプラの特性を正確に把握していた。

 

『チェンジリングライフルがなくたってぇ……!』

「はッ……無駄ァ!」

 

 苦し紛れにビームマスターが腰背部にマウントしていたビームライフルを取り出して、ガルバルディリベイクの影から応射する。しかし、放たれたユッキーの射撃にレイは犬歯をむき出して吠えた。

 最初に持っていた大型ビーム兵器のガトリングほど連射性能もなく、単発の威力も通常の範疇を出ないビーム攻撃などイフリート・ゲヘナにとっては脅威とならない。

 

 ビームライフルの射線にわざと機体を合わせたレイは、ノールックでコンソールを操作して特殊兵装をスロットから選択。

 イフリート・ゲヘナのバックパックに接続されたサブアームが稼動して、前面に展開された二枚の実体盾の一部が展開するとユッキーの放ったビームを掻き消して吸収する。

 さらに続けて吸収したエネルギーでパワーゲートを展開し、それを通過することでイフリート・ゲヘナの速度が目に見えて上昇すると、それまで相手との距離を維持していたレイは、相手の背後に回り込むための最短距離で間合いを詰める。

 

『──ッ!? アブソーブシステム! ……だったら、これでぇ!』

 

 レイが使った武装を一目で看破したユッキーは、再度ビームライフルを放ちながらも即座に肩部のミサイルを斉射し、さらに僅かな時間差を付けて脚部の大型ミサイルも撃ち放つ。

 そしてユッキーの狙いに気づいたコーイチもまた、シールドに内蔵された滑空砲を連続発射してイフリート・ゲヘナの逃げ道を塞ぐ。

 

 レイがビームにつられて再度アブソーブを狙えば、弾速の差で後からミサイルか砲弾が着弾する。システム起動中は物理防御が極端に脆弱になる点を突いたいい判断だ、と彼女はコクピットで楽し気に嗤う。

 

「けど、あまァいッ!」

 

 しかし、そんな手垢のついた対策などにレイが引っかかるはずもない。

 

 イフリート・ゲヘナは速度を落とすことなく前進しながらバックパックのミサイルを発射。ビームと滑空砲は射線を読み切って最小の動きで躱し、フレアとして設定された弾頭がビームマスターのミサイル群を引きつけ誘爆させ、それでも抜けてきた二発の弾頭は腰部のマシンガンで撃ち落とすと、大量のミサイルによって発生した巨大な爆炎が両者の姿を隠す。

 

『おおおおっ!』

 

 その瞬間を待っていたかのように、爆炎を突っ切ってコーイチのガルバルディリベイクが、レイの死角からハンマープライヤーを両腕で構えて突撃して来る。

 位置取りとタイミング、どちらも完璧な奇襲を仕掛けるコーイチの動きからレイは確信する。

 

「──こっちはGPD経験者(私と同類)か!」

 

 重装甲な見た目にそぐわないスピードを発揮するガルバルディリベイクがイフリート・ゲヘナの眼前に迫る。

 

 咄嗟に副砲のインコムを一斉射して迎撃するが、見るからに分厚い装甲は伊達ではなく、小口径のビームでは一撃で貫くことができずにカーキ色の機体を止めるには至らない。

 

 ついに懐に入られたイフリート・ゲヘナに、鰐を思わせる形で開いたハンマープライヤーが獲物に食いつくようにその顎を閉じようとするも、レイはシールドを両側面に展開することで抵抗する。

 

「やっぱりナノラミネート──、ッ!? いや、ちがう。これは──」

『残念! 耐ビームコーティングさ!』

 

 このまま盾ごと食い千切らんとハンマープライヤーを閉じようとしたコーイチだが、

 

『──サブアームなのに、なんてパワーだ!』

 

 ぴくりとも動かない操縦桿に驚愕する。

 

 タイガーウルフの猛攻に耐えたイフリート・ゲヘナのシールドは伊達ではなく、サブアームのみで保持しているはずのシールドは、ガルバルディリベイクのパワーに拮抗していた。

 

「この距離で最大出力なら!」

 

 そして未だにイフリート・ゲヘナの両椀はフリーの状態にある。

 ガルバルディリベイクのコクピットへと向けられる、前腕と一体化したビームライフルの銃口にメガ粒子が凝縮し、危険な輝きが増していくのがコーイチにも見える。

 

『ユッキー君頼む!』

『コーイチさん!』

『耐えてみせるさ! 僕のガンプラなら!』

 

 自身が危機に瀕しているにも関わらずコーイチは冷静だった。

 己が作り上げたガンプラを信じてユッキーへと援護を求め、それに応えたビームマスターが射線を通すために回り込もうと移動してくる。

 

「随分な自信ね! けど、これはどう!?」

 

 己の腕を信じて賭けに出たコーイチの姿と、間近で見たガルバルディリベイクの高い完成度に、ビルダーとして尊敬を抱きながらもレイが追撃の手を緩めることはない。

 イフリート・ゲヘナのフロントスカートからサブアームが展開、先端に装着された二振りのヒートナイフがガルバルディリベイクのコックピット──胸部めがけて突き出される。

 いかにコーイチの塗装技術が優れていたとしても、耐ビームコーティングではヒート系の実体剣までは防げない。

 

『隠し腕!? まずい、避け──』

 

 想定外の攻撃につい反射的に離脱を図ろうとしたコーイチは、閉じようとしていたハンマープライヤーを開いてしまう。

 

「セナ直伝!」

 

 そして致命の一撃を避けるための行動は、レイに絶好のチャンスを与える結果となる。

 

 拘束が緩んだ一瞬の隙にイフリート・ゲヘナは機体をスウェーのような動きで沈ませると、その姿勢のまま回転し、強烈なローキックをガルバルディリベイクの膝めがけて放った。

 

『うわあッ!』

 

 増設された脚部のスラスターを互い違いに吹かして速度の乗った一撃は、さながら巨大な槌の打撃であり、重装甲に覆われたガルバルディリベイクの巨体を吹き飛ばす威力。

 

 さらに蹴りの回転を利用して背後のビームマスターへと振り向いたイフリート・ゲヘナは胸部装甲からグレネードを発射。今まさにトリガーを引こうとしていたユッキーの前に着弾した弾頭から爆発的な勢いで煙が広がり、視界を塞ぐと同時に短距離のレーダーが敵機の反応をロストする。

 

 レイが使ったのはミノフスキー粒子を大量に含んだ煙幕弾だった。

 

『煙幕!? ──下がるんだユッキー君!』

「遅いッ!」

 

 レイの狙いに気づいたコーイチが注意を呼び掛けるが、その時には既にイフリート・ゲヘナは煙に紛れてビームマスターの死角へと回り込んでいた。V・DのEWACジェスタがリアルタイムで敵機の位置情報を送信してくれるおかげで、グレネードの煙幕によってミノフスキー濃度が上昇したこの状況でもレイだけは敵機を見失うことはない。

 

 必要なパラメータさえあればゲームであるGBNではこういう無茶も出来る。

 

『くっそお!』

 

 有視界とレーダーの両方でレイを見失ったユッキーは、焦りのせいか足を止めてしまう。とはいえ小型のグレネードである。数秒もせずに煙幕も晴れるだろう。ここは落ち着いて──

 

 煙幕の向こうからビームマスターへ向けて、背後から一筋のビームが放たれる。

 

『──ッ! そこかッ!』

 

 なんとか反応できたユッキーが振り向いて、応射するため操縦桿のトリガーを引いた瞬間。

 

『──わあああっ!?』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ライフルと両脚を同時に撃ち抜かれた。

 

「──ダメじゃない。スナイパーが冷静さを失くしたら」

 

 脚部の爆発に吹き飛ばされ大地を転がるビームマスター。持ち上げた頭部のカメラが捉えた映像を見て、ユッキーは己の失態を悟る。

 

 自身の起こした爆風によって吹き散らされた煙の先にあったのは、イフリート・ゲヘナの脚部にあったインコムのひとつ。重力下ではオールレンジ攻撃に使えないそれを、レイは地面に設置して囮としたのだ。

 

「フラッグ戦だからね。悪いけどやらせてもらうわ」

 

 イフリート・ゲヘナのバックパックに備わるショートバレルキャノンがビームマスターへ向けられる。確実に中てるために照準を合わせ、レクティルを示すマーカーがまさに合わさろうとした時。

 

「──ッ!」

 

 全身に走った悪寒に従い攻撃を中断したレイは咄嗟にイフリート・ゲヘナの軌道を変更。直後、複数の砲弾がレイの周囲に無差別に降り注ぎ連続した爆発を起こす。

 

『ユッキー君、大丈夫か!』

 

 爆発によって完全に散らされた煙幕の先にいたのは、バックパックから硝煙を立ち上らせるガルバルディリベイク。イフリート・ゲヘナの射線から未来位置を予測したうえで、動き続ける敵機(レイ)へと背部の大型榴弾砲を曲射してきたのだ。

 

 ニュービーのフォースメンバーとは思えない攻撃精度に、GPD経験者であろうガルバルディへの警戒をさらに強めるレイだが同時に違和感も覚える。あの威力の榴弾砲ならジムⅢもろとも爆撃すれば、少なくともイフリート・ゲヘナに損傷を与えられたはず。

 

 既に武装の大半を失い行動不能となっているはずの友軍をここまで庇うのは──

 

「やっぱりジムⅢ(こいつ)がフラッグ機だからか? いや、それこそがブラフ──」

 

 相手の戦術を推し量ろうとする思索は、こちらへとスラスターを全開にして向かってくるガルバルディリベイクを視認したことで中断される。

 

「ま、両方墜とせば関係ないか!」

 

 脳筋だが正しくもある答えを出したレイもまた、コーイチを迎え撃つべく意識を切り替えた。

 

 バトルの最中(さなか)にごちゃごちゃと考えるのは性に合わない。今はただ、この戦いを楽しむ事を優先したい。

 

「さあ、もっとギアもテンションも上げていこうか!」

 

 

 近接武器の間合いに持ち込みたいコーイチと、射撃戦のためにミドルレンジを維持したいレイが互いの技量を駆使した高度な一騎討ちを繰り広げる。

 

「いくら塗装技術が凄くても限界はあるはず!」

『くっ……、これは、マズいな──!』

 

 お互いに地上をホバー移動しながら交戦する二機だが、趨勢はイフリート・ゲヘナに傾きつつあった。

 

 耐ビームコーティングは確かにビーム攻撃全般──ビームサーベル等の近接武器も含めて──に対して有効ではあるが、それは装甲値の減りが少ないというだけで、同じ箇所に攻撃を受け続ければ当然塗装は劣化するし、それに比例して装甲値の減少も加速していく。

 

 高速移動をしながらの射撃とは思えないレイの攻撃は、ガルバルディリベイクの堅牢な装甲を確実に穿ち、現にコーイチのコンソールに表示される機体コンディションは、あらゆる箇所がイエロー表示に染まりつつある。

 

『……ここのところ負けなしだったから──いや、これは僕の落ち度か』

 

 フォースバトルでは対戦相手にメンバー変更があった場合、事前に通知が送られる仕組みになっている。コーイチはバトルの開始直前にそれに気づきながらも、仲間へ知らせる前に奇襲を受けたことで伝え損ねてしまった。

 

 第七士官学校に勝利してからフォースバトルでは負け無しだったビルドダイバーズ。

 

 並外れた反射神経と適応力に加えて、ガンプラ作りのセンスも持つリク、そんな彼を豊富な知識で支え、本人も優れたビルダーであるユッキー、天性の運動神経と既存の枠に囚われない自由な発想を持つモモ、経験豊富でどんな局面でもクールに卒なく対応するアヤメ。

 初心者が中心に結成されたビルドダイバーズであったが、その実力は間違いなく頭ひとつ抜けているフォースだった。

 

 だからこそだろう。コーイチも心のどこかで、「まあいいか」「リク君たちならなんとかなるだろう」と考えていた。

 

 端的に言えば──慢心していたのだ。

 

『これは……要反省、だね』

 

 まるで彼の慢心を咎めるように、この戦いで手強い相手と巡り合わされた偶然にコーイチは運命めいたものを感じる。

 

『間違いない。相手は──エースだ……!』

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 今回のフォース戦はフラッグ戦形式となっている。これは殲滅戦とは違い、フラッグ機に設定された相手フォースのガンプラを先に撃墜したほうが勝利という形式で、このためどれだけ劣勢になっていようが逆転する目がある。

 また、互いに相手のフラッグ機がどれなのかは非公開情報なので、チーム内の誰をフラッグに設定するのかは大いに戦略性のある要素になる。

 

 しかしだからこそ、相手フォースの機体は撃墜してみなければフラッグ機なのか判断がつかないため、序盤の間はサーチアンドデストロイが基本の動きとなるのは自然な流れとも言える。

 

 まあつまりは、孤立していた敵軍機を見つけてまんまと単騎で追っかけているダイフクの判断も、それほど非難されるようなことでもないと言えるだろう。

 

 ……彼の乗るロディフレームのガンプラこそが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『このっ、そこの丸っこいの待てお! ……短足のクセして足早え!』

 

 巨岩が林立するように転がる場所を二機のガンプラが疾走している。

 

 ダイフクの前方を走るのは水色の球体を思わせるボディ。∀ガンダムに登場したカプルのカスタム機で、ビルドダイバーズのモモが乗るモモカプルだ。アデリーペンギンをモチーフにしたデザインで、原型機よりもさらに脚部が短くなっているのだがガンプラそのものの完成度が高いからか運動性能は悪くはなく、ダイフクの乗るランドマン・ロディのカスタム機が脚部のレッグ・ブースターでホバー移動を行い追走しているが、あと少しのところで追い付けていない。

 

『もぉ~、しつこーい! それに丸っこいのはお互い様だけど、そっちのは可愛くな~い!』

 

 執拗に追いかけてくる丸っこいボディのガンプラ(ランドマン・ロディ)から発せられたオープン回線を聞いて、コクピットの中思わず後ろを振り返って言い返したのは桃色の長髪をポニーテール結ったネコミミの少女。モモカプルの操縦者で現実(リアル)ではリクとユッキーの同級生でもあるモモだ。

 

『はぁ~!? このカッコよさがわからんのかお! 量産機の魅力あってこそのガンダムだろうがお!』

『そんなの知らないよ~だ! 可愛いのが正義!』

 

 オープン回線を使っての口喧嘩。なんとも緊張感のないことだが、当人たちはいたって真面目である。

 

『こーなったら……!』

 

 岩石地帯を抜けて見通しが良くなった地平に出たところでジャンプしたモモカプルは、四肢を胴体に収納し胸部装甲を閉じて頭部も引っ込めると、まさにボールのような形状に変化する。そして球形の機体を空転するタイヤのごとく空中にて高速で回転させて着地すると、赤茶けた砂ぼこりを立てながら物凄い速度で転がっていく。

 

『ちょ、そんなんアリかお!?』

『へっへーん! 鬼さんこちら~! 追いつけるもんならね~!』

『ハッ! ナメんじゃねー……お!』

 

 相手の挑発に乗せられるようで癪に障るが、遮蔽物が無くなったことで速度を出せるようになったのはダイフクも同じ。彼がすかさずスロットルを全開にすれば、ランドマン・ロディの腰背部に追加されたブースターに火が灯る。数舜の間、爆発でも起きたかのように巨大な爆炎が丸みを帯びた白い機体を前方に力強く押し出す。

 

 武装のマウントラックだったリアアーマーを改造して作られた推進器は大型の丸ノズルを三つ備え、それらは推力方向を自由に変更できるようになって(推力偏向ノズルを採用して)おり、背面に追加された一対の安定翼(スタビライザー)の効果と合わせ重力下でも安定した加速をもたらす。

 

『このオイラの愛機、ホワイト・ナイトから逃げられると思うなお!』

 

 左手に握られた90㎜マシンガンをばら撒きながら、右手にハンマーチョッパーを構えてモモカプルを追うランドマン・ロディ改めホワイト・ナイト。

 

 改造の腕とセンスは悪くないダイフクだったが、どうやらネーミングセンスは少しアレだったようだ。

 

『ええい、それなら!』

 

 敵を引き離すことが叶わないまま前方に巨大なクレバスが見えてきたことで、覚悟を決めたモモは地面の起伏で機体が跳ねたことを利用して空中で変形を解除。そのまま振り返りざまに両腕をあげ、ガッツポーズのようなポーズをしたモモカプルの腰部に光が収束する。

 

『お腹ビイィィィィム!』

 

 カプルのソニックブラストを流用した大型ビーム兵器は、その名前とは裏腹に膨大なエネルギーを秘めた威力を持ち、MSの身長に匹敵する太さのビームが乾いた地面を融解させながらホワイト・ナイトへ迫る。

 

『うおおお!? なんじゃそりゃ!?』

 

 加速していたことで咄嗟の回避を諦めたダイフクは左手のマシンガンを投げ捨てると、右手のハンマーチョッパーを機体前方にかざし刀身を空いた左手で支え即席の盾とした。

 光に飲み込まれるホワイト・ナイト。しかしよく見れば機体は健在であり、モモカプルから放たれたビームはハンマーチョッパーの表面で弾かれ、細かく枝分かれしながら周囲を焼いている。

 

『全力全開ー!』

『あちあちあちあち! ちょ、コクピットの温度ヤバくね!? これ大丈夫なやつ!?』

 

 《DANGER》の表示で真っ赤に染まるコクピットでダイフクは焦りながらも前進をやめず、どころかさらに操縦桿を押し込んで機体を加速をさせる。

 

 分厚い刀身を持つハンマーチョッパーと持ち前のナノラミネートアーマーによって、ダイフクのホワイト・ナイトはどうにか両椀を犠牲にすることでモモカプルのビーム攻撃を凌ぎきった。

 

『うそっ! 生き残ってる!?』

『たりめーだ!』

『──、まずっ、全力出し過ぎてエネルギーが……』

 

 慌てて離脱を試みるモモだったが、機体のエネルギーをほぼ全て先ほどの照射に回した反動で一時的にスラスターが使えない状態になっていた。

 

『バックアップもなしに全力砲撃とか素人かお!』

『へーん! そんな強がっても腕が使えないんじゃ──』

『腕なんてなくたって攻撃は出来んだお! ──こうやってなあッ!!』

 

 紫電が走り煤に塗れて力なく垂れ下がるホワイト・ナイトの両腕に代わるようにして、機体背面に追加されていたスタビライザーが展開するとサブアームとなる。ガンダム・マルコシアスのバインダーアームを参考にして作られたそれは、小型である代わりにCE世界のアーマーシュナイダーを備えていた。

 

『うわわわっ! ちょちょちょ待って──』

『待ったはなしだお! くらえええッ!』

 

 モモカプルが咄嗟に交差させた両椀を上腕部分で叩っ斬り、ホワイト・ナイトのサブアームは返す形で下からすくいあげるようにして、コクピットがあると予測した胸部へとアーマーシュナイダーを左右両側から突き刺した。

 

『あー!』

『どっせぇい!』

 

 どこか気の抜けたモモの悲鳴を聞きながら、ホワイト・ナイトがモモカプルの腹部に蹴りを入れてアーマーシュナイダーを引き抜く。

 

『やーらーれーたー』

 

 モノアイレールから光が消える。刺された箇所から火花を散らして、ふらふらと後退していくモモカプルはサスペンスドラマのラストシーンのようにそのまま背後のクレバスへと背中から落ちて行った。

 

 少ししてから地面が小さく揺れる。どうやらクレバスの底まで墜落して爆発したようだ。

 

『……なんか最後のほうちょっとわざとらしかったけど、レーダーにも反応ないし、さすがに撃墜したおね……?』

 

 しばらくの間、レーダーに気を配りつつも周囲を警戒していたダイフクだったが、さすがになんの反応もない状態が数分続けば撃墜を確信する。

 

『……? でも、撃墜判定の通知がないおね? あれ? もしかしてどっかに隠れてる?』

 

 しかしいつまで経っても敵機の撃墜を知らせる表示が出ないことに不審を抱き、やられたと見せかけたモモカプルが付近に潜伏している可能性を警戒する。あくまでゆっくりとクレバスに歩み寄って恐る恐る底のほうを覗き込むホワイト・ナイトだったが──

 

 ──その背後に探知を妨害するアイテム(偽装シート)に隠れた小さな影が迫っていることは最後まで気づかなかった。

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