ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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VSビルドダイバーズ 決意と狂犬と

『セナさんが一機。レイさんが二機。で、ダイフク君が一機ですか……相手側の最後の一機は補足できませんか?』

 

 V・Dから共有された広域レーダーマップを睨みながら現状唯一の懸念点をデッキーが呟く。彼の乗るガンプラはガンダムUCに登場したアンクシャ。MA形態に変形しSFSとしても運用できる可変機で、さらに動力をGNドライブに換装している。これによってGN粒子の恩恵を受けることができ、飛行能力の向上とGNステルスフィールドを展開することが可能となっているカスタムガンプラだった。

 

 彼の役割は戦場の目であるV・Dの足と隠れ蓑を兼ねた護衛で、今もまたEWACジェスタを背に乗せながら、ステルスフィールドを展開して戦場の空を巡回している。

 

『……ダメだな。俺の目で捉えられないってことは、隠密(ステルス)に特化したビルドか。強力なジャミング持ちの可能性がある』

『相手に使われると厄介ですねえ』

『ま、そりゃ仕方ない。お互い様ってやつさ。傭兵さんたちは大丈夫そうだし、俺らはダイフクの援護に──』

『──ッ! V・D!』

 

 念のためと目視による周囲確認を怠っていなかったデッキーの生真面目さが功を奏した。彼の叫びに反射的にV・DのEWACジェスタがアンクシャの背面にあるグリップを握るのと、急激に機体が傾くのはほぼ同時であった。

 GN粒子の恩恵によって機動性が上がったデッキーのアンクシャが咄嗟に機体を捻ると、九十度に傾いた機体底面スレスレを()()()()()()()が通り過ぎていく。

 

 いや、近くで見れば()()が陽炎のように不自然に揺らめいているのがわかった。もっともかなり接近しなければ、その違和感には気づけないだろうが。

 

『──ッ! 敵の反応!?』

『──あら、残念』

『くそっ、ミスっただろ……ここまで接近されるまで気づかないとはな』

 

 空間に揺らぎが生まれ、そこから一機のガンプラが姿を現す。

 

 それは忍者刀を携えたSDのBB戦士ユニコーンガンダムのカスタム機。搭乗者と同じく忍者風にアレンジされた、ビルドダイバーズのアヤメが駆るRX-零丸だった。

 

『ステルス機と組んで行動しているとはね。見つけるのに少し手間取ったわ。けど、これであなたたちの目は潰せる』

 

 原型機と同じく変形機構を持つ零丸は、ユニコーンモードに相当しステルスに特化した「カクレ形態」から、デストロイモードを再現した「シノビ形態」に瞬時に変形すると種子島雷威銃(タネガシマライフル)を連射する。

 

『もう勝った気になるのは──』

『──少しばかり傲慢だろ、常識的に考えて!』

 

 しかしアンクシャはMSを乗せているとは思えない運動性能を見せて、機体を左右に捻ることでそれらを回避。さらに上に乗るジェスタの大型ビーム・ライフルとタイミングを合わせ、機体両側面のムーバブル・シールド・バインダーに備えられた高出力ビーム・ライフルを偏差撃ちで放った。

 

『……GNドライブの性能がキチンと引き出されている──良いガンプラね』

 

 V・Dたちの攻撃をSDらしい被弾面積(ヒットボックス)の小ささと、軽量さを活かした動きで軽々回避するアヤメはオープン回線でデッキーのアンクシャの性能を褒める。しかしそれは敵である彼らにしてみれば煽られているのと同様だ。

 

『その余裕ヅラがどこまで続くか見物だろ!』

『機動性はこちらが上! さらに状況は二対一です! 落ち着いて一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)で対処すれば勝てますよ!』

 

 奇しくもガンダムUCに登場するガンプラ同士の戦いとなった戦場。数の有利と制空権によって余裕を持つ二人だったが──

 

 

『あら──。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ──そこへ突如として飛来するひとつの影があった。

 

『──馬鹿なッ! ()()()だと!?』

 

 最初に驚いたのは最も索敵能力に長けたV・D。

 

 零丸と同じくステルスで潜んでいた鳥型の小さな影は、驚異的な速度でV・Dたちの上から急襲を仕掛けると、すれ違いざまにEWACジェスタの大型ビームライフルの銃身を両脚の爪で引き裂いた。

 

『うおっ!? ……くそッやられた!』

 

 V・Dが毒づきながら火花を放つライフルを投げ捨てる。出力と射程を強化したぶんだけ取り回しが悪くなっていたのが裏目に出た。

 空中で爆発するライフルに代わり、機体の腰背部にマウントされたサブマシンガンを構えようとしたEWACジェスタだったが、ほんの一瞬、その支援機に気取られた二人が零丸の動きから目を離したことが仇となる。

 

『V・Dッ!』

 

 気が付いた時にはすでに遅く、目の前に迫るのは巨大な十字手裏剣。零丸の投げたシ-ルド手裏剣だ。

 

 それを回避するためデッキーが無理に機体をロールさせたため、EWACジェスタは耐えられずに空中へと放り出される。

 どうにか態勢を立て直そうとスラスターを吹かしたV・Dだが、

 

『ぐおッ!? ええいっ、このクソ鳥執拗に武器を──』

 

 再度急襲を仕掛けてきた支援機からの射撃によってサブマシンガンを破壊されたうえに、体当たりを受けて大きく吹き飛ばされてしまう。

 

 そして、アンクシャと距離を離され、俎板(まないた)の鯉と化したV・Dに迫るのは忍者刀を逆手に構えた零丸。

 

『──落ちなさい!』

『ッ!? マズい──』

 

 ビームサーベルに手を伸ばすEWACジェスタだが相手の刃が迫るほうが速く、僚機であるアンクシャがカバーに入るにはあと一歩足りない。アヤメの経験から導かれた絶妙なタイミングでの仕掛け。

 

 だが──

 

『ところがぎっちょん!』

『ッ!?』

 

 今まさに振り抜かれた零丸の刃を、MS形態に変形したアンクシャがビームサーベルで受け止めていた。

 

『──ッ! 助かった、デッキー!』

『お礼はいいからさっさと離脱してくださいッ!』

 

 ()が無くなり速度こそ落ちたものの、一目散に逃げを打つEWACジェスタ。離脱するV・Dを横目にアヤメは刃を弾いて鍔迫り合いを解きアンクシャとの距離を取る。

 

『トランザム……? いいえ、違うわね。これは──EXAM』

『ご名答。ニュータイプを滅ぼすシステムを持つ者同士、しばし仲良く踊ってもらいますよ』

 

 アンクシャの発するエフェクトで相手の絡繰りを看破したアヤメに、零丸がNT‐Dを持つユニコーンガンダムのカスタム機である事を見抜いたデッキーは不敵に笑って挑発する。

 

 デッキーのアンクシャは「EXAM」と「トランザム」二つのブースト系スキルを持っている。GBNの仕様上、両者を同時発動することは出来ないが、状況に合わせて選択し使い分けることは可能であり、相手のさらなる伏兵の可能性を警戒した彼はEXAMを選んだのだ。

 

『私のは少し違うんだけれど──いいわ。付き合ってあげる』

 

 支援機の武装装甲八鳥(ブソウソウコウハットリ)にEWACジェスタの追撃を命じると、アヤメは苦無と忍者刀を構えてデッキーのアンクシャと向き合った。 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 荒野の空で二機のガンダムタイプが交錯する。

 

 セナのガンダム・カイムとリクのダブルオーダイバーエースだ。

 

 共に高機動、近接主体の機体構築(ビルド)でありその戦い方は似通っている。

 

 今もまた紺青の影と緑の粒子を纏う蒼が空中で激突し、弾かれたように離れては空を舞い踊る。

 

『やるねえ! 流石はリーダーってことかな!』

 

 弧を描くように旋回しつつCファンネルを先行させながらセナは嬉しそうにオープン回線で話しかける。

 

「そっちこそ!」

 

 五枚のCファンネルが時間差を付けながら上下左右、様々な角度から死角を突くようにして襲い掛かる中、二刀のスーパーGNソードⅡを振るってそれらを叩き、逸らしながら接近するリクもまた楽しそうに応えた。

 

 カイムが右の刃を袈裟斬りに振り下ろせば、リクは両肩にあるGNドライブを互い違いに前後へ向けて機体を半回転させて回避。相手の右側へと背を向けながら抜け様に、回転の勢いを乗せた横薙ぎを放つ。

 

 それを呼び戻したCファンネルで防いだセナは機体を捻り、左の刃を叩きつけるように水平に振るう。

 

 しかしそこにはもうダブルオーダイバーエースの姿はなく、GNドライブ特有の重力を感じさせない動きで上昇した彼は急降下からの急襲を仕掛けてきた。

 

『いい反応! じゃあ──もっと、アゲていこうか! カイム、リミッター解除!』

 

 ややもすれば自分を上回る反射神経と運動能力を見せられたセナは迷わずに切り札を使う。

 

 主の命令を受けた悪魔がその瞳を黄金に染めれば、これまでとは比較にならない反応速度でもってリクの急襲を回避。さらにすれ違うように飛び上がったカイムは、まるで空中を蹴ったように反転して加速すると速度を乗せた斬撃を見舞うべく舞い降りる。

 戦意漲る金色の瞳から発する雷のようなエフェクトにより、カイムは砂でぼやけた空へ落雷のような軌跡を描いてダブルオーダイバーエースへと刃を振るった。

 

「ぐっ!?」

「きゃあ!」

 

 辛うじて反応できたリクだったが回避は間に合わず、カイムの持つレイザーブレイドをGNソードの刀身で受けとめるのが限界だった。阿頼耶識のリミッターを解除したカイムの速度はトランザムにも匹敵するほどで、またその動きは人さながらのしなやかさを発揮して相手のガンプラの完成度に驚く。

 

 カイムのレイザーブレイドは巨大で肉厚な刃を持つ。当然質量も大きくこれまでよりもさらに速度を乗せられた一撃は、ダブルオーダイバーエースを吹き飛ばすほどの威力があった。

 

 大きく態勢を崩したダブルオーダイバーエースだが、あえて力に逆らわず同じ方向へスラスターを吹かすことで間合いを取ることに成功し、セナの追撃であるウィングスラスターからの射撃も辛くも回避して安全圏まで退避してのける。ただ、致命傷は防げたものの、左のスーパーGNソードⅡの刀身には亀裂が走っていた。

 

「っ、うおおお!」

 

 迷わず左手から武器を手放したリクは右肩部のGNドライブに装着された実体剣、GNダイバーソードを抜き放って再度カイムに迫る。

 

『……?』

 

 しかし機体性能が強化されているカイムのほうが今は速く、まるで瞬間移動したのかと錯覚する速度で眼前に悪魔の顔が迫る。

 

「……はッ!?」

 

 稲妻の軌跡が見えた時には至近距離にいる悪魔の姿。それにリクが判断を鈍らせたところで、斬りかかろうと中途半端に構えていた右のスーパーGNソードⅡの刀身を逆に弾かれ、がら空きになった胴体に足刀蹴りを受けてしまう。

 

「ッ──!」

 

 追撃を警戒して慌ててカイムから再度距離をとろうとするダブルオーダイバーエース。

 

 しかし──、

 

 

『ねえ、キミは使わないの? ──()()()()()

 

 

 そこでセナからかけられた言葉にリクは思わず機体の動きを止めてしまった。

 

「それは……」

『そのガンプラ、ダブルオーの改造機だよね? だったらあるでしょ。機体性能を引き上げるブースト系のスキル』

 

 「わたしガンダムの知識はまだまだだけど、勉強したから知ってるよ」という相手の声がどこか遠くに聞こえる。

 

 ゆえあって封印している機能のことを指摘され、思わず傍らの少女を横目で見るリク。そこにあるのはサラのどこか不安を湛えた大きな瞳。以前に完成度が低いままトランザムを使用したことでガンプラを傷つけてしまったリクは、そのことを悲しんだサラと「トランザムは使わない」という約束をしていた。

 

「……」

『それだけ出来のいいガンプラなら、使えないってことはないと思うんだけど──』

 

 しかし、その事は今戦っている相手(セナ)には関係のないことで。

 

 全力で相対してくれているセナへの後ろめたさと、それでもサラとの約束を破りたくない決意で板挟みのリクは上手く言葉を発せずに押し黙り──

 

 

『それとも──、()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ばちり──。

 

 カイム(悪魔)の瞳から発する雷状のエフェクトがひと際強く瞬いたように見えた。

 

「それは違──!」

 

 不吉な輝きとともに平坦な声音になったセナの言葉を聞いた刹那、思考を挟むことなく生存本能のみで反射的にカイムから距離を取ろうとするが、

 

「──うわぁッ!?」

 

 下がろうとした背後から飛来したCファンネルに奇襲され、反応が遅れた所にカイムが投擲してきた連結したレイザーブレイド(レイザーブーメラン)が迫る。

 咄嗟にそれを防いだ右手のスーパーGNソードⅡの刀身があまりの重量と威力に耐えられず根本からへし折れると同時、回転するレイザーブレイドの影に潜んでいたカイムが飛び出して、ダブルオーダイバーエースの顔面に強烈な回し蹴りを見舞った。

 

「うああッ!」

「きゃあっ!」

 

 片側のブレードアンテナが全てへし折れ、たまらず吹き飛ばされるダブルオーダイバーエースのコクピットの中で、リクとサラは大きな衝撃に揺さぶられ悲鳴を上げる。

 

『じゃあなんで? 使えるのに使わない。使わないと勝てないのに使わない。──縛りプレイでもしてるの?』

 

 呼び戻したレイザーブレイドを両椀に装着し、追撃をするでもなく空中に佇むカイムからは、静かだが明確な怒りのオーラが見て取れる。

 先程の蹴りに脚部の武装を使わなかったことといい、それまでのセナとは違う明らかな挑発行為。お前もさっさと切り札を使ってかかってこいという戦闘狂の威圧。かつて相対した獄炎のオーガ(バトルジャンキー)と似た雰囲気を感じ取ったリクは、その戦闘に対する純粋な思いを感じ取って僅かに俯くと操縦桿をきつく握り締めた。

 

「リク……」

「……サラ、俺は」

 

 ──どうすればいい? という言葉を奥歯で噛み砕く。

 

 自分で決めた事をどうするのか、それを他の誰かにゆだねるのは違うと思ったから。

 

「……あのガンプラ(相手の子)、すごく、怒ってる。全力を出さないことに」

 

 そういって目を伏せるサラを見て、リクの中で決意が固まった。大切な仲間を悲しませるようなバトルなんて間違ってる。GBNは遊びなのだ。負けて悔しい思いこそすれ、こんな感情を抱いてプレイするのは違うだろう。

 

 セナも言っていた。縛りプレイか? と。そうだ。これは自分が己に課した課題。トランザムに頼らない新しい戦い方の模索。リクなりのGBNを楽しむための挑戦であって、()()()()()()()()()()()()

 

「トランザムは……使いません。約束、したから。でも──バトルは全力でやります!」

 

 そのことを伝えたくて、精一杯の気持ちを込めて相手に訴えかける。たとえ届かなくても、届くまで何度でも訴えてやるという気概を背負いながらの啖呵。

 

『……そっか。まあ、縛りプレイならしょうがないかあ。わたしも始めたては無意識で似たようなことをレイにしてたし、あんまり人のこと言えないもんね──』

 

 リクの気持ちが通じたのか、カイムの纏う気配が少しだけ穏やかになる。

 

『でも──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 が、それはそれとして、セナも勝ちを譲るつもりは全くない。

 

 その身に纏う剣気の密度が増したカイムにリクは肌が泡立つのを感じる。

 

 翼のようなウィングスラスターに炎が灯り、刹那でトップスピードに加速する鳥の魔人。

 

 加速による衝撃波で雲を吹き飛ばしながら地上のダブルオーダイバーエース目掛け、両腕の大型レイザーブレイドを構えて稲妻の速度で急降下するカイム。

 

(──来る。)

 

 複雑な軌跡を描くマニューバと驚嘆する速さ。さながら意思を持つ落雷。しかし軌道はあくまで直線、さらに相手の速度はさっきの攻防で把握している。じり、と右手に新たに握られたGNダイバーソードを構え──

 

「──ッ、ここだ!」

 

 地上から飛び立ったダブルオーダイバーエースが機先を制して突き出された刃がカイムの頭部を捉える。

 

『──ッ!?』

 

 セナが僅かに目を見開く。

 

 

 ──まさか、まさかまさか、この数合の打ち合いで合わせてくるとは!

 

 

 咄嗟にセナが機体の頭部を傾けるが、リクの一撃は悪魔の左目をブレードアンテナごと抉り取った。

 

 

 ──セナが口角を持ち上げて笑う。とても、そう、とても楽しそうに。

 

 

 この一撃の鋭さにリクの本気と才能の片鱗を見たからだ。

 

 

 空中で刹那の間にすれ違う二機の間に一片の閃光が舞った。

 

 リクの一撃によって折れ飛んだカイムのブレードアンテナ。それが光を反射したのだ。

 

 セナと同じく天性の反射神経と適応力を持つリクは、確かにカイムの速度に追い付ていた。

 

 

 だが──、

 

 

『いいねぇ! しかし! 踏み込みが足りなかった!』

 

 リクとサラがいるコックピットに衝撃が走る。

 

 交差の瞬間、セナのカイムはレイザーブレイドを手放してビームサーベルを抜刀。ダブルオーダイバーエースの左肩部を切り裂いていた。リクが把握していたのは巨大なレイザーブレイドでの斬撃速度。そこに生じる僅かな齟齬をついたセナによるブラフに彼は引っかかった。

 

 僅かに遅れてダブルオーダイバーエースの左肩付近で爆発が起こる。

 

「──ぐうッ!?」

「きゃあ!」

『ヴァルガでもそうだったけど、GNドライブってさ、確かに強いけど……動力源(弱点)がどこか丸わかりなんだよね』

 

 特にダブルオー系は肩のバインダーにあるからね。というセナの言葉が、地上へと落下するリクの耳に聞こえた。

 

 空中でよろけて姿勢を崩したダブルオーダイバーエースが地上へと墜落する。

 

 地表へ激突した衝撃から土煙が立ち上り、それでもなんとか起き上がらせて膝をつくリクの機体から、黒焦げとなったバインダーごと脱落したのは肩部にあった太陽炉だ。円形型の中心線から真っ二つに致命的な亀裂が入っている。セナ(悪魔)の放った一閃は、的確に相手(リク)の弱点を捉え、食い千切っていた。

 

『さあこれで出力は半分。けど、あれだけの啖呵を切ったんだから、諦めるなんてしないよね?』

 

 再度上空へと飛んだカイム。その手には先ほど手放したレイザーブレイドが猟犬のように舞い戻ると、それを地上で蹲るダブルオーダイバーエースへと突き付けて戦意を問う。

 

 GNダイバーソードによって引きちぎられ、右側しか残っていない頭部。その隻眼からは、ばちり、ばちり、と小さな稲妻のようなエフェクトが絶え間なく散る。カイムとセナの高まる戦意を示すように。

 

 相手が強さを示せば示すほどにテンションが高まる。イエローコーションに照らされたコクピットの中、リクはこのセナというダイバーは()()()()()()()だと心底から理解した。獄炎のオーガという前例を知っているだけに。

 

 ──もっと出来るだろう。もっとお前の強さを見せてみろ。

 

 そう言外に言われたリクは操縦桿を強く握ると、愛機を立ち上がらせて構えを取る。

 

 その瞳に熱いものを宿して。

 

 今の彼のような顔をした者はこう呼ばれる──挑戦者と。

 

「もちろん諦めるつもりなんてありません。俺は、勝ちます!」

『──、いい返事だ! 気に入った! 天誅してやろう!』

 

 そう叫んでセナが飛び出し、リクもまた残ったスラスターを全開にして飛び立った刹那──

 

 

【BATTLE ENDED】

 

 

『──は?』

「──えっ!?」

 

 二機の間にホロウィンドウがポップし、その意味を理解したセナとリクは思わず機体を停止させる。

 

 真剣勝負の最中、システムによって唐突に水を差された彼女らの心情など無視して、さらに続けて表示された文字列にはこうあった。

 

【WINNER BUILD DIVERS】

 

 カイムのコクピット。セナの眼前。そこには量産機魂のフラッグ機であるダイフクのホワイト・ナイトが撃墜判定を受けたことを示すウィンドウが展開していた。

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