ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes   作:ほぼ読み専

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VSビルドダイバーズ 決着

 それはセナとリクの戦いが佳境を迎えようとしていた頃。

 

『ん~? っかしーおねー?』

 

 クレバスに落ちて行ったモモカプル。おそらくは底まで落下して、その衝撃で機体が爆発したであろう振動も感じ取ったにもかかわらず、撃墜判定がいつまでたっても降りてこない。

 あまりにも不可解な状況と、相手は確実にダメージアウトしたであろうという確信にすっかり油断したダイフクは、無防備にも機体をクレバスの淵ギリギリに立たせて下を覗き込んでいた。

 

『もしかして最近よく起きるっていうバグ? いやいや、勘弁してくれお~』

 

 こんな姿を仲間たちに見られたら、間違いなくV・Dあたりがマジギレしそうな有様であるが、幸か不幸かこの場にいるのはダイフクのみである。

 

『……』

 

 いや、それは間違いだった。

 

 クレバスをのぞき込むホワイト・ナイト。その背後には隠れ潜む小さな存在がいた。

 

 かつてヴァルガでレイたちを出待ちしていたダイバーが使っていたものと同じ、攻撃行動を行わない限りレーダー系に補足されにくくなる使い捨てのアイテム。偽装シート。それを被って岩陰で出来た死角へ巧みに身を潜めているのはモスグリーンの小型のガンプラ。

 

 SDよりもさらに小さい頭身の機体の名はプチカプル。モモカプルの中に入れ子構造で格納されている小型のガンプラで、クレバスに落ちる瞬間にモモカプルから脱出すると、両腕の爪で岸壁に張り付きすぐさま偽装シートを用いて潜んでいたのだった。

 

 このアイテム、レーダーには強いが、別に光学迷彩を展開できるわけではないので、注意深く周囲を観察していればプチカプルをすぐに発見できたはずなのだが、折悪く起きた砂嵐に加え肝心のダイフクが撃破したと思い込んでいたことから注意が散漫になり、クレバスから這い上がる所を見つかることもなかった。

 

『まあこっちにはV・Dがいるから、敵の居場所は丸わかりだし』

 

 これもダイフクが油断していた理由のひとつ。こちらには長距離索敵レーダーを持つ仲間がいること。しかしあくまでゲームとしてレーダーはレーダーでしかなく、V・Dから見ればダイフクが敵機を撃破したようにしか認識できておらず、ましてこの時の彼はアヤメに奇襲を受けている真っただ中である。

 

 慣れたダイバーなどで索敵をメインとする機体を使う者が、小型の遠隔操作端末、ドローン等を採用している理由がこれである。単独のレーダーからの情報だけではなく、広範囲かつ多角的なレーダー索敵網とカメラによる光学情報を併用することでこのような死角を潰す。

 

 しかしガンプラバトルにおけるこういった装備の扱いは難しく、十全な性能を発揮するには高い制作技術と高度な情報処理能力が求められる。

 ゆえにまだまだフォースバトル初心者の域を出ない彼らに、これらの水準を求めるのは酷というものだった。

 

 だからまあ、こうなるのも仕方なかったと言えるかもしれない。

 

『とにかくいったんV・Dたちと合流して──!?』

『──とおぉぉりゃあぁぁぁぁぁッ!』

 

 クレバスから顔を上げて振り返ろうとしたホワイト・ナイトの背中を目がけて小さな影が突撃する。それはモモのプチカプルで、充分な助走をつけ偽装シートを脱ぎ捨てながら飛び上がると、接近する敵影に気づいたダイフクが反応するよりも前に全力の両脚飛び蹴り(ドロップキック)をホワイト・ナイトの背面へと決めた。

 

 まるでお手本のように綺麗に突き刺さるプチカプルの脚部。その小さなボディのどこにそんなパワーを秘めていたのか、ホワイト・ナイトの背部と腰部のスラスターをひしゃげさせ、さらに機体そのものも崖から吹き飛ばす。

 

『──てめっ、やってくれた……ッ!?』

 

 空中にてどうにか態勢を立て直したダイフクが、悪態を吐きながらスラスターを吹かそうとしたところ、機体がエラーを吐いて命令が拒否される。ダメージコンソールを見れば、図ったように背面スラスターがお釈迦にされているではないか。

 

『げえぇッ! スラスターが!? こ、こんなバカなことがあってたまるかおぉぉぉぉ──ッ!』

 

 装備を増設したぶんだけ重量も増していたホワイト・ナイトは、レッグ・ブースターだけでは自重に勝つことができず、ゆるやかにクレバスの中へと落ちていく。

 最後の足掻きとばかりにそれを全開にするも、途中でついに推進剤が切れたのか急激に落下速度が上がるとみるみる見えなくなっていった。

 

 そしてしばらくしてから、モモカプルが落ちた時と同じような衝撃がクレバスの淵を揺らす。

 

『へっへーん! どうよ! ブイ!』

 

 短い両腕を斜めに突き上げ全身でヴィクトリーの「V」を表現するプチカプル。

 

 すると──

 

【BATTLE ENDED】

【WINNER BUILD DIVERS】

 

 ほぼ同時にモモの眼前には勝利を示すメッセージの書かれたホロウィンドウが表示された。

 

「あっ、あれがフラッグ機だったんだ……ラッキー!」

 

 思わぬ形で大金星をあげたモモはコクピットでひとりガッツポーズを決める。

 

 こうしてビルドダイバーズと量産機魂のフォース戦は、ビルドダイバーズの勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

『お疲れさまでしたー!』

 

 ハンガーエリアで元気に挨拶を交わす両フォースの面々。

 

「ダイフクぅぅぅぅ……おま、おまえぇぇぇ……」

「やってくれた(のう)……やってくれた(のう)……!」

「悪かった! 今回はオイラが悪かったから! お、落ち着くおV・D! デッキー!」

「落ち着けるかボケェ! 見ろ! このV・Dの無惨な有様をよォ!」

「フラッグ機がバレないように無線通信にまで気を使ってた俺とデッキーの苦労はなんだったんだ……ジャンケンでなんか決めなければ……」

 

 

 いや、正確にはレイとセナの二人とビルドダイバーズの五人、だが。

 

 なにやら少しもめている様子の量産機魂の三人をよそにビルドダイバーズの面々、特にリクと呼ばれるリーダーの少年と、彼と共にダブルオーダイバーエースに搭乗していた少女のサラ。そしてこちらのフラッグ機を墜としたモモとユッキーを加えた四人と談笑するセナ。しかしそれよりもレイには気になることがあった。

 

「このガンプラ……いや、でもまさか……」

 

 ビルドダイバーズの一人であるコーイチ。彼の機体であるガルバルディリベイクをしげしげと眺めながら独り言を呟く。

 

「あ、あのっ、違っていたらごめんなさい。もしかして、()()()()()()、ですか……?」

 

 なにやら忍者姿の女性ダイバー、アヤメに小言を言われて困った顔をしていたエルフの青年。コーイチへと声をかける。

 

「えっ? うん、そうだけど……」

 

 GPD経験者であるコーイチは、かつて自分がガンプラバトルやコンテストで使っていた名前を言い当てられて少し困惑気味に答える。

 

「やっぱり! うわー、GBNやってたんですね!」

 

 そんな彼を尻目に実に嬉しそうにするレイを見て、ますますコーイチは困惑を深める。

 

「……なんでわかったのかな?」

「あの耐ビームコーティングの仕上げの癖と、近くでガンプラを見て確信しました!」

 

 ガンプラバトルだけではなく、かつては様々なコンテストにも応募しては賞を獲得していたコーイチ。彼の作品は幾度か模型誌にも取り上げられていたので、知っている人もそれなりにはいる。

 

 だが、雑誌掲載の写真だけを見てそれを看破することなど不可能であり、レイの口ぶりはまるでコーイチの作品の実物を、もっと言えば彼の実機バトル(GPDでの対戦)を、それも対戦映像ではなく生で見た事があるかのようだった。しかしコーイチは目の前の長身の女性ダイバーに見覚えがない。

 いや、GBNでは現実と異なる姿をとることが普通であるため、知人であってもそれとわからないことはままあるのだが。

 

「えっと……僕と現実(リアル)で会った事があるのかい?」

「ああ、覚えてませんか? 昔、ガンプラバトルの遠征で、チームの皆さんと一緒にウチに来られたことがあったんですよ……イワナガ模型っていうんですけど」

 

 相手が自分を知っている(てい)で声をかけられて、自分のほうが相手に覚えがない気まずさから言葉を濁すコーイチ。それをなんとなく察したレイが店名を出したことで、ようやく彼は思い出した。

 

「……あ、あの模型店かあ。え、じゃあ君はあの時お店にいたの?」

「はい! コーイチさんやチームメイトの皆さんとも遊んで(バトルして)もらいました。あの時はサバーニャを使ってて……皆さん凄く強くて楽しかったなあ」

「……えっ、サバーニャ? ……もしかして店主のお孫さんの?」

 

 国内では結構有名なガンプラファイターのホーム。そこへ武者修行としてチームを引き連れ訪れた際に対戦した一人の少女の姿が彼の脳裏に蘇る。

 

 小学校高学年か中学生あたりの年頃の、実機のガンプラバトルとは縁のなさそうな少女が駆るガンプラ。

 

 しかしその完成度と操縦技術は当時のコーイチをして舌を巻くほどで、それだけでなく、どれだけ負けて機体が破損しても再戦を挑んでくるひたむきな姿は、チームメイトも含めて皆に好意的に受け止められていた。

 

 特に彼の親友など、「ガキのクセして根性あるじゃねぇか」と、人付き合いが苦手な奴にしては随分と気に入っていて──

 

「チームの皆さんはGBN、やってないんですか?」

 

 ──その一言で現実に引き戻される。

 

「……あ、うん。皆、GPDまででガンプラバトルはやめちゃってね」

 

 コーイチにとっての苦い記憶。GPDのサービス終了とともに解散してしまったチーム。放置されたプレハブ。残された楽しかった記憶の欠片(仲間たちのガンプラ)。──連絡の取れなくなった親友。

 

「あっ、ごめんなさい。なんか……」

「いいよ。それに、今はこうしてリク君たちといるし、GBNも結構楽しんでるから」

 

 気まずそうにするレイをフォローするコーイチの目は、楽しそうにセナと話すリクたち三人を映す。その瞳には確かに少しの寂しさもあるが、彼の言葉が嘘ではないと思わせる希望の光が宿っていた。

 

「店主のおじいさんは元気? それと彼は……」

「あー、ちょっと、おじい……祖父は今は入院してまして。お店も今は閉店して……あと、こっちのほうも常連さんたちはガンプラバトル、やめちゃいまして……」

 

 話題転換のつもりで振った話が見事に地雷を踏んだ。

 

「……そっか。こちらこそ、その、ごめんね」

「いえ、大丈夫ですよ。私も今はこうしてGBN、楽しんでますから。セナとカイム──あの子のガンプラ、強かったでしょ? アレ、私が作ったんですよ」

「うん。いいガンプラだと思うよ。乗り手も強い。リク君のダブルオーダイバーエースをあそこまで追い詰めるとは予想できなかった」

「……セナとはGBNで知り合ったんです。だから……私、GBNの事、結構好きです」

 

 自分と同じだとコーイチは思った。彼女もまたGBNの台頭で失うものがあって、でも、GBNで得たものがあって。

 

 なぜセナという少女が自分でガンプラを作らないのか、とは聞かなかった。人にはそれぞれの事情があるものだし、なによりこれ以上地雷を踏みたくはなかった。

 

「うん。そうか……なら、いいんだけど」

「はい」

 

 何かを失う──あって当たり前だと思っていたものが、ある日突然手から零れ落ちていく。それは生きていれば避けることが出来ないのかもしれない。しかし失うだけが人生ではない。新しい場所には新しい出会いがある。

 勇気を出して一歩を踏み出せば、そこには自分の知らなかった素晴らしいものが広がっていることだってある。

 

 好きなものを「好きだ」と素直に言えなくなっていたコーイチにとって、リクたちビルドダイバーズとの出会いは救いでもあった。

 

「でもまあ、なんというか、時代の流れを感じるなあ……」

 

 それでも胸中に押しとどめることが出来ない感傷がコーイチの口をついて出てしまう。つい少し前まで烈火のごとく自分たちを追い込んできたイフリート・ゲヘナの姿。あれを操っていたのが、かつて対戦した幼い少女だと思うとなおさらだ。

 

「なに爺くさいことを言ってるの。老人じゃあるまいし」

 

 そこに割り込むようにして口を挟んできたのはアヤメだった。

 

「アヤメ君、老人て……」

「あのSDユニコーン使ってた人ですよね。こっちも凄い良く出来てる。変形ギミックを含めて凄い完成度……」

「そっ、それほどでも、ないわ……」

 

 彼女に苦手意識でもあるのか少しだけ言い淀むコーイチだったが、ガンプラに関しては良い意味でも悪い意味でも忖度しないレイからの思わぬストレートな称賛を受けて勢いを削がれるアヤメ。覆面でわかりづらいが僅かに頬が赤くなっている。

 

「……良ければお互いにデータを見せあわないかい? 良い刺激になると思うんだけど」

「いいんですか!? やりましょうやりましょう! こういうの気軽に出来るのもGBNの良いところですね」

「……私は遠慮するわ。また対戦するかもしれないから、手の内は晒したくない」

 

 コーイチの提案にノリノリのレイに対し、アヤメは照れ隠しもあってそっけない態度でその場を離れていく。

 

「アヤメ君……」

「うーん、恰好だけじゃなくてプレイスタイルも忍者とは……」

 

 そんな彼女の後ろ姿を横目に、レイはコーイチとお互いにガンプラのデータを参照しあいあーだこーだと意見交換を始めた。

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 レイが充実した時間を過ごしているのと同じ時、セナもまたリクたちと交流をしていた。

 

「そっかー。縛りプレイをしてたのはそういうわけだったんだねー」

「はい。その、俺……」

「リク……」

「いーよいーよ。別に舐めプってわけじゃなく、キミはあの時全力だった。それはわかってるから」

 

 リクたちのバトルアウト直前での思わぬ決着の仕方をした先ほどのフォース戦。あのままいけば確実にリクは負けていた。それに際して彼がなにか言う前に、セナは気持ちよく笑って答えた。

 万の言葉を尽くしたお為ごかしより、彼の見せた一撃のほうがよほど雄弁に気持ちを伝えてきたから。

 

「そもそも個人的にやってる縛りプレイにわたしが何か言えることもないし、負けてもそれを言い訳にするつもりはなかったでしょ?」

「──はい! もちろんです! そんなつもりでやってる事じゃないですから」

「ならいいよ。鍛えるために色々模索するのもゲームの楽しみ方のひとつだからね」

 

 リクの瞳に宿る強い意志を感じたセナは鷹揚に頷く。舐めプした挙句にそれを言い訳にするようなら彼女は決して許さないが、リクのしていた事はそういった情けないものとは違うと理解したからだ。

 

「リク君気にしすぎー。勝ったのはこっちなんだから堂々としてればいいのに」

「モモちゃんそんな単純な……」

「ふっふーん、単純でけっこー。だって今日のMVPは私だから!」

 

 そんな三人の傍らで手を頭の後ろで組んだモモはあっけらかんと言い放つ。今回のフォース戦の趨勢を決めた活躍が出来たためにとても上機嫌で、窘めようとするユッキーの言葉も右から左だ。

 

「……ま、でも、どうしても気になるなら、トランザムを使えるようになってからまた再戦しようよ。──また全力で、ね?」

「──はいっ!」

 

 楽しそうに再戦の約束を取り付けるセナ。この時彼女はなんとなくだが、このリクというダイバーが()()()という予感があった。

 

 戦いの中でリクが見せた反応速度と適応力。最後の一合。リミッターを解除したカイムの速度にしっかりと()()()()きたそれは天性のもの。機体性能、本人の経験と技量、乗り越えるべき課題は多いが、その先にある高みに到達する手合いである確信を抱くには充分。

 

 数多のVRゲームで対人戦を経験してきたセナはあの戦いの中、リクの中に眠る確かな才能の片鱗を見出していた。

 

「おい! おめー! そこのピンクネコミミ! テメーよくもやってくれやがったな!」

 

 和やかな雰囲気が場を包む中、それを割って入るようにやってきたのはダイフクだった。肩を怒らせて歩み寄ってきた彼は、モモに対して指をつきつけると憤懣やるかたないといった様子で彼女に食って掛かる。

 

「なに? 負け惜しみ? わー、かっこわるー」

 

 だが今のモモにダイフクの言葉が届くことはなく、わざとらしく肩を竦めると挑発するように揶揄ってくる。

 

「やかましい! おめーのガンプラのギミックはもう種割れたからな! 次はぜってぇ負けねーお!」

 

 一瞬、激昂したダイフクを警戒したリクとユッキーだったが、彼が言った言葉に肩の力を抜く。それは真っ当なリベンジを誓う言葉で、悪意や害意がないものだったから。

 

「はー? あんなカワイくないガンプラに負けるわけないんですけどー?」

「オメーのその謎基準はなんなんだお!?」

「ちょっとモモちゃんあんまり挑発しないでー!」

「ダイフクゥゥゥ! 逃げるなァァァ! 負けた責任から逃げるなァァァ!」

「お前も落ち着けデッキー! ……あーもう、普段優等生ぶってるクセに一番熱くなりやすいんだからコイツはもう!」

 

 モモを諫めようとするユッキーと量産機魂の他メンツも加わってにわかに騒がしくなる。年齢が近いからかなかなか治まらない喧噪に置いていかれたセナは、「あらー」と呟いてそれを眺める。

 そんなセナに同じく周囲に置いていかれたサラが歩み寄ると、透き通るようなアイスブルーの瞳で真っすぐにセナの顔を見つめてきた。

 

「──綺麗だね」

「えっ?」

 

 突拍子もない言葉にきょとんとするセナに、ハンガーに収められた彼女の機体へと視線を向けたサラは続ける。

 

「アナタのガンプラ。綺麗。……ちょっと怖いけど、真っすぐで、純粋な子」

「……カイムのこと?」

「うん。戦いたい、強くなりたい、もっともっと強い相手と戦ってみたいって」

「そう見える?」

「ううん。()()()()()。ガンプラの、声」

「声、声かあ……GBNってそういう隠しスキルがあるのかな?」

「スキル?」

「んー、ちょっと知り合いにおんなじような事を言う子がいてね」

「……?」

 

 小首を傾げるサラに、なんでもないよとセナが笑う。彼女の脳裏に月明りのような金髪が過った。そういえばあの二人はどうしているだろう。今もまたGBNのどこかを二人で巡っているのだろうか。このサラとリクのように二人で一体のガンプラに乗って──

 

「おーい、セナさん」

 

 カイムが完成してからGBNで会っていない二人を思っていたセナにV・Dから声がかかる。

 

「ん? どしたの?」

 

 セナが声のしたほうを見ればV・Dがダイフクとデッキーの二人をどうにか落ち着かせたのか、量産機魂の三人組がいた。

 

「いや、報酬の支払いがまだだったからさ。今回は助っ人ありがとうだろ」

 

 暴走する二人を諫めるのに苦労したのか少し疲れた顔のV・D。

 

「ま、今回は負けちまったけど、助かったお」

 

 反省しているのかどうなのか、全く負い目のようなものを感じる様子のないダイフク。

 

「僕らが不甲斐ないばかりにすみません」

 

 すっかり落ち着いてぺこぺこするデッキー。

 

 ほら、とV・Dに促されたダイフクがホロウィンドウを操作すると、セナにギフトアイテムが送られた知らせが届く。そこにはプラグインの「阿頼耶識(厄祭戦仕様)」を受け取った旨のメッセージが記されていた。

 

「──あっ、プラグインだね。バトルに夢中で忘れかけてた」

「……もしかして黙ってれば渡さなくてもバレなか──」

「──ダイフク君?」

「いやいや、さすがにやらんお? ちょーっとだけ考えたけどマジでバックレようなんてそんな」

 

 (こす)いことを考えたダイフクだったが、目にも止まらぬ速さで拳銃を抜いたデッキーがこめかみに銃口を押し当てたことで慌てて誤魔化す。

 

「本当ですかぁ~?」

「HAHAHA」

「……」

「ちょ、無言でセーフティ外すなお!」

「あはは。わたしが忘れてもレイが覚えてるからダメだよ。──うん。確かに受け取った。ありがと」

「こちらこそだろ。また機会があったら助っ人頼んでもいいか?」

「面白そうな相手ならいいよー」

「はは。なら、二人が相手したくなるようなフォースに対戦申し込めるよう、俺たちももっと上を目指して頑張るか」

 

 漫才のようなやりとりをするダイフクとデッキーを横目にV・Dは決意を新たにする。

 

「おっ、いい気概だね。アライアンスも結んだし、今度はわたしたちが援軍をお願いするかもね」

 

 このフォースバトルが始まる前、レイとセナのフォース「ゼラニウム」と量産機魂は同盟(アライアンス)──フォース同士の横の繋がり──を結んでいた。

 量産機魂はランクこそ低いものの、セナたちが周回していたミッションのHARDモードをクリアする実力を持ち、なにより量産機好きという拘りと機体のチョイスがレイには好ましかった。

 

「特にリーダーのキミの事、レイは褒めてたよ。キット化してない機体を自作して、あそこまでの性能にするのは凄いって」

「そ、そうか? そりゃ嬉しい──」

「後は操縦の腕が上がれば問題ないって」

「あっ、はい、善処するだろ……」

 

 上げて落とされたV・Dは気落ちするが、商品化されていないEWACジェスタを高い完成度で作り上げた彼のビルダーとしての腕は、レイをして注目するものがあったことは確かだ。

 

 こうして思わぬ出会いから行われてたフォースバトルは終わりを迎えた。




Tips

・フォース「量産機魂」

 男子中学生五人組のフォース。
 メンバーの内、V・D、ダイフク、デッキーの三人が同じ中学の同級生で友人関係にある。
 今回登場しなかった残りの二人のメンバーは県外在住。この二人もまた同じ中学の友人同士で、元々ダイフクたち三人で活動していた所に合流して結成された。

 元ネタは古のネット民ならわかるかも。
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