ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes 作:ほぼ読み専
何層にもわたる分厚い防衛部隊を抜け、ラビアン・クラブの迎撃圏内に進んだレイたち。
しかし、ここからがこのクリエイトミッションの真骨頂だった。
『ふん! やるではないか!』
「そちらこそ!」
巨大要塞を前にしてテンカワのブラックサレナと、ロータス卿のマーメイドガンダムがぶつかりあう。
ロータス卿の猛攻をかわして距離をとったテンカワを、マーメイドガンダムが投擲した
「させん!」
こちらを穿とうと迫る穂先。しかし、ブラックサレナの背後から伸びたテールスタビライザーの先端が、下から救い上げるように弾き飛ばす。
両腕を射撃兵装で塞がれているブラックサレナであるが、近接装備が無いわけではない。機体後部に装備されたテールスタビライザーは、いわば第三の腕であり、その先端にはGN粒子を固着させた強固な刃がついているのだ。
『操縦の腕、ガンプラの完成度、どちらも悪くない――!』
弾かれた銛を、柄の石突に繋がったビームワイヤーを使って手元に戻しながら、ロータス卿は満足そうに笑う。
「それはどうも――!」
ブラック・サレナが両腕のGNハンドカノンで偏差射撃を行うも、両手足を収納してシャチのような姿に変形したマーメイドガンダムは、水中を泳ぐ魚のような動きでそれをかわしていく。独特な挙動はテンカワをもってしても捉えることが難しい。
シャチの目にあたる場所からビームを放ち、牽制射撃をしながら近づいては、尻尾のヒレで切り付け。そうかと思えばMS形態になり、中距離から銛を放ってくる。かつてテンカワがレイに対してやったようなヒットアンドアウェイ。さらには慣れない動きに翻弄されて決定打を欠く状況が続く。
『隊長! 我々は二手に分かれて、突出した敵機と敵艦へ向かいます!』
「――させるかッ!」
『それはこちらのセリフだあッ!』
そうした攻防の中、ロータス卿の足止めには成功したテンカワだが、黒と赤のマーメイドガンダムたちをフリーにしてしまう。
「くっ……すまない、みんな!」
「いーよいーよ! わたしも雑魚狩りには退屈してたところだし! 歯ごたえのある相手は大歓迎!」
「こっちは心配しないで、アキト」
「ラピスさんの護衛が第一だけど、別に、倒しちゃってもいいんでしょ?」
不甲斐ない己に対して返ってきたのは、なんとも頼もしい仲間からのエール。
「……ああ。ありがとう!」
――落ち着け。焦るな。作戦は順調に推移している。
ラピスと二人だけのシミュレーションとは違う。今は背中を預けるに足る仲間がいる。ならば、自分は役目を全うするまで。
「ロータス卿! 覚悟! ――トランザム!」
『切り札を使うか! 面白い! 私を越えてみせろよ!』
覚悟を決めたテンカワの啖呵に、ロータス卿もまた実に楽しそうに応える。
色とりどりのビームに彩られた闇の中を、紅蓮を纏った黒百合が、紅い軌跡を描きながら飛翔する。
§
『敵艦から多数の小型機が出現!』
要塞からの警告に、ガンダム・カイムへと向かっていた黒いマーメイドガンダムの中で、
――この期に及んで艦載機だと?
そんなものがあるなら、なぜ防衛部隊の足止めに使わなかったのか。当然の疑問が脳裏をよぎる。
しかしそれも続く報告によって消え失せた。
『おそらくはプルーマの亜種であると思われます。数は多いですが、そのぶん個体の性能は低く、脅威度は高くありません!』
プルーマとは鉄血のオルフェンズに登場したMAハシュマルが作り出す小型無人機のことで、あの戦艦にはプラグインとしてあれらを生成するスキルが備わっているのだと考えられる。
送られてきたこちらのNPD機との交戦記録によれば、キルレシオはおおよそ五対一。五機使ってこちらのNPD一機をどうにか落とせるか、という程度。
――なるほど。開始すぐに使っては、ここまでもたないと考えたのか。
数が多いとはいえ、それは戦艦一隻が使うにしては、という前置きがつく。そして無限に生成できるわけでもない。
敵機の外見は黄色い装甲が特徴の、四脚に小さな羽を備えた昆虫じみたもので、武装も内臓式の小口径ビームマシンガンのみ。おそらくは一機だけ作ったものを読み込ませ、あとは全てデータとしてコピーしたものなのだろう。
――所詮は悪あがき。気にするものでもない、か。
ならば、自分は脅威度の高い敵へと集中するべきだろう。そう考えた側近は、カメラに捉えた機影めがけて牽制射撃を放つ。
『落ちろ! カトンボ!』
「やーだよー!」
背後を取っての射撃をカイムは斜め方向へのバンクからの上方宙返り――シャンデルであっさりとかわし、行きがけの駄賃に進路上のNPD機を機銃の餌食にすると、インメルマンターンのような挙動で背後へと回り込もうとする。
『戦闘機モドキが! 調子にのるなよ!』
シャチのような形態の黒いマーメイドガンダムは、セナの動きにすぐさま反応し、機体全体をくねらせて即座に反転。戦闘機では不可能なコンパクトな動きで機首をカイムへ向けると、セナの機銃射撃に合わせ、魚の頭部にある目の部分からビームを放って動きを牽制してくる。
「うわっ、変な動き!」
『水中だけが俺のテリトリーではない!』
咄嗟にバレルロールで機体をひるがえらせ、背面飛行になったカイムの真下を漆黒の魚影がすれ違う。
原作のマーメイドガンダムは水中戦に特化した機体であったが、ロータスたちのそれは、宇宙においても高い機動性を発揮できるようにカスタムされているようだ。
『そんな
「――言ってくれるねッ!」
カイムの姿からBWSを参考にした装備であると見抜いた側近が吠えると、セナの瞳に焔が宿った。決行日までレイが苦心し、ようやく作り上げた装備を
――証明してやる。
「
近寄ってきたNPD機へ向け、脚部に装備していた追加ブースターからミサイルをばら撒きつつ宇宙を駆けるカイム。その背後へぴったりと追従してくる側近の黒い機影。
『できるものか! 貴様はここで宇宙の塵になるのだ!』
弾幕砲火の飛び交う中を飛翔する二つの機体。シザーズやスプリットS、シャンデルといった戦闘機動でもって攻撃をかわしつつ、背後を取ろうとするカイムと、水中を泳ぐ魚のようなトリッキーな機動でそれを許さないマーメイドガンダムがもつれ合う。
航空機の操縦経験など無いセナがここまで機体を操れるのは、ネフィリム・ホロウの経験ともうひとつ。以前に傭兵をやった時、報酬として得たプラグインである【真なる阿頼耶識】こと【阿頼耶識[厄祭戦仕様]】による恩恵が大きい。
このプラグインを導入することで、GBNでのガンプラをネフィリム・ホロウで操作する
……もっとも、この独特すぎる、あるいは
『そらそらどうした! 威勢がいいのは口だけか!』
背後を取り続けてはいるものの、決定打のない状況に焦れたのか、側近が口を開いた時だ。
カイムが突然機首を垂直に起こすと、機体下部のスラスターを吹かして減速する。追随する相手へと背中を晒すその挙動は、コブラと呼ばれるマニューバに近い。本来はそのまま敵機をやり過ごして背後を取るのだが――
「――
セナはカイムの脚部ブースターを吹かしたまま、無理やり稼働させて推力を大きく偏向すると、持ち上げた機首を下げて
『なにぃッ!?』
逆さまになった
奇襲は成功。しかしカイムのほうも無事ではない。固定されていた箇所を動かしたため、追加装甲に干渉していくつかの装甲が弾け飛び、脚部ブースターにも亀裂が走る。しかしセナはお構いなしにスロットルを全開にして直進。
あわや正面衝突――と思われたその時、カイムが機体を九十度ロールさせる。
「天誅――ッ!」
そのまま二機が交差した後に残ったのは、
『バ、バカな……』
「
背部の追加ブースターから機体の横へと張り出した、一見すると宇宙では意味のない主翼のように見えるパーツ。その正体はカイムの特徴でもある巨大なレイザーブレイドだったのだ。
爆散する側近のマーメイドガンダムを見ながら、セナは追加装甲をパージする。直後に脚部の追加ブースターを含むパーツが爆発した。さすがに今の攻防で無理をさせすぎたせいだ。しかし、役目は十分果たした。
「さて、こっちは片付いたけど……そろそろ時間もヤバいし、作戦が間に合うかな?」
チャンスは僅か。だが、確実に訪れると信じながら、人型に戻ったカイムは近場のNPD機を掃討していくのだった。
§
戦場の後方に位置し、小型無人機【バッタ】を展開しながら、支援砲撃を続けるユーチャリスに赤いマーメイドガンダムが迫る。
『脅威度は低いが、その無人機はいいかげん目障りだ!』
「ラピスさん、進捗は!?」
「展開状況は九十パーセント。あと一分、いいえ、四十秒で――」
作戦の状況を確認したレイはイフリート・ゲヘナを操り、ミーティアの大推力を活かした高速移動で側近のマーメイドガンダムへ接敵。
「なら私がこいつを――ッ!」
『そのような大雑把な機動ではな!』
四門の高エネルギー収束火線砲からビームを浴びせかけるが、魚型に変形した赤い機影は巧みな挙動でロックオンマーカーを振り切ってしまい、全てをかわしてしまう。
交差する二機。ユーチャリスへ近づく敵機を追いかけ、レイもまた巨大な機体を強引に振り回し、かかるGを耐えながら旋回しては追随する。
「――ッ! なんて機動性ッ! くぅ、雑魚刈りには便利だけど――」
レイが密かに懸念していたミーティアの弱点が露呈する。多数を相手にするならば当たるを幸いに食い散らかし、戦場を荒らしてまわる活躍をするが、こと一対一の状況になると話が変わってくる。
大型の機体、加えてトランザムを発動させている状態では、GN粒子のスキル効果を受けてなお小回りが効かず、どうしても旋回半径を大きくとっての一撃離脱をするしかなくなるのだ。
そして今の状況においては、その僅かな時間が命とりになりうる。
『落ちろ!』
レイをかわした赤いマーメイドガンダムが、ユーチャリス目掛けてシャチのような頭部の目からビームを放つ。
「――! フィールド!」
咄嗟にラピスが展開させたGNフィールドによって敵の攻撃は阻まれる。しかし代償として支援砲撃が途切れてしまう。
唯一の武装である四連装グラビティブラスト――小型化した四門のGNブラスターは、GNフィールドの展開中は使用できなくなるためだ。
『身持ちが固いな! しかし、亀のようにこもっていては間に合わなくなるぞ!』
遅れてきたNPD機を伴って、さらに苛烈にユーチャリスを攻める側近。
「その発言はセクハラよ!」
『なんのことだ!?』
そこへ引き返してきたレイが、アームユニットの大型ビームソードを振り回してNPD機を次々に爆散させるも、やはりマーメイドガンダムにはかすりもしない。
どころか――
「きゃあッ!?」
「ラピスさん!」
もともと戦艦として武装面が貧弱なユーチャリスの弾幕を搔い潜ると、赤いマーメイドガンダムは尾ひれでもって四連装GNブラスターの一部を切り裂いてみせた。
『これで支援砲撃は封じた! そっちのミーティアもトランザムの稼働時間は残されていまい!』
悔しいが側近の言う通り、もう幾ばくかもしないうちにトランザムは切れる。ラピスの
――実のところ、当初に立てたテンカワたちのプランは完遂が危うくなってきている。
その原因は他でもない側近の赤と黒のマーメイドガンダムの存在。シミュレーションではこの二機のデータが少なく、そこまでの脅威度を設定していなかった。だが蓋を開けてみればNPD機へ的確に指示を出し、巧みにこちらを妨害してくる。バッタも予想以上の数が撃墜され、これが作戦の進捗に小さくない影響を与えていた。
この赤いマーメイドガンダムは厄介だ。この側近を片づけなければ、いずれ作戦に致命的な支障が出てしまうとレイは歯噛みする。
――だったら。
「ラピスさん! バッタであの赤いやつの動きをとめて! ――テンカワさん、プランBでお願い!」
「――了解!」
「――了解だ」
『なんだ!? 無人機どもが――ッ!?』
これまではラビアン・クラブへ向かっていたバッタたちが、側近のマーメイドガンダムへと進路を変えて向かってくる。
『チィ、鬱陶しい!』
個体の強さこそ雑魚そのものであるが、殺到、という言葉が当てはまるほどの数は脅威であり、潰しても潰しても途切れることなく飛んでくる。さすがの側近もこれには苛立ちを隠せない。
『だが、どれほど集ろうとも所詮は雑魚――!?』
「逃がすか!」
ひと塊となって飛んでくるバッタの群を引きはがそうと、マーメイドガンダムが機首を向けた先にはミーティアから発射された極太のビームが置かれていた。
『おのれ、的確に邪魔を――ぐっ!? な、なにを……!?』
咄嗟にビームを回避するため足を止めた瞬間、ひとつ、ふたつ、三つ四つ五つ……実に二桁近い数のバッタが赤いマーメイドガンダムに取りついて、ついに動きを止めることに成功する。
『な、め、る、なァ――!!』
だが、それも僅か数秒。魚型から人型に変形したマーメイドガンダムが、バッタの塊を内側から弾き飛ばして拘束を脱する。
「ここだ――!」
『なにぃッ!?』
しかしバッタの腹に覆われていた視界が開けた瞬間、側近が見たのは、こちらに飛んでくる二本のワイヤー。
ミーティアのアームユニットに追加されていたワイヤーアンカーだった。
『ええい、放せ!』
ワイヤーに巻きつかれてもがくマーメイドガンダム。だがそんな程度で切れるほどレイが用意した装備はヤワではない。あっという間に巻き戻したワイヤーによってミーティアに抱きつくように固定される。
――そこにイフリート・ゲヘナの姿はない。
『き、貴様、まさか――!』
「GNドライヴ、オーバーライドッ!」
太陽炉を入れたエンジン部分より、どう見ても危険な赤いスパークが見えた瞬間、相手の狙いを察知した側近は叫ぶが、もう遅い。
『ぐああああーッ!』
あえて暴走させたGNドライヴを自爆させることで、ミーティアごと赤いマーメイドガンダムは、宇宙にひときわ大きい花火となってポリゴンの塵となった。
「……展開状況百パーセント。アンテナを展開。アキト、いけるわ――!」
「――ッ! そうか! セナ君!」
「こっちはいつでも!」
「よし! やれ、ラピス!」
「了解!」
ロータス卿と戦闘中のアキトが号令を出すと、槍の穂先のようなユーチャリスから四本のアンテナが立ち上がり、わずかな間を置いて、
『ら、ラビアン・クラブのメインシステムがダウン! 迎撃装置が沈黙! こちらの操作を受け付けません!』
『なにぃ!?』
要塞からの報告に驚愕するロータス卿。これまで戦場を埋め尽くすほどの密度で放たれていたラビアン・クラブからの砲撃が一斉に止まったのだ。
「今だ!」
「いっくよー! おりゃー!」
テンカワたちがその隙を逃すはずもなく。すかさずセナのカイムが連結したレイザーブレイド、レイザーブーメランをラビアン・クラブの右腕、巨大なIフィールドジェネレータに向けて投げつける。
本来ならばラビアン・クラブの近接武装として有線操作式の巨大な爪があったのだが、完全に沈黙した要塞からそれが飛んでくることもなく。
あらかじめ周囲のNPD機を掃討していたこともあり、何物にも遮られることなくその巨大な刃はジェネレータの中心へと吸い込まれ、鋏のようなラビアン・クラブの右腕を上下に割断してみせた。
『Iフィールドジェネレータ破損! フィールドを維持できません!』
『くっ、いったいなにがどうなって――!?』
その時、ロータス卿は周囲に漂うあるものに目が留まった。それは無色透明でありながらも、注意して見ると時折偏光ガラスのように光を反射して――
『――そうか! ミラージュコロイド!』
ファイターとしても有能なロータス卿は相手が使った戦法にすぐさま気づいた。もっとも時すでに遅かったが。
ミラージュコロイド粒子。GBNではステルス系スキルとして【ミラージュコロイド・ステルス】が有名だが、seed外伝のアストレイには、これをキャリアーとして対象へ量子コンピュータウィルスを流し込む、【バチルス・ウェポンシステム】というものが存在する。
もちろんGBNでもこれのプラグインがあり、テンカワはそれを使ったのだ。
『ええい、00だけでなくオルフェンズにアストレイの装備まで……節操のないヤツめ!』
ロータス卿が突き出した銛がブラックサレナの頭部外装を抉り取るが、テンカワは気にも留めずに開き直る。
「なんとでも言うといい! 俺は俺の好きなものを再現するためなら手段を選ばない!」
戦場全体、とくにラビアン・クラブの周辺へと念入りに散布されたミラージュコロイド粒子。ではどうやってここまで気づかれずに展開できたのかといえば……バッタを使ったのだ。
一見すると数が多いだけの艦載機にしか見えない。しかしそれは欺瞞であり、真の役目は機体内部に収めたミラージュコロイド粒子を戦場にばら撒くことだった。
ラビアン・クラブのような巨大要塞へ影響を与えるほどに十分な濃度を散布するには時間がかかるし、一時的には乗っ取りに成功しても有効時間が短いが、なによりテンカワにとって「ユーチャリスにハッキング能力を持たせる」ことは原作再現のひとつであり、今回の作戦にあたり、そのギミックが偶然にも見事にハマった形になったにすぎない。
「……そして今、コアユニットを守るのはあなたとNPD機たちのみ!」
『――! やらせはせんぞ! 小僧!』
「いいえ、押し通らせてもらうわ!」
『なにッ!?』
テンカワの言葉にロータス卿が身構えた瞬間、彼を狙った複数のビームが遠方から飛来する。
咄嗟に銛を回転させてそれらを弾き飛ばしたマーメイドガンダムのカメラには、いつの間にここまで近づいてきたのかレイのイフリート・ゲヘナが映し出された。
「ここはまかせて! テンカワさんはコアユニットを!」
「ああ! 決めてくる!」
『させんと言っておるだろう!』
ブラックサレナを追いかけようとするロータス卿のマーメイドガンダムだったが、イフリート・ゲヘナの牽制射撃によって足止めを余儀なくされる。
「それはこっちのセリフよ!」
『ぬぅッ! この――ッ!?』
武装の関係から近接戦闘をしかけようとするロータス卿に対し、レイは巧みな回避機動とシールド捌きで間合いを詰めさせない。
『やるではないか! さすが、我が要塞に挑むだけはある!』
今回の挑戦者たちがいずれも手練れであることに嬉しさを感じつつも、いよいよ相手の刃が喉元まで迫ってきている事実に、彼の頬を冷や汗がつたう。
『だがたった一機の火力で破壊できるほど、コアユニットは脆くはないぞ!』
主催者の矜持としてあくまで余裕は崩さない。事実、ラビアン・クラブのコアユニットは、並大抵の攻撃では早々に壊れない耐久値が設定してある。
「くらえっ――!!!」
ブラックサレナが両腕のハンドカノンからコアユニットへ向けて最大出力のビームを照射するが、いくら彼のガンプラが高性能でもそれだけで破壊できるはずもなく。
「くっ……持たないか!」
限界を超えた照射時間の過負荷に耐えかねた砲身が内部から爆発してしまう。
そう。ロータス卿はテンカワとの交戦で分かっていたのだ。ブラックサレナは一撃必殺の大きな威力を持つ武装を装備していない。
……そして、そんなことは製作者であるテンカワ自身が一番わかっている。
「――プランBを実行するッ!!」
紅の軌跡を描きながら真っすぐにコアユニットが収められている場所へとブラックサレナが向かい、先ほどのビームにより開いた破孔から内部へと侵入する。
『!? なにを――』
咄嗟に敵の狙いがわからず戸惑うロータス卿だったが――
『コ、コアユニットブロックに侵入した敵機のエネルギー反応が急速に増大!』
要塞から聞こえた悲鳴のような通信と、要塞のカメラから送られてきたテンカワのガンプラの姿、破損した頭部外装から覗く
『ラファエルガンダム――!? ということは……まさか!!』
「――砕け散れ!」
テンカワの咆哮と同時にブラックサレナの外装に内臓されていた疑似太陽炉が暴走して大爆発を巻き起こす。
先ほどレイがやったことと同じ、故意にオーバーライドさせたGNドライヴによる自爆だった。その威力は三機の疑似太陽炉を使っただけあって、傷ついていたコアユニットの耐久値をほとんど削りきってみせる。
「リーダー自ら自爆するとはッ!」
本来ならレイのミーティアとユーチャリスの攻撃を用いてコアユニットの破壊を目指す予定で、ブラックサレナの自爆はあくまで保険であった。
しかし側近の存在がレイたちが立てたプランを狂わせた。
バッタの展開時間、GNブラスターの破損。ミーティアの喪失。もちろんその場合でもミッションをクリアするための算段は立てていて、これがそのプランBであった。
「だぁが、残念だったな! 未だコアユニットは健在だ!」
ロータス卿が吠える。事実コアユニットは未だ健在。プランBを以てしてもクリアは出来ないのか。テンカワの自爆と引き換えにした攻撃でもわずかに耐久値が残り――
「――ああ。だから、これで決めさせてもらうとしよう」
コアユニットのすぐ傍にGN粒子が集まると、外装を脱ぎ捨てたブラックサレナ、いや、【アキト専用エステバリス】カラーに塗装されたラファエルガンダム本体が出現した。
――【ボソンジャンプ】
テンカワの必殺技であり、GBNでは再現不可能とされていた、機体の量子化によるワープ。
「テンカワさん!」
「いっけー!」
ロータス卿の足止めをするレイと、レイザーブレイドを失いながらもNPD機を押しとどめているセナの声援に後押しされ、ラファエルガンダムが両手にビームサーベルを発振させ、ボロボロのコアユニット目掛けて突撃する。
ハッキングによって迎撃システムがダウンし、NPD機も間に合わない。側近は両方落とされ、自身もまた足止めされている。
残り時間は僅か。間に合うかは神のみぞ知る領域。しかし不思議とロータス卿には確信が生まれていた。
『……もはやここまで、か。フッ、見事だったぞ――』
ロータス卿が思わず先んじて賛辞を贈ろうとしたその時――
――世界が止まった。
Tips:【ユーチャリス】
武装
・四連装GNブラスター
原作の「四連装グラビティブラスト」を再現したもの。GBNのデータには「グラビティブラスト」はなかったため、00劇場版の「ガデラーザ」の設定を使っている。
火力は戦艦の主砲としては低い。しかし、速射性に優れ、MSサイズ相手になら充分な破壊力を誇る。
・艦載機
原作の虫型の無人戦闘機「バッタ」に似せた小型機を生み出す。これは【鉄血のオルフェンズ】に出てきた【ハシュマル】の機能を用いている。
機動力は高いものの、完全な自動操縦で火力も耐久性も低いため、慣れたダイバーなら簡単に撃墜可能。
しかしその真価は別にあり、機体内部にミラージュコロイド粒子を蓄えたタンクを備えて、それを戦場に散布することが目的。撃墜されても粒子そのものは散布される。
戦場に撒かれたこのミラージュコロイドを利用して下記のジャミングを行う。
・大規模ジャミング攻撃
原作アニメのジャミング機能を再現したもの。
ミラージュコロイド粒子をキャリアーとして敵にコンピューターウィルスを送信する。これはASTRAYに登場した【バチルスウェポンシステム】を使っている。
コロイド粒子の散布状況にもよるが、戦場のほぼ全体をカバーするほどの広範囲に効果が及ぶ反面、持続時間は短く、ダイバーが直接操縦するガンプラには多少動きが鈍くなる程度の効果しかない。ただし、自動化された設備や自動操縦に任せているビット系は完全に無力化が可能。
ロータスチャレンジではこれを用いて敵要塞「ラビアンクラブ」の対空砲を一時的に無力化させることに成功する。
キャリアーとなるコロイド粒子は艦載機にて散布される。
・巨大GNフィールド
原作の「ディストーションフィールド」を再現したもの。
艦全体を覆うほどの巨大なGNフィールドを形成する。
概要
劇場版ナデシコで登場した宇宙戦艦を、テンカワが二年の歳月をかけフルスクラッチで再現したもの。
ガンプラ一機を格納、運搬することができるほかに、原作を意識した武装を持つ。
原作の機能を再現するためにSEED ASTRAY、オルフェンズ、00の設定を主に武装面に転用している。
メインの動力はPGエクシアから流用した太陽炉。これによって太陽炉の「重量軽減効果」が適用され、戦艦ながらも軽快な動きを見せる。
00のプトレマイオスと異なり艦そのものに太陽炉を搭載しているため、扱える粒子量が豊富で攻撃力防御力ともに高い。
トランザム発動時は劇場版00のガデラーザじみた挙動を見せ、戦艦とは思えない機敏な機動を可能にする。