ガンダムビルドダイバーズ Behind the scenes 作:ほぼ読み専
中途半端な状態ですみません。
両手にビームサーベルを携えたカイムと、
『あれ? あれあれあれ~? 大切な
遠くで大きな爆発が起こり、レーダーから敵機の反応がひとつ消えたのを確認したマスダイバー、ミコトことオロチが殊更に挑発するような声音で問う。
「? なにが?」
『ハァ? なに? もしかして仲悪い? オトモダチが負けちゃったのよ?』
「親友だけど。それはそれ。これはこれ。レイの戦果はレイだけのもの。それにわたしがどうこう言うのは、ただの侮辱だよ」
『なによそれ……』
「――うーんと、ね。
『は? トモダチなんてなれ合うもんでしょ』
セナの反応が全く理解できず、心底不思議そうに首をかしげるオロチ。彼女の主観では学校で同級生たちが作る友人関係とはそういうものだった。
「わからないならいいよ。わたしたちの関係を理解して欲しいわけじゃないし。それより、その回避マニューバのパターンに見覚えあるんだけど……もしかして、
『あん? なによ、アタシのこと知ってんの? どっかで負かしたっけ?』
挑発に反応がないことに少しイラっとしながらも、ネフホロ時代のプレイヤーネームを言い当てたセナに訝しむように返す。
「やっぱりそうか。ちなみにだけど、最後に負けたのそっちだよ――
『――あぁ、はいはい。ってか、アンタだったの……よくもアタシのお誘いを蹴ってくれたわね』
カイムのコクピットに出現したホロウィンドウには、ピンクの髪をツインテールにした八重歯が印象的な少女の姿が映し出され、こちらを恨みのこもった瞳で睨みつけてくる。
『ま、それはいいわ。こっちじゃオロチよ。ヨロシク~』
「セナだよ」
『あっそ。で、セナ、改めて誘ってあげるけど、アタシとシャンフロやらない?』
「ヤダ」
『こいつ……ッ!』
呑気に会話をしながらも、彼女らの機体は互いに激しい攻防を繰り返している。
ラドが上段から振り下ろした刃をカイムが左腕のビームサーベルで受け流し、その力を利用して機体を回転させて右腕のビームサーベルで切り付ければ、逆手持ちしたサークルチョッパーで受け止める。
『こーんなツールが放置されてるゲームなんて、どうせすぐサ終するわよ?』
「さすがー。チート使ってる本人が言うと説得力あるね……シャンフロでもチートしそうなのとは組みたくないって言えばわかる?」
『……ぶっ潰してやるッ!』
「やってみなよ!」
距離を取った二機。ラドの背部からサブアームで接続された二丁のビームデフューズガンが脇下へ構えられると、二つの砲口から拡散ビームの雨が放たれる。
降り注ぐビームの中、わずかな隙間を縫うようにしてセナは巧みな挙動で回避すると、すかさずウィングスラスターに内臓されたドッズライフルで応射をする。しかしMA形態へと変形したラドは恐ろしい加速力でもって偏差射撃の射線すら振り切ってしまう。
二刀を接続して完全な円形となったサークルチョッパーを機首へ備えたラドが突撃してくるが、カイムはわずかに機体を翻して回転する刃を躱し、反撃に慣性モーメントを利用した蹴りによる斬撃を叩き込もうと足を振りぬく。
それに対して即座に人型へと変形したラドは、カイムの脚部に装備されたレイザーブレイドの刃を腕部に備えた実体盾で逸らし、両機は再び近接戦闘の間合いを取ると、互いに相手の顔をにらみ合った。
「チート使ってるクセにやるじゃん」
『っさいわね~。こっからが本気よ! パーメットスコア・フォー!』
再び得物を構えた両機は相手を叩っ斬るべく殺意マシマシでスラスターを全力稼働させ、沈黙が支配する宇宙を駆ける。
「――ッ! 速い……!」
『言ったでしょ~? こっからが本気だってさァ――!』
データストームによる影響を再現したエフェクトである、顔に赤く発光する痣が浮き出たオロチが得意げに笑う。
【プラグイン:GUNDフォーマット】は水星系のガンプラのみに使用できるもので、段階的なブーストスキルに分類される。
パーメットスコアが一の状態が通常で、二までならノーリスクで使えるが強化は微々たるもの。三以降は水星由来のビット兵器【ガンビット】が使用可能になるが、ここからスリップダメージが発生してダイバーのライフがじりじりと減るようになる。
ダイバーのライフがゼロになった場合、コクピットを撃破されたと判定されバトルアウトしてしまう。
三から四に引き上げたさいの強化率はかなりのものだが、ライフの減少スピードも早くなり、使い慣れていないとうっかり自殺してしまうという諸刃の剣。さらに最大の八まで強化するにはトランザム同様にガンプラの作りこみが求められる。
『そらそらどしたの~? もっと速くなるわよ~? パーメットスコア・ファイブ!』
宇宙を縦横無尽に飛び回り、足を止めたカイムを切り刻むべくサークルチョッパーを振るうオロチ。
MA形態で急速接近し、MSに変形しての斬撃による急襲。これに対してセナは防戦一方を強いられる。
状況を打破しようと、MA形態で離脱するラドにカイムもリミッターを解除して追いすがろうとするが……どうしても追いつくことができない。完全に速度で負けてしまっているのだ。
これはブレイクブーストの効果だけではない。純粋にクロウの作ったガンプラの性能が高いことが理由でもある。マスダイバーに身をやつしても、レイの師匠なだけあって彼のビルダーとしての腕前は一流だった。
「カイム、頑張って――ッ!」
『あっははは! 無駄無駄~! そんなポンコツじゃラドには追いつけないわよ!』
「――なんてねッ!」
完全に調子に乗っていたオロチは気づいていなかった。追いかけるカイムがウィングスラスターのドッズライフルで牽制射をして飛行ルートを誘導していたことに。
『――ッ!?』
そしてその先には、あらかじめ投擲していたCファンネルが軌道を合わせていて――見事にラドの腰部スラスターを貫いた。
――そう。
アンチドートによって誘導装備を封じられたセナは、Cファンネルをまるで手裏剣のように使ってみせたのだ。
「天誅――ッ!」
『――なめんじゃないわよッ!』
下半身が爆発して脱落しながらも、無理やり変形したルブリス・ラドがデフューズガンを最大出力で解放。しかしセナは構わずその中へと突っ込んでいく。
いくらナノラミネートアーマーがあるとはいえ、相手はブレイクデカールを使っている高性能機。完全に防げたのはほんの僅かで、あっという間に塗装が剥離しカイムの装甲が融解していく。
「――ここだけ持てばそれでぇッ!」
弾かれて拡散するビームの光と爆炎を抜けてカイムがビームサーベルを振りかぶる。その姿はすでに満身創痍でフレームからはあちこちからスパークが起き、いつ停止してもおかしくない状態だ。
『しぶといわねぇ! さっさと落ちなさいよ!』
ビームサーベルを実体盾でガードしたオロチが毒づく。
「わたしがしぶといのは知ってるでしょ――!」
サーベルの出力に任せた溶断は不可能と即座に判断。脚部のレイザーブレイドを振りかぶり――『――ッ!』――つま先からトラッシュクローを展開し、ラドの実体盾を掴むと、機体を大きくひねって無理やりむしり取った。
『テメぇ! よくも!』
機体の回転する慣性を用いて連続回し蹴りのようなモーションでもって、盾を掴んだのとは逆の足を突き出す。踵に仕込まれたヒールバンカーでのコクピット狙い。
しかし――
『アハッ、ざんね~ん』
「――再生した!?」
つま先からビーム刃を発振したルブリス・ラドの足が下から振りぬかれ、カイムの脚部を切断する。脱落したはずの下半身は、ブレイクデカールの力で復元されていた。
『アタシに逆らうならもういらない。ブザマに千切れちゃえ!』
バランスを崩したカイムの胴体に左右からサークルチョッパーの刃が食い込む。
刃の部分に手をかけて拘束から逃れようとしたカイムだったが、直後、肘から先がバラバラになった。リミッターを解除したパワーに、ダメージを受けていたフレームが耐えきれずに限界を迎えたのだ。
「――まだ、ぁッ!」
四肢を失いレッドアラートで真っ赤に染まるコクピットの中、セナはウィングスラスターを無理やり動かし、ドッズライフルでルブリス・ラドの頭部に照準を合わせる。ここまで来たならもはや本能による行動だ。勝てるか勝てないかは問題ではない。セナの中の本能が、黙って敗北を受け入れられずに体を動かしているだけだ。
至近距離からビームで貫かれたラドの頭部が首だけを残して円形に抉れ――逆再生される映像のようにすぐさま復元される。
『無~駄。じゃあね~セナ。最後に教えたげる。――
「それは、どういう――」
『おしえな~い。アタシの誘いを断ったこと、後悔するといいわ』
その言葉を最後にセナは一瞬、意識が途切れた。バトルアウトしたのだ。
無重力の闇に胴体を割断され、二つになったカイムが力なく漂い、少ししてからポリゴンの欠片となって消失していく。
『そっちも終わったか?』
『あら、お疲れ~。あのピンクのは?』
『ガンヴォルヴァと一緒にもう片付けた。GN粒子の切れた太陽炉搭載機なんざただの的だ』
レイとセナ。それぞれの過去に因縁のある亡霊たちが、GBNへと降り立った。
§
セントラルロビーの大型スクリーンにロータス卿とテンカワの姿があった。
『不具合のせいでクリアとはいかなかったが、ラビアン・クラブをあそこまで追い詰める戦略、実に見事だった!』
『……ええ。正直、いけると思っていたんですがね』
この場は彼の好意によって用意された勝利者インタビュー、ではなく、敢闘賞インタビューの場で、不運にもクリア目前で予期せぬトラブルにより失敗してしまった挑戦者を労うため急遽設けられた。
『ハッハッハ! うむ! 私も個人的には君たちをクリア扱いして良いとは考えたのだがな! ……しかし協議の結果、それではこれまでの挑戦者たちも納得しないのでは、という結論になってな。本当にすまない!』
そう言ってテンカワにしっかりと頭を下げるロータス卿。
『システムの不具合ですから……今回は諦めます。また、リベンジしますよ』
『うむ! こちらも内容をさらに改良して待っているぞ!』
そこにいるのはテンカワ一人。彼が代表ということで出席をしてもらっている。セナはそういった催しに興味はないし、なにより先にログアウトしてしまったレイの様子が気になってそれどころではなかった。
――結局。
ロータスチャレンジは失敗に終わった。
扱いとしてはミッション中に起きた不具合による強制終了として処理された形だ。
ロータス卿自身はマスダイバーが乱入してすぐに死角からの攻撃で撃墜されたため、その後に起こったことを把握できていない。ラビアン・クラブに詰めていたメンバーも、コアユニットが破壊されたことで全ての機能がダウンしており状況を確認できなかった。
マスダイバーが乱入して以降の出来事がログに残っていない以上、ロータス側に訴えてもどうにもならないとテンカワも考え、仕方なく結果を飲み込むことにした。彼もまた大人であり、そういう意味でもリーダーであるということ以上にこの場を任せるには適任だった。
「マジかよ……ついにロータスチャレンジをクリアするヤツが出るかと思ったのになー」
「しかしツイてないよな。システムの不具合が原因だぜ? 俺だったらしばらく引きずるわ」
モニターを見ている誰かの会話を聞き流しながら、セナもまた同じようにロビーエリアでぼーっとモニターを見上げていた。
「……セナちゃん、大丈夫?」
「あ……ラピスさん」
「その、今回は……」
メンバーの中で真っ先に落ちたからか、少し気まずそうなラピスが何か言いよどむ。
「……んーん。いいよ。あれは仕方ない。マスダイバーに負けたことも含めてね」
「……」
「勝ちさえすればよかったんだ。そして、わたしは負けた」
「それは仕方ないわ。だって相手は――「それでも、だよ」」
「
どこか茫洋とした、視点の定まらない瞳でモニターを見上げるセナ。彼女には何が見えているのか、ラピスにはわからなかった。
――その拳が震えるほどきつく握りこまれていること以外は。
『さて、そろそろお開きとしよう。今回は本当に――』
『最後にひとつ。いいだろうか』
終了を宣言しようとしたロータス卿をテンカワが遮る。
『む。なにか次回の挑戦に向けての決意表明かね? まあいい、許可しよう』
ロータス卿が一歩下がり、演台を譲られたテンカワが前に出る。
『ありがとう。では――この放送を見ているダイバー諸君! アニメ機動戦艦ナデシコはいいぞ! みんなで見ようッ!!』
『……うむ。君のガンプラのモデルになった作品だな。確かに、良い出来だった。ここはGBNだが、ガンプラは自由だ。皆も気になったらぜひ見てみるといい!』
後方で腕を組み、うんうん頷くロータス卿を背景に、高らかに拳を振り上げ、最後の最後にやりたかった宣伝をしたテンカワは、バイザーで隠されていてもわかるほど実にイイ笑顔をしていた。
「……良かったね。アキト」
そんな夫の姿を見たラピスが柔らかく微笑む。
「……ふふ。テンカワさんらしいね。はぁ……それじゃ、わたしもログアウトするよ。ラピスさん、お疲れ様」
「ええ。お疲れ様。今回はありがとう」
「うん。テンカワさんに伝えておいて。ミッション、楽しかったよって」
あんなことがあったのにすぐに気持ちを切り替えて、自分のやりたいことを貫くテンカワの逞しさに、少しだけ緊張が抜けたセナは、そう言って手を振るとそのまま消えていった。
§
「……ん」
自宅のVRゲーム用チェアの上で世那の意識が覚醒する。
少しだけそのままぼーっと天井を見てから、一度ぎゅっと目をつむる。
「……次は、負けない」
決意と共に起き上がる。隣を見ると、そこには同じ型のVR用チェアがあるが……いつもいるはずの友人の姿はなかった。
「……嶺」
床に降りて、普段二人が使っているローテーブルのある場所まで行くと、
『ごめん。先に帰ってます 嶺』
千切られたノートの切れ端に書かれたメモが置いてあった。
普段の綺麗な字と比べ、震えて、乱雑に走り書きがされたメッセージ。
「相談、してくれないんだ……」
あの乱入してきたマスダイバーとの戦闘中、レイは明らかになにか重要な事に気づいて動揺していたのは知っていた。
だが、嶺は一人で抱えこんで、世那と共有するという選択をしなかった。
なれ合うだけが友人ではない、とは言ったが……プライベートな事で全く頼られないというのはあまりにも寂しい。
……いや、もしかしたら、それだけショックを受ける事があったのかもしれない。
「イフリート・ゲヘナ、置いてっちゃってるじゃん……」
VRチェアの近くに設置されたダイバーギアの上には、ミーティアを装備したイフリート・ゲヘナが置きっぱなしだった。
あの嶺が、ガンプラの管理を疎かにしている所を見たことがない彼女が、愛機を持って帰るのを忘れるくらいにショックを受けている状態に、事故を起こさず帰れたのかという心配がつのる。
「わたしが自由に外へ出られたらいいのに……」
そうすればすぐにでも嶺を追いかけて、無理やりにでも事情を聞きいているのに。
とりあえず携帯端末でイフリート・ゲヘナの写真を撮り、「忘れ物だよ」と一言添えてからメッセージアプリで送信する。
今の世那にできるのはそれだけだった。
Tips:【ガンダムルブリス・ラド】
素体キット:HG ガンダムルブリス・ソーン
武装
・ビーム・ディフューズガン×2
ビームの収束率と出力を可変できる大型のビーム・ライフル。
高威力の収束弾、広範囲を攻撃できる散弾を使い分け可能。照射時間も長く「散弾を照射→そのまま収束させて貫通」という芸当もできる。
銃身に展開ギミックが仕込まれていて、これによって冷却効率が上昇、連続使用が可能となる他、より収束と散弾の威力が上がっている。
ヴェスバーのようにサブアームによって懸架され、ノーハンドでも射撃が可能。
・フェーズドアレイキャノン
指向性の高い大出力ビームを放つ他、GUNDフォーマットによってMS型ガンビット「ガンヴォルヴァ」を三機展開可能。
いわゆる「誘導レーザー」を放つことが可能で、いくつもに枝分かれした指向性を持ったレーザーを発射するほか、収束させた強力な一撃を放つこともできる。
・ビーム・サーベルユニット×2
両前腕部に装備された内蔵式のビームサーベルユニット。発振器を内蔵した基部が回転することで展開する。
発振機を握らずともビーム刃を展開可能で、とっさの対応力に優れる他に出力が調節可能。最大出力時は通常の手持ち型ビームサーベルを凌駕する。
・脚部ビームサーベル×2
つま先部に小型の発振機を備え、ビーム刃を展開できるようになっている。こちらは腕部のものと異なり出力の調節は不可能。あくまで奇襲用の装備。
・クローシールド
左腕部に装備される実体盾。原型機とは異なる形状で、MA変形時には機首になる。
電磁バリアを展開することで優れた防御性能を発揮するが、製作者によって耐ビームコーティング塗装もされているため、そのままでもビーム兵器には高い防御力を誇る。
先端にキュリオスのGNシールドに似せた打突部を持ち、同じくクローとして展開することができる。さらにソードストライクのように先端部のみを射出することも可能で、これはワイヤーで盾と繋がっている。
・サークルチョッパー×2
ギミックの仕込まれた特徴的な形状の巨大な曲刀。
刀身には節があり、刃は鋸のようになっていて、通常は背部に二つを組み合わせて円環状にした状態でマウントされている。
節ごとにビームワイヤーで連結されていて、連結を解除することでいわゆる蛇腹剣としても機能する。
さらにグリップを側面に倒し、二つを連結して円環状にすることも可能で、MA形態の時にはこの円環の中に機体を収め、ザンスカールのタイヤのような状態で敵機へ突撃することもできる。
円環状になった際、まるで丸鋸のように刃が回転して凶悪な切断力を発揮する。
概要
高い機動性を活かしたヒットアンドアウェイをメインに据えた高機動機。
ガンダムWのエアリーズのような簡易的な変形機構を持ち、脚部を折りたたみ、シールドを機首にすることで高速巡行形態になる。
名前の「ラド」とはルーン文字で「車輪」を意味する。合体させたサークルチョッパーの形状から。
可変機構を用いた一撃離脱戦法を使うために速力の強化に注力。背部に追加スラスターと安定翼を備え、さらに脚部のみを変形させてブースターとすることができる。
直線軌道はブースターで速度を増し、攻撃時は脚部を展開して機体の重心を安定させることで旋回性能と射撃精度を上げることができる。