"Stay, Heaven's Blade" Fate said.  “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。”   作:haru970

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くるくるくるくる回る歯車。

狂いは無く、回る、回る、回る。

その中に一つの歯車が足される。

既に回る歯車達は果たしてこの新しい歯車に回転を合わせるのか否か?

それは『運命』のみぞ知る。
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前半の文章はイリヤの思考(?)メインです。



第10話 Down the Hole We Go

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 イリヤスフィール 視点

 ___________

 

 私の名はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。 聖杯戦争の為だけに鍛え上げられ、第五次聖杯戦争におけるバーサーカーのマスター。

 

 とは表の事情と建前。 

 本当は約束を破って私を迎えに来なかったキリツグに仕返しをする為に私は日本という極東の島国に私自らが来た。

 

 そこでキリツグはもう死んでいて、彼には養子がいた事を知っていた私は深い怒りと………………興味を持った。

 何せ血は繋がってはいないけど私の『家族』に当たる人達になる。

 私の……………

 

『お兄ちゃん』には冬木市に着いて割とすぐに会えた。

 だけど余りにも無防備だったから忠告はしておいたけど理解していなかったみたい。

 まるで何も聞いていないかのように。

 

 次に会った時には少し驚いた。

 何せ()()セイバーを召喚していたのだから。

 キリツグと()()サーヴァント。

 

()()()()()()()。』 

 それを考えただけで胸が高鳴り、ゾクゾクしたわ。

 

 でも()()()は少し違った。 すごく体調が悪く見えて、今にでも死んじゃうような、弱そうな奴。

 

 ()()()()()()()

 

 許せない。

 許せなかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何で?! 

 

 何で何で何で何で何で何で何で何で?!

 何で()()()()()()()()()使()()の?! 何で()()()()()()()()()()()()()の?!

 何で?!

 

 不愉快だった。

 消えて欲しかった。

 

 そして()()を庇う『お兄ちゃん』。

 

 分からない。

 分からない分からない分からない分からない分からない。

 

 分からない事だらけ。

 

 そう思い、再度リズとセラ達に『衛宮士郎』と『衛宮三月』の情報を集めるように言った。

 何か見落とした事があるのか?

 何か私の知らない事があったのか?

 何か。

 何か何か何か何か何か何か。

 

 そして次に会ったと思ったらリズが『衛宮三月』を()()()()()()()()()、『衛宮三月』は危機感を持っていなくてセラに怒られて、リズが意外と私と話すときみたいになって……………

 

 不思議だった。

 不思議でしょうがなかった。

 思わず笑ったほどに。

 だって可笑しかったのだから、色々と。

 

 知りたくなって。 話をして────

 

 

 ────私はムカムカした。

 

 私の聞いた事が無いキリツグの話。

 私を何度も迎えに来たらしい。

 信じられなかった。

 「嘘」と思わず声に出して否定した。

 私はそんな事を一度たりとも聞いていないからだ。

 

 そうしたら────

 

「じゃあ、一緒に視る? 『衛宮切嗣』を?」

 

 ────と答えが返って来た。

 

 何の事か分からなかった。

『遠見』とか『憑依』の魔術の応用?

『亡くなった人に余程親しい人でないと拒絶反応を起こして術が失敗する』?

 

 いいわ、敢えて私達アインツベルンが得意とする魔術で私に何かをしようと言うの?

 しかも首を刎ねても良いですって?

 上等よ、()()の貴方の首を生きたまま部屋に飾ってやる!

 

 そこで過保護なセラを説得して、私は()()の言うとおりにして…

 

 

 

 暗かった。 周りは見渡す限りの闇。 上も下も、右も左も、自分の手足さえも見えなくて体の感覚が無くて、まるで『私』しか存在しないような、暗くて寒くて酷く寂しい深海の中にいるような……

 その様な場所に、光が現れて私を包んで────

 

 

 ___________

 

 イリヤスフィール(?) 視点

 ___________

 

 

 ────()は『キリツグ(衛宮切嗣)』だった。

 

 アリマゴ島(知らない場所)(キリツグのお父さん)と言う『(元凶)』を殺した。 でないともっと犠牲者が出るから。

 

 育ての女性(知らない女性)に出会って一緒に暮らして学んだ。 魔術師達のような者の所為で、世界中に『アリマゴ島』が起きていた事を。

 

 ナタリア(育ての女性)を殺した。 大を生かす為に小を捨てた。()()()()()()()()()()()()()。 それだけだ。 

 

 ()は死ぬ理由の無い者達()を理不尽な死から救うため、死ぬしかない誰か()を殺した。

 

 それのどこが間違っているというのか? それが「正義(正当化)」でなくて何だというのか?

 

 ()は殺した。

 殺して殺して殺して殺しまくった。 来る日も来る日も、相手が誰であろうと『悪』がいれば()は殺した。

 

 そしてイリヤ()が生まれた。

 幸せだったと同様に悲しかった。

 全てを救う為に全てを捨てる事を決意したはずなのに、(お母様)()を本当に心から愛してしまったから。

 

 そして()は心を殺し、(マスター)を殺し、『理想』の為に(お母様)をも捨てて聖杯を手に入れて────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────絶望した。

 

 聖杯は()()()()()。 『破壊』でしか望み()は叶えられない。 望みを掛けなくても()()()は『破壊』と死をまき散らし始めようとしていた。

 ならば()の取る行動は一つ。

 

「第三の令呪を以て、重ねて命ずる────!」

 

「────やめろぉぉぉぉ────!!!!!」

 

 ()の決意に反して、『彼女』は悲痛な声で叫んだ。

 

「やめてくれ」と。「何故」と。 今まで見せた事のない色々な感情を露にしながら。

 

 時間があれば話は別だが、今は一刻を争う。

 

 もう既に良くない()が溢れ始めている。

 

 ごめん、アイリ。 君の決意を無駄にして。

 

 ごめん、イリヤ。 君のお母さんを殺してしまって。

 

 ごめん、舞弥。 君の期待に応えられなくて。

 

 ごめん。

 

 ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん。

 

 ()は何度も心の中で謝りながら、嫌がる『彼女』に命じた。

 

「────()()()()、聖杯を破壊しろ!」

 

「ッ────ウワァァァァァァァァァァァァァ────!!!!!」

 

 そして()は死に至る呪いを受けた。

 体の痛みに慣れたつもりだがこれは別格だ。

 

 町は燃えた。

 いつか見た紛争地帯などに等しい。まさかこんな光景を『日本』で見るとは思わなかった。

 

 人が大勢死んだ。

 男も女も子供もみんな黒焦げに焼け、灰になる寸前。 手に取れば原形を留めずに塵へと崩れ去った。

 

 ()は結局、何一つ救えなかった。

 ()の所為だ。

 ごめん。

 

 いや、訂正しよう。

 

 若い子供二人を見つけた。

 まだ生きていた。

 生き地獄の中を。

 ()が作ってしまった地獄の中を。

 

 

 

 ああ、生きてくれてありがとう。

 

 

 

 

 そこから断片的に()(感じ)た。

 

 ボロボロになって行く身体に鞭を打って、イリヤを迎えに養子の二人に「旅行」と偽り、ドイツのアインツベルン城を訪問するが彼らを裏切った()を森の結界は決して通さず、娘のイリヤ()との再会は二度と叶わず、時が過ぎる度に弱っていく様を、視界と共に精神が徐々にぼやけていった。

 

 そして最後にほとんど何も見えない状態で声が聞こえる。

 キリツグの声を。

 

 

 

「僕はね、正義の味方(ヒーロー)になりたかったんだ」

 

 

 

 ___________

 

 イリヤスフィール、三月 視点

 ___________

 

 

「…………………」

 

 イリヤスフィールが気付いて目を開けると、冬木市の公園のベンチで三月と額を合わせた状態のままのよう……だった。

 

 何せ周りが未だにぼやけていて、音もどこかノイズ交じりに聞こえた。

 まるで、深い水中の中にいるような感覚でイリヤスフィールには感じた。

 

「お嬢様?! ご無事ですか?」

 

 徐々に視界と聴覚が元に戻り、セラの焦った声と顔がイリヤスフィールには見え初めた。

 

「お嬢様?!」

 

「………あれ? セラ? 私………」

 

 イリヤスフィールは寝ぼけているような感じで心配して顔を覗くセラを見る。

 

「急に黙り込み、さっきから声をかけていたのに返事をしなかったものですから心配していたのですよ?!」

 

「私……………………あれからどの位の時間が経ったの?」

 

 何せ断片的にとは言え、イリヤスフィールは男一人の半生を()()したのだ。 

 

 数時間後だったとしても不思議ではない。

 

「何を言っているのですか? ()()()()()()()()で、私がお嬢様の状態を確認しようと声をかけたところ、返事が無かったのでリーゼリットがソワソワし始めたのが今ですが?」

 

「え?」

 

 イリヤスフィールは周りを見て、公園に設置してある時計を見ると針は動いていなかったように見えた。

 

「そう………ほとんど時間は経っていないのね」

 

 イリヤスフィールは視線を半開きで、焦点の合っていない三月の目を見て一瞬寒気が思わず走った。

 光の無い目の奥が────

 

「────ハッ?! あ、あれ? 終わった?」

 

 パチクリとしながら三月は?マークを頭から発する。

 

「…………ええ、そうみたい。 気が付かなかったの?(今のは()()()()()?)」

 

「いや~、これってかなり特殊でさー。(よっしゃあ! 上手くいったっぽい! ()()()()()()()()()()けど…)」

 

「そう………何で私に()()()()を見せたの?」

 

「へ? 『なんで』って………………………………強いて言うのだったら『おじさんの事を知って貰いたかったから』、かな?」

 

「………………………………セラ、リズ。 帰るわよ」

 

「ぅえ? お嬢様?」

 

「分かった」 ←棒読み

 

 イリヤスフィールが立って、帰るのをメイドの二人に宣言すると三月は声をかける。

 

「あ、イリヤスフィール────」

 

「────イリヤで良い」

 

「あ、じゃあイリヤで。 おじさんのお墓参りに実は近い内に行くつもりなんだけど、一緒にどう? 例えば明日とか」

 

「………………………考えておく」

 

 振り返らずにイリヤスフィール────イリヤ達は公園を後にし始める。

 

「ここで待ってるからー!」

 

 三月はベンチから降りてイリヤ達に言う、が彼女は振り向きもせず場を後にした。

 セラはイラついたような視線を三月に送り、リーゼリットは三月へ振り返って手を振った。

 

「…………やっぱり………………駄目だったのかな? ……………ハァ~、緊張した」

 

 三月がため息混じりにトボトボと帰宅し始めると金髪の青年に道ですれ違う。

 

 一瞬見惚れたのは別に金髪で整った顔の所為ではなく、血のような赤い眼が珍しかった。

 

「ほう? 貴様、()()()()

 

 そして急に上から目線バリバリで三月に話しかけた。

 

「………ハイ?」

 

「『奇を衒う』のは程々にしておけよ────()()()()()()()()()()

 

「?????」

 

 一瞬立ち止まった青年は歩き出すと三月は頭を傾げていた。

 最後の方、金髪青年は何か言っていたような気がしたが吹いた風に遮られたのか、三月は上手く聞き取れなかったようだ。

 

「変なの…………あ! 食材が時間的にヤバイ!」

 

 三月はいそいそと帰るのだった。

 

 イリヤは帰りの車の中でただ静かに窓の外をボ~っと無表情に見ていた。

 

 普段なら車を運転したがる彼女が「帰りはリズに任せても良い?」と言い、メイドの二人はそれなりにビックリした。

 そして帰り道の間、不自然な程に黙り込むイリヤに、セラやあのリズでさえ不安を感じ、何とか会話をしようとしてもイリヤからは茫然とした生返事しか返ってこなかった。

 

「………………………ねえ、セラ? ちょっと、ぎゅ~って抱きしめてもらっても良いかな?」

 

「ッ! も、もちろんですともお嬢様! ささ、こちらへ!」

 

 ここでやっとイリヤらしい仕草をした事に対して、いつもは甘やかすのに躊躇うセラはホッとした笑顔でイリヤを躊躇無く抱く。

 

「………………………………………………ウェ………ヒグッ…………ヒッ…………グスッ…………ウェェ…………………………」

 

 セラを力いっぱいに抱きしめ返して、顔を深く埋めたイリヤは声を殺し、すすり泣いていた。

 

 アインツベルン城の帰りの道をずっと、セラを強く抱きしめながら泣いた。

 

 

 ___________

 

 三月 視点

 ___________

 

 

 そして今、衛宮邸に腕を組みながら仁王立ちをしている三月とセイバーの二人の前にボロボロの士郎は正座していて、横で見ている凛からすればなんともシュールな絵図だった。

 

「「で? 申し開きはあるの/ですか、兄さん/シロウ?」」

 

「め、面目ない……………」

 

 士郎は帰って来るなり、ボロボロになっていた制服と腕の傷でただ事では無いと悟った三月はそのまま玄関で彼に正座をさせてセイバーを呼んだ。

 

 そして士郎は一緒に来た凛と共に事情を説明された。

 

 学校にほとんど人がいない状態でマスターの自覚がない士郎にイラついた凛が襲い、あと少しと言ったところで僅かに残っていた生徒の一人が悲鳴を上げてライダーに迫られていたのを見た士郎は生徒を凛に任して、ライダーの後を追って交戦、そして危ない所を凛に助けられ、帰り道がてら凛と士郎のマスター達は当面の間、敵対せずにお互いをフォローするとの事で収まった。

 

「なぜ令呪を使い、私を呼ばなかったのですかシロウ?!」

 

「いや、最初は優戦してはいたんだ。 ライダーはどこか、俺を本気にしていなかったというか、アーチャーやランサーと比べて迫力が無かったと言うか……………」

 

 士郎は黙っていた、()()()()()()()()()()()()である事を。 日頃から遠坂凛と間桐慎二の性格を考えて、士郎を襲ったのが慎()()()ライダーだという事が判明したら凛が何をするか分からない。

 

 最悪自分の時の場合みたいに問答無用で襲い掛かってしまうかも知れない。

 この考えから士郎は慎二=ライダーのマスターとは凛には言っていなかった。

 

「あのね衛宮君、サーヴァントは契約したマスターの魔力を糧にして存在し続けているの。 マスターの貴方が死んだら、セイバーも消えるんだから元も子もないでしょうが?!」

 

「でもそういう遠坂も俺を『殺す』よりは『マスターの任から退散させる』って動きだったじゃないか?」

 

「そうなのですか、リン?」

 

「それはまあ…余りにも衛宮君が格下だから………言うなれば『心の贅肉』よ」

 

「『心の贅肉』? 遠坂が太っているという事か?」

 

 ピシリと空気が凍って、温度が下がったような感じがして、青筋がピクピクと凛のこめかみに浮かび上がる。

 

「衛宮く────」

 

「────に・い・さ・ん?

 

 そしてそれを横からピシャリと遮る、冷たい三月の声に士郎は固まる。

 

「な、なんd────」

 

 バシィィィィン!

 

 三月がどこからか出したハリセンを大きく振りかぶった後で士郎の頬を横から叩き、士郎の身体はそのままの勢いで横に倒れてから彼は痛みにその場で転びまわりながら顔を手で覆い、唸る。

 

「オオオオオオオオオオオオゥゥゥゥゥゥ────」 

 

────女性に何て事を言うのよ兄さん?! 今はボケかましてる場面じゃないしそれにワザとだったら尚更質が悪いでしょうがオラァァァァァ?!

 

 三月はかつてないほどの怒りを露にして転がり回る士郎を叱っていた。

 彼女がこれ程怒ったのはいつ頃か士郎が小学校から帰っている途中、「正義感が気に食わない」とボコボコに仕返しされ帰って来た時以来だった(士郎に羽交い締めされ、動きを止められた時はこの時だった)。

 この時の三月を見た大河は後で士郎に謝っていたとか、「お爺ちゃんの者の奴らにはよ~く私から言っておくから!」なんとか。

 

 この三月を見た凛は────

 

「(────あ、何かこの子に親近感が湧くわ)」

 

 セイバーは────

 

「(────今のは腕、手首、腰と足。 そのどれをも使い、効率的に衝撃が生じるような、良い振りかぶりの仕方でした。 やはり彼女も武術の心得を持っていたのですね)」

 

 アーチャーは衛宮邸の屋根の上に座りながら片手で頬を覆い、退屈そうな顔で周りの警戒を静かに続けていた。

 

 そして後に衛宮邸でお邪魔していた凛を見た桜は酷く混乱した。 三月同様、桜は食材を買っていたので帰りが遅くなっていたらしい。

 

 そして結局その夜、凛が遅くまでご厄介になったのに対抗する為か、桜はまた泊まる事を決めた。

 前回の大河の間桐家への連絡は『度々桜が衛宮邸で泊まるかも知れない』と含めていたからこそ可能だった。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 そして深夜近くの時、三月は静かに桜部屋に入り、寝ている桜の身体に手をかざし────

 

「────また貴方ですか」

 

「あ。こんばんは」

 

 またもライダーに声を掛けられ、止められる三月。 ただ三月は予想していたのか、今度はビックリせずに対応する。

 

「それと簡易防音結界を張ったから余程の事が無い限り声は漏れないと思うよ。(アインツベルンの結界魔術、使えて良かった)」

 

「…………貴方には危機感と言うモノが無いのですか? 例えば────」

 

 ライダーは一瞬の内に三月の背後を取り、鎖付きの短剣を彼女の首筋に刃を立てる。

 

「────この様に貴方を人質にしてセイバーのマスターに自害をさせるか、セイバーを操れるようにするか…など」

 

「うーん……………危機感と言うか、貴方のような方が理由も無くそのような事をするとは思いませんから。あと、礼を言いたいんだけど」

 

「礼? 可笑しな事を言うのですね貴方は。 何に対しての礼でしょうか?」

 

「士郎を……『兄さん』を本気で殺そうとしないでくれてありがとうございます」

 

「………どうして、そう思いになったか聞いても?」

 

「あー、兄さんからの説明から推測しているんだけど………貴方がもし本気で殺そうとしていたのなら、きっと五体満足ではなかったと思うし。あと慎二に伝えてくれる? 多分、桜の事を心配して貴方をここに送って来ているんでしょう────?」

 

 プツリとする音と共に三月の首筋に小さな傷が出来、血がゆっくりと首を滴る。

 

「────ここから立ち去りなさい。 次は────」

 

「────あ。それに前は言いそびれたけど、私は可愛い貴方と『友達』に────ぁ」

 

 ライダーが三月の首に口を立てて血を出来ていた傷から吸い始めると三月は黙りこんだ。

 

 時が静かに過ぎ、唾と血混じりでネッチャリとしたライダーの口が三月の首から離れ、唇に付いた血を舐めとる。

 

「このような私と、『友達』? ふざけているのですか?」

 

「ううん、本気。 で、桜を診ても良いかな?」

 

「何故そうなるのです」

 

「や、だって血を吸ったじゃん。それ位はしても良いんじゃないの? それに何か…………()()()()がするのよ。 だからね、心配するの」

 

 三月がまた桜に向かい、手を翳すと優しい光が部屋を灯す。

 

「そう言えば桜ってよく眠るわね。 『寝る子は育つ』って言うけど、まさか桜の秘密はそれじゃないでしょうね────ん?」

 

 三月の顔がほんわかとしたモノから、困惑したモノへと変わる。

 

「(何これ? この〇イオハザード感、何処かで………それに()()()()()()()()()()()? もしかして……………寄生虫か何か? ()()()()の正体はこれ? だったら取り出さないと────)」

 

 三月が力を込めた瞬間、何か黒い影のような物が無数に床を伝って、桜の体中から三月を目掛けて飛び出て────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────三月の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【告。 プロトコールに従い────】

 

 

 

 ___________

 

 士郎、セイバー 視点

 ___________

 

 

 土蔵で寝ていた士郎は夢を見た。

 冬木市の道。

 

 船の上の景色。

 

 階段を上る。

 

 船から降りて────

 

 ────気が付くと、士郎は柳洞寺の敷地内で立っていた。

 

「…………あれ? ここは柳洞寺の庭? 何でここに…………」

 

「ようこそ、セイバーのマスター」

 

 士郎は紫をメインカラーとしたローブの女性に声を掛けられる。

 

「私はキャスターのサーヴァント。 貴方をここに来るように糸を使って体を操ったの。 単刀直入に言うわ、令呪とセイバーを私に渡しなさい。私の方が両方とも有効活用できるわ」

 

 士郎はその女性────キャスターの『提案』に驚愕し、怒りを露にした。

 

「そんな事、する訳が────!」

 

「────ああ、ごめんなさい。 既に貴方には拒否権は無いのよ?」

 

「な────ガアァァァァァァ?!」

 

 キャスターの魔術行使に無理矢理体を動かされ、苦しむ士郎が叫ぶ。

 無数の矢が辺りを埋め尽くし、キャスターを襲う。

 

「貴様は、アーチャー!」

 

「エミヤシロウ、このまま逃げろ…と言いたい所だが逆に動かない方が良い。 少し荒事になるからな」

 

 途端にアーチャーとキャスターが衝突して、士郎は見て感じる。 キャスターの魔術師として格上の戦いを、アーチャーのアーチャーらしからぬ接近戦。

 

 後に士郎は窮地をアーチャーに救われ、二人は「馬鹿」の言い合いをする。

 キャスターが呆気に取られるほどのコントだった。

 

 

 そして衛宮士郎は目撃する。

 アーチャーの『偽・螺旋剣(カラドボルグII)』を。

 

 キャスターはボロボロになりつつも、一命を取り留めていた。

 アーチャーが止めを刺さず、ただ衛宮士郎を目的としていたとの宣言にキャスターは笑った。

 

「そこの坊や(士郎)は無関係の人間を糧にする私のようなサーヴァントが許せない、そして貴方(アーチャー)は無意味な殺戮は好まない。 似た者同士ね、貴方たち」

 

 これにムッとするアーチャーと士郎は反論する。

 

「誰がこんな奴と一緒なもんか!」

「同感だ。平和主義者であることは認めるが、根本が大きく異なる」

「どこが平和主義者だ、お前?!」

 

 この二度目のやり取りにキャスターはまた笑い、交渉を持ち掛ける。

 

「気に入ったわ、貴方達は力もその在り方も稀少よ? 私と手を組みなさい。私にはこの戦いを終わらせる用意が出来つつある」

 

「「断る」」

 

 同時に断った士郎がアーチャーを睨み、アーチャーは見返しながら舌打ちをする。

 

「あらそう。 残念ね」

 

 キャスターのローブが翼のように広がり、宙へと舞い、士郎とアーチャーを見下す。

 

「私をこのまま見逃すの、アーチャー? 貴方のマスターは町の事件絡みで私を追っていると言うのに?」

 

「もとより私は独断でここに来た、それに個人的に貴様を討つ気はない。 ここは痛み分けという事で」

 

「なッ?! おいアーチャー!」

 

「フフフ、本当に残念………坊や」

 

 キャスターが不意に声を士郎にかける。

 

「な、何だよ?!」

 

「気に入ったから一つ忠告をしてあげるわ。 ()()貴方では余りにも未熟よ。 ()()()()()()()ね」

 

 キャスターが紫色の光となり、夜空へと溶けて行く。

 

「……何でキャスターを見逃した、アーチャー? あいつは町の事件と関係しているんだろ?!」

 

「そんな事、私には預かり知らぬ事だ。むしろ奴にはこのまま続けてもらいたいくらいだ」

 

「何だと?!」

 

「キャスターは人々から生気を吸い上げ、その力で恐らくこの聖杯戦争で一番の妨害のバーサーカーを危険視している。 となると倒すか無力化するのは先ずバーサーカーの筈だ。 私達はその後でキャスターを倒せばいい。 仮に標的がバーサーカーで無かった場合、その時に打ち倒せば良い事だ」

 

「そんな戦い方、お前のマスターの遠坂なら絶対に了承しない!」

 

「そうだな。 キャスターに手早く事を済ませて欲しいものだ。 人間など結局は死ぬ生き物だ。 誰にどう殺されようが、結果的には変わるまい。 ならば最小限の犠牲で、最大限の効果を発揮すれば良い」

 

 士郎はそんな事を言うアーチャーを睨み、アーチャーは無表情に士郎を見て、如何に士郎が持つ理想が「理想」でしかありえない事を。

 

 これに対して士郎は反論する、「やって見なくては分からない」と。

 

 こうして、夜の寺で二人の男が『議論』をする。

 

 一人は理想論を掲げ、もう一人は現実的で確実な言葉を並べる。




作者:ちょっと読み返したけどFate/Zeroの“バカンス”より台詞多いなー。すみません………仕事の合間にストック頑張ります。 はい…てか昼寝するならベッドで寝ろ!

マイケル/ラケール/三月(バカンス体):んあー、面倒くさいー

チエ:お茶が旨い

作者:ガッデム!
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